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2016年04月23日

【ケース・スタディ】『「0から1」の発想術』大前研一


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「0から1」の発想術


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた「ビジネスアイデア」発想本。

著者はお馴染み大前研一先生です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
これが「無」から「有」を生み出す思考法だ 。
【15の発想法】を身につければ、新しいビジネスアイデアが次々に湧いてくる!
大前研一氏が、イノベーションを生み出すための発想法を公開する。
ビジネス・ブレークスルー大学大学院で必修の「イノベーション講座」を待望の書籍化!

ビジネスモデル好きには、たまらない1冊です!





dishwasher / David Locke


【ポイント】

■1.下洗いをしなくて良い食洗機とは?
 私が実際に行った調査では、食洗機にセットした食器を洗い終わったらすぐに使いたい、というユーザーはほとんどいなかった。90%を超えるユーザーが、たとえばタ食で用いた食器は翌朝まで使わない、ということがわかったのだ。いわば、食器棚代わりとしても使っていたのである。
「家事のストレスを減らす」「食器の汚れを落とす」というユーザーの目的をかなえるために私が提案したのは、「食器を一晩中、食洗機の中に浸けておく」という方法だった。食洗機の中に洗剤と食器を入れ、お湯ないし水の中に一定時間浸しておくのである。面倒な下洗いの代わりである。そして時間をずらし、次に使う時に間に合うように食洗機を回すようにする。そうすれば、水の使用量も、洗う時間も節約できるし、ユーザーのストレスもなくなると考えたのである。


■2.アメックスが世界で支持される本当の理由
実は、アメックスは法人全体の決済も請け負っているからだ。アメックスと契約している企業は、社員全員にアメックスカードを持たせる。出張では、レンタカーもホテルもアメックスで払わせる。そうすることで、経理処理が容易になるのだ。
 それだけではない。アメックスは、ハーツレンタカーと同様に、企業ごとにディスカウントレートが違っている。ホテルやレンタカー会社、レストランなどと個別に交渉してへビーディスカウントを可能にし、その上で「あなたの会社の社員はこちらのホテルなら、通常料金の30%オフで宿泊できますよ」と提案するわけだ。企業によって、50%オフや20%オフというケースも出てくる。
 企業にしてみれば、アメックスのカードを持たせるだけで出張費が安くなるのだから、それを利用しない手はない。ホテルやレンタカー会社にしても、たとえへビーディスカウントであったとしても、優良顧客の利用が増えて稼働率が上がるならば、それに越したことはない。三方丸く収まり、皆がウィンという関係が成立するのだ。


■3.空いているものを有効利用する
 今までも、レンタルサービスはあった。だが、レンタカーやレンタサイクルは、会社がユーザーのための乗り物を所有するという固定費ビジネスだ。一方、この「アイドルエコノミー」の流れは、それとは異なる。自分たちで所有せずに「空いているもの」を用意し、かつその時間に使っていない個人・企業と、安く便利に使いたいユーザーとを、インターネットやスマホのアプリで簡単に結びつけるというものだ。
 そうやって考えていくと、日本には「空いているもの」が多い。たとえば、日本には約100か所の空港がある。漁港は3000近くもあり、そのうち年間水揚げ高より港湾整備費のほうが高い漁港が2000以上もある。こうした空港や漁港が有効利用されているかと言えば、そうではない。これらをどうにか有効利用できないか、と考えるところから、アイデアが生まれる。


■4.常に職位を2つ上げて考える
 ビジネスマンならば、日頃から自分の扱っている仕事を、2つ職位を上げて考える癖をつけるべきなのだ。なぜなら、発想するレべルによって「解」が異なるからである。自分のレべルで考えているだけでは、いくら思考しても「解」は変わらない。
「職位を2つ上げよ」というのは、1つだけ上げると、自分の直属の上司になってしまうので、どうしても発想が鈍るからだ。
 こうして考えたアイデアは、時折、2つ上の上司に実際にぶつけてみるというのも手だ。そういう発想に対し、上司がどれほどの受容力があるのかを測る手立てになる。
 常に職位を2つ上げて考えるスタンスは、ビジネスマンの思考を深めてくれる。こうしたトレーニングは、リーダーになった時に大いに役に立つのだ。


■5.時間軸をずらす
 まず、購入するパソコンを何年使うつもりなのかを聞く。仮に5年だとしよう。すると、まず必要なのはハードウエアの購入費だ。そしてソフトウエアやネット環境整備などの費用も要る。パソコンを5年使い続けるためには、ソフトウェアの更新料、パソコンのメンテナンス費、電気代もかかる。
 つまり「5年使用するパソコン」と考えた場合、必ずしも「ハードウエアだけの支払い金額の大小」は重要ではないのだ。TCO(Total Cost of Ownership)――総所有コストで比較するのである。
 私がパソコンの営業マンならば、「ハードウエアだけの支払い金額の大小」で決定しようとしている顧客が目の前にいたら、TCOの比較を持ちかける。ソフトウエア費用やメンテナンス費用などを含めた「総所有コスト」で比較するならば、あなたが買おうとしている他社のパソコンよりも、わが社のパソコンのほうがトータルで安いですよ、と勧めるのだ。
 目先の「購入費用」の「時間軸」をずらし、「5年」という新しい判断基準を用意してあげるわけだ。


【感想】

◆当ブログでもセール等の際にKindle版をご紹介しているこのシリーズ。

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BBTリアルタイム・オンライン・ケーススタディ Vol.1(もしも、あなたが「ザ コカ・コーラカンパニーCEO」「ローソンの社長」ならばどうするか?) 大前研一のケーススタディ (ビジネス・ブレークスルー大学出版(NextPublishing))

大前先生が学長を務められているBBT大学大学院では、こうしたケーススタディを毎週1ケース、2年間で合計100ケースこなしているのだそう。

対して、他のビジネススクールのケース・スタディは古いものが多く、つぶれたり吸収合併された会社の事例を含めて、「答えが出ている問題」を扱っているとのこと。

それはかつて大前先生が教授を務めていたスタンフォードでも同様で、日本のビジネススクールに至っては、そのスタンフォードやハーバードの5年前、10年前に作ったケース・スタディを使っているところが珍しくないのだとか。


◆では大前先生が、どのようにしてケース・スタディを検討しているか、というと、本書で挙げた「15の発想法」が用いられているワケです。

下記目次にもあるのですが、項目だけ拾うと以下の通り。
1.SDF/戦略的自由度
2.アービトラージ
3.ニュー・コンビネーション
4.固定費に対する貢献
5.デジタル大陸時代の発想
6.早送りの発送
7.空いているものを有効利用する発想
8.中間地点の発想
9.RTOCS/他人の立場に立つ発想
10.すべてが意味することは何?
11.構想
12.感情移入
13.どんぶりとセグメンテーション
14.時間軸をずらす
15.横展開
このうち目次では、「基礎編」と「実践編」に分かれていますが、基本的には最初の11の発想法で解決できるのだそう(大前先生いわく、「剣道の稽古で言えば『形』である」とのこと)。

ただし、現実のビジネスシーンでは、これだけでは解決できない課題もあり、そうした時のために、11の発想法と組み合わせて使える4つの発想法が「実践編」として紹介されているという。


◆とはいえ、忘れてはならないのは、こうしたケース・スタディは、「解」を見つけることが目的ではない、ということ。

自分自身で情報を収集し、取捨選択し、分析し、事実に基づいた考察を重ねて「自分なりの結論を導き出す」能力を磨くことが重要になります。

そしてそれを何度も繰り返すことによって、発想力や問題解決能力がついていく次第。

さっそく本書の「はじめに」では、こんな問いが出されています。
Q もし、あなたが都道府県魅力度ランキングで3年連続最下位になった茨城県の知事になったら、どのようにして順位を上げるか。
大前先生のお答えは本書にてご確認頂くとして、本書の各章では、「15の発想法」に基づいて解決された、このような課題が数多く収録されています。

最近よく取り上げられる、UberやAirbnbはもちろんのこと、大前先生がかつて提案して実際に採用された事例も多々。

たとえば、この本に詳しく載っているそうですが、マッキンゼー時代に「フラッシュ内蔵型のカメラ」を提案したのは、大前先生らしく。

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企業参謀―戦略的思考とはなにか


◆また、「15の発想法」に基づいた、世界の各地で実現しているサービスや商品を知りうることができるのも、本書の魅力の1つです。

たとえば、費用の安い外国で手術を受ける「メディカルツーリズム」。

平均するとインドでの医療費は、アメリカの10〜20%で済むのだそう。

外国人に治療してもらうことに、私たち日本人は抵抗があるかもしれませんが、そもそもアメリカではインド人医師が当たり前ですし、イギリスではインド人医師の割合がアメリカより高いのだとか。

それで空港まで無料送迎だったり、手術後には帰国前に観光サービスが付いていたり、建物は高級ホテル並み、となれば、人気が出るのも当然な気が。

実際、アメリカの保険会社では、インドのメディカルツーリズムを受け入れるなら、保険料を安くする、という提案をしているところが出始めているそうです。


◆もちろん、こうした「問題解決」「アイデア発想」系の事例でありうるのが、「成功したケースだけもってくる」というもので、本書にもその可能性がないわけではありません。

大前先生だって、クライアントに提案して実現したものの、数字的には失敗したケースだってあるでしょうし。

ただ、結論を導き出すまでの「発想法」が多いのにこしたことはありませんし、上記でも触れられているように、それらを実際に使いこなせるようになるのが大事なハズ。

今まで大前先生の「もしもあなたが最高責任者 ならばどうするか」シリーズを読んだことがない方でも、とっかかりとして本書を読むのも良いのではないでしょうか。


大前流の発想術をお試しアレ!

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「0から1」の発想術
はじめに――なぜ「0から1」を生み出す力が重要なのか
基礎編 「0から1」を生み出す11の発想法
1.SDF/戦略的自由度―消費者のニーズを正しくとらえるために
2.アービトラージ―情報格差こそビジネスチャンスになる
3.ニュー・コンビネーション―「組み合わせ」で新たな価値を提案する
4.固定費に対する貢献―「稼働率向上」と「付加価値」の両立を
5.デジタル大陸時代の発想―高速化した変化のスピードについていく方法
6.早送りの発送―「兆し」をキャッチする重要性
7.空いているものを有効利用する発想―Uber,Airbnbもこの発想から生まれた
8.中間地点の発想―「業界のスタンダード」を捨てる
9.RTOCS/他人の立場に立つ発想―「もしあなたが○○だったら」が思考を変える
10.すべてが意味することは何?―発想の飛躍が息の長いビジネスを生む
11.構想―あなたには何が見えるか?

実践編 「新たな市場」を作り出す4つの発想法
1.感情移入―ユニ・チャームはなぜ女性に受け入れられたか
2.どんぶりとセグメンテーション―大ヒットシャンプーの裏にあった考え方
3.時間軸をずらす―「コスト」がネックになった場合の対処法
4.横展開―他の業界にこそ成長のヒントはある
おわりに――「0から1」の次は「1から100」を目指せ


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『デザインコンサルタントの仕事術』が想像以上に凄い件について(2014年11月07日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」はこちら。

B00CJ1FEBI
脳を最高に活かせる人の朝時間

「脳ネタ」は好きなんですけど、あまり茂木先生のご本はウチでは取り扱っていないんですよね。

ただ、アマゾンレビューが良さげなので、一応。


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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