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2016年01月26日

【認知バイアス】『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80』池谷裕二


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自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80 (ブルーバックス)

【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた「脳ネタ本」

著者はこのテーマではお馴染みの、池谷裕二先生です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
脳にそなわった「勘違い」する思考回路──「認知バイアス」の不思議な世界をクイズ形式で体感。

たとえば買い物で、得だと思って選んだものが、よく考えればそうでなかったことはありませんか。こうした判断ミスをもたらす思考のクセはたくさんあり、「認知バイアス」と呼ばれます。認知バイアスは、無意識のうちに勘違い、判断ミスを引き起こす、いわば思考の錯覚。その不思議な世界を気鋭の脳研究者がひもときます。身近な人間関係に役立つだけでなく、実際に、商品開発やマーケティングにも応用されている認知バイアス。その古典例から最新例までクイズ形式で実感することで、自分の持つ思考のクセだけでなく、他人のココロの動きまで分かります。

なお、上記未読本記事でも触れたように、本書は2013年に出た単行本『自分では気づかない、ココロの盲点』を新書化し、全面改稿したものなのですが、内容を3倍に増やした(30項目→80項目+付録)力作です!





Neale Donald Walsch: Handsome Guy! (or: How best to harness the placebo effect?) / ToastyKen


【ポイント】

■1.能力の低い人ほど自分を過大評価する
 本当の実力と、本人が思い描いている自分の実力が、一致するとは限りません。
 調査の結果、成績下位25%以内の人でも、「上位40%程度にいる」と自分を過大評価していることがわかりました。逆に、上位25%以内の人は「上位30%程度にいる」と過小評価していました。(中略)
 この傾向はユーモアの理解だけでなく、論理力や学力、スポーツや習い事に至るまで普遍的に見られます。
「能力の低い人ほど自分を過大評価する」というこの傾向は、発見者の名前にちなんで「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれています。この現象は次のように説明されます。
 能力の低い人は、能力の低さゆえに自分のレべルを正しく評価できない。同様に、他人の能力も正しく評価できない。その結果、能力の低い人は楽観的に自分を過大評価する――。


■2.左側に特徴がある方が印象に残る
 一般に、右利きの人は、視野の左側を重要視します。右脳のほうが映像処理は得意だからです。(中略)
 魚料理は頭を左に置いたほうが食欲をそそりますし、本やポスターは左側にイラストを描いたほうが自然に頭に入ります。スーパーの目玉商品は左側の棚に並べたほうが売れます。
 この脳のクセは、髪型や身だしなみ、お酒落や化粧にヒントを与えてくれます。他人から見られるときは主に、相手にとっての左視野、つまり自分の「右側」に注意が集まっています。そう、気合の入れ甲斐があるのは右半身なのです。


■3.自制心や意志力は有限リソース
 自制心や意志力は、筋力に似て、有限リソースです。がんばった後は、やる気、忍耐力、ときには道徳観さえも削がれます。若い人ほどこの傾向が強いことが知られています。
 たとえば午後は、朝からの疲れが溜まっているため、午前よりもウソの頻度が20%も増えます。入試が終わると脱力したり(燃え尽き症候群)、重要な仕事が終わった後の打ち上げ会では飲みすぎて泥酔したり、旅行先で財布の紐が緩んだり、ダイエット中に怒りっぽくなったりするのも、同様の原理が働いています。


■4.記憶は繰り返し学習するより繰り返しテストを解く
 脳は入ってきた情報を「記憶すべきかどうか」と品定めします。このときの判定基準は「出力」の頻度です。
 脳は「この情報はこんなに使う機会があるのか。ならば覚えておこう」と判断します。決して「こんなに頻繁に出会うのか。ならば覚えておこう」ではないことに注意してください。
 ですから、繰り返し学習して頭に叩き込むよりも、テストを解くことでその知識を使ってみるほうが、記憶としてよく定着します。
 テストの効果はてきめんです。まとめ図を描きながら覚えるよりも、テストを勉強に取り入れるほうが効率的なのです。


■5.自分の知ってることは相手も知っていると期待してしまう
 脳は一度知ってしまうと知らない人の立場でものごとを考えられなくなります。その結果、自分の知っていることは相手も知っていると期待する傾向があります。
――パソコンが得意な人は、できない人がなぜ苦労しているかを理解できません。
――裏事情を知っている情報通は、知らない人がどんな判断をするかを推測するのが苦手です。(中略)
 どんな些細なタスクであっても、それをまだ知らない初心者にとっては難しいものです。と同時に、かつて自分が未熟で無知だったころのレべルを正確に思い出すことも、また難しいものです。


【感想】

◆上記ポイントでは分かりにくい(というかまったく分からない)と思いますが、本書は「クイズ形式」で構成されています。

今まで似たようなクイズ形式だった場合、問題だけ列挙して答えを載せないやり方でネタバレを避けていましたが、今回は設問自体(問い&答え)を割愛し、解説部分のみを引用。

おそらく、今回のエントリーを1回読んだだけであれば、まったく影響はないと思います。

一方内容的には、さすがに設問を80個も収録しているだけあって、お馴染みの大ネタから、初耳のネタまでさまざま。

上記で挙げたポイントも、類書に掲載されたものもありますが、それらは改めて振り返りたかった次第です。


◆まず上記ポイントの1番目は、この本で初めて知ったワタクシ。

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錯覚の科学 (文春文庫)

参考記事:『錯覚の科学』が想像以上に凄い件について(2014年08月19日)

ただし、この現象に「ダニング=クルーガー効果」という名前が付いているなんて、初めて知りましたよ!?

なお本書では、この解説に続く設問で、「気が利かない人」というのは、自分で「私は気が利かないなあ」と遺憾に思うことはない、と指摘。

つまり「気が利かない」人は、問題に気がつかないからこそ「気が利かない」のであり、「自分がどれほど気が利かないか」を自分では知り得ないワケです。

ところがこういう人は、自分が気づいていることを他人が気づいていない、という状況に遭遇すると、「どうしてあの人は気が利かないんだ」と憤慨するというw

……逆にもし、誰かに対して「気が利かない」と思うことがあったら、わが身を振り返るべきではないかと。


◆また上記ポイントの3番目の、自制心が「有限リソース」だというお話は、この本でも触れられていました。

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スタンフォードの自分を変える教室

参考記事:【オススメ!】『スタンフォードの自分を変える教室』ケリー・マクゴニガル(2012年11月02日)

本書で挙げられていた事例では、車を買うという一大決心をした直後に、営業マンが「今ならカーナビを2万円の特価で追加できますよ」と言ってくるのは、「消耗した精神の弱み」をつく典型的な作戦、とのこと。

ファストフードでサイドメニューを薦められるような、単なる「クロスセル」とは、若干意味合いが違うようです。

ちなみに、消耗した自制心は、ブドウ糖を補給したり、コメディを見て笑ったりすることで回復するとのこと。

さらにこの本によれば、自制心は鍛えることができるそうなので、ご参考まで。

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やってのける ~意志力を使わずに自分を動かす~

参考記事:【スゴ本!】『やってのける 〜意志力を使わずに自分を動かす〜』ハイディ・グラント・ハルバーソン(2013年09月24日)


◆折角なので、割愛したネタについても触れておくと、犯罪心理学の研究からわかってきた、面白いお話が1つ。

出来る限りウソをつかれないようにするには、「ウソをつかないでね」というよりも、「ウソつきにならないでね」と言う方が効果があるとのこと。

これは前者は「行動」を否定するのに対して、後者は「人格」を否定するから。

要は、脳は「1回の過ち」を否定されるよりも、「人間としての本質」を否定されることに抵抗を感じるのだそう。

つまりこれの応用で、「怠けないで」より「怠け者にならないで」、「泣かないで」より「泣き虫にならないで」とした方がいいワケですね。

……さっそく子育てに活用しなくてはw


◆なお本書では、巻末に「認知バイアス用語集225」と題して、本書の設問を含む用語がアイウエオ順に列挙。

加えて「錯視用語集50」なるものが、具体的な錯視とともに50個も掲載されており、ムスコ大喜びの巻ww

錯視というのは、いわゆるこんなヤツですね(本書に収録されているのはモノクロですが)。


Optical Illusion / Roebot


「動いてるよー!\(^o^)/」

個人的には設問ごとに、個々のバイアスの英語名やエビデンスがそれぞれのページに記載されているのがありがたかったです。

さすが「講談社ブルーバックス」だな、とw


「認知バイアス」の「完全本」がここに!

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自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80 (ブルーバックス)

*目次は全80個の小見出しの列挙なので割愛します。


【関連記事】

◆本書の巻末に「推薦図書」として挙げられていた書籍のうち、当ブログにてご紹介済みのものを掲載しておきます。

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予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

Kindle版アリ

【スゴ本】「予想どおりに不合理」ダン・アリエリー(2008年12月15日)

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不合理だからうまくいく: 行動経済学で「人を動かす」 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

【オススメ】『不合理だからすべてがうまくいく』ダン・アリエリー(2010年11月26日)

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明日の幸せを科学する

【メモ】プレミア付きの自己啓発書が文庫化される件(2013年12月05日)

4414304229
影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか

【速報!】『影響力の武器』の[第三版]を[第二版]と比較してみました(2014年07月14日)

4334033547
行動経済学 経済は「感情」で動いている (光文社新書)

Kindle版アリ

「行動経済学」友野典男(著)(2006年07月20日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

B00VE1P84C
「社会を変える」を仕事にする ― 社会起業家という生き方

ウチの子どもたちもお世話になった施設があるので、応援アゲ。

文庫本版のKindleなので、さらにお値段控えめとなっています。


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