2016年04月20日
『年上の義務』を舐めた人間の末路
年上の義務 (光文社新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、当ブログでの初期の人気作である『キラークエスチョン』や、各方面で話題になった『非属の才能』で知られる山田玲司さんのコミュニケーション本。光文社新書らしからぬ装丁で、一瞬ラノベかコミックかと思いましたが、しっかりテキストオンリーでありますw
アマゾンの内容紹介から。
「愚痴らない」「威張らない」「ご機嫌でいる」世代間の溝が深い現代の人間関係を円滑にするために必要なこと。人気漫画家が、各界の有名人へのインタビューを続ける中で導いた、大人が果たすべきたった3つの義務を伝授!
なお、書名がシンプル過ぎるので、「ホッテントリメーカー」にてタイトルを作成しました!
Seniors Prom / dmott9
【ポイント】
■1.年上としての「3つの義務」もしも年下の人間にバカにされたり、無視されたくなかったら、年上にも年下に対する「しかるべき義務」があるはずだ。
そんなことを考え始めた僕は、「年上の義務とは何か」について、いくつかの結論に達した。
その中心になるのがこの3つだ。
「愚痴らない」
「威張らない」
「ご機嫌でいる」
挙げようと思えば他にもいろいろあるのだけど、本質的なものはこの3つに尽きると思う。実際、ネットで公開してみると、多くの反響があった。
おそらくこの3つは、今の「意見を言わせてもらえない若者」にとって、「理想の年上像」の最低条件なのだろう。
■2.若者は年上に「がっかり」している
実は今の若者だって、そんな自分の指針になる「かっこいい大人」を求めている。
ところが、「憧れさせてくれる大人」は消えていくいっぽうで、周りに尊敬できる大人がいないという声のほうが多くなってしまった。
若い人は「劣化」したのではなく、あんな大人になりたい、という「目標となる人」を失ったのだ。
威張っている先輩にだって何か尊敬できるところがあるはず。そう思っても、その期待ははずれ、尊敬できるはずの年上に「がっかり」させられることばかりが続いていく。
がっかりさせられすぎて、「年上は存在しないもの」という気分にまでなってしまったのが、今の若者なのだ。
■3.親は子供の前で愚痴らない
家族といっても、親が子供に愚痴ばっかり言っているのも避けたほうがいい。
「親だって大変なんだから、仕方ない」というのもわかる。でも子供には逃げ場がない上に、愚痴という「マイナスの話」ばかり浴びせられて育つと、世の中や人を見るときの基本設定が「マイナス」になってしまうのだ。
「今日もいい人に会って楽しかった」という親と、「今日も最悪の人間ばかりでうんざりした」という親がいたとして、どっちの親に育てられた子どもが人生を楽しく生きていけるだろう?(中略)
愚痴は、「心のガス抜き」であっても、それは「有害なガス」として聞く側を不幸にする可能性があることを忘れてはならない。
■4.威張る人は褒めてもらえなかった人
威張る人は「認められたい」と強く思っている人に他ならない。
人は、子供のころに「すごいね」と言われて、「僕はすごいんだ」「私ってすごい」と自信を持つようになる。
ところが、いまだに一部の親や大人たちは、子供は何もできない(動物と同じ)ので、厳しく躾けて、簡単に褒めてはいけない、と言う。
こういうことを言う人は、子供のころに「そのように」育てられてきた人だ。
つまり、「褒めてもらえなかった人」で、子供のころの「すごいね貯金」が少ない人なのだ。
■5.年上がご機嫌であるべき理由
いつもご機嫌な人は「他人に寛容な人」なので、言いにくい話や、どうでもいい話もしやすい。逆に「これを言ったらキレるな」とか、「不機嫌で何言っても怒られそう」と思われていたら、誰も話しかけてこなくなる。
威張る人同様に、その手の人は必然的に情報弱者となり、時代に取り残されていく。
したがって、そういう人間が仕事で決定権を持っているとすると、組織自体の損失は大きい。業績も上がらず、優秀な若手が巻き添えになるという不幸を生む。
また、時代に取り残されている人間は、過去の成功体験だけで仕事を進めようとする。当然、それは通用しない。結果、さらに不機嫌になり、人が離れていく。そんな悪循環が待っているのだ。
年上の人間が何も権限を持っていないなら構わないが、仕事場の舵を握っているとなると、「不機嫌」は死活問題なのだ。
【感想】
◆私の場合、年齢的に思いっきり本書で糾弾されている世代に属しております。それだけに本書を読むにも「耳イタイ」と言いますか、思い当たるフシがありまくり!?
そう、かつて自分が説教されて「ウゼェ」と思っていた相手に、今や自分がなりつつあるワケです。
そこで、そうならないために、山田さんが提案しているのが、本書における「年上の義務」3つ。
上記ポイントの1番目にあるように、「愚痴らない」「威張らない」「ご機嫌でいる」必要があるという。
◆本書では第3章から第5章にかけて、この3つの義務を解説しています。
まず第3章では「愚痴」についてなのですが、上記ポイントの3番目にあるように、「子どもの前で愚痴らない」というのは、個人的にも心にとめておきたいな、と。
また、この第3章では「愚痴」と同じように、人前でしない方が良いこととして「自慢」を挙げています。
そして自慢話は「する」より「聞け」という指摘もはげしく納得。
ちなみに山田さんは、どうしても話すことが自慢に聞こえそうなときは、「ゴメン! 自慢させて」と初めに謝罪してから話し始めるのだそうです。
これはなかなか「目からウロコ」かも。
◆続く第4章の「威張る」は、もっとも「年上」としてやりかねないことなので、要注意でしょう。
自分も顧問先からは「先生」とか言われてしまう職業であり、個人的には普通に言ってるつもりでも、言われた相手にとっては、咎めているように聞こえかねないので、その辺は注意しております。
なお、山田さんが以前「職人を取材して漫画でレポートする」という連載をしていた頃に出会った職人さんの大半は、「愛想よく穏やかで優しかった」のだとか。
要は、取材の対象となるような優れた職人さんは、「あるステージまで達した人」であり、こういう人たちは、目下の人間を怒鳴ったり、黙り込んで無言の圧力をかけたりしないのだそうです。
一方、第5章の「ご機嫌」については、これは年上年下あまり関係ないような気。
ただ、上記ポイントの5番目にもあるように、仕事場の舵を握っている「年上」が不機嫌だと死活問題というのは、確かに言えると思います。
上司が不機嫌だと、言いにくいことが、なおさら言いにくくなりますものね……。
◆以上、これら3つの「年上の義務」は、私もいい年こいた大人として、最大限に気を付けていたいところです。
なお今回は触れませんでしたが、本書には若者サイドから「困った年上」にどう対処するかのアドバイスもありますので、こちらもご覧頂きたく。
さらに、「年上」「年下」双方からの質問も、第6章のQ&A集にて対応済み。
また第8章の「『年上の努力』がすべてを変える」を読むと、やはり変わるべきなのは、「年上」側であることがよくわかります。
私にとっては「良薬は口に苦し」な1冊でした!
年上の義務 (光文社新書)
第1章 「バカにされる」年長者
第2章 若者は「劣化」しているのか?
第3章 愚痴らない
第4章 威張らない
第5章 ご機嫌でいる
第6章 「年上の義務」をめぐるQ&A集
第7章 「イノベーション幻想」の終わり
第8章 「年上の努力」がすべてを変える
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【編集後記】
◆たつをさんの記事を読んで知ったのですが、勝間さんの新刊が出るようです。2週間で人生を取り戻す! 勝間式 汚部屋脱出プログラム
版元が文芸春秋さんというのはちょっと意外ですが、果たしてその内容は!?
ご声援ありがとうございました!
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