2016年01月11日
【思考法?】『考え方の教室』齋藤 孝
考え方の教室 (岩波新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、買ったまま積読状態になっていた思考術の本。多作で知られる齋藤先生の本は、一応読む本を選んでいるのですが、個人的に本書は「正解」でした。←偉そう
アマゾンの内容紹介から。
“考える”力は練習でのばせる、そして“考える”ことは楽しい!まずは気持ちのストレッチ体操から。手を使う、声を届ける、肚を決める…新しいことを思いつく豊かな発想力も、瞬時に決める判断力も、具体的なレッスンの積み重ねによって身につく“技”なのです。この一冊で必ずや、あなたの“思考”は変わります。
なるほど「考え方」というのも、「技」化できるのだな、と。
Thinking / kadluba
【ポイント】
■1.いくつか要素を選んで順番を考える例として何か、音楽のコンサートを開く企画を考えるとしましょう。自分が出演しなくてもいいのです。自分の好きなミュージシャンのコンサートを開くとして、自分がもしも演出家なら、どういう曲目をどういう順番で出していくか、考えてみてください。(中略)
ゼロから全部をつくること、たとえばコンサートをやるというのでいきなり曲づくりから始めるのはとても無理ですが、すでにある曲から選んで順番を考えるだけなら誰にでもできます。正解もとくにありませんから、リラックスしてやることができ、やっていて楽しくなってくる。コンサートにかぎらず、「いくつか要素を選んで順番を考える」という作業は、<考え方の教室>のファースト・ステップとしてとてもやりやすいと思います。
■2.キーワードを書きだす
授業でも、何か課題を出して「考えてみてください」と言うと、たいていの人は上を向いて、あるいは下を向いて考え込んでしまいます。それが、「手を動かしてノートに書いてみてください」と言うと、急に思考が具体化することがよくあるのです。
やり方として大切なことは、まず、罫線に沿ってきっちり文章として書いていくのではなくて、キーワードとして書きだしていくこと。原稿用紙に文章で書くとなると、一字一字埋めていくというイメージが強すぎて、思考が意外に飛躍しないのです。そこでキーワードを箇条書きに列挙していくやり方で、思考を解き放ってみるわけです。
■3.<考える>とは「工夫する」こと
<考える>ということは、実践的には「工夫する」ことです。「工夫」は<考え方>を学ぶプロセスのなかで大変重要な言葉で、工夫することがすべてだと言ってもいいくらいです。
<考える>というと頭のなかでやるイメージが比較的強いのですが、工夫という言葉は実際の動作や作業を意味して、現実のなかに新しいものを創りだしていく精神につながるからです。
勉強でも仕事でも、スポーツや楽器の練習でも、あるいは料理でも部屋の片づけでも何でもかまいません。今日一日やったことのなかで、自分なりに何か工夫しただろうか? と考えてみてください。「何か考えた?」と聞かれたらよくわからなくても、「何を工夫したの?」と聞かれたら、より具体的に答えられるはずです。<考える>という作業は、じつは「どう工夫しているのか」と読みかえると、「やったかやっていないか」がわかりやすいのです。
■4.アイディアを生むために「限定」する
途方もないアイディアや豊かな発想が生まれる基盤には、たいていの場合、何らかの限定があります。そういう意味では、限定、つまリルールが発想の起爆剤になると言ってもいいでしょう。(中略)
身近な例でいえば、ただ「美味しい料理をつくって」と言われても、何をつくればいいか、なかなか発想が働かない。けれど、「エビを使った美味しい料理を」あるいは「蒸し器を使って美味しい料理を」と言われると、何も限定がないときよりもメニューを思いつきやすい、という経験はないでしょうか。私が大学の授業で、「5分で考えてください」「A41枚の紙にまとめて発表してください」というのも同じで、何か限定があることでアイディアが生まれやすくなることから、こうした条件を付けているのです。
■5.他の可能性を排除する
たとえばカギをなくしたとして、私たちは同じバッグの中を何度も何度も探すということをついやってしまいがちですが、これはあまりいいやり方ではありません。そうではなくて、まずバッグが気になるなら、そのバッグの中身を全部出してすべてを徹底的に調べ、「この中には絶対にない」ことを確認して可能性をつぶしていくのです。(中略)
「ここには絶対ない」と確認していくことは、「ここに必ずある」という確信を高めていくことになります。他の可能性を排除した末に、「ここにしか道はありえない」と信じること、それは「肚を決める」ことであり、可能性を吟味し尽くした上での判断なのです。
【感想】
◆本書は冒頭の「はじめに」において、本書の「テーマ」について、「<考え方>というものを、1つの「技」として身につけていく」ことだと述べています。要は、スポーツや楽器、語学などと同じく、簡単なものから順を追って高度なものへと「上達」する、ということ。
また、「技」というのはたいてい複数あるので、多用な技を身につけていれば、状況に応じて最善のものを選択できる、と。
本書の構成もその通りで、「簡単なもの」から、「高度なもの」へと、さまざまな「技」が紹介されています。
◆たとえば上記ポイントの1番目の「コンサートの曲順を考える」。
これに似た行為として、好きなアーチストの「マイBEST」を、CDやMD、カセットテープ(←オサーン乙)等で作った方は多いハズです。
実際私の学生時代には、ドライブ用にセレクトしたテープを作るとか、何かの機会に自分の好きなアーチストのベストを異性にプレゼントする(そして趣味の押しつけで嫌われるw)なんてのは、よくあることでした。
……今ならiPodに曲入れて渡すんでしょうけどw
こういう「ちょっとしたこと」でも「<考え方>のファースト・ステップ」としては十分なワケです。
◆また、上記ポイントの4番目の「限定」については、類書でも言われていることですが、私が読んだ中ではこの本が詳しかったです。
インサイドボックス 究極の創造的思考法
参考記事:【オススメ!】『インサイドボックス 究極の創造的思考法』ドリュー・ボイド,ジェイコブ・ゴールデンバーグ(2014年05月15日)
タイトルの「インサイドボックス」というのは、まさに「制約の中」という意味であり、丸々1冊、制約された条件の中で発想する方法と、その実例が挙げられているという。
ちなみに、この「ポイントの4番目」が出てくるのは、全16回の「教室」のまだ第5回目であり、個人的な嗜好で前半部分ばかり抜き出してしまいましたw
……ただ、6回目以降にも、興味深い論点がありますので、実際に本書にてご確認頂きたく。
◆なお付箋をビシバシ貼ったものの、「考え方」とはちと毛色がちがうんじゃないか、と思って割愛したのが、第11回の「外へ、ひらいてみる」にあったプレゼンテーションでのTIPSです。
1つはアイコンタクトの仕方で、相手に対して「意識の線を張る」というもの。
その際「1対10」のように漠然と張るのではなく、聞き手の数だけ線を張ることを意識するのだそう。
もう1つが「大事なところをゆっくり言う」というもので、技術的に強弱や高低より簡単なのに、説得力が増すとのこと(詳細は本書を)。
他にも見逃せないTIPSが多々ありますので、先入観を持たずにお読み頂ければ、と……。
意外と「掘り出しモノ」な1冊でした!
考え方の教室 (岩波新書)
まずは、楽になる―準備ストレッチ篇
ともかく、やってみる―最初のチャレンジ篇
ダマされたと思って、手を動かしてみる―身体を使う篇
魔法の言葉を、唱えてみる―誰でもできる篇
発想力を、きたえてみる―「遊び」に学ぶ篇
違った目で、世界を見る―「スタイル」探し篇
過去も未来も、見晴らしよく―系譜の試み篇
無理やり、一人二役してみる―ジキルとハイド篇
異質なものと、ぶつかりあう―他人と話そう篇
ひたすら、「なぜ?」と聞いてみよう―止めたら負けよ篇
外へ、ひらいてみる―声を届けよう篇
一歩ずつ、進んでいく―段取り力向上篇
「胆力」をもって、判断する―「決める」コツ篇
柔軟に、修正していく―思考は続くよ篇
直感を、働かせる―めざせ「思考の達人」篇
こんな教室をつくってみよう―あなたが先生篇
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【オススメ!】『インサイドボックス 究極の創造的思考法』ドリュー・ボイド,ジェイコブ・ゴールデンバーグ(2014年05月15日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。読書の技法
これまた齋藤先生並みに多作で知られる、佐藤 優さんの読書術本。
そもそも佐藤さんの選書傾向は、当ブログと違うので、この本も避けてしまったのですが、レビューはかなり好評ですし、気になる方はこの機会にぜひ!
ご声援ありがとうございました!
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