2015年12月10日
【夜の行動経済学?】『安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生』安田隆夫
安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生 (文春新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、fujiponさんの記事を見かけて、読んでみたくなった1冊。お馴染み「ドン・キホーテ」の創業者である安田隆夫さんの半生記です。
アマゾンの内容紹介から。
26期連続増収増益という前代未聞の偉業を成し遂げたドン・キホーテ。だが、創業者、安田隆夫の人生はまさに失敗と苦難の連続だった。「逆張り」「権限委譲」「夜の市場」をキーワードにのし上がった男の波乱万丈の一代記!
なお、既にKindle版も提供中。
中身が濃くて、付箋貼りまくりました!
Don Quijote Higashiguchi Honten / Dick Thomas Johnson
【ポイント】
■1.すっぽり抜け落ちている「夜の経済学」通常、「消費」と言えば、普通の家族が朝起きてから寝るまでの時間、すなわち朝8時から夜10時くらいまでの時間帯に行われるもの……というのがこの国の為政者たちの認識だろう。
そこにすっぽりと抜け落ちているのが、いわゆる「夜の経済学」である。コンビニもドンキも、夜10時以降のナイトマーケットの発見と開拓で、この20数年間、一人勝ちのような成長を謳歌することができた。
じつはナイトマーケットこそ、日本の流通業界に残された最後の大金鉱脈である。日本の小売業総販売額は約141兆円(2014年実績)だが、そのほとんどはデイマーケットだ。しかし私は少なくともその2割強、30兆円程度は夜間売上に移行する可能性があるとみている。
■2.攻めはアグレッシブに、守りはベーシックに
私は万年強気で攻撃的な経営者、と世間から見られているようだが、実際は違う。むしろ私の実感としては、守りのほうが得意な経営者だと思っている。いかに破壊的なパンチを持つ天才ボクサーでも、ノーガードでは、必ずいつか一発を喰らってダウンする。少なくとも攻撃力に見合う防御力がなければ、絶対にチャンピオンにはなれない。
だから私の信条は「攻めは他人がやらないことをアグレッシブに。しかし守りはべーシックに」だ。そもそも守りの基礎ができていなければ、アグレッシブな攻撃など怖くて仕掛けようがない。
■3.立地難を解消した「ソリューション型」出店
待ちの姿勢では埒があかないと判断した私は、奇策に打って出た。
業界新聞で今後の店舗リストラ策が報道されていた大手外食チェーンの本部に飛び込みで訪問し、店舗開発部長と面談した。そこで私は、「退店予定物件があれば、是非ウチに任せて欲しい」と持ちかけたのである。
これはよくある退店済み店舗への居抜き出店とは異なる。本来はスクラップしたいのだが、契約期間の縛りがあって(違約金等をとられるため)営業せざるを得ない店舗を、当方が肩代わりするわけだから、相手方のメリットは、単なる居抜き出店よりはるかに高い。こうした出店方式をドンキ独自の「ソリューション(問題解決)型」と呼んでいる。
■4.起業家の最大の資本は「知恵」
経済も消費も成熟した今のような時代、起業家にとって最大の資本は金ではない。「知恵」だ。
たとえば、夜中に商品を店に運び入れる作業をしていて、営業中と勘違いしたお客さまが入ってくる。それによりナイトマーケットの可能性と有望性に気づくのが知恵だ。
あるいは怪しげなバッタ商品をかき集め、置くところがないので仕方なく棚にぎゅうぎゅうに押し込んだら、逆にお客さまがそれを面白がっていると気づくのも知恵である。
■5.買う側に立った発想をする
もちろん商人なら誰でも、「売りたい」「利益を上げたい」と常に思っている。一方、「売上に貢献して儲けさせてやろう」と店に来られるお客さまは、ただの一人もいないはずだ。この売り手と買い手の構図は未来永劫不変だろう。
ならばいっそのこと顧客の側に立って、「ドンキに来て面白かった、得をした」と思っていただこう、というのが当社の基本姿勢である。つまり主語を転換して、徹底して買う側に立った発想をするということだ。(中略)
だからドン・キホーテでは、売場を「買い場」と呼んでいる。店がモノを売る「売り場」ではなく、お客さまがモノを買う「買い場」とし、あくまでも「主語はお客さま」という意識を現場に徹底させているのだ。
【感想】
◆本書は安田さんの半生記だけあって、第1章ではドン・キホーテ誕生前までの経歴に触れられています。子どもの頃からヤンチャで、今で言う「多動児」だったのかも、とのこと。
また反骨心が旺盛だったのも、昔からのようで、その後の当局との対立等も予感させられます。
入社10か月で会社が倒産し、麻雀で生活を立てていた(スゲーw)そうなんですが、その時の経験が、その後、商売の流れを読む目を養うことになったらしく。
バブルに乗らず、不動産に手を出さなかったのも、麻雀で言う「見(けん)」を決め込んでいたからなんだとか。
◆その後、会社員時代に貯めていたお金で、「ドン・キホーテ」の前身となるお店、「泥棒市場」を開店。
この時の経験から「深夜営業」「圧縮陳列」を思いついたことは、上記ポイントの5番目にある通りです。
さらに、箱を積み上げるだけでは、中身が分からないので小窓を開け、手書きのPOPを貼りまくる、というドンキスタイルは、この時からのものでした。
ただし、安田さんが何でも1人でやっていたこともあって、このままでは多店舗化は無理と判断し、「泥棒市場」を他人に譲渡して、いったん卸売業にシフト。
実はこの卸売会社である「リーダー」は、「革命的バッタ問屋」として年商50億を達成するのですが、安田さん自身は「ナイトマーケット」の魅力に抗えず、いよいよ「ドン・キホーテ」を開店します。
◆第2章では、そのドンキの誕生から一人勝ちの勝因について、ガッツリと言及されており、付箋を貼りまくりました。
特に勝因については、第2章の最後で10項目にまとめられており、正直な話、ここから引用するだけでも普通に記事が書けたのですがw
上記ポイントで触れていないものを1つ挙げると、「反チェーンストア・システム」とも言える「権限委譲」でしょうか。
なんでもドンキでは、「主権在現」のスローガンのもと、仕入れから値付け、売場構成まで、すべての権限をお店の現場担当に与えているのだそう。
つまり、一人ひとりが個人商店主のようなもので、社員の報酬も、その結果に連動する半年ごとの「半・年俸制」。
なるほどそれだと、やりがいもありそうです。
◆続く第3章では、その後起こったさまざまなトラブルについて。
夜間営業に対する住民反対運動や、一連の店内での放火事件については、ご記憶の方もあると思います。
ただ、医薬品販売で厚労省と揉めたり、公正取引委員会から独占禁止法違反で排除勧告を受けたことは、私は知りませんでした。
この辺の経緯やその対応については、ドンキや安田さんを知る上では意味のある情報ですが、今回はバッサリ割愛。
第4章も、そこからの復活や現在の経営方針等々なので、やはりカットしております。
◆逆に最後の第5章は、安田さんの発想法ということで、付箋も復活(?)。
上記ポイントの4番目と5番目は、この章からになります。
それにしてもドンキが、「売場」を「買い場」と呼んでることは知りませんでした。
確かにドンキは、買い物を楽しむ、という意味では秀逸ですし、私も独身時代は夜遊びに行く前に、ついつい六本木店に吸い込まれた記憶があります。
もっとも、個人的には「バラエティショップ」というか、宴会用品や面白グッズを買う事が多かったので、他店との値段の比較をしたことがなく、ディスカウントストアであることは、すっかり忘れていたのですがw
商売の面白さを改めて知る1冊!
安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生 (文春新書)
はじめに 若者よ、「はらわた」を振り絞れ!
第1章 絶対に起業してみせる
第2章 ドン・キホーテ誕生
第3章 禍福はあざなえる縄の如し
第4章 ビジョナリーカンパニーへの挑戦
第5章 不可能を可能にする安田流「逆張り発想法」
終章 波乱万丈のドン・キホーテ人生に感謝
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【編集後記】
◆昨日前日ランキングをお送りしましたが、「SB新書50%OFFセール」もいよいよ本日が最終日となっております。Amazon.co.jp: SB新書 - 0-43200 / Kindle本: Kindleストア
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ご声援ありがとうございました!
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