2015年12月01日
【睡眠】『よく眠るための科学が教える10の秘密』リチャード・ワイズマン
よく眠るための科学が教える10の秘密
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた「睡眠本」。ワイズマン教授と言えば、当ブログでは『その科学が成功を決める』が有名ですが、本書もその「ノリ」そのままに、「睡眠」や「夢」について「科学的に」分析しています。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「眠れない夜のために」この一冊を!
睡眠を疎かにする人は人生に成功できない。自ら「不眠」に悩んだ著者が、人生をよりよくする「快眠」のコツを科学的に明らかにする。
有名大学での科学実験で実証されたその方法、披露いたします。
なお、いち早くKindle版が出ているのも、ポイント高いです!
Sleeping in School / MC Quinn
【ポイント】
■1.睡眠不足は体重増加をうながす体内ではあなたが消化する食物の量を調整するために、2つのホルモンが重要な役割をはたしている。1つはグレリンと呼ばれるホルモンで、胃の中で生み出され、食欲を増進させる。もう1つのレプチンは脂肪細胞内で生み出され、脳に働きかけて食べすぎを抑える働きをする。シカゴ大学の研究チームは、男性参加者を集め、2晩のあいだ睡眠を4時間にかぎってもらったあと、これらのホルモンの状態と食欲の度合いを調べた。するとわずか2日のあいだ寝不足になっただけで、ホルモンに大きな変化が起きたことがわかった。グレリンが28パーセント増加し、レプチンは18パーセント減少していたのだ。この二重の変化が参加者の食欲を刺激し、食べたあとも満腹感がえられない状態を引き起こした。その結果、参加者の食欲は24パーセント増加し、とくにケーキやスナック菓子など、健康によくないものを食べたがるようになっていた。
■2.寝つけないときはメモをとる
デューク大学医学部のコリーン・カーニーは、この疑問を解くために参加者を集め、任意に2つのグループに分けた。どちらのグループの参加者も、べッドに入る前に自分がいま抱えている心配ごとを最低3つ書き出すように言われた。そして片方のグループの参加者は、その問題を解決するための方法も一緒に書き出すように頼まれた。そしてどちらのグループも、自分の書いたリストを半分に折り畳み、べッド脇に置いて休んだ。すると問題解決のために自分にできることを考えた参加者のほうが、熟睡することができた。というわけで、ゆっくり眠りたいときはべッドサイドにメモ帳を用意し、自分がいま気になっていることを書き出し、その問題を解決するにはどこから始めればいいか書き出してみよう。また、翌日自分がなにをすべきか思い悩むときも、メモ帳に書き出すと良い。
■3.短い仮眠でも学習に大きな効果がある
ほんの数分仮眠をとっただけで結果が大きくちがってくる、という研究結果もある。2008年に、デュッセルドルフ大学の科学者たちが参加者を集め、単語リストを覚えてもらったあと、任意に3つのグループに分けた。第1のグループには眠らずにいるよう頼み、第2のグループには40分ほど眠ってもらい、第3のグループには6分間仮眠をとってもらった。そのあとで覚えている単語を言ってもらったところ、眠らなかったグループはまあまあの成績で、40分眠ったグループの結果はそれよりも上、6分だけ眠ったグループは最も成績優秀だった。
■4.音楽を聴きながら能力をアップさせる方法
・所要時間はおよそ1時間で、早朝におこなうと最も効果がある。
・特別な思い入れのなどない音楽、自分にとって聞きやすい静かめの音楽を選ぶ。インストルメンタルの曲で、騒がしくなく、くり返しが多い「BGM風」の曲ならたいてい効果がある。
・その曲を弱めの音量でBGMとして流しながら、25分ほど試験勉強や面接の準備、プレゼンの用意、外国語の勉強、ダンスや芝居の稽古、スポーツの練習、いま抱えている問題の解決法探し、などをおこなう。
・音楽を10分間止めて、休憩する。
・同じ音楽をもう1度流し、横になって目を閉じ、30分ほど眠る。眠れないときは、このレッスンの前半でご紹介した方法を試す。
■5.目標を夢に見ると、達成率がアップする?
私は、それぞれに大きな目標をもつ400人の参加者を集めた。目標の内容は減量、健康的な食習慣、禁煙、キャリアアップなどである。私は参加者の経過を2週間追跡調査したあと、少なくとも1回は目標と関連する夢を見たか、目標達成に目立った進展はあったか訊ねた。私の予想では、自分の目標について夢に見た人のほうが、そうではない人より達成率が高いはずだった。
結果は目覚ましかった。全体として参加者の目標達成率は高く、58パーセントの人が目標達成に大きな進展があった。予想通り、この結果には夢が重要な役目をはたしていた。目標について夢に見た人の74パーセントが、実際にも目標に大きく近づいていたのに対し、そのような夢を見なかった人が実際に目標に近づいた割合は40パーセントにとどまった。こうして私は、夢が実生活を向上させるという初の科学的な証拠を手に入れることができた。
【感想】
◆本書はタイトルが『よく眠るための科学が教える10の秘密』ということだったので、当ブログでも何冊かご紹介している、「よい睡眠をとるためのTIPS」が詰まった本なのかと思いきや、想像の「斜め上」でした。もちろん、下記目次にあるように、レッスン3は「老若男女から赤ちゃんまで熟睡のためのノウハウ」であり、その手の話題にも事欠きません。
ただし、本書のテーマはより広範囲に渡っており、「夢遊病」やら「睡眠学習」、果ては「自分が望む夢を見る方法」等々、多種多様。
そういえば、本書の原題は『Night School: The Life-Changing Science of Sleep』であり、その「レッスン」が、下記目次の項目なのでした。
Night School: The Life-Changing Science of Sleep
なんかもう、「熟睡している場合じゃないぞ」的なw
◆そういう意味で興味深かったのが、レッスン5の「睡眠学習」です。
たまに「寝ながら勉強対象の音源を再生して学習する」という勉強法を目にすることがありますが、それは既に(1956年時点)実験によって効果がないことが証明されていたとのこと。
とはいえ、睡眠中に聞かされた単語は覚えていなくとも、寝る前に覚えた単語を記憶しておくために睡眠が必要なのは、類書でも言われている通りです。
本書はそのことに関しても、多くの実験や研究結果を提示。
特に興味深かったのは、指合わせ運動(親指と他の指を順番に素早く合わせる運動)に睡眠が与える影響で、睡眠直前と睡眠直後に練習し、12時間後にテストを行ったところ、「睡眠直前」派が圧勝したとのこと(詳細は本書を)。
また、2種類の訓練をするときは、最低4時間あいだをあけるか、2つの訓練の合間に長い昼寝をすると効果があるそうです。
……というようなお話それぞれに注釈が付いていて、巻末の参考文献で確認できるのが、「文芸春秋仕様」といいますか(流石です!)。
◆その昼寝については、上記ポイントの3番目でも触れているように、本書ではその効果について言及しています。
ただ類書とは違い、30分以上の仮眠についても、肯定しているのが特徴的。
たとえば長い居睡り(20分〜60分)だと、「事実や数字の習得能力が高まる」し、完全な昼寝(60分〜90分)だと「創造的思考力と抽象概念に対する理解力が高まる」のだそうです(詳細は本書を)。
また、同じ仮眠でも、机に突っ伏すより、横になって寝た方が効果があるという実験結果もあるとのことで、昼休みに椅子を3つ並べて横になっているsmooth大勝利の巻w
◆ところで、他の多くの実験が、過去他者において行われていたのに対して、上記ポイントの5番目では、ワイズマン教授自ら実験された模様。
何やら「夢」に対して、ポジティブというか前向きなスタンスだな、と思っていたら、どうも任意の夢を見るためのアプリまで開発されていたという……。
Dream:ONは夢をコントロールするiPhoneアプリ | TechCrunch Japan
このアプリ、2011年のリリースから数日で50万件を超え、BBCやNBC、CNNなどのテレビ局で報道されたのだとか。
本書によると、このアプリで「夢でジョージ・クルーニーと恋人同士になった」女性もいたらしいんですけど、まぁ多くの人が試してみたら、それはそういう人も出てきますよねw
◆なお、当ブログでは、睡眠に関連した本を多数紹介してきたため、類書とのネタかぶりの部分を極力避けた結果、本書がイロモノのような印象を与えてしまったかもしれませんが、睡眠に関する常識的なお話もちゃんと収録されています。
たとえば、睡眠不足が脳にもたらす悪影響や、熟睡する方法などなど。
ただ「わずか、2,3日でも睡眠時間が7時間以下になると、脳の活動は不活発になる」とか言われても、昼間10分仮眠を取ったとはいえ、この記事を書くために私は昨夜5時間寝てないワケで(本末転倒w)。
いずれにせよ、上記で触れたように、単にそうした「よく眠るためのTIPS」のみを期待するのでなければ、本書は睡眠と夢に関する知的好奇心を刺激してくれる良書だと思います。
睡眠に関する新たな見識を深める1冊!
よく眠るための科学が教える10の秘密
はじめに さぁ、この本を手にして目覚めよう
1 睡眠は「時計じかけの世界」だった
2 健康でしあわせな、豊かで賢い人になるには
3 老若男女から赤ちゃんまで熟睡のためのノウハウ
4 「夢遊病」と「夜驚症」と「睡眠時無呼吸症候群」と「鼾」の謎
5 睡眠学習、昼寝、居眠りは「脳細胞」を活性化するか
6 フロイトが解読する「夢」の世界は幻だったのか
7 うつ病やストレス解消のための「夢のセラピー」
8 楽しい夢、明晰夢を見るにはどうすればいいのか
おわりに 読み終えたら、静かにおやすみなさい
特別付録 ドナルドと象の、学校での一日
【関連記事】
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【快眠!】『"睡眠満足度"があなたの年収を変える! 眠りの技法』山本恵一(2014年07月13日)
【睡眠】『朝昼夕3つのことを心がければOK! あなたの人生を変える睡眠の法則』菅原洋平(2012年10月06日)
【睡眠】よく眠れない?よろしい、ならば『ライフハッカー』だ(2011年03月17日)
【編集後記】
◆ワイズマン教授の作品で、こちらはまだ未読な私。その科学があなたを変える
Kindle版もあるようですし、読んでみなくては。
ご声援ありがとうございました!
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