2015年12月28日
【働き方】『藤原先生、これからの働き方について教えてください。 100万人に1人の存在になる21世紀の働き方』藤原和博
藤原先生、これからの働き方について教えてください。 100万人に1人の存在になる21世紀の働き方 (DISCOVER21世紀の学校)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、これからの働き方を考える上でも見逃せない1冊。自称「教育界のさだまさし」こと藤原和博さんが、「自分自身の付加価値を上げ、『希少性』を高める」方法を指南して下さいます。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「状況がさまざまに異なり変化する、「正解」なき「成熟社会」では、自分の頭の中で知識・技術・経験のすべてを組み合わせ、それぞれの状況に合わせて、自分も他者も納得できる「納得解」を導き出す「情報編集力」が必要です。」
本書では、リクルート社フェローから民間人校長へと転身し、教育界に前代未聞の変革を巻き起こし続ける藤原和博氏が、21世紀の「成熟社会」を生き抜くための働き方を講義します。
自分自身がコモディティ化しないためにも、要チェックです!
All work / mabahamo
【ポイント】
■1.キャリアを3つ掛け合わせる「三角形モデル」を目指すまずは三角形の「底辺」をつくりましょう。ここがあなたのライフラインです。三角形の左下(左の軸足)=「経済がどうなろうと食っていけるプロの仕事」三角形の底辺を「ライフライン」と呼ぶのは、今後、これなしでは生き残れない時代がやって来るからです。(中略)
三角形の右下(右の軸足)=「前者と掛け算すると相乗効果のある仕事」(中略)
三角形の頂点は、抽象的な目標ではなく、現実的な仕事や状態を指します。
私で言えば「義務教育初の民間校長を5年務めること」だし、堀江さんで言えば「独房で読書しながら自問自答を繰り返し哲学すること」だったわけです。
■2.成熟社会では「情報処理力」より「情報編集力」
正解が1つの成長社会では、正解を早く正確に言い当てる力、すなわち「情報処理力」がもっとも重要でした。(中略)
しかし、成熟社会に入り、あらゆる場で「正解」がない問題のほうが多くなっている。
ビジネスの世界で、正解が1つで、意思決定はどの経営者がやっても大体同じ、なんてことはないと思います。学校現場でのいじめの解決でも、介護でも、それは同じです。(中略)
こういう時代により重要になるのは、情報を「処理」する能力ではなく、「編集」する能力です。
自分の頭の中で、知識・技術・経験のすべてを組み合わせて、そのときそのときの状況の中でもっとも納得できる「解」を導き出す能力のこと。
自分だけが納得していてもダメです。関わる他者も納得できるものでなければならない。そうした解を私は、「納得解」と呼んでいます。
■3.付加価値を生むブレストの秘訣は「ナナメの関係」にあり
まず、条件です。
それは、同じ部署の人や気の合う同期ではなく、「ナナメの関係」の人を巻き込むこと。
縦の関係でも横の関係でもない、適度な緊張感のある関係性の人をメンバーにするのです。
上下でも同期や友人でもない(利害関係のない第三者との)関係を「ナナメの関係」といいます。
「縦割り組織」というように、組織はよく上下の関係にたとえられます。そして同期生や同僚など「横の関係を意識することが大事だ」とも盛んに言われます。組織を家の構造になぞらえると、縦の関係が「柱」で横の関係が「梁」ですよね。しかし、組織風土で一番大切なのは柱でも梁でもなく、それらをナナメに支える「筋交い」なのです。
「筋交いの関係(ナナメの関係)」こそ、人間関係を豊かにし、組織を強くします。
■4.プレゼンは「相手の頭の中に像を結ばせる」
身近な例を挙げておきます。電車のドアが閉まるとき、職員が「危ないですから、駆け込み乗車はおやめください」といったアナウンスをすることがあります。
この表現は、「駆け込み乗車=事故につながって危ない=やめてほしい」という職員側の"事情"の「説明」です。聞いた乗客は、「ちょっとくらい駆け込んでも別に危なくないよ、こっちは急いでいるんだ!」と思うかもしれません。
これを乗客に通じるプレゼンにするには、どういう表現が考えられるでしょう?
たとえば、「もう次の電車が来ております」というアナウンスにすれば、「次の電車にすぐに乗れる=間に合う」という"像"を相手の頭の中に結ばせ、「じゃあ、慌てる必要はない」と思わせることが可能です。職員側の「駆け込み乗車をやめさせる」というニーズにも合致します。
■5.繰り返しの改善で進化を遂げる
物心ついたときから完成品をいやというほど目にしてきた世代は、常に完成品という正解があると勘違いしやすいのです。しかし、コンピュータも携帯電話も新幹線も、すべての商品は修正し続けた結果としてようやくその形になり、今も変化し続けています。正解が出るまで100回の会犠を積み重ねるのはムダ。今日1つ改善したら、明日もう1つ改善する。1年365日、毎日改善し続ければ、300以上の改善ができます。3年続ければ、1000以上よくすることができます。これだけ改善できれば、会社でも学校でも、商品だってサービスだって、よくならないわけがありません。
まずは小さく始めてしまってから、100回修正を続ける。
この姿勢こそ、市場に受け入れられる商品にスピーディにたどりつく王道です。
【感想】
◆冒頭で挙げた「100万人に1人」のお話は、上記ポイントの1番目のことでした。ただし、そこでは概略的にしか述べていないので簡単に触れておくと、まず20代の5〜10年で1万時間をかけて、上記で言うところの「左の軸足」を固めます。
次に30代の5〜10年の1万時間で、「右の軸足」を固め、さらにもう1万時間かけて「三角形の頂点」をつくり、これにより「大三角形」が完成する、という仕様。
それぞれの軸で「100人に1人」レベルになることを目標としているため、100×100×100=「100万人に1人」となるワケです。
もちろん1つの分野で道を究めて、それで「100万人に1人」になる(たとえばスケートの羽生結弦君等)ことも理論的には不可能ではないものの、現実的ではありません。
それよりは、「3つの分野の掛け算」で「100万人に1人」を目指すべき、という指摘はうなづけるものです。
◆ちなみに藤原さんは、以前この本で似たようなことを言われていました。
藤原和博の必ず食える1%の人になる方法
参考記事:【キャリア】『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』(2013年09月01日)
とはいえ、この作品では各分野にあまり差はなく、どちらかというとベン図で3つの円の重なりあった部分を目指すようなイメージだった記憶が。
それが今回、まず「ライフライン」があって生活を確保し、そこから上を目指すというニュアンスにシフトしています。
これはどうも、グローバルな市場から労働力が流入したり、IT化やロボット化によって、より仕事自体がなくなることを危惧されているからかと。
◆という前提があって、いよいよ第1章以降は、個別のレクチャーが開始されます。
まず第1章のテーマは「情報編集力」。
上記ポイントの2番目で登場していますが、藤原さん曰く、それまで重要だった「情報処理力」が「ジグソーパズル」だとすると、「情報編集力」は「レゴ」である、と。
そしてその「情報編集力」の鍛え方が述べられているのが第2章で、具体的な方法の1つがブレインストーミング。
上記ポイントの3番目では、ブレストを行う上での「条件」である「ナナメの関係」に触れられており、私はこのTIPSは初耳でした。
◆さらには、そうやってでき上がった「納得解」を伝えるための「コミュニケーション」について触れられているのが第3章です。
なお、ここではコミュニケーション全般に関するTIPSがいくつか紹介されており、個人的には「マイナスモードの話を、面白おかしく話す」という「自分プレゼン」が目からウロコでした。
確かにプラスモードの自分の話は「自慢話」と取られかねませんが、マイナスモードなら大丈夫。
ただし単なる「不幸自慢」で終わらせず、明るく締めくくるようにするのが、腕の見せどころでしょう。
◆一方、最後の第4章で割愛した中で興味深かったのが、一瞬で「部下の意識」や「会社の風土」を変えてしまう「シンボルのマネジメント」のお話です。
これはいろいろなことをやるのではなく、一点突破を狙う方法で、たとえば藤原さんがいたリクルートでは、「ハイレベルな技術者の採用」を狙って、1985年に日本ではまだどこも使っていなかったクレイ社のスーパーコンピュータを導入したのだとか。
実際それにより、たとえば東工大のコンピュータ関係の学生のおよそ半分がリクルートを志望したそうで、見事目論見は成功。
これは極端な例ですが、私たちの仕事でもこうした「シンボルのマネジメント」は意識したいですし、本書にはもうちょっとパーソナルな事例もありますので、ご参考まで。
これからの働き方を考えるための1冊!
藤原先生、これからの働き方について教えてください。 100万人に1人の存在になる21世紀の働き方 (DISCOVER21世紀の学校)
INTRODUCTION
LECTURE 1 「情報編集力」の時代に脳みそをアップデートする
LECTURE 2 納得解を紡ぎ出す情報編集力の鍛え方
LECTURE 3 「納得解」を共有するための伝える技術
LECTURE 4 「経営者意識」で飛躍する
【関連記事】
【キャリア】『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』(2013年09月01日)【必読!】『10年後に食える仕事、食えない仕事』渡邉正裕(2012年02月04日)
【全世代必読?】『40歳からの会社に頼らない働き方』柳川範之(2013年12月07日)
【2軸で考える!】『「キャリア未来地図」の描き方』原尻淳一,千葉智之(2013年01月22日)
【働き方】『サラリーマンは、二度会社を辞める。』楠木 新(2012年11月11日)
【編集後記】
◆そういえば、今さらなのですが、アマゾンの2015年のランキングが発表されていますね。とりあえず、「ビジネス・経済」のランキングがこちら。
Amazonランキング大賞2015(年間) - 本:ビジネス・経済|Amazon.co.jp
一方、Kindle本の「ビジネス・経済」のランキングは、このようになっています。
Amazonランキング大賞2015(年間) - Kindle本:ビジネス・経済|Amazon.co.jp
上位20冊だけなのですが、あまりにかぶってなくてワロタw
ご声援ありがとうございました!
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