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2016年03月02日

【メンタル】『ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」』荒木香織


ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」 (講談社+α新書)
ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」 (講談社+α新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた「メンタル強化本」

著者の荒木香織さんは、エディ・ジョーンズヘッドコーチの要請により、2012年からラグビー日本代表のメンタルコーチを務めた、という方です。

アマゾンの内容紹介から。
「荒木さんがいなければ、僕のルーティンは完成しなかった」(五郎丸歩)。
ラグビー日本代表メンタルコーチとして、ワールドカップの快進撃を支えた筆者の初著作。五郎丸のあのポーズは、どうして生まれたのか。何の意味があるのか。
二人三脚で「ルーティン」を作りあげた筆者だから書ける秘話がいっぱい。
最新のスポーツ心理学から導き出された「メンタルの鍛え方」は、アスリートはもちろん、一般社会で働く人にもきっと役立つだろう。

新書は在庫切れで、中古にプレミアが付いているのですが、Kindle版のご用意が間に合いました!





IMGP9875 / TheBIGlife


【ポイント】

■1.ルーティン中はルーティン自体に集中する
 プレ・パフォーマンス・ルーティンでよく誤解されるのは、五郎丸選手の場合なら、キックに集中するために行う」と思われがちなこと。
 そうではなくて、「プレ・パフォーマンス・ルーティンに集中する」のです。五郎丸選手自身、こう語っています。
「僕はキックを蹴るときには何も考えていない。頭にあるのは、自分のルーティンがしっかり守れているかどうかだけだ」
 ですから、キックが成功したかどうかは、関係ありません。ルーティンを遂行すれば、パフォーマンスの強化・向上に影響すると、スポーツ心理学で明確にされているからです。実際、五郎丸選手はあのルーティンの最中、「何も見えないし、聞こえないし、感じない」と語っています。


■2.ほめられた記憶が自信を生む
 ほめることが大切だというのは、「ほめられればうれしいから、やる気が出る」ということももちろんあるのですが、いちばんの理由は、言葉で「よかったよ」と言われることで、
「ほめられたときのことを記憶する」
 ということです。記憶することで、自分のいいところを確認できる。そうやってうまくいったときの感覚、身体の感覚や心の感覚を憶えておくと、次も連続して成功させる自信につながるということが、研究で明らかになっているのです。
 なので、「いいところはわざわざほめる必要はない」と、スルーしてしまうのがいちばんいけない。いいところは「いい」と、しっかり認めてほめてあげることが、自信をつけ、モチべーションを上げるには非常に大切なのです。


■3.結果だけでなく過程に関する目標を立てる
「過程に関する目標」を立てることも非常に大切です。これは、アスリートがどのように具体的なスキルを獲得するかに関係します。たとえば、キックの成功率を5パーセント上げるためにプレ・パフォーマンス・ルーティンを完成させる、100メートルハードルの自己記録更新のために抜き足の動作を速くすることなどです。
 こうした「過程に関する目標」は、いろいろと工夫することができますから、どうすればパフォーマンスの向上につながるのかを考えるチカラがつきます。
 実際、オリンピックでメダルを獲得した選手と獲得できなかった選手の差についての研究があるのですが、そのなかで「過程に関する目標を持って練習に臨んでいたかどうかが大きな分かれ目となる」ことが明らかになりました。「過程に関する目標」は意欲を持ち続けることや集中することにつながるのです。


■4.イラッとしたときは、リアクト、リラックス、リセット
 みなさんも腹が立ったとき、ものに八つ当たりすることがあるかもしれません。でも、それで怒りが鎮まるでしょうか。鎮まったとして、それで得るものが、次につながるものがあるでしょうか。
 そうしたときはリアクト、リラックス、リセットの「3R」を意識するのがいいと思います。
 これは、私の友人がアメリカのナショナルホッケーチームで子どもたちに実践して効果があったプログラムで、イラッとしたときはリアクト(気づき)、次にリラックスして、リセットに向かうというものです。


■5.ミスを引きずらず、次を考える
 過去を変えることは誰にもできません。ですから、ミスをしたという事実を変えることは不可能です。たとえ自分のミスが相手のトライにつながったとしても、「ああ、どうしてあんなミスをしてしまったのだろう」と後悔したところでトライは消えません。(中略)
 ならば、ミスはとりあえず忘れて、いましなければいけないことに頭を切り替えるしかない。「どうしよう」などと考えている暇があるならば、次に自分が果たすべき役割は何かを考える。もしパニックになってしまって、サインがわからなくなったら、周りの選手に聞けばいい。「おれ、ここにいていいのか?」「どこに行けばいいんだ?」と、確認すればいいのです。
 もちろん、ミスを引きずらないようになるためには訓練が必要です。日本代表の選手たちは、そのための訓練を徹底的にしてきました。(中略)
 だから、たとえば五郎丸選手は、キックをはずしてもなんとも思いません。すぐに次のプレーこ備えることができるようになっています。


【感想】

◆冒頭の内容紹介にもある「荒木さんがいなければ、僕のルーティンは完成しなかった」という五郎丸選手のフレーズ。

そして表紙を飾る、まさに五郎丸選手のお馴染みのポーズ。



さらには内容紹介の文面を併せて考えると、本書を読むことで、「自分も仕事(や勉強)に効果のあるルーティンを作って頑張れるハズ!」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

私はまさにそれを期待してしまったのですが、同じように考えた方は、ちょっと待って頂きたく。


◆まず、上記ポイントの1番目にあるようにこの「ルーティン」は「プレ・パフォーマンス・ルーティン」と呼ばれるもので、パフォーマンスの前に行う予備動作のこと。

そして「プレ・パフォーマンス・ルーティン」は、基本的に以下の条件のもとで行うのだそう。
・止まっている対象物にアプローチすること
・制限時間がなく、自分で時間をコントロールできること
ですから、ゴルフのドライバーショットやボウリング、バスケットのフリースロー等にはあてはまるものの、お馴染みのイチロー選手の一連の動作は当てはまらないのだとか。

同じように、仕事に取り入れようとした場合にも上記の条件を担保するのは難しく、たとえばプレゼンをやるのであれば、むしろできるだけのシミュレーションをして、準備しておくほうがうまくいくのでは、と著者の荒木さんは言われています。

もっともその後に続けて、「集中して企画書を書くとか、論文や原稿を書く、受験勉強をするといったときには、使えるかもしれません」と、やや柔軟な姿勢を見せているのは、ご愛嬌(?)。

ただ、もっと広い意味として「女性のお化粧」も「『今日も一日がんばろう』と思えるのであれば、それなりの効果はあると思います」とまで言われてしまうと、もはや五郎丸選手関係ないのでは、と……。


◆では、本書の読みどころは何かと言うと、まさに上記ポイントの2〜5番目にあげたような、メンタルスキルの数々。

著者の荒木さんご自身、短距離陸上選手として国体に出た経験もありながら、大会で力を出し切れなかったことから、スポーツ心理学を学び、「ノーザンアイオワ大で修士、ノースカロライナ大グリーンズボロ-校で博士課程を修了」という過程を経てらっしゃいます。

ゆえに、上記ポイントでも言及されているように、エビデンスに基づいて主張をされており、極めて理詰め。

関西の方ゆえ、口調はフランクなのですが、まるで男性のような(?)思考回路を持たれている印象を受けました。


◆なお、上記ポイントの4番目の「3R」について、説明を割愛しているので若干補足を。

まず、自分がどんなときに腹が立つか、どういう状況のときにイライラすることが多いかを書き出します。

同時に、そのときどんな気持ちになったか、どうしたか、ということも振り返っておくこと。

次に、そうなったときはどうやってリラックスするか、あらかじめ決めておきます。

このとき大事なのは、何をすればリラックスできるか自分で理解しておき、なんとなくそれをするのではなく、「意識的に」リラックスすること。

そして、リラックスできたと感じたら、リセット――前のことは忘れて、次に備えるわけです。

私にとってのリラックスは「甘いものを食べる」なんですけど、普通に繰り返してたら、とんでもなく太りそうなw


◆ちなみに、肝心の(?)五郎丸選手の「プレ・パフォーマンス・ルーティン」の誕生のいきさつについては、本書の第1章の最初から詳しく書かれています。

「どうして生まれたか」「何の意味があるのか」等々についても触れられていますのでご安心を(肝心の手を組む理由は分からなかったのですが)。

なお、先のワールドカップで日本代表は、南アフリカに勝った後、スコットランド戦に10対45と大敗し、その原因は多くのメディアで「疲労」と報道されていましたが、本書の「おわりに」によると、データ上ではフィジカルの疲労は回復していたのだとか。

ではなぜ、力を出し切れなかったか……については、本書にてご確認ください。


メンタルを鍛えるために、読むべし!

ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」 (講談社+α新書)
ラグビー日本代表を変えた「心の鍛え方」 (講談社+α新書)
はじめに――メンタルコーチという仕事
第1章 最高のパフォーマンスを発揮するためのメンタルスキル
第2章 自分に自信をつけるためのメンタルスキル
第3章 目標を達成するためのメンタルスキル
第4章 困ったときのメンタルスキル
第5章 受け止め方を変えるメンタルスキル
おわりに――ラグビー日本代表がもたらしたもの


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【オススメ】『「悩むこと」が「楽しいこと」になる本 悩む技術 完全マスター』伊東 明(2013年01月12日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

B00R68RYM6
GO WILD 野生の体を取り戻せ! 科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス

『脳を鍛えるには運動しかない!』の著者によるライフスタイル本。

糖質制限やマインドフルネスなど、昨今日本でも人気の要素が登場するようです。


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