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2016年03月07日

【読書術】『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』印南敦史


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遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事では当然のように人気だった「読書本」

著者の印南敦史さんの作品は、以前文章術のご本をレビューしたことがありましたが、今回は満を持して「読書ネタ」が登場です!

アマゾンの内容紹介から一部引用。
積ん読、解消! 月20冊があたり前になる。
なぜ「1ページ5分」かかっていた遅読家が「年間700冊超」読破する人気書評家になれたのか?
元・遅読の書評家が教える本を読むのがラクになる方法

なお、本日よりいよいよKindle版が配信されております!






Reading / ZapTheDingbat


【ポイント】

■1.「ため込まない」読書法「フロー・リーディング」
「フロー(flow)」とは「流れる」という意味の英語です。簡単にいえば、フロー・リーディングとは、「その本に書かれた内容が、自分の内部を"流れていく"ことに価値を見出す読書法」です。
 その対照として考えているのが、「ストック」型の読書法。これは、本に書かれていることを頭の中に「貯蔵」することに重きを置いた従来型の本の読み方です(経済や会計を学んだことがある人は、フローとストックの対比はイメージしやすいのではないでしょうか?)。
 フロー・リーディングは、膨大な情報が押し寄せてくる時代に最適化された「ため込もうとしない読書」です。


■2.読む本の割合は「9対1」で
 読書を習慣化するうえで重要なのは、「速く読める本」をたくさん読むようにすることです。
 ゆっくり読みたくなるような本だけでなく、なるべくさっと読了できるような本も自分の読書リストに入れておくのです。次々といろいろな本を読む環境をつくることで、「前に進んでいる感じ」をつくり出すことができます。読み終わった本がどんどん増えていく感覚は、読書を習慣化するうえで欠かせないモチべーションにつながっていきます。
 目安としては、「速く読める本」が9割、「遠く読む必要がない本」が1割の比率。この「9対1」の割合を意識しながら、読む本を選ぶようにしてみてください。


■3.本は1日で1冊読み切る
 できれば、本は「1日で1冊読み切る」のが理想的です。毎日違う本が自分の中を通り抜けていく状態をつくるのが、フロー・リーディングの基本的なかたち。僕自身、ブックレビューを書くための本は、必ず1日で読み切るようにしており、絶対に次の日に「持ち越さない」ように心がけています。
 ですから、最初に時間を区切ってしまって、その時間内に味わえる価値だけに集中するほうがいいかもしれません。「熟読の呪縛」に縛られている人はぜひ、「10日間のダラダラ読みより、60分間のバラパラ読み」を意識してみてください。読書体験のクオリティが一気に高まるはずです。(中略)
年間700冊以上も本を読むようになって気づいたことですが、意外なことに、1時間ですばやく読んだほうが、本のポイントがしっかりと記憶に残っていることが多いのです。


■4.読み飛ばすか迷ったら「最初と最後の5行」だけ読む
 書籍の本文は基本的に次のような構造をしています。
・章
 ・節
  ・項(中略)
 いずれにしても、本文を読みはじめる前に目次を確認したり、パラパラと全体をめくってみたりして、その本がどんな構造をしているのかを確認しましょう。
 そのうえで、本を「どのような単位で読むのか」を決めていきます(1つの単位は最大でも20ぺージくらいになるのが望ましい)。(中略)
 そのあとにやることは非常にシンプル。
 各ユニットの「最初の5行」と「最後の5行」だけを読むようにするのです。機械的にこの読み方をするだけでも、かなりの時間短縮が可能です。


■5.読書リズムの「ギアチェンジ」を意識する
じっくり読むときの「基本リズム」だけではなく、1.5倍速の「中速モード」、2倍速の「高速モード」、5倍速の「流し読みモード」というように、何段階かのリズムを用意します。
 読みはじめたら、リズムの「ギアチェンジ」を意識するようにしましょう。
「ここは関係なさそうだから『流し読みモード』で読もう」とか、「待てよ、ここには関連キーワードがありそうだから『中速モード』で行こう」というように、自分のリズムを自覚しながら緩急をつけていくのです。
 こうして1回の読書の中に、あえて「濃淡」を設けることで、読書体験が単調になることを防ぎ、なんとなくのダラダラした流し読みに陥ることを避けられます。


【感想】

◆本書の「はじめに」によると、著者の印南さんは、かなりの「遅読家」なのだとか。

具体的には「翻訳もののビジネス書」で計測したところ、「1ページを読むのにだいたい5分弱かかった」……って、それはさすがに盛ってる気がしますがw

ただし、上記ポイントの2番目とも関連するのですが、印南さんいわく「速く読む必要のない本」として「ストーリーコンテンツ」と並んで「自分がゆっくり読みたい本」として「翻訳書に多い『構成がしっかりしているためつまみ食いが困難な重厚感のある本』」を挙げているので、わざと時間がかかる本を選んだ可能性が高いです。

さて、そんな印南さんですが、現在書評家として、複数の情報サイトに「月60本近くのブックレビュー記事」を寄稿しているとのこと。

となると、単純計算でも月に60冊以上の本を読まれているワケですから、「1ページ5分」で間に合うわけがありません。


◆そこで実践しているのが、タイトルにもある「フロー・リーディング」。

これは「速読術」というよりは、「考え方の転換」に近く、印南さん曰く「『熟読の呪縛』から抜け出す」ものだそう。

つまり、1冊を深く読むのではなく、「たくさんの本から『小さなかけら』を集めて、『大きなかたまり』をつくっていく」ことを意図しています。

イメージとしては「音楽を聴くように本が読める状態」。

そうやって「音が自分の中を通り抜けていく」ように、「本に書かれた内容が、自分の内部を『流れていく』」際、それでも「自分の中に残ったもの」に価値を見出すわけです。


◆具体的な読み方については、上記ポイントに詳しいのですが、意外だったのは、先ほども触れたポイントの2番目で、「速く読める本」を推奨していること。

私自身、毎日1冊ペースくらいで本を読んでいますが、実際「速く読める本」でないと、物理的に不可能です。

ちなみに、どうしても時間がかかる本を読みたいときは、翌日レビューする本と並行して、1週間くらいかけてチマチマ読んでいるのですが、それこそポイントの3番目の逆で、「1週間前のことはほぼ忘れている」という。

もっとも、それ以上に、どこぞの「新刊」で「本を読むなら古典を」と言われるたびに、「じゃあ、アナタの書いたこの本、読むの止めていいのね?」と思っている私としては、堂々と言って頂けて、嬉しかったのですがw

……とはいえ、ブログ等で「レビューを書く」必要のない方は、割合的には、もうちょっと「速く読める本」の割合を減らしてもいいのではないかと(弱気)。


◆一方、その「書く」ことに関して、本書の第3章では、「読書体験をストックする極意」として、「引用」が推奨されています。

この「引用」については、以前から齋藤 孝先生が、「引用ベスト3方式」を始めとして、色々とオススメされてましたっけ。

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齋藤孝の速読塾―これで頭がグングンよくなる!

参考記事:齋藤孝の速読塾(2006年11月01日)

印南さんの具体的なやり方は本書を読んで頂くとして、印南さんのレビューに「引用」が多く織り込まれているのには、こんな理由があったのか、と(ネタバレ自重)。


◆なお、本書の第5章では、「選書・管理術」についても触れられていますので、読書好きの方は、こちらも要チェックで。

とくに、本の管理術や、処分する本の見分け方は、大量に本を買う者として参考になりました。

ただ、「次の1週間の『読書スケジュール』を先に組む」というのは、私には無理だと思われ。

一応、いつどの本が発売されるかは事前に確認していますが、何せ実際に手に取ってみないと、読むかどうかも決められませんので。

……ぶっちゃけ今日読む本も、今日の仕事が終わってから決めるという「その日暮らし」ぶりワロエないw


読書好きなら、読むべし!

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遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣
はじめに なぜ「1ページ5分」の遅読家が年700本の書評家になれたのか?
第1章 なぜ読むのが遅いのか? ─ フロー・リーディングの考え方
第2章 なぜ読む時間がないのか? ─ 月20冊の読書習慣をつくる方法
第3章 なぜ読んでも忘れるのか? ─ 読書体験をストックする極意
第4章 流し読みにもルールがある ─ 要点を逃さない「サーチ読書法」
第5章 本とどう出会い、どう別れるか? ─ 700冊の選書・管理術
終章 多読家になって見えてきたこと
おわりに 10年後には「7000冊の世界」が待っている


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【編集後記】

◆今日の印南さんの本と「よく一緒に購入されている商品」として、この本が挙がっていました。

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幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

……どう考えても「速く読める本」ではなさげなんですが(涙目)。


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