2015年11月25日
【勉強法】『勉強の技術 すべての努力を成果に変える科学的学習の極意』児玉光雄
勉強の技術 すべての努力を成果に変える科学的学習の極意 (サイエンス・アイ新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて初っ端に取り上げた勉強本。著者の児玉光雄先生は、イチロー選手等、スポーツ選手のメンタル系の著作が多いので、勝手に体育系の方だと思っていましたが、実は京大工学部卒であり、本書もエビデンス中心にまとめられているのが、少々意外でした(失礼w)。
アマゾンの内容紹介から。
高校受験、大学受験、TOEIC、資格試験、昇任試験などで「絶対に結果を出したい」人は多いでしょう。もちろん、勉強には努力が不可欠で、努力せずに結果を出すことはできません。しかし、正しい勉強の仕方を知らず、やみくもに勉強しても効率が良くありません。そこで本書では、確実に結果を出せる、正しい「勉強の技術」を解説します。
なお、Kindle版も用意されているので、そちらもご検討を。
studying in math class / woodleywonderworks
【ポイント】
■1.「負の強化」をじょうずに使う負の強化とは、うまくいかないとき、そこに逃げることを防止するために罰を設けることです。(中略)
食べたものをすべてメモするルールを設ければ、記録することが面倒だから、摂食すればメモする作業が減ると感じて摂食を心掛け、ダイエットに成功するのです。なぜなら、脳はやりたくないことを回避する機能を持っているからです。
これは勉強する気になれない気持ちにも活用できます。スケジュール通りに勉強が進行しなかったときは、必ず、実行できなかった理由を、こと細かに記入する習慣を付けてください。
■2.指組みと腕組みで利き脳を見極める
利き脳研究の第一人者である京都大学名誉教授、坂野 登博士は、著書の中で指組み、腕組みと利き脳の関連性を示しています。
これによると、指組みは入力と総合のシステムに関係があり、腕組みは計画と出力のシステムに関係しているといい、左手の指や腕が上にくるのが右脳型、右手の指や腕が上にくるのが左脳型と定義しています。また、右脳は神経ネットワークがルーズ(拡散的)で、左脳は神経ネットワークがタイト(収れん的)という特徴も持っています。(詳細は本書を)
■3.言葉を覚える際には画像を一緒に覚える
ウィスコンシン大学(米国)の調査で、子どもたちが語彙を学ぶときに言葉に映像を組み合わせると、記憶の保持率が2倍に高まる事実が判明しました。たとえば、「automobile (自動車)」という英単語だけでなく、自動車の画像をその言葉と一緒に描くことにより、明らかに記憶が定着したのです。
フランシスコ・ザビエルや徳川家康は、歴史上の有名な人物ですが、あなたは、文字だけでなく、その肖像画でも記憶しているはずです。もしも肖像画がなかったとすれば、記憶に定着させるのによりエネルギーが必要になったはずです。
もちろん、試験で解答するのは画像ではなく文字なのですが、記憶するときの主役はあくまでも画像であり、言葉は脇役にすぎないということを肝に銘じてください。これこそ、脳科学に即した学習法なのです。
■4.「4つのレベルの集中力」を使い分ける
(1)単純な注意集中(レべル1)この4種類の集中力をうまく使い分けてください。常に最上位の集中力を発揮しようとすると、短時間で集中力のエネルギーを使い果たしてしまい、もはやそれ以降高いレべルの集中力は発揮できなくなります。
(2)興味をともなった注意集中(レべル2)
(3)心を奪われる注意集中(レべル3)
(4)無我夢中(レべル4) (詳細は本書を)
たとえば、単純に教科書を流し読みするときにはレべル1、試験に出る可能性が高い箇所を熟読しているときにはレべル2の集中力を発揮しましょう。そして、英語のリスニングの勉強をしているときにはレべル3、制限時間を決めて過去問の問題を解くときにはレべル4の集中力を発揮してください。
■5.エピソード記憶と結びつけて覚える
試験のほとんどは、知識を記憶する意味記憶の能力を試されます。意味記憶はそれ以外の記憶に比べて不安定で移ろいやすいもの。だから、それ以外の定着しやすい記憶と連動させて記憶する工夫が大切なのです。たとえば、自動車の助手席や通勤電車の中で記憶するのは、とても有効です。なぜならエピソード記憶と連動させて記憶できるからです。(中略)
移動する電車の中で記憶したとき、その英単語をどの駅の周辺で記憶したかを意識すると、エピソード記憶と連動するので、鮮明な記憶として脳内に残るのです。一方、書斎で記憶する場合は、周囲の環境はまったく変化がないので、エピソード記憶と連動させることは難しいのです。
【感想】
◆下記目次をご覧頂きたいのですが、本書は「勉強」に関係のある各項目について、かなり広範囲にカバーしています。まず第1章の「脳を活性化する技術」では、上記では割愛していますが、ミラーニューロンや、脳波(α波、θ波等)について言及。
一方、第2章の「計画する技術」では、このテーマを中心に書かれた勉強本があるくらいですから、スケジューリング全般をカバー。
その中でも初見だった「負の強化」について、上記ポイントの1番目で紹介させてもらいました。
また、付箋を貼った部分として、児玉先生が開発された「日課カード」も効果がありそうな。
これは1日に3つの日課を「今日中に必ず達成する」と題したカードに起床後に書いて、それぞれの達成度を就寝前に記入する、というもの。
本書には実物の図が収録されていますので、詳しくはそちらをご覧ください。
◆続く第3章と第4章は、直接勉強に直結する話が少なめだったので、ごっそり割愛。
逆に第5章の「学習速度を劇的に上げる技術」にはガシガシ付箋をはっているのですが、まずは上記ポイントの2番目の「指組みと腕組み」について補足しておかねば。
本書に収録された表とは違うのですが、分かりやすい図がよくネットにありますが。
右脳・左脳のおもしろ診断-診断
本書では、その正しい文献元である坂野博士の説について触れられています。
しぐさでわかるあなたの「利き脳」―自分でも知らなかった脳の“性格”と“クセ”
私の場合、指組みが「右脳型」であり、実際に税理士試験の勉強で、理論を暗記する際には「画像」として記憶していたので、結構腑に落ちました。
◆また、第6章の「集中力」と第7章の「モチベーション」は、おそらく児玉先生のもっとも得意とするところかと。
前者については、勉強中はやみくもに「集中する」ことを強いる本が散見されるなか、上記ポイントの4番目の「集中力のレベルを使い分けよ」という意見は斬新でした。
確かに意志力や自制心のリソースに限界があるように、集中力にも限りはあって当然でしょう。
ちなみに、先生はこの観点から「連続した1時間」より「細切れの時間を集めた1時間」の方が、集中力が高まって効率よく勉強できる、と言われています。
これは、社会人受験生には力強いお言葉ですね。
◆そして上記ポイントの5番目は、第8章の「記憶力を強くする技術」から。
よく「記憶する際に周りの景色も一緒に覚える」という話がありますが、これは「意味記憶」を「エピソード記憶」に連動させているからなんですね(知らなんだ)。
本書の中で児玉先生は、試しに書斎と通勤電車とで、英単語をそれぞれ30ずつ、10分で覚えてみるよう言われています。
この時、通勤電車内では、どの駅周辺を電車が通過しているかを頻繁に意識しながら英単語を記憶するのだそう。
……するとおそらく、通勤電車内で覚えた方が成績が良いはず、とのこと。
なおこの章では、他にも「繰り返しの効果」ですとか「忘却曲線」といったお馴染みのネタも出てきますが、勉強オタクにとっては今さら感が強いのでカットしております。
◆児玉先生ご自身は、特に受験生を指導した経験があるわけではないようなのですが(上記「日課カード」は微妙ですが)、多くの文献に当たって、エビデンスのある勉強法が本書には納められているかと。
また、カバーしている範囲が広い分、ネタかぶりは避けられないものの、私でさえ初見のお話がありましたから、勉強本オタクの方でも、一読の価値はあると思います。
後は、サイエンス・アイ新書お約束の、イラスト多めの作りをどう考えるか。
こういうのは必然性があるのでいいのですが(以下、クリックするとアマゾンのページに飛ぶだけなので、クリック不要です)。
こういうのも多いんですよねw
まぁ、「集中力は続かない」んで、楽しみながら読んで頂ければ、と。
ただし、見た目よりはガチな勉強本です!
勉強の技術 すべての努力を成果に変える科学的学習の極意 (サイエンス・アイ新書)
第1章 脳を活性化する技術
第2章 計画する技術
第3章 理解力を高める技術
第4章 論理的思考力を高める技術
第5章 学習速度を劇的に上げる技術
第6章 集中力を手に入れる技術
第7章 モチベーションを高める技術
第8章 記憶力を強くする技術
第9章 ノートを使いこなす技術
【関連記事】
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【オススメ】『受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法』池谷裕二(2011年12月09日)
【編集後記】
◆今日のご本に関連して。実験心理学が見つけた 超効率的勉強法: ~復習はすぐやるな! 思い込みで点数アップ!~
エビデンス系の勉強本がお好きな方なら、この作品はオススメ(Kindle版もあります)。
私は読んでいて結構「目からウロコ」でした。
レビューは上記関連記事にて。
ご声援ありがとうございました!
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