2015年11月11日
今こそ『カリスマ論』の闇の部分について語ろう
カリスマ論 (ベスト新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた1冊。お馴染み岡田斗司夫さんが、自らを含めて「カリスマ」について、アツく語っています。
アマゾンの内容紹介から。
ホームレス小谷くんは、かつて無名の売れない芸人でした。ところが「1件50円でどんな依頼も引き受ける」という活動をはじめたところ、多くの人から支持され、応援され、大勢の人が彼の考えに賛同して動いてくれるようになりました。スティーブ・ジョブズやホリエモンのように、ものすごく大勢の人に影響を与える「大カリスマ」にはなかなかなれるような気はしません。でも「小谷くんのように生きたい」という若い人は少なくないのです。いろいろな場所に行けて、人に出会えて、好かれて、応援される。そんな「小さなカリスマ」になることで、お金を介さずに最短距離で幸せに近づいてみませんか?
なお、書名があまりに短いので、記事タイトルは久々に「ホッテントリメーカー」のお世話になりましたw
Charisma / Ktoine
【ポイント】
■1.カリスマは去る者を追わないこれまで私は何十人ものカリスマに会っています。彼らの基本姿勢は「来る者は拒まず、去る者は追わず」。そういう意味で、カリスマとその周りの人は開放系の人間関係を築くことになります。
カリスマの下には、弟子やお客さんがたくさんやって来ます。来るには来るんですが、その分離れる人も多い。
どんどん来て、どんどん離れる。弟子の新陳代謝がすごく激しいのです。
1年間に新たに1000人が近づいて来て、800人が去っても、200人増えたから成功だと考えるのがカリスマです。人を群れとして見ており、個々人にはこだわりません。
■2.カリスマは教義を持たない
教義を持たないのも、カリスマ型の特徴です。
教祖型は、プログラミングや英会話のようをメソッドを教える場合でも、「こういう生き方をしなければならない」と信者や弟子に求めます。
カリスマは、そんなことをしたりしません。
例えば、カリスマ型の代表、スティーブ・ジョブズ。
ややこしいことに、彼自身は教祖でありたかったようですが、結果的に彼はカリスマでした。(中略)
ジョブズは菜食主義者で、仏教に傾倒し、若い頃はヒッピー文化に影響を受けて社内を裸足で歩いたりもしていました。でも、そんな彼のライフスタイルに影響を受けた人はほとんどいません。ジョブズにとっては残念なことに、彼には教祖力というものがとことんなかったようですね。
■3.カリスマを構成する4つの要素
(1)シナリオライター
(2)パフォーマー
(3)プロデューサー
(4)トリックスター
(詳細は本書を)
■4.場所もカリスマになる
熱心なディズニーファンは、グッズを買ったり映画を見たりするだけでなく、ディズニーランドの年間パスポートも買います。さらに、開演前に優先入場できるよう、ディズニーランドホテルに宿泊。そして、ファンにとって最大の夢は、シンデレラ城で結婚式を挙げること。
ディズニーランドというのは、ディズニーのキャラクターを中心に据えたカリスマビジネスと捉えるとわかりやすいでしょう。
■5.政治もカリスマの人気投票で決まる
本来の民主主義の理念は、主権を持った個人が政策を理性的に判断し、代理人たる政治家を投票で選ぶことにありました。
「自分の歌」を「自分で歌う」、それがあるべき歌の形でした。
今の歌は、もう昔の歌ではありません。
自分の応援したい「推しメン」(アイドルグループ内のイチオシメンバー)を決め、その人の気持ちにつながれるよう上手にカラオケで歌う。
それが、現代の歌です。(中略)
今は、望むと望まないにかかわらず、すべてがカリスマのキャラクターと人気投票で決まります。
無難なことを言って済ませようとする政治家は人気者にはなれず、いつの間にか姿を消していきます。何だかんだいって結局生き残っているのは、極端な言い方で自分のシナリオを表現し、キャラ付けに成功した政治家です。橋下徹大阪市長を見れば、それがよくわかるでしょう。
【感想】
◆本書の第2章では、岡田さんの考える3種類のカリスマについて定義がされています。まず第1種カリスマとは、マスメディアが良く使う「カリスマ店員」「カリスマ経営者」のような「特定のジャンルで優れている誰かに与えられた称号」のこと。
次に第2種カリスマとは、「影響力を持つが、その範囲が狭い」ケースであり、具体例として、淀川工科高校ブラスバンド部の丸谷明夫先生が挙げられていたのですが、私は見事に存じ上げませんでした。
そして第3種カリスマこそが、本書のテーマであり、「広い範囲に影響力を持つ」ケース。
第2種と第3種の違いは、「その影響力を求めて人が大勢集まってくるか否か」だそうなのですが、この辺は現代のような「ネット社会」をある程度前提にしている部分があると思います。
◆もっとも、このように分けてみても、今度は「教祖」「メンター」「マスター」「グル(導師)」といった辺りとの区分けが、正直良く分からず。
岡田さんは、あくまで「私が独自に考えた定義」と前置きをしつつ、これらと「カリスマ」の違いについて述べてらっしゃいます。
詳しくは本書でご確認頂きたいのですが、閉鎖⇔解放の度合いで並べてみると、
「教祖」>「メンター」>「グル」>「マスター」>「トレーナー」なのだそう。
そして肝心のカリスマについては、トレーナーよりもさらに開放的とのことで、上記ポイントの1番目にある通りです。
同様に上記ポイントの2番目にあるように「教祖と違い、教義も持たない」とのこと。
◆ただ、こうした区分より興味深かったのが、今回は割愛した「カリスマのポジショニング・マップ」でした。
これは縦軸に「開放的⇔閉鎖的」、横軸に「個人の成長⇔社会の変革」を取ったもので、4象限+「真ん中」の合計5パターンに分けてカリスマたちをマッピングしています。
パターンごとに代表的な人を挙げていくと、「開放的×個人の成長」(ひとり勝ちタイプ)なのが、ホリエモンで、真逆の「閉鎖的×社会の変革」(実は求道者タイプ)なのが内田樹さん。
「開放的×社会の変革」(理解されない正義タイプ)なのが孫正義さんで、「閉鎖的×個人の成長」(心の闇タイプ)なのがマツコ・デラックスさん。
ちなみに、マツコさんと有吉弘行さんはタイプが違っていて、有吉さんは内田樹さんと同じ「閉鎖的×社会の変革」なのだそう。
その他にも、各界の著名人が数多くマッピングされているので、ビジネスモデル等を研究する際には、参考になると思います。
◆なお、冒頭の内容紹介にも出てくる「ホームレス小谷くん」は、本書でかなりのページを割いて言及されているのですが、個人的には、この方を「カリスマ」とするのには、若干違和感がありました。
それもあって、上記ポイントではザックリ割愛(すいません)。
もっともこの辺は、かねてから岡田さんが主張されている「評価経済社会」の考え方からすると、小谷くんは十分に「持てる者」なのかもしれません。
それに、上記のマッピングの例で挙げたような著名人に私たちがなれるか、というとかなり難しいワケで、それだったら、まだ「小谷くんルート」の方が可能性はあるとは思います。
ただ、似たように「周りからの支援」で活路を開くパターンとして、「ママチャリで日本一周」した「旅人ジョー」という方も紹介されているのですが、現在ツイッターには同じようなことをやっている人が山ほどいて、飽和状態なのだとか。
とはいえ、当ブログの読者さんが、このパターンに進まれるとは考えにくいので、個人的には岡田さんも参入されている「サロンビジネス」や「有料メルマガ」について、もっと言及して欲しかった、というのが正直なところです。
……岡田さんの「評価経済社会」的には、あまりマネタイズを前面に出しにくいのかもしれませんがw
カリスマに憧れる方なら、要チェックです!
カリスマ論 (ベスト新書)
第1章 カリスマの時代
第2章 カリスマとは何か?
第3章 小さなカリスマと、大きなムーブメント
第4章 イワシとサポーター
第5章 世界に参加する
【関連記事】
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【面白!】『サブカルで食う 就職せず好きなことだけやって生きていく方法』大槻ケンヂ
【敗戦の弁?】『「有名人になる」ということ』勝間和代(2012年04月25日)
【編集後記】
◆本書ではあまり言及されていない「カリスマになるためのTIPS」が述べられた1冊。カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)
TIPS的にはこちらの方が実践しやすいかと。
なお、レビューは上記関連記事にて。
ご声援ありがとうございました!
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