2015年11月10日
【非コンサル主義?】『コンサルは会社の害毒である』中村和己
コンサルは会社の害毒である (角川新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、リアル書店で見つけた「コンサル業界非難本」。アマゾンでは今日発売であり、あまりの辛口ぶりにレビューが荒れる前に(?)、お届けしたいと思います。
アマゾンの内容紹介から。
日本企業では、戦略は「現場の社員」が考え、実行しなければ意味がない! 元コンサルにして事業調査業者である著者が、コンサル業界が産業として崩壊している現状を徹底的に告発する。コンサルの使う欧米の理論は日本にはまったく合っていないうえに、ツールそのものも時代遅れになっている。そう、コンサルは不要だ。会社を支えるのは、あなたの活躍しかないのだ。
やはり今日発売のKindle版もお見逃しなく!
MediaCom talk about McKinsey Purchase Cycle / EEPaul
【ポイント】
■1.やたらと大きな話と細かい話に気をつける専門的な観点からみると、コンサルは宗教と同じマーケティング技術を使っている。それは大別して2つあり、「巨大なビジョン」。そして、極めて「細かい教条」である。巨大なビジョンとは「空一面に鳴り響く、稲妻のごとき神の啓示」であり、細かい教条とは、「靴紐を3回結びなさい」といった瑣末なルールを指す。これに倣って、コンサルは大きな話をしていたかと思うと、突然、プレゼンの字数の話に飛ぶといったテクニックを良く使っている。これは「神は全てを見ている。汝は隠すことが出来ない」という万能感を演出するとともに、聞くものの焦点を激しく移動させることによって驚きを引き出そうとする詭弁術なので、適当に無視すれば良い。ようは、やたらと大きな話と、やたらと細かい話には売り込みの意図があるということだ。騙されてはいけない。
■2.日本でコンサルが繁盛しない理由
日本では解雇の決定をコンサルに手伝わせることは滅多にないので、コンサルは解雇の提言を通じて得点を稼ぐことが出来ない。(中略)
また、支配層の持つコネの影響が小さいため、コンサルティング・サービスを買う理由も、コンサル企業へ転職する理由も、コンサルを入社させる理由も、コンサルの過去の失敗を揉み消す必要も、全て無くなる。
さらに日本には支配層の存在がなく、クライアント側の企業もまた長期雇用であるために、コンサル業界が繁栄するための基礎を成す「忘却効果」が得られない。日本企業では、仮にコンサルが1度でも失敗すればいつまでも覚えられ、彼らがクライアントの社史に刻んだ黒歴史を覆すのは難しい。(中略)
つまり、「事業のリストラは許さない。解雇は提案しなくていい。失敗したら根深く恨む。担当者は免罪だが、コンサルは永久に有罪」というコンサルにとって悪夢に近い最悪の条件が、日本市場では成り立っているのである。
■3.コンサルのできることには限界がある
実は、因果関係の解析においてミーシーが有効な状況は1つしかなく、それは「因果関係の判別が容易である」という、状況の分析が単純なケースに絞られる。これは先に指摘した、『簡単でありながら解ける問題が存在するのは成熟した大企業ではなく、べンチヤー企業』とも一致する。つまり、整理の難易度は低いが片づけが終わっていない成長過程にある企業であれば、技術的に人力を使ったミーシー技法が通用しやすい。しかし、既存の大企業であれば、そういった作業は1980年代から90年代にかけて終わっている。例えるならば、コンサルは散らかった部屋の掃除までは出来る。整理整頓くらいまでは、上手に出来るだろう。しかし、部屋の内装を変えたり、部屋の形を変えたり、部屋の家具を入れ替えたりは出来ない。コンサルが出来ることには、それなりに限りがあるということだ。
■4.コンサルは実務経験が不足している
経験がゼロなのにコーチをやるのは、やはりおかしい。実際、わたしはJTで幾つかの事業部において企画マンを経験してからコンサルティング会社に行ったが、そこで唖然としたのが、実務経験が一切ない、純粋培養型コンサルの言動である。彼らは実務経験者が思いも付かない"とっておきのアイデア"を披露するのだが、それには実現の可能性が最初からない。コメントのしようがない困惑した状況で、実務経験者が唖然としているうちに彼の披露する議論が進んでいくが、それは実務経験者がもうあまりにもバカバカしくて抗弁する気が失せているからだ。
■5.「50の折り合い」をどう付けるか
現代において起こりがちなのは、こうして何もかも社内でやろうとして失敗する「戦略ロス」である。そもそもだが、どのような企業であっても、専門的な調査業務は必要で、日本企業の弱点は今でもインテリジェンス能力がかなり脆弱な点にある。もっと外界を研究し、内部活動を可視化し、生産性を高める努力は必要であり、そういった活動自体は増やすべき。しかしその一方で日本企業は極端な対応に走りがちで、すべて内製化しようとして調査業務や戦略立案そのものが上手く行っていない。ときの状況と過去の経緯に応じて、ゼロと100の間をランダムに往復した挙句、ゼロの側にあるデメリットが大きくなって思考停止しているように見える。
べストな結論はゼロでもなければ100でもなく、50の折り合いをどう付けるかなのだ。つまり、「コンサルタントは筆記具。考えるのは自社の社員」という相互の役割分担を徹底することが重要なのである。
【感想】
◆冒頭で「あまりの辛口ぶり」と言ってる割には、大したことない、と感じられたかもしれませんが、そのまま引用するには忍びないお話が多々あったので、それらはこちらで簡単に触れることにしたいな、と。たとえば、コンサルがやっている「産業スパイ」の件。
これはコンサル先で手に入れたスキルをパクってしまうことで、実際、マッキンゼーは1940年代にGMで手に入れた「Mフォーム」という組織設計の技法を世界中で売りさばいたそうです。
また1980年代にはトヨタの「カンバン方式」を売っていたコンサルもあったとのこと。
もっとひどいのになると、コンサル会社は競合企業に、そのままライバル企業の事業計画書を手渡しているらしく……ってこれ、完全に犯罪ですよね?
もっともクライアント側も、初めからそうしたライバルの情報目当てに、コンサルを雇うこともあるそうなのですが。
その他、フィーが高すぎたり、説得力を持たせるために高学歴者を採用している等々については、本書の第1章にてご確認を。
◆続く第2章では、コンサルの代表的な考え方であるミーシーがいかに頼りにならないかについて言及。
具体的には、日本の誇る「コンサル業界のチャンピオン」であり「エース」の大前研一氏の事例を分析し、「大前氏でさえモレてしまう」ミーシーが、果たして他のコンサルが本当に使いこなせているのか、という主張をされています。
さらには、たとえミーシーができたとしても、「何が重要なキーファクターなのか」をコンサルのような外部の人間が決めるのは難しいのだそう。
たとえば、日本の大手総研の予想は「外しに外し、アテにならない予想を振りまくのが伝統芸能になっている」とバッサリです。
結局、ミーシーに限界があることは上記ポイントの3番目の通りですし、そもそも実務経験のないコンサルのアイデアは使いものにならない、というお話は上記ポイントの4番目にて。
ちなみに、経験がない業界でもクライアント企業に「ウケる」テクニックというものがあるらしく、それは「事業開発の場合は、クライアント企業に隣接した事業について、それらしく触れれば良い」のだとかw
一方、「インターナル調査の場合は、他社のベスト・プラクティスを使う」のだそうで、こちらでも「ちょっと業種が違うところを狙う」とのこと。
◆ところで、コンサルの問題点について言及した作品については、当ブログでは以前この本をご紹介したことがありました。
コンサルタントの危ない流儀 集金マシーンの赤裸々な内幕を語る
参考記事:【衝撃!?】『コンサルタントの危ない流儀 集金マシーンの赤裸々な内幕を語る』デイヴィド・クレイグ(2014年01月20日)
この本が最初から最後までコンサル業界の問題点を挙げ連ねているのに比べると、本書はまだ救い(?)があると言いますか。
特に興味深かったのが、各国と比較した場合に、日本のコンサルの市場規模が、米国の約1/10、ドイツの1/8に過ぎないという事実。
その原因について簡単にまとめているのが上記ポイントの2番目なのですが、本書では個々の問題点について解説されていますので、詳しくはそちらをお読みください。
◆いずれにせよ、こうしたコンサルの問題点に対して、著者の中村さんが出した結論は、外部の会社は「純粋に外部環境を調査・分析すべき」というものでした。
要はその後の「意思決定」や「問題解決」といった部分は、「その会社の事を本当に知っている会社自身が行う」という考え方なのですが、コンサルがそうしないのは、「調査や分析」だけだとお金にならないから。
その点、中村さんの会社では「低価格で調査と分析だけを供給している」……って、それ、ポジショントークというより宣伝(ry
こういうのもあって、レビューが心配なんですけど、今回レビューを書いてて気が付いたのが、中村さんって、この本の著者さんだったんですよね。
図解でひらめく! ビジネスのヒント55 (リクルートスペシャルエディション)
参考記事:【オススメ!】『図解でひらめく! ビジネスのヒント55』中村和巳(2014年11月25日)
上記記事タイトルの初っ端で推奨しているように、この本がかなり良かったので、個人的には今回の作品も応援したいと思います。
コンサルに頼むその前に一読をオススメ!
コンサルは会社の害毒である (角川新書)
第1章 コンサルは、その対価に見合わない
第2章 ミーシーは、物事を単純化する危険思想である
第3章 コンサルタントに、意思決定を求めてはいけない
第4章 コンサルタントは筆記具。考えるために社員がいる
【関連記事】
【衝撃!?】『コンサルタントの危ない流儀 集金マシーンの赤裸々な内幕を語る』デイヴィド・クレイグ(2014年01月20日)【オススメ!】『図解でひらめく! ビジネスのヒント55』中村和巳(2014年11月25日)
【スゴ本】『プロフェッショナルコンサルティング』波頭 亮,冨山和彦(2011年05月31日)
【88の名言】『大前語録』大前研一(2015年09月18日)
【編集後記】
◆コンサル業界ネタとして、一時話題となったのがこちらの本。申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
レビューが現時点で81件もついているのですが、私は上記『コンサルタントの危ない流儀』がブログでウケなかったので、スルーしてしまいました(ダメじゃんw)。
一応現在は、Kindle版もある模様。
ご声援ありがとうございました!
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