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2016年04月01日

【文章術】『大人のための書く全技術』齋藤 孝


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大人のための書く全技術


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、昨日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた1冊。

ご存知齋藤 孝先生の「読書術」「会話術」に続く「大人のための全技術」シリーズ3作目のテーマは、これまた先生お得意の「文章術」でした。

アマゾンの内容紹介から。
齋藤孝の「書く技術」の集大成!! メールや企画書作りなど、社会人が仕事で成功するために必要な技術のすべてを、齋藤孝がわかりやすく詳しく解説します。終章には、書くために役立つ究極の40冊リスト付き!

なお、Kindle版の書影の方が、実際の帯が付いている分、実物に近いです。





Correction / quinn.anya


【ポイント】

■1.「温かみ」のある文章を書く
 では、ほんとうに人の心を動かす文章とはどんなものなのでしょうか。
 ポイントは"温かみ"があるかどうかです。
 やっぱり人は心で動くもの。ですから、人としての温かみとか、情熱、あるいは相手に対する気遣いなどを感じさせる文章を書けるようにならなければいけません。
 要件を過不足なく書くのは大前提。その上で、そういう「感情のプラスアルファ」が入っている文章を書いてこそ、相手も、「同じような条件だけど、じゃあ、こちらの人の仕事を優先させようか」という気持ちになるものなのです。


■2.「巨視的な視点」と「個としての視点」の2つを持つ
 巨視的な視点とは、間題を一般的なものとしてとらえ、どう対処するかということです。
 そのためにはまず、さまざまな情報に触れ、一般的な常識や知識を持っている必要があります。しかし、それはある意味では誰にでも書けることでもあります。学習すればいいだけなのですから。
 それより大切なのは、もう一つの"個としての視点"です。
 自分がその問題に対して取り組むとしたら、自分の経験を踏まえてどう取り組むのかを、具体的に書けるかどうかということです。その視点にこそ、その人自身の本質が表れることになるからです。


■3.文章を構築する際の3つのプロセス
(1)書きたいテーマ(もしくは気づき、主張)を見つける

(2)テーマから3つのキーコンセプト「言いたいこと」をつくる

(3)3つのキーコンセプトを結び付けて文章を構築する

(詳細は本書を)


■4.透明度の高い文章を書くために気をつけること
・事実と自分の感想を混ぜて書かない。
・ポイントごとに段落を分ける。
・1行空けて、ここまでが事実関係ですとハッキリわかる書き方をする。
・判断には、必ず理由を付ける。
 現状認識とその判断に加え、そう判断した理由などを、自分の中できちんと区別して書く練習をするのが大切だということです。


■5.意味の含有率を高める
 文章を書くうえで、この"意味の含有率"はとても重要なポイントです。意味の含有率が低い文章だと、読み手は違和感を覚えてしまうはずです。
 たとえば、論文であれば、「とても論文とは思えない。このもたついた、はっきりしない書き方はなんなんだろう」と感じられるばかりか、ひどいときには「この書き手、頭が悪いんじゃなかろうか」と思われてしまうことすらあります。
 それと同じように、意味の含有率が低いビジネス文書は、「この人はなんかはっきりしないな」「ビジネスの相手としてふさわしくないんじゃないか」というふうに受け取られてしまうことでしょう。


【感想】

◆齋藤先生の一連の「大人のための全技術」シリーズは、どれも分厚いです。

本書もアマゾンには何故か「243ページ」との記述がありますが、実際には343ページ。

ですから、本書もてっきり文章術の基礎から書かれているのかと思いきや、いわゆる「てにをは」の話のようなお話は一切ありません。

接続詞がどうとか、敬語の使い方とか、そういった基礎的な部分は「できている」ものとして扱われている模様。

つまり、「ただ書いているだけ」の文章から、ワンランク、ツーランク上を目指しているのだと思います。


◆実はその「上を目指すため」の訓練法もいくつか書かれていたのですが、今回はバランスの関係で割愛してしまいました。

ひとつ例を挙げると、「テレビニュースの解説者のまとまった話をメモに取りながら聞き、それを改めて文章にまとめる」

これは「話し言葉をまとめることで、書き言葉の訓練を行う」ことを目的としており、実はそれほど簡単なことではないのだそう。

ちなみに、これに関連して「活字のように話す訓練する」というものもありました。

たとえば、「何々ですマル」というふうに自分の中で話しながら、点と丸(句読点)を意識するだけで、書き言葉に近づいてくるのだとか。


◆また、同じく割愛してしまったのが、第3章の「ビジネス文書の全技術」のパート。

ここでは、ビジネス文書のジャンルごとに、その留意点を解説しています。

登場するのは、「企画書」「稟議書」「報告書」「エントリーシート」等々。

これらはそれぞれ独自のポイントがあるため、部分的に抜き出してもしょうがないかな、と判断した次第です。

それより意外だったのは、「企画書」のところにあった、「企画書の価値は、書いたことによって生まれるのではなく、その企画が成功することによって初めて生まれる」という指摘。

つまり、下手に小手先だけで採用されても、その企画が失敗したら、結果として会社に迷惑をかけることになる、というのですが、「文章術」の本でそこまで意識されているとは!?


◆一方、冒頭の内容紹介にある「書くために役立つ究極の40冊リスト」というのは、終章の「私の『書く力』を鍛えた40冊」のこと。

ここが想定外にボリュームがあり、実は最後の100ページ強が該当します。

ただし齋藤先生としては「良い本を読むことは、書く力につながる」とお考えなので、「文章指南本」ではなく、普通に古典や小説ばかりが登場するという。

そんな中でも「文章術本」と言えそうなのは、こんなところかと。

4004150922
論文の書き方 (岩波新書)

4122025354
文章読本 (中公文庫)

4022611561
ベストセラー小説の書き方 (朝日文庫)

……すいません、私はどれも読んでおりませんでした。


◆ところで本書は「全技術」シリーズであるがゆえ、齋藤先生の過去の著作とどのくらいネタがかぶっているかは、正直分かりかねます。

もっともこれは、同じシリーズの過去2冊にも言えることなので、あらかじめご留意頂ければ、と。

そして第5章では、「読む」と「話す」の力を鍛えることで、「書く」力が伸びる、というお考えから、むしろ「読む」と「話す」、中でも「読書法」のお話がメインになっています。

この辺は「『読む』『話す』『書く』という3つの力は連動しているもの」という指摘はごもっともなのですが、てっとり早く「書く」技術を身につけたい方からしたら、微妙かもしれませんね。

もちろん「良い本を大量に読む」ことは、書く力に大いに良い影響を与えているのは、間違いないと思いますが。


出世への一番の近道は「書く力」を強化すること!←帯のフレーズから

4046012331
大人のための書く全技術
第1章 社会人こそ「書く力」が必要な理由
第2章 書き方を変えると生き方が変わる!――「書く力」を鍛える基本練習
第3章 仕事の成否は文章力で決まる!――ビジネス文書の全技術
第4章 文章の達人になる――ワンランク上の書く技術
第5章 「読む・書く・話す」の達人になる――言葉を磨く最後の全技術
終 章 私の「書く力」を鍛えた40冊


【関連記事】

【コミュニケーション】『大人のための会話の全技術』齋藤 孝(2015年05月29日)

【読書術大全】『大人のための読書の全技術』齋藤 孝(2014年08月07日)

【知的生産】『「読む・書く・話す」を一瞬でモノにする技術』齋藤 孝(2009年09月02日)

【文章術】『必ず書ける「3つが基本」の文章術』近藤勝重(2015年11月28日)

【オススメ】『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング』唐木 元(2015年08月14日)


【編集後記】

◆実は齋藤先生の「全技術」シリーズの過去2冊は、「カドカワ"新生活必読フェア"追随セール」の関係で、Kindle版がどちらも「50%OFF」となっています(4月7日まで!)。

B00MB2SKF2
大人のための読書の全技術 (中経出版)

B00YDS9WOU
大人のための会話の全技術

レビューは上記関連記事にて。


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