2016年03月20日
【電通式?】『コンセプトのつくり方 たとえば商品開発にも役立つ電通の発想法』山田壮夫

コンセプトのつくり方 たとえば商品開発にも役立つ電通の発想法
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だったマーケティング本。本書の帯で野中郁次郎先生が述べられている、「やさしく書いてあるが、簡単な本ではない」という言葉に、読んでから深く納得致しました。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
なぜ「その手があったか! 」というコンセプトをつくれないのでしょう?
その原因は、学校でも会社でも教えてくれたのは「正しく、論理的に考える」方法論だけだったから。
多くのひとは残念なことにイノベーションを起こす思考法を知らないのです。
数々のヒット商品を開発する電通のクリエイティブ/コンサルタントが「ロジカルシンキング」に代わる思考の方法論を紹介します。
それは単なる個人のハウツーの類ではありません。
Kindle版なら、今でしたら「26%OFF」に「20%ポイント還元」も付いて、かなりお得です!

Concept / manu_el_o_matic!
【ポイント】
■1.コンセプトは「サーチライト」そもそもぼくたちはコンセプト(概念)がなければ、何ごとも見ることができません。その暗黒の中で「切る食器」というコンセプト(ナイフ)、「刺す食器」というコンセプト(フォーク)、「すくう食器」というコンセプト(スプーン)。それによって初めて他のものと区別し、認識することができます。コンセプトは経験的世界という暗闇から物事を照らし出す「サーチライト」です。
面白いのはイノべーションが起こる時、このサーチライトが変わるということです。たとえば以前、黒毛和牛といえば産地で価格が左右されるもの。つまり「特別な産地ブランド」というサーチライトで照らされていました。(中略)
しかし尾崎牛は黒毛和牛に「特別な生産者のブランド」というサーチライトを当てました。その結果、たとえば「黒毛和種の血統を継ぐお肉」という中心的な事実には何の変化もないのですが、「胃もたれしない、あっさりした脂」「理想を共有する仲間という流通」という新しい常識が生まれました。
■2.サーチライトとしてまともに機能しないフェイクコンセプト
たとえば「和牛革命」。これはコンセプトとして通用するでしょうか? ぼくの答えは「NO」です。なぜならこの言葉を耳にしても進むべき方向を直感できないから。イノべーションを起こそうというのなら、「新しい何か」というのは当然のことで、単に「革命」というだけでは何も照らし出していません。大切なのは「どんな風に新しいか」を示すサーチライトです。ところが残念なことに「○○革命」に類するフェイクコンセプトの例はいくらでも見つけることができます。「セダン新体験」「進化する鎮痛剤」「書店イノべーション」……。皆さんの周りにもきっとあるはずです。
■3.ビジョンで論理的に管理するマネジメント軸
「ビジョン」「課題」「コンセプト」「具体策(現実)」とは左の頁にある図のように整理できます。「具体策(現実)」により「コンセプト」は実現し、「コンセプト」により「課題」は解決され、「課題」解決によって「ビジョン」が実現する、という構造です。それぞれの要素は脳みそで理解できるように、互いに主張と論拠となって論理的に結ばれています。たとえどんなに面白い着想であっても、このフレームで整理できなければコンセプトとは言えません。コンセプトは単なる思いつきではなく「ビジョンの実現に向けて課題を解決する新しい視点」なのです。
■4.ターゲットの気持ちを動かすコミュニケーション軸
コンセプトをつくるためにはマネジメント軸以外にもうひとつ、コミュニケーション軸が必要となります。それは「ターゲット」と「商品・サービス」の対立を解消するための相互作用。放っておいたら縁がないままに終わる両者を結びつける運動です。
徒歩から馬車、自動車への進化。携帯カセットから携帯CD、MP3プレーヤーへの進化。改めてこういった事例を見ていると、イノべーションは「ひとの行動・習慣・価値観にもう元に戻れないような変化をもたらすモノ・コト」だなあと実感できます。つまり単なる技術革新でないイノべーションは「ひとの気持ち」を動かして、その結果、行動・習慣・価値観を変えて初めて成立するのです。イノべーションにはコミュ二ケーションの問題という一面があります。
■5.ふたつの軸の関係性
ターゲットと商品・サービスの間をホンネで結ぶ「コミュニケーション軸」。ビジョンと具体策(現実)の間をロジカルに結ぶ「マネジメント軸」。このふたつの相互作用を通じて身体的思考は行われます。書道家のアプローチと同じようにべースとなるのは理性、つまリマネジメント軸です。これを念頭に置きながら、実際にプロジェクトを進める時は身体的にコミュニケーション軸を考え抜き、最終的にマネジメント軸の理性でチェックをするという流れです。いくら正しくてもターゲットの気持ちを動かさないものは認められませんし、単にターゲットの気持ちを動かすだけでビジョンに合致しないものもまた認められません。
【感想】
◆上記ポイントの3番目に「左の頁にある図」とあって、「どこにそんな図があるんじゃい!」と思われた方もいらっしゃると思います。実は図自体は、ただ単にコマが4つ縦に並んでいるだけのものなので、エクセルで作って画像を貼りつけようかとも思ったのですが、アマゾンの書影の下にある「10点すべての画像を見る」というところに、近いものがあったので、それをご紹介。
クリックしてしまうと、アマゾンのページに飛んでしまうので、ご注意ください。

上下2つ図がありますが、構成自体は2つとも同じもの(コマの中身ではなくて、コマの上に書いてある名称をご覧いただきたく)。
ただ、上記ポイントの3番目のお話は、「マネジメント軸」として、縦に並んだ「ビジョン」「課題」「コンセプト」「具体策(現実)」の4つの並びについて触れたものなので、両脇にある2つのコマは無視して下さい。
◆ではその「両脇の2つのコマ」が何かというと、上記ポイントの4番目の「コミュニケーション軸」に使われるもの。
これは左側の「ターゲット」と右側の「商品・サービス」のコマをいかに結びつけるかというお話になります。
ですから本書のこの部分では、「マネジメント軸」の上下2つの「ビジョン」と「具体策(現実)」を省いた、
「ターゲット」――「課題」&「コンセプト」――「商品・サービス」
という並びの図が掲載されているという(「課題」と「コンセプト」は上記図のように縦並びです)。
ところで、この「コミュニケーション軸」の失敗例として挙げられていたのが、とあるケーキ屋さんが開発しようとしたケーキの例でした。
「ターゲット」を「甘いものが苦手な男性」とし、「商品・サービス」を「地元で評判の地酒をたっぷり使った日本酒ケーキ」として考えていたそうなのですが、著者の山田さんいわく「何ともウソっぽく映る」とのこと。
そこにあるのは「甘いものが苦手でも、日本酒を入れたら男性向けになるんじゃないか?」という、とてつもなく楽観的な願望です。なるほど確かに。
◆ちなみに上記の2つの図ですが、具体的な事例内容が入っているとはいえ、解説としてはむしろ、上記ポイントの5番目の「ふたつの軸の関係」の方が適していると言えるかと。
そしてその事例とは、第3章の初っ端に登場する「海苔屋の場合」の最終案なので、ホントはこの図で思いっきり「ネタバレ」しちゃっているのですが、お許しください。
ただし、山田さんは
もちろん数学の教科書とは違うので、ここでご紹介するアプローチが「正解」なんかじゃありません。どうぞ「わたしなら、どうするかな」とあれこれ想像しながら読んでみてください。と言われてますので、読者の方もあれこれお考え頂ければ、と。
果たして「海苔の売り上げが市場全体として落ち込んでいる中、広島市内で味付け海苔等を製造・販売している企業が作るべき新商品」とは……?
◆なお、上記ポイントはいずれも第1章から引用したものになります。
第3章は「事例検討集」ですからいいとしても、第2章はまるまる割愛してしまっておりますので、その点もご留意を。
ちなみにこの第2章では「感じる」「散らかす」「発見!」「磨く」という4つのモードからなる「ぐるぐる思考」なるものを解説しているのですが、1つ2つをポイントとして抜き出しても全体が分かりにくいので、中心的なフレームである第1章にフォーカスした次第。
また、本書の第3章では、「ふたつの軸のコマ」を「ぐるぐる思考」を使って埋めていく手順が、具体的事例とともに述べられていますので、そちらもぜひご覧ください。
……ホント、本書はページ数は大したことないのですが、アタマ使いましたし、野中先生の言う通り、「簡単な本」ではありませんでした。
コンセプトを使いこなしたいなら必読!

コンセプトのつくり方 たとえば商品開発にも役立つ電通の発想法
第1章 コンセプトは身体で考える
第2章 こびととつくるコンセプト
第3章 コンセプトをアーカイブしよう
【関連記事】
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【夜の行動経済学?】『安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生』安田隆夫(2015年12月10日)
【スゴ本】『横井軍平ゲーム館: 「世界の任天堂」を築いた発想力』横井軍平,牧野武文(2015年08月17日)
【編集後記】
◆上記で割愛しまくった「ぐるぐる思考」については、実はこの本に詳しいそうです。
〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考
絶版なのに中古にそこそこのお値段がついているので、送料考えるとKindle版の方が若干お買い得ですね。

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