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2016年03月22日

【フレームワーク】『フレームワークの失敗学』堀 公俊


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フレームワークの失敗学 (PHPビジネス新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、昨日に続いてリアル書店で捕獲した、ビジネススキル本

著者の堀 公俊さんは、以前『ビジネス・フレームワーク』という本を出されていますが、本書ではそのフレームワークの使い方や問題点等にまで踏み込んでいます。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
なぜ、フレームワークを駆使したにもかかわらず、「課題が解決しない」「結果が陳腐なものになってしまう」「却って問題が複雑になった」という事態に陥ってしまうのでしょうか。
著者は「フレームワークは料理のレシピのようなもの」「食べる人の好みや環境に応じて味を加減しなければ、美味しい料理をつくることはできない」と指摘しています。
失敗事例を元に、美味しい料理をつくるために必要な「実践知」を培うことで、フレームワークの「本当の活用法」が学べる一冊。

フレームワークを使いこなしたい方なら要チェックです!





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【ポイント】

■1.使いどころを間違えない
 そもそもPPMは、売上高○○兆円といった複合事業体(コングロマリット)を前提に考え出されたものです。独立した事業を複数営んでいる巨大企業で、最適な投資配分を検討するためのフレームワークです。
 そのため、事業同士のシナジー効果や見えない付加価値は、直接的に扱いません。事業規模の小さい企業で、無理に事業を分けて当てはめても、適切な答えが得られるとは限りません。
 たとえば、簡単に解雇のできない日本企業では、下手に撤退するよりも、赤字でも余剰人材を活用するほうが得な場合が少なくありません。収益の低い事業であっても、ブランドイメージや従業員の士気を支えていることもあります。今、問題児だからといって早期に撤退すると、将来の芽を摘むことになりかねません。


■2.経営の本質は「総合」にある
 たとえば、ある商品の特徴を把握しようとしたときに、良い点と悪い点を列挙していくのが分かりやすいです。味やデザインといった属性に分けて説明するのでもOKです。いずれも分析作業であり、それほど難しくないはずです。
 ところが、その後で「つまり、この商品は何なの?」「それを一言で表すと?」「他の何かにたとえると何?」と言われると、多くの方は答えに窮してしまいます。分析結果が言わんとしているメッセージを自分で立ち上げていくしかなく、こうやれば必ず総合できるという方法論がないからです。(中略)
 残念ながらフレームワークやその元になる経営学は分析のためのものです。総合に関してほとんど手当てされていません。自分の頭でやるしかなく、経験と鍛錬がものを言います。


■3.合理的な解決策が、自分たちに都合が悪いこともある
 そもそも、問題解決フレームワークの利点は、属人的な要素を排してロジカルに答えが出せるところにあります。
 自分たちに都合のよい解決策では、完全に問題を解決できないかもしれません。「できない」「やりたくない」とダダをこねていたのでは、解決できるものもできなくなってしまいます。事実と謙虚に向き合い、論理的に導いた解決策を、辛くとも、嫌でも、我慢して実行してこそ問題は解決します。
 とはいっても、解決策を実行するのは生身の人間です。素晴らしい解決策が見つかっても、まったく手をつけなかったら問題は解決しません。「やったふり」「やっているつもり」では思うような成果は得られません。


■4.フレームワークは問題を教えてはくれない
 問題解決フレームワークを使うにあたって、もう1つ頭に入れておいてほしいことがあります。こういったツールは、問題を解決するためのものであって、「問題は何か?」は教えてくれない、という話です。
 問題とは現実と理想とのギャップである、という話をしました。時々刻々と起こっていることの中から、どんな現実に着目するかは本人次第です。しかも、それに対してどんな理想を描くかを決めるのも本人です。つまり、問題は目の前にあるのではなく、本人が発見したり設定したりするものなのです。


■5.フレームワークは細かいところに目をつぶっている
 たとえば、環境分析のフレームワークの1つに3Cがあります。顧客、競合、自社の利害関係者の視点で企業を取り巻く状況を分析しようというものです。
 ところが、顧客、競合、自社以外にも利害関係者はたくさんいます。株主、提携先、政府(行政)、業界団体、労働組合といったように。これらの動向をすべて調べ尽くさないと、正確な環境分析はできません。
 それでは手間がかかり過ぎますし、リストアップするだけでも大変です。重要なものに集中すれば、おおよそ全体がカバーできるだろう。そういう割り切りを入れて3Cに絞っているわけです。そのせいで、「提携先が突然契約を破棄した!」「まさか政府が規制を強化するとは!」「しまった、組合対策を忘れていた!」といった失敗が後を絶ちません。


【感想】

◆本書は第1章から第7章までかけて、各フレームワークを使う上での問題点を明らかにしています。

そして総論である第1章と、活用法を説いた第8章を除いた各章は、それぞれフレームワークのジャンルごとに言及されているという。

具体的に第2章から第7章までのジャンルとフレームワークをそれぞれ順番に列挙すると、このようになります。

・「戦略」フレームワーク……「3C」「SWOT」等

・「マーケティング」フレームワーク……「4P」「4C」等

・「問題解決」フレームワーク……「ロジックツリー」「フィッシュボーン・チャート」等

・「意思決定」フレームワーク……「プロコン表」「意思決定マトリクス」等

・「マネジメント」フレームワーク……「3M」「PDCA」等

・「組織開発」フレームワーク……「GROWモデル」「PM理論」等


ちなみに、上記ポイントの2番目は第3章の「マーケティング」から、上記ポイントの3,4番目は第4章の「問題解決」からの引用になります。


◆とはいえ、お恥ずかしい話、私自身どのフレームワークが、どのジャンルに適しているかについて、あまり意識したことがありませんでした。

また、一番最後の「組織開発」に関しては、ほとんどが初耳で、「GROWモデル」というのも馴染みがなく……と書きかけて、つい先日ご紹介したこの本にあったことを思い出したという。

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外資系トップの思考力―――経営プロフェッショナルはいかに最強の解を生み出すのか

参考記事:【外資系?】『外資系トップの思考力―――経営プロフェッショナルはいかに最強の解を生み出すのか』ISSコンサルティング(編)(2016年03月14日)

しかし、「組織開発」に該当する第7章の事例を読んでみると、「指示待ち族の部下を何とかしたい」というもので、むしろ中間管理職の方ならば、他のフレームワークよりも使うのではないか、と。

ここでの問題点は、上記ポイントでは抜き出しておりませんので、詳しくは本書をお読みください。


◆もう1つ触れておきたいのが、第1章にあった「フレームワーク使用上の3つの注意事項」。

これは、フレームワークを使用する上での注意点を薬の服用にたとえたもので、本書曰く
(1)正しく服用しないと効果がありません。誤った服用は病気を悪化させる恐れがあります。
(2)よく効く薬には必ず副作用があります。効用と副作用を総合的に判断して服用ください。
(3)最終的に病気を治すのは、薬ではなく本人の力です。安易に薬に頼らず、気力や体力を充実させることを忘れないでください。
とのこと。

結局のところフレームワークは万能ではなく、何でも解決できるワケではありません。

そういう意味では、本書を読むことにより、「フレームワークの限界を知った上で使いこなす」ことができれば良いと思います。


◆もっとも私の場合、もっと根本的な話として、「そもそもフレームワークがちゃんと使いこなせるのか」という問題がありまして。

当ブログでは「ビジネススキル」ジャンルについては、かなりレビューしてきたツモリでしたが、こと「フレームワーク」に関しては、そのテーマの本を最後にレビューしたのが2010年らしいという有様。

読者の方でも、フレームワークに自信がない方もいらっしゃるのではないか、と。

ただ、本書の「はじめに」で、著者の堀さんは「これからフレームワークを勉強したいという方は、個々のツールを覚える前に、本書を一通りお読みください」と言われています。

なぜなら「そうすることで効率的に学べ、失敗を未然に防ぐことができる」から、とのこと。

というわけで、フレームワークをマスターしている方もそうでない方も、本書は一読の価値があると思った次第。


フレームワークを本当に活用するために!

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フレームワークの失敗学 (PHPビジネス新書)
第1章 フレームワークは魔法の杖じゃない!
第2章 「SWOT」分析をしても勝ち筋が見えてこない
第3章 「4P」をバッチリそろえたのにダメなの!?
第4章 完璧な「ロジックツリー」ができたのになぜ?
第5章 「意思決定マトリクス」で最善策を選んだのに……
第6章 「PDCA」で組織がギクシャクしてしまった!
第7章 なぜ「GROWモデル」でやる気を引き出せないのか?
第8章 本当に使える! フレームワーク活用術


【関連記事】

【思考整理】「ワクワク会議」堀 公俊(2010年01月02日)

覚えておくと便利な「フレームワーク仕事術」のウラワザ(2010年01月08日)

【強力!】「勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力」勝間和代(2008年06月15日)

【コンサル流】『本質思考: MIT式課題設定&問題解決』平井孝志(2015年01月26日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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プレゼンは資料作りで決まる!

下記レビューも、結構な数のブクマ付くほど人気でしたし、中古がほとんど値崩れしていないのに、「67%OFF」+「20%ポイント還元」で、実質400円というのは、かなり魅力的だと思います。

参考記事:【資料作成】『プレゼンは資料作りで決まる! 意思決定を引き寄せる6つのステップ』天野暢子(2014年08月06日)


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