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2015年11月08日

【お金】『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』大江英樹


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知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた1冊。

著者の大江英樹さんは、「年間100回を超える講演やテレビ出演、雑誌や新聞などへの執筆活動」をされているだけあって、非常に分かりやすい作りとなっていました。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
著者は、大手証券会社時代から「経済とおかね」に関する授業をコンテンツの制作から手がけ、そこで学ばれた方は累計40万人以上にものぼります。そして、新入社員の方から、ファイナンシャルプランナーといったお金の専門家の方にいたるまで、「これ以上ないくらい、わかりやすい」というありがたいご感想をたくさんいただいてきました。
経済はけっして難しいモノではありません。経済を理屈ではなく、ビジネスの現場で体験してきたからこそ、そう言い切れます。
経済やお金のことがよくわからないまま、今日まできてしまった、という方、もう一度おさらいしてみたい、という方にも面白く読んでいただけたら幸いです。

なお、お買い得なKindle版もお忘れなく!





House on Money / MarkMoz12


【ポイント】

■1.持家は「投資」、借家は「消費」
家を買うということは思いきりレバレッジをかけた投資をするのと同じことです。なぜなら、仮に頭金1割でローンを組むということは10倍のレバレッジで長期投資をしたのと同じことになるからです。10倍のレバレッジということであれば為替のFX取引のようなものです。しかもそれを短期にではなくきわめて長期でおこなうのですから、それなりに大きなリスクを抱えることになると言って良いでしょう。
 これに対して「家を借りる」という行為の方が、むしろ買い物=消費であると言えます。一定のお金を払うことで、家に住むという権利を買うのと同じだからです。(中略)
 したがって、純粋に経済合理性だけを考えれば、さまざまなリスクを抱えながら長期にわたって金利を払い続けるというギャンブル的な投資よりもできるだけ多くのキャッシュを手元に持ちながら借家に住む方が堅実だと言えるでしょう。


■2.ハイリスク・ハイリターンの正しい意味
「ハイリスク・ハイリターン」という言葉を聞いたことがある人はいるでしょう。多くの人はリスクという言葉を「危険」と理解していますから、危険を冒せば得られる利益が多くなる、と解釈しがちになります。(中略)
正しい表現は「高いリターンを得ようと思うとリスクは必ず高くなる」、「大儲けしたいなら、大損することを覚悟しておきなさいよ」ということです。
 ハイリスク・ハイリターンという言葉につられて投資をして損をして、「リスクをとったら儲かると言われたのに!」と文句を言っても仕方ありません。「それはハイリスクだったのだからしょうがないです」と言われておしまいです。


■3.外貨を資産として持つならFXではない
 外為取引というものは、その通貨を長期に保有していれば、誰でも利益が出るという性格のものではありません。誰かが儲ければ、その裏側では必ず誰かが損をする、すなわちゼロサムゲームとしての側面が強いものなのです。したがって、達用はどうしても短期かつ投機的になりがちです。(中略)
 プロと言われている人たちだって、短期的な外為取引で継続的に利益を上げることはなかなか困難です。なぜならきわめて偶然性が左右する取引だからです。為替相場は政策や投機筋の動きにとても大きな影響を受けます。
 個人の場合、投機的なマネーゲームとして楽しむのであればともかく、長期的に資産形成を考える運用の手段として考えた場合、FXは適切ではないと思います。


■4.民間医療保険にあわてて入らない
 高額療養費制度は年齢や所得によって自己負担額の上限が異なりますが、仮に年齢は70歳未満で年収が370〜770万円の人が病気の治療を受けてその月の治療費に100万円かかったとします。その場合の自己負担額は8万7430円です。
 これはかなりお得な制度ですが、この制度の存在を知らずに民間の医療保険に入って毎月かなりの保険料を負担している人が少なからずいます。医療保険に入っていないと無保険状態だと心配する人もいますが、民間保険会社の医療保険というのは原則、入院差額べッド料等のように公的保険で支給されないものをカバーするのが目的ですから、絶対入らなければならないというものではありません。私たちは一人残らず、公的な医療保険制度に加入しているのですから、あわてて民間医療保険に入る必要は全くありません。


■5.世の中にうまい話はない
投資には必ずリスクがあります。リスクとリターン(儲け)はトレードオフの関係になっているということは前にもお話ししましたが、一定以上のリターンを得ようと思うと必ずリスクを避けることはできません。これもいわばノーフリーランチの原則です。
 見ず知らずの人から「ごちそうしてあげましょう」と言われたら誰でも警戒するはずですが、同じことが投資の世界になると、「あなたに特別な情報を提供しましょう」とか「有利な商品を特別に持って来ました」と言われると、ついその気になってしまうというケースがよくあるのです。
 ノーフリーランチ=世の中にうまい話はない、というのはごくあたりまえの経済感覚として当然持っておくべきことだといえるでしょう。


【感想】

◆この本、帯の裏側に大きく「わかりやすいにもホドがある!」と書いてあって、どんなものかと思って読み始めたら、確かに「わかりやすかった」ですw

何せ、必要に応じて用語解説が載せられているのですが、これがよくある「カッコ書き」や「巻末」「章末」ないしは「ページの左端」「下」ではなく、「その用語が登場した文の直後」に大きく目立つよう、段落を下げて太字で書いてくれているという。

これって、すごく便利で、かつ、わかりやすいので、初心者向けの解説書等は真似て欲しいくらいです。

もちろん文章自体も、上記ポイントで引用しているように、クセがなく明瞭で、スルスルと読み進められました。

なんというか、橘玲さんの本をもうちょっと初心者向けにしたと言いますかw


◆特に小難しい話の場合、具体例やたとえ話(比喩)が上手いと、読み手の理解度も上がるもの。

たとえば上記ポイントの1番目の借家の説明で、「家に住むという権利を買う」という表現は、個人的に腑に落ちました。

……逆に、持家の「10倍のレバレッジをかけた為替のFX取引」というのは、納得しがたい人も多そうですが。

同じく上記ポイントの5番目の、「『ごちそうしてあげましょう』と言われたら警戒する」のに、「『有利な商品を特別に持って来ました』と言われると、ついその気になってしまう」というのも秀逸w

ホント、「世の中にうまい話はない」んですよね……。


◆また、「世間一般で誤解されている」と著者の大江さんが本書で言われているのが、FXです。

どうも「投資の手始めにFXを」と考えてらっしゃる方が多いそうで、長年にわたって資産運用や投資の世界で生きてこられた大江さんにとって、「投資を始めるきっかけがFX」というのは、かなり違和感がある、とのこと。

そして、そういう誤解の原因の1つが、「株式はよくわからないが、ドルやユーロなら海外旅行で使うのでなじみがあるから」というもので、これは行動経済学でいうところの「利用可能性ヒューリスティック」なるものです。

確かにドルやユーロにはなじみはあるでしょうけど、そのことと「価格変動のメカニズム」や「それに投資することでどれくらいの損益が出るか」を「理解している」こととはまったく別の話。

さらに上記ポイントの3番目で指摘されているように、政策によって大きな影響を受けるのは、今年初めのスイスフランの大暴騰でもご存知のことかと。

スイスフランが歴史的大暴騰!FXで大損トレーダーが続出! | ビギナーバイナリーオプション

まさに「投資」というより「ギャンブル」に近いような。


◆冒頭では割愛しておりますが、アマゾンの内容紹介にあった「本書の目的」とは「人生において大きな損をしないために、経済のしくみを正しく知ろう」ということでした。

なるほど、本書を読むと「大儲け」はできなくとも「大きな損」は避けられそうです。

そして人は、同じ金額で比較した場合、得をした時の喜びよりも、損をした時の痛みの方が大きく感じるもの(プロスペクト理論 - Wikipedia)。

本書を読むことで得られる「金融リテラシー」は、きっとお値段以上のものになると思います。


お金に自信のない人なら読むべし!

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知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生
PROLOGUE:あなたが人生で損をしないための「経済とおかね」の話
LESSON1: お金を使えば給料は増える【消費】
LESSON2: お金を増やすしくみ【投資】
LESSON3: お金の流れを知る【金融】
LESSON4: モノやお金を交換する【貿易】
LESSON5: 国家が破綻するとき【財政】
EPIROGUE: あなたが人生で損をしないためのポイント
おわりに
索引 経済とおかねの重要ワード


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【編集後記】

◆大江さんがもっと「行動経済学寄り」に書かれたらしい1冊。

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投資賢者の心理学 ―行動経済学が明かす「あなたが勝てないワケ」

若干お安いKindle版も用意されております。


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