2016年02月06日
【英語学習】『科学的トレーニングで英語力は伸ばせる!』田浦秀幸
科学的トレーニングで英語力は伸ばせる! (マイナビ新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、1月後半の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた英語勉強本。読者の皆さんの反響の大きさから、リアル書店でチェックしてみたところ、かなり興味深かったので、即ゲットしてしまいました。
アマゾンの内容紹介から。
科学的トレーニングで英語を学ぼう!多くの日本人が経験や昔ながらの手法に頼った、非科学的で効率的ではない方法で英語を学んでいます。その学習方法にどんな科学的根拠があるのか、分からないまま学んでいるのです。これではいつまでたっても世界に通用するビジネスパーソンとしての英語力は身につきません。英語習得に必要なのは、正しい学習法です。本書では、第二言語習得研究でわかった、科学的な英語学習で効率的、効果的に学ぶ方法を解説します。
なお、当初ご紹介した際にはなかったKindle版も準備完了。
思わず付箋も貼りまくりました!
【ポイント】
■1.リーディングとリスニングをセットで学ぶ僕が大学の教養のクラスで英語を教えるときには、とにかく「リスニング」をさせて「サイトトランスレーション(サイトラ)」をさせて「シャドーイング」をさせます。「サイトラ」とは、英文を小さな意味の固まりに分け、それをぱっと見てすぐ訳していくというトレーニングです。そうすると「リーディング」も「リスニング」も相乗的に上がっていくのです。
時々「先生、リーディングとリスニングっていう変なコンビネーションで教えるのはやめてください。普通はリーディングとライティング、リスニングとスピーキングという組み合わせじやないんですか」と言われますが、それは違うのです。
繰り返しますが、つながっているのは、リーディングとリスニングという「インプットのスキル」、それからライティングとスピーキングという「アウトプットのスキル」なのです。ここの意識を変えることが重要です。
■2.注目の新手法「ディクトグロス」
ディクトグロスは、まず音声を2人で聞くところから始めます。1度目はただ聞くだけです。その後、もう一度聞きます。この際には、キーワードだと思われるものだけをメモします。その後、音声を文字として書き起こしていきます。
2人で行う活動なので、「僕はこう聞こえた」「私にはこう聞こえた」という話の中で、「聞こえなかったけれども現在形だということは確実なので、この動詞にはsがついているのではないか」とか「ここは名詞のはずだから動詞のmakeが入るはずはないぞ」というような文法の知識を使っていくことになります。
2人の文法力を総動員して2人でディクテーションを完成させるわけです。1人ならできないところはできない、ということでおしまいですが、2人ならお互いにできないところ、足りないところを補完し合いながら進めていけるので、効果があるのではないかと言われています。
さらに上級者になると、2人の間の会話も英語で行います。
■3.聞いている時間の絶対量が大切
どれだけの時間英語の音声を聞いたか、触れたかという絶対量が重要です。ですが、ただ聞けばいいというものではありません。先ほども言ったように、聞き流すだけではほとんど効果は望めないでしょう。意味がだいたいわかるというくらいのレべルのものをきちんと聞き込むことが重要です。
繰り返しになりますが、音を聞けるようになることとリスニングができるということは違うことです。音を聞いて、内容が理解できるということを目指してください。そのためには、2割くらいしか意味がわからないようなものを聞くのは難しすぎて非効率なのです。
自分の好きな映画、すでに内容もすっかり頭に入っているようなものを何度も英語字幕付きで見るようなことも効果があるでしょう。10回も50回も100回も見れば、だんだん字幕なしでも台詞が理解できるようになってきますし、音声変化にしても当たり前に聞こえるようになってきます。
■4.「チャンク読み」でリーディングスキルを高める
ネイティブが話してくれる音を聞く場合には、意味の固まりごとに自然と息継ぎをして区切ってくれます。この意味の固まりを「センスグループ」と言ったり「チャンク(chunk、固まりの意)」と言ったりします。
だから、どれだけ早口で話されても、チャンクに注目することで格段に聞き取りやすくなります。
一方で「読む」となると、誰の手助けもありません。自分のインターナルボイスで読んでいるのですから、自動的にセンスグループで区切ってくれるということはないわけです。
ですから、このセンスグループを素早く、自動的につかめるようにするために「チャンク読み」の練習が有効です。チャンクをつかむことは、トレーニングによって比較的容易に身につきますし、身についてしまえばかなり速く読めるようにもなります。
■5.母語の運用能力は第二言語に反映される
母語の運用能力は第二言語に必ず反映されるものです。ですから、母語で文章を素早く読むことができない人が、第二言語である英語を素早く読めるわけがありません。
逆に、母語なら1冊を何分かでさっと読んでしまうような、いわゆる速読ができる人なら、英語の基礎力をつければものすごい速さで英語を読めるはずです。
人間として持っている言語の運用能力、読む・書く・話す・聞く、それに考えるというものがべースとしてあって、その上でたまたま使う言語が日本語であるのか、それとも不慣れな英語なのか、ということだけなのです。
母語の運用力が低く基礎力がない人が、第二言語だけはペラペラ話せるだとか、英語だけがどんどん上達するということは考えにくいことです。
【感想】
◆具体的なスキルアップのお話ではないので割愛しましたが、本書の第1章は「その常識は非科学的です」と題して、「英語」に関するさまざまな通説や常識を検証していきます。中でも興味深かったのが「英語の早期教育」の件で、著者の田浦先生は、英語をネイティブレベルで話す人たちを集めて、脳の働きを計測。
結果、脳のレベルでは「生まれる前から」、「生まれた直後から」、「3歳以降」で、その処理方法に差があるのだとか。
簡単に言ってしまうと、クリティカルピリオド(臨界期)があるとしたら、「生まれる前」とのことで、これはあまりに無理ゲーです。
そんな「早期学習」よりもっと影響が大きいのが「モチベーション」で、子どもはもちろん、成人してからでも動機づけさえしっかりできれば、問題なく英語を習得することは可能なのだそう。
◆一方、軽視されがちですが大事なのが「文法」です。
本書の第3章では「『受験英語』は無駄じゃない」と題して、「文法」や「語彙」の重要性に言及。
たとえば、田浦先生はアメリカに学部留学した際、少し点数が足りなくて、現地の語学学校の「大学入学準備コース」に3ヵ月通われたそうなのですが、そこでは中東の人を中心に「英語をペラペラ話す」人がたくさんいたのだとか。
ところが彼らの英語は、文法的な正確さよりも、コミュニケーションが中心で、文法の基礎が日本人ほどできていませんでした。
その結果3ヵ月経つと、元から文法や語彙がしっかりあった田浦先生をはじめ、日本人グループはみな大学に入学できたものの、中東からの人たちは半分くらいしか合格できなかったとのこと。
それと同様に、上記ポイントの4番目の「チャンク読み」も、そもそも文法的な基礎力が備わっていないと、センスグループに分けることができません。
今さらですが「文法知らなくても、喋れればいい」などと思わずに、基礎から地道に学ぶべきだと思った次第です(ちと手遅れ気味w)。
◆また、リスニングについては、第5章の「『聞く力』は『脳の自動化』で伸ばそう」をご覧頂きたく。
人によって適した練習方法は異なるものの、「ディクテーション」「リピーティング」「シャドーイング」は、「万人に通じる基本の方法」なのだそうです。
なお、上記ポイントの3番目の最後に出てくる「音声変化」については、巻末に「英語の音声変化6つのルール」と題して、具体例と解説がありました。
「I am」が「I'm」になる(「短縮」)くらいなら分かりますけど、「for him」が「ふぉーひむ」ではなく、「h」が読まれなくなって「ふぉーりむ」に近くなる(「脱落」)なんていうのは、知らないと聞いてて分からないかと。
もちろん、上記ポイントの3番目でも言われているように「聞いている時間の絶対量」も大事です。
そこで我が家では、英語を習いに行く代わりに、定期的に観ている米国のコメディを、吹き替えなしで観ようか、という提案を子供にして、速攻で却下されたんですがw
◆さて、ここまでリーディングとリスニングの話ばかりでしたし、上記ポイントでもごっそり割愛しましたが、残りの「ライティング」と「スピーキング」は、本書の第7章、第8章に詳しいです。
前者で初めて知ったのが、「現在の指導方法の主流」である「プロセスライティング」なるもの。
これは生徒が書いたものに対して、先生が途中で添削していくのですが、「ここにsの脱落がある」とか「このパラグラフは入れ替える」といった直接的な答えは提示しません。
代わりに「赤でアンダーラインが引かれている場所は単語の誤りだから正しいものに直しなさい」というように、「生徒に考えさせる」やり方なのだそう。
そして後者に関しては、「Skype英会話の注意点」のお話が興味深かったです。
結局初心者だと、聞き取れなければ会話にならないし、文法がめちゃくちゃだと本来は通じないのに、通じるように感じるのは、先生の推測力のおかげなワケで、その点を留意する必要があるとのこと。
……やっぱり基礎から地道に学ぶべきなんですね(本日2回目)。
ロジカルに英語を勉強したい方に!
科学的トレーニングで英語力は伸ばせる! (マイナビ新書)
第1章 その常識は非科学的です
第2章 第二言語習得研究で明らかになった最適な勉強法とは
第3章 「受験英語」は無駄じゃない
第4章 まず「文法」を伸ばせ! 科学的な3つの手法
第5章 「聞く力」は「脳の自動化」で伸ばそう
第6章 「読む力」は「チャンク読み」で伸ばそう
第7章 「書く力」は「プロセスライティング」で伸ばそう
第8章 最後に「話す力」を「総力戦」で伸ばそう
【関連記事】
【英語】『アジアの非ネイティブに学ぶビジネス英語速習術』金田博之(2014年03月18日)【英語学習】『7カ国語をモノにした人の勉強法』橋本陽介(2013年08月04日)
【裏ワザ?】『「銅メダル英語」をめざせ! 発想を変えれば今すぐ話せる』林 則行(2011年09月18日)
【英語】『残念な人の英語勉強法』山崎将志(2011年02月14日)
【英語学習】「留学なしでTOEIC985点 彼女は何を選んで勉強したのか」&「カリスマ税理士のオススメ英語書籍」(2008年03月19日)
【編集後記】
◆ホントに偶然なんですけど、本日の「Kindle日替わりセール」も英語本でした。英語は5歳児の日本語で考えると面白いように話せる!
さすがに「80%OFF」だとお買い得感が高いです。
ご声援ありがとうございました!
この記事のカテゴリー:「私と100冊の勉強本」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
スポンサーリンク
この記事へのトラックバックURL
●スパム防止のため、個別記事へのリンクのないトラックバックは受け付けておりません。
●トラックバックは承認後反映されます。
当ブログの一番人気!
10月10日まで
9月26日までのところ一部値引に移行して延長中
Kindle月替わりセール
年間売上ランキング
月別アーカイブ
最近のオススメ
最近の記事
このブログはリンクフリーです