2015年11月26日
【成長】『BCGの特訓 ―成長し続ける人材を生む徒弟制』木村亮示,木山 聡
BCGの特訓 ―成長し続ける人材を生む徒弟制
*Kindle版アリ
【本の概要】
◆今日ご紹介するのも、昨日に引き続き先日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた作品。BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)の現役コンサルタントお2人による、「成長の秘訣」が詳細に明かされた1冊です。
ちょっと「ドキッ」としたので、今回はアマゾンではなく、表紙の裏側に記された文章をご紹介。
・できるだけ多くのビジネススキルを身につけたい
・自分は○○が得意なので、それを強みにしたい。
・○○さんを目指して努力する
・上司から指摘された課題を今期は頑張る
・さらに精緻で見栄えのよい資料を作り込みたい
――こんな優等生ほど伸び悩む!
「スキルマニア」を脱して、成長したい方なら要チェックです!
The speed coaching panel & the Red Cross / Tatiana12
【ポイント】
■1.スキルは集めるよりも「使い方」が重要スポーツの話で考えるとわかりやすい。野球のピッチャーを例にとってみよう。
先に紹介した"コレクション型スキルマニマ"は、言うなれば、球種を増やすことに血道をあげているピッチャーである。一方、"突き詰め型スキルマニア"は、ストレートの速度にのみこだわり続けるタイプ。このようにたとえれば、わかりやすいだろうか。
そして、「スキルの使い方を身につける」に相当するのは、「アウトが取れる投球術を身につける」ことだ。もちろん、ピッチャーとしての勝率を上げていくうえで、球種が多いに越したことはないし、ストレートも速いに越したことはない。しかしながら、どんなに球種を増やし、球速を高めても、状況判断力をしっかり磨かなければ勝利することはできないだろう。
■2.伸び悩む3つのタイプ
●手段が目的化する人「TOEICのスコアを上げること」とか、「マーケティング分析手法を習得すること」そのものが目的になってしまい、せっかくの努力が成果につながらない。●勘違いな人後述する通り、自身の強みで勝負するというのは非常に大切な発想ではあるものの、その強みは、「市場」で戦える価値があるレべルまで磨かないと、それは本当の意味で「強み」とは言えない。●作業屋止まりな人わかりやすい例としては、エクセルなどの分析モデルの作成に長けていて、精緻なものを作ることに没頭するタイプの人などが挙げられる。
■3.まじめな人も無意識に抱く「原因他人論」
たとえば、プロジェクト終了後の振り返りで、「良い経験ができ、大変勉強になりました。でも、もう少し仕事を任せてもらえたら、より成長できたように思います」「もう少しお客様と直接接する機会をもらえていれば、学ぶことも多かったのではないかと思います」というコメントが出ることがある。
前向きで意欲的な反省のように見える。しかし、はたして彼、彼女はプロジェクトにおいて、自分から「もっと仕事を任せてほしい」「お客様と接する機会がほしい」と言ったのだろうか。言わなかったとしたら、なぜ言わなかったのだろうか。
一見、向上心にあふれた、良い振り返りに見えるが、実は成長しなかった(成長が足りなかった)理由を自分以外に求めてしまっているのだ。
■4.単純作業に見える仕事にも、成長のチャンスは隠されている
「もし、これで順番を考えながらコピーしたというのなら、かなり(議論の流れを理解する)スジが悪い。なぜこれではいけないのか、説明するからすぐに自分のところに来い。万が一、順番のことなど何も考えず、手だけ動かしてコピーしたのなら、それはもっと問題だ。BCGには、頭を使わず、ただこなすだけの作業は存在しない」
実際、木山は、「コピーをとって配る」ことを"作業"として捉え、議論の流れやそこからの示唆を意識して並べるなどということはまったく考えずに、ただ集めたシートをコピーしていたのである。
もし、ここでスイッチを「オン」にしていれば、集まった順番でシートをそのままコピーするようなことは考えられず、それぞれの書き込みを踏まえた順番に並べ替えようとしたはずである。
■5.任せる仕事の難易度をコントロールする
一番難易度が高いのが、「論点で与える」方法だ。与えるのは"問い"のみ。どんな仮説を立てるか、仮説をどう検証するかも含めて本人に考えさせる。
次が、「仮説で与える」やり方。問いと仮説は与えて、検証の部分だけを本人にやらせる。
その次は「タスクで与える」方法。問いに対する仮説を立て、検証するためにはこうした作業が必要だ、というところまでを与え、「○○を立証するためのデータを集めて」などのタスクのレべルで任せる。
そして一番難易度が低いのが、「作業で与える」ものだ。「このデータを、このように調べて、こういう枠(フォーマット)で整理して」という作業レべルまで落とし込んで指示する。
【感想】
◆私のような「スキルアップ」をテーマにした本をよくレビューするブロガーにとっては、なかなか「耳イタイ」本でした。まず初っ端の上記ポイントの1番目が典型的(そもそも第1章のタイトルが「スキルを集めるだけでは成長しない」ですし)。
本書では「スキルを増やすことや個別のスキルを究めることは、必ずしも『成長』ではない」とバッサリです(しかも太字でw)。
それは単なる「型」や「術」の習得に過ぎず、それが通用するのは最初の数年間なのだそう。
継続的な成長を実現させるためには、個別スキルの習得を超えて、2つの要件が求められ、その1つがポイントの1番目の「スキルの『使い方』を身につける」こと。
そしてもう1つが「マインドセット(基本姿勢)」……なんですが、かなり長くなるので、こちらは本書にてご確認を。
◆続く第2章では「伸び悩み」がテーマ。
上記ポイントの2番目にあるように、まずは伸び悩みのタイプを列挙していますので、自己分析をお願いします。
結局成長には「正しい目標設定」と「正しい自己認識」が必要であり、どちらが欠けていてもダメ。
本書では「目標設定の落とし穴」「自己認識の落とし穴」と題して、それぞれ3つずつタイプを挙げています。
本来であれば、すべて触れたいところでしたが、今回は「自己認識の落とし穴」の1つのタイプとして、上記ポイントの3番目を抜き出してみました。
ここでは、原因を他人に求めることなく、常に自分に求めよ、とのこと。
◆次の第3章からは「第2部」として、「育つ人、育てられる人」というタイトルがついています。
その第3章では「成長スピードが速い人」にどのような共通点があるかを分析し、そこで見られた「4つの鉄則」について言及されています。
その鉄則のうちの1つが「スイッチ"オン"の時間を増やす」こと。
上記ポイントの4番目がまさにそうで、これは著者の1人である木山さんが駆け出しの頃、初めて参加したミーティングで、経験の浅いコンサルタントの仕事の1つである「会議のスライドのコピーを取って配布」した際のエピソードです。
……よく「コピー取りでも考えながらやれば成長できる」と言いますが、まさにそれを地で行っていますよね。
それ以外の鉄則については、アマゾンの小見出しにも載っていますので、気になる方はそちらでご確認下さい。
◆最後の第4章は「育てる側」のお話であり、マネジメントがあまり人気のない当ブログとしては割愛しようと思っていたのですが、上記ポイントの5番目の話は「目からウロコ」だったので、ご紹介した次第。
これは仕事をアサインする際のレベルコントロールのお話で、これだけだと分かりにくいため、本書では具体例が挙げられています。
まず「論点で与える」が、「A社のB事業について、中国市場での収益性が悪化している。どうしたらいいか考えてみて」。
「仮説で与える」が、「A社のB事業について、中国市場での収益性が悪化している。商品を小売店に運ぶための物流コストがネックになっている可能性があると思うんだけど、調べてみて」。
「タスクで与える」が、可能性までは上記「仮説で与える」と同じで、続けて「主力商品のCとDについて、工場から小売店への配送コストがここ3年でどう変化したか、分析してくれる?」。
最後の「作業で与える」になると、上記「タスクで与える」と「3年間の変化」までは同じで、それを「配送業者ごとにこんな感じの表」で「ここにはこんな数字とこんな数字を入れて、最後にこの行の数字を折れ線グラフにして」と至れり尽くせりです。
世のマネジャーは、この両極端の「どちらか」であることが多いものの、それでは「育成」と「成果」の両立はできない、と言うのが本書の主張。
そうではなく「相手によって使い分ける」か「タイミングによって使い分ける」……ということで、これまた詳細は本書にて。
◆私自身、一種の「スキルマニア」ですから、本書の主張にはうなずく点が多かったです。
派手なTIPSや、すぐにでも生産性が上がるテクニックが書かれているわけではないものの、考えさせられたと言いますか。
ホントなら上記の「タイプ」や「鉄則」の部分だけで、それぞれ何本か記事が書けそうなくらいなのですが、とりあえず今回は、全体をひと通り流してみました。
特に「ビジネス書を読み漁っている」割には、成果が上がらなかったり、成長していない、評価が伴わない、と感じる方なら一読の価値アリ。
私が言うことでもないのですが、当ブログの「ビジネススキル」カテゴリーの本を多く読まれている方にとっては、必読書だと思います。
これはオススメせざるを得ません!
BCGの特訓 ―成長し続ける人材を生む徒弟制
プロローグ BCGの成長の「秘伝のたれ」
第1部 成長のための2つの方程式
第1章 スキルを集めるだけでは成長しない──成長の方程式1 マインドセット(基本姿勢)+スキル
第2章 どうすれば「伸び悩み」を突破できるのか──成長の方程式2 正しい目標設定+正しい自己認識
第2部 育つ人、育てられる人
第3章 成長を加速させる鉄則
第4章 成長をPDCAで「自動化」する
エピローグ
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【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。デービッド・アトキンソン 新・観光立国論―イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」
つい先日「50%ポイント還元」の対象だった本が、今度は「63%OFF」になったので、私もついに買ってしまいましたw
ご声援ありがとうございました!
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