2015年12月25日
【読書術】『戦略読書』三谷宏治
戦略読書
【本の概要】
今日ご紹介するのは、今月初めのの「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた読書術本。あまりの分厚さにビビって出遅れてしまいましたが、いざ読み始めたら面白くて、サクサク読破してしまいました!
アマゾンの内容紹介から一部引用。
自分の年齢やフェーズに合わせてジャンル配分を変える「読書ポートフォリオ・シフト」、効率的にリターンを得るために読み方を変える「セグメント別ワリキリ読書」、1冊の本からより多くの学びを得るために、5つの視点(対比、反常識、数字、一段深く、抽象化)で読み取る「発見型読書法」など、多くの読み方を紹介します。
なお、本書の巻末に収録されたブックガイドの書影は、Kindle版だとこの単行本と違って、フルカラーだそうなのでオススメです!
reading room / /\ \/\/ /\
【ポイント】
■1.戦略読書での資源配分枠組み「読書ポートフォリオ・マトリクス(RPM)」BCGのPPMに倣って、読む本や雑誌のタイプを4つに分けます。
横軸は「ビジネス度」で、ビジネス系か非ビジネス系かで分けます。このとき、ビジネスとは「現状、仕事としている分野」を指し、将来の仕事(願望)は非ビジネスとします。
縦軸は「基礎度」で基礎か応用・新奇かで分けます。このとき、非ビジネス系の基礎は「SF・科学・歴史・プロフェッショナル」とします。これはかなり個人的趣味が入っているので、個々人で変えて構いません。
この縦軸・横軸で分けられた2×2のマトリクスを、「読書(Reading)ポートフォリオ・マトリクス(RPM)と呼ぶことにします。
(詳細は本書を)
■2.目的に応じて、読書方法を変える
(1)粗読み:特定の情報を探すために、キーワード周辺だけ読むそしてこれらは、組み合わされることも多いでしょう。(1)粗読み×(3)熟読、(2)斜め読み×(3)熟読×(4)重読、などです。
(2)斜め読み:全体の論旨を把握するために、全体をざっと通読する
(3)熟読:内容をしっかり理解するために、注釈も含めて精読する
(4)重読:座右の書として、何度も繰り返し読む
ざっと読んで大切なところを見つけたら、その部分は、理解できるまでじっくり精読(=熟読)するのです。
これらの読書方法を含めた「読み方」が、RPMのセグメントごとに大きく異なります。読書の目的が、違うからです。
資源配分や本の選び方だけでなく、本の読み方も戦略的に、変えましょう。
■3.究極の割り切り斜め読み法――「序章と図だけ読む」
時間のないとき、私がやっているビジネス応用セグメントでの読み方は、「序章と図だけ読む」です。
本にもよりますが、海外のビジネス書は大抵、序章に全体の要約が載っています。まずはそれをじっくり読みましょう(この本もそうしています)。
そして、ダイジなことは本文中で、必ず図や表になっています。パラパラめくって図表を探し、それをじっくり眺めます。
図表だけ見て、その内容や意味がわかればヨシ。良い本です。わからないかもしれません。そうしたらその周辺の小見出しを読んでみましょう。それでもわからなければ、あきらめましょう。次の図表へゴー、です。
30分もあれば、かなり厚いビジネス書でも読み切れます。斜め読みというよりスキップ読みですが、たぶんこれで大丈夫です。
■4.発見型読書の5つの視点
視点(1)過去や他業界と「対比」して大局観を持つ
視点(2)これまでの当たり前を覆した「反常識」を見つける
視点(3)徹底的に「数字」にこだわる
視点(4)人より「一段深く」まで調べる
視点(5)得たものはちょっと「抽象化」して考える・覚える
(詳細は本書を)
■5.「話して伝えよう」とする
知識を得るためには本を読み、Wikipediaから出典サイトを辿り、検索結果を何百と眺め渡します。NewsPicsやGunosyに頼るのもいいでしょう。
そこで読んだことは、そのままではただの知識です。書くことを通じて整理され、コンセプ卜化もされるでしょう。でもその前に、そこで得た知識を人に伝えてみましょう。
口頭で人にものをちゃんと伝えるのは、書きもので伝えるより難しかったりします。(中略)
自分が得た新しい知識は、まずは誰かにしゃべってみましょう。
相手の知識レべルや情報処理能力に合わせて、伝えなくてはいけません。短くしたり長くしたり、抽象的にしたり具体化したり。ダメなら何度もくり返します。
そうやって、「話して伝えよう」とすることで、その知識はわかりやすいものになり、相手に「教えよう」とすることで、自分自身のスキルにまでなるでしょう。
【感想】
◆冒頭でも触れたように本書は約440ページもする分厚さなので、リアル書店で見ると、まず買うのにビビると思いますwそこでチェックすべきは下記目次にある「序章」。
ここは30ページほどの分量ながら、本書の概略が簡単に述べられています。
中でも興味深かったのが、なぜ三谷さんが読書を戦略的にするようになったかのくだりで、いわく、社会人2年目の時点で「他の人と同じものを読み続けていたら、初めて人と意見がかぶった」から。
それ以降、三谷さんは「楽しむだけの読書」「ビジネスのためだけの読書」から、「自分の独自性をつくり上げるための読書」にシフトするようになりました。
なるほど上記ポイントの1番目では、「非ビジネス系の基礎」として「SF・科学・歴史・プロフェッショナル」を挙げ、「かなり個人的趣味が入っている」と言われているのですが、たしかに選書にかなり「クセ」が出ています。
これが「独自性のため」なのだと理解していないと、選書に違和感を感じる人も出てきそうな気が。
◆さて、そのポイントの1番目で登場する「読書ポートフォリオ・マトリクス」ですが、各象限ごとにテーマや具体的な書籍をざっと挙げるだけでは済みませぬ。
本書では第1期(社会人1年目)、第2期(社会人2〜4年目)、第3期(社会人5〜10年目)、第4期(キャリアチェンジ準備)と4つに分け、それぞれの象限ごとに読書資源配分や読み方を指南。
さらに推薦書籍までレクチャーしているのですから、それは分厚くなります罠w
一応、各期の解説の最後に「読書量」「セグメント配分」「選び方」がまとめられているので、それとRPMの図をチェックすれば、だいたいのイメージは掴めるとは思います。
◆一方第2章は「セグメント別の読み方」で、上記ポイントの2番目はここから抜粋しました。
簡単にまとめると、「ビジネス基礎」では「古典を熟読」、「ビジネス応用」では「粗読みや斜め読みで『ファクト』を集める」、「非ビジネス基礎」では「『異ジャンル』を斜め読み」、「非ビジネス新奇」では「基本斜め読みで、刺さったら熟読」。
ちなみに「ビジネス基礎」の「古典」として、具体的にはこの辺が挙がっていました。
コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 第12版
競争の戦略
……どちらも分厚くて涙目の巻w
なお、これら4つのセグメントごとに「目的と読み方」と題して、「目的」「形態」「読書方法」「読む場所」「記録方法」が列挙されているので、概略はそちらでご確認を。
◆……とここまで本書のまとめをしてきて、かなり文字数を費やしてしまったのですが、実は続く第3章の「発見型読書法」こそが、本書のキモではないかと。
ここでは実際の文章から、その奥に潜む「本質」を見抜く方法を解説。
たとえば、「日経ビジネス 2015年6月22日号」のYKKの特集記事からは、「こういうことが読み取れる」と、上記ポイントの4番目に則した読み方が述べられています。
詳しくは本書を読んで頂くとして、なるほどコンサルタントは、雑誌でもこういう風に読み解くのだな、と深く納得した次第。
なお、上記ポイントの4番目にある「一段深く」の例として、「Wikipediaは英語版も読む」なんてTIPSがあるのですが、「今どきの若い者は」論の根拠が、それによって判明した、というのがスゴイです。
◆ボリュームの関係上、第4章以降については、ちと割愛(すいません)。
巻末には付録として「セグメント別ブックガイド」が435冊掲載されていますので、ここを見るだけでも本書の元は取れそうですw
また、本書の章の合間には「楽章」として、三谷さんの読書遍歴等が収録されており、ここも興味深いところ。
とくに楽章2の「オリジナリティを育てる珠玉の12冊」は、私が日頃まったく読まないジャンルだっただけに、勉強になりました。
とにかく、本好き、読書好きなら、選書を中心とした異論反論も含めて、一読の価値がある作品だと思います。
読書も戦略を持って行うべし!
戦略読書
はじめに
序章 戦略読書のススメ――読書には戦略が必要なのだ
第1章 読書ポートフォリオ・シフト――セグメント管理で資源配分を変える
第2章 セグメント別戦略読書――読み方を変えて効率的にリターンを得る
楽章1 ボクたちは読んだものでできている――私的読書全史
第3章 発見型読書法――5つの視点で5倍読み取る読め方革命
第4章 知のオープン化――書斎と本棚と魔法の1冊
楽章2 みんなと同じ本を読んではいけない――オリジナリティを育てる珠玉の12冊
終章 知と行のサイクル――読書→思索・行動→発信→スキル
おわりに
付録 セグメント別ブックガイド――独自の視点と思考をつくるための424冊
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【編集後記】
◆同じようにコンサルタントさんが書かれた本としては、最近ご紹介したばかりのこの本がありました。外資系コンサルが教える 読書を仕事につなげる技術 (中経出版)
特にこのKindle版は、カドカワセールのおかげで、今なら「50%OFF」とお買い得です!
ご声援ありがとうございました!
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