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2016年01月10日

【勉強法】『脳科学が教えてくれた 覚えられる 忘れない! 記憶術』篠原菊紀


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脳科学が教えてくれた 覚えられる 忘れない! 記憶術


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、12月半ばの「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた勉強本

著者である篠原菊紀さんの著作を拝読するのは本書が初めてだったのですが、想定外に中身が濃くて驚きました

アマゾンの内容紹介から。
人は誰でも、ひとたび覚えたことは忘れたくないものです。それがとりわけ大事なこと、必要なことであればあるほど。とはいえ、オトナの場合、脳の「経年劣化」が避けられないうえに、1日のうちで勉強などに充てられる時間は限られています。では、どうしたらよいか?
本書は、脳の記憶のメカニズムに基づいて、38のルールと5つのヒントを紹介。意外と「だまされ上手」な脳に、まずはガツンと一撃! 「こんなことで差がつくのか」と驚くことからはじめましょう。

なお、今現在在庫が切れかかっていますが、Kindle版があるので、ご安心を。

思わず付箋も貼りまくりましたよ!






【ポイント】

■1.「ワーキングメモリ」の4つの構成要素
(1)音声情報を「繰り返し」などでループさせる「音韻ループ」(簡単に言えば音による記憶)
(2)視覚的、空間的なイメージ(形や色など)で情報を保持する「視空間的記銘メモパッド」(視覚による静止画像のような記憶)
(3)音と画像の情報を合わせ、時系列を付けて、エピソードとして保持する「エピソードバッファ」(ビデオ=動画のような記憶)
(4)さらに(1)〜(3)を従属システムとして制御し、行動につなげる「中央実行系」(CPUのようなもの)
 このような機能があるため、何かを覚えるときに、たとえば語呂合わせのようにすると音韻ループが使え、覚えやすくなるのです。


■2.耳から入る情報も「出す」
 人の脳には、ブローカ野といって発話、つまり、ことばをしゃべるための中枢があります。またウェルニッケ野といって、ことばを理解するための中枢があります。(中略)
 そして、このブローカ野とウェルニッケ野の連動、弓状束と呼ばれる神経の束による連動が、ワーキングメモリの音韻ループ、音による記憶を支えています。
 ですから、音の記憶といっても、聞くだけでなく言う、頭の中ででもよいので再生することが大事です。実際、口に出してしゃべらなくても、頭の中でしゃべっても(内語といいます)、発話の中枢ブローカ野は活動します。頭の中であれこれ考えるということは、自分の内語(いわば自問自答)を聞き、考え、内語化してまた聞く、その繰り返しですから、ブローカ野、ウェルニッケ野、弓状束などが活動するわけです。


■3.視覚情報を主に、聴覚情報を加えて記憶する
 たとえば、「神経細胞」という四字熟語を「しん、けい、さい、ぼう」という口頭のことばとして読むときは、早口でいっても1秒くらいはかかります。それぞれの音のパーツ(音韻)は順序が大事で「さい、しん、けい、ぼう」(最新の警棒?)では何のこっちゃ、ということになります。このように聴覚メモによる記憶は、時間軸をともなう音声として保持されます。
 それに対して「神経細胞」という見た目の文字ヅラの印象で覚えようとするときは、1枚の写真のようなもの。そこには定まった時系列の順序や音韻のリズムはなく、視覚からの画像メモだけが情報として保持されます。
 ことばで覚える方法はヒト独特であり、歴史を生み出したのもことばですが、ここに視覚情報を補うことで、ワーキングメモリは2つのサブコンポーネントが使え、記憶しやすくなります。歌詞を覚えたいときカラオケボックスで歌詞つきの画像で練習すると上達が早いのと同じです。


■4.記憶に残るノートの取り方の極意
(1)「大事な要点は何か」を自分のアタマで整理しながら書く
(2)あとあと復習しやすいようにレイアウトなども考えながら書く
(3)要点だと思えるところは少し大きい字にするなど、視空間記銘メモパッドが働きやすいように書く
(4)そしてノートをとった直後のパッと見で、その内容をことばに出しておく
 こうすることで、そのあとの復習はこのノートを「パッと見て」、それを軽く言語化する程度で済むようになるのです。ほんの数分で復習が終わり、かつ大きな効果が期待できるのです。
 もちろん、こういうノートはテスト直前復習での絶大な助けになります。


■5.「脳のくせ」別勉強法(抜粋)
●「損害回避」タイプ
 できるだけ考える前に行動し、仕事や勉強などでやるべきことは静かな落ち着いた環境で、コツコツとじっくり取り組みましょう。ささいなことで悩みやすいので、大事なことは早めにすませ、余裕を持って何度でも繰り返しながら学習をするほうが記憶の定着がよくなります。
●「新奇探索」タイプ
 記憶力の強化には、試験問題集などはできるだけ新しいものを選び、飽きないように早め早めにやっていくのがコツです。また目標を立てて興味のあるうちに早めにやってしまうのもいいでしょう。気が向いているうちに8割がた仕上げるようにします。
●「報酬依存」タイプ
ほめられて伸びるタイプなので、頑張っている自分を見てもらう環境をいかに整備しておくかが記憶カアップに大きな影響があります。
 誰かのため、何かのためといった明確な対象があるほうが燃えやすく、しっかり頑張れます。
●「完璧主義」タイプ
このタイプの強みは、その執拗なまでの「のめり込みカ」です。この強力なのめり込み傾向を武器にして、学習にもマニアックに没頭すれば、やがては深い記憶力と、幅広い知識を得られ、それで大きな成果が上げられます。
(詳細は本書を)


【感想】

◆冒頭の画像をご覧頂ければお分かりのように、とにかく付箋を貼りまくりましたから、今回割愛した項目でも、類書なら余裕で抜き出して引用したモノが多々ありました。

たとえば本書の初っ端に登場するのが「覚えようとするな、直後に思い出せ」というルール。

これはワシントン大学で行われた実験結果からのお話でして、まず2つのグループに文章を暗記させ、片方には「7分学習後、再度7分学習」を、もう片方には「7分学習後、テスト」を行わせます。

その後、両グループに確認テストをしたところ、5分後だと「学習→学習」グループのほうが成績がよかったものの、2日後だと「学習→テスト」の方が好成績だったのだそう。

そういえば、先日レビューがホッテントリ入りしたこの本でも、「テスト」の重要性が謳われていましたね。

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脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実!

参考記事:『脳が認める勉強法』が想像以上に凄い(2015年12月15日)


◆また、復習のタイミングについても、新たな説が登場しています。

これはカリフォルニア大学のパシュラーらが研究したもので、途中経過は割愛しますが、結論としては「学習からテストまでの期間を6で割ったタイミング」が最適なのだとか(詳細は本書を)。

ちなみに、そのタイミングで復習をしたら、残りの日数をまた6で割った日数後に再度復習をして……を繰り返す仕様。

一方、テスト等の期限がない、短期記憶を長期記憶化するための復習なら、「翌日」「1週間後」「1か月後」の「DWM法」が推奨されていました。

もちろん、複数科目を勉強していたり、覚える量が徐々に増える(普通そうですが)場合は、フレキシブルに対応して頂きたく。


◆ところで、上記ポイントの5番目をご覧になって「そもそも自分がどのタイプか分からないじゃないか!」とお思いの方も多そうな。

実はこれについては、本書にチェックリストが収録されており、全16問に回答して、タイプを判断するようになっています。

上記では、勉強法の部分についてのみ、それも簡単に抜き出しましたが、本書では各タイプごとに4ページほどページを割いており、性格や行動傾向も解説。

そういう前提があった上での勉強法なので、これまた併せて読んで頂く方が良いと思います。

なお、私もやってみたところ、「新奇探索タイプ」に該当とのこと。

一応、試験問題集は、過去問中心だったので新しいものではなかったですが、割愛した部分に書いてある「ゲーム性を求める」というのは、確かに思い当たるフシがありました。


◆ところで類書では、よく「五感を使って覚えろ」と漠然と(?)言っていますが、本書を読んで、複数の器官を使って覚えることの重要性や、個々の感覚同士の関連性が腑に落ちました。

私自身、税理士試験の受験の際には、「テキストを見て」「ブツブツ口で言って」「自分の声で録音したモノを聞いて」「実際に書いて確認して」理論を暗記しましたから、そういうやり方が理論的に正しいと納得できたのは大きいし、現在受験中の方なら、励みになると思います。

しいて惜しかった点を挙げるとしたら、38のルールが章立てナシで列挙されていることと、実験等のエビデンスが巻末にまとめられていないことでしょうか。

もっとも、前者は個々のTIPSのうち、有益なものだけ実践する私にとってはあまり関係ないですし、後者は和書ではされていない方が普通なので、気にする必要もないような(じゃあ、言うなよ、というw)。

本書は特に受験を意図して書かれた本ではありませんが、資格試験等の受験勉強をなさっている方には、ぜひ読んで頂きたいと思います。


脳科学的に正しい勉強法がここに!

4799104683
脳科学が教えてくれた 覚えられる 忘れない! 記憶術
覚えたいなら、覚えようとするな
詰め込みすぎは、かえって脳を混乱させる
脳の「出力依存性」を逆手にとって効率的に記憶
物覚えの悪い人のほうが、じつはお得
一流のカメラマンが被写体のことをよく覚えている理由
脳の底力は、使い方しだいでどんどん引き出せる
ほか


【関連記事】

【オススメ!】『脳のワーキングメモリを鍛える! ―情報を選ぶ・つなぐ・活用する』トレーシー・アロウェイ,ロス・アロウェイ(2014年01月14日)

『脳が認める勉強法』が想像以上に凄い(2015年12月15日)

【勉強法】『実験心理学が見つけた 超効率的勉強法: ~復習はすぐやるな! 思い込みで点数アップ!~』竹内龍人(2014年04月28日)

【スゴ本!】『東大に2回合格した医者が教える 脳を一番効率よく使う勉強法』福井一成(2014年04月26日)

【オススメ】『受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法』池谷裕二(2011年12月09日)


【編集後記】

◆上記でワーキングメモリが登場しましたが、その具体的な鍛え方については、この本が詳しいです。

B00K5X52IC
脳のワーキングメモリを鍛える! 情報を選ぶ・つなぐ・活用する

上記リンクはKindle版でして、今なら「Kindle月替わりセール」の対象で、「56%OFF」と大変お買い得(中古がほとんど値崩れしてないので)!

なお、レビューは上記関連記事にてご確認下さい。


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