2015年10月27日
【脳トレ?】『脳を最適化する ブレインフィットネス完全ガイド』アルバロ・フェルナンデス,エルコノン・ゴールドバーグ,パスカル・マイケロン
脳を最適化する ブレインフィットネス完全ガイド
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、今月初めの「未読本・気になる本」の記事にて人気を集めた「脳ネタ本」。「脳の健康に関する最新情報を調査し発信するマーケットリサーチ会社」である「シャープブレインズ」のCEO、アルバロ・フェルナンデスが、エルコノン・ゴールドバーグとパスカル・マイケロンという2人のドクターとともに、脳科学の最前線を描いています。
アマゾンの内容紹介から。
ブレインフィットネスのバイブル、ついに日本上陸!
身体やメンタルと同じように、脳だって自分で鍛えることができる。
運動、食事、瞑想、レジャー、人間関係、ストレス、脳トレ……あらゆる側面から脳をグレードアップする方法を、世界トップレベルの専門家たちが最新研究にもとづいて具体的にアドバイス。
脳科学の最高権威・久保田競博士の解説も必読。
あなたの脳はもっと進化する!
なお、結構分厚い本なので、2割引きのKindle版がオススメです!
Brain Training on DS Lite / Lord Biro
【ポイント】
■1.瞑想する――瞑想による脳の活性変化は、脳の構造にも変化をもたらしますか?
もたらします。2012年のルーダースらの研究によって、瞑想者たちが記憶のコントロールセンターである海馬の容量を増加させていることがあきらかになりました。大脳皮質の別の領域でも容量増加は見られます。脳内の各領域の構造的なつながりや、大脳皮質のひだも増えています。
興味深いことに、ホルゼルらの2011年の研究によれば、変化はとても速く起こります。8週間の瞑想を行なえば、大脳皮質の灰白質密度を高める可能性がだれにでも出てきます。(カリフォルニア大学ロスアンゼルス校 ロバート・M・ビルダー博士)
■2.身体エクササイズする
基礎データを取るため、最初、被験者に見知らぬ人の写真を見せて顔と名前を覚えさせ、少し時間を置いた後にもう一度、写真を見せて名前を思い出させた。次に、被験者の半分はサイクリングマシンに乗って疲れるまでスピードを上げていき、残り半分の被験者は30分間静かに過ごした。続いて、両グループとも最初に見せられた人物の名前を思い出すように促され、両グループの一人ひとりのBDNFの濃度を調べた。
その結果、サイクリングマシンに乗った被験者は、記憶力が基礎データに比べて良くなり、興味深いことに、記憶力の改善はBDNFの濃度の増加に伴って起こっていたのである。
■3.地中海食をとる
ふだん好んでいる食習慣は、認知力に長期にわたる影響を与える。
脳を健康にする食事法として、このところ、地中海食が頻繁にニュースになる。地中海食は、一般的に、野菜、フルーツ、シリアル、不飽和脂肪酸(ほとんどがオリーブオイルの形で摂取される)をたくさん、乳製品、肉、飽和脂肪酸は少なく、魚は適度に食べ、適量のアルコールを定期的に摂るものだ。この地中海食が、身体的な健康だけでなく脳の健康にも影響を及ぼす。アルツハイマー病になるリスクを減らし、認知力のの低下を遅らせることがいくつかの研究によってわかっているからだ。このことは、最近の国立衛生研究所のメタ分析でも確認されている。
■4.チャレンジの度合いを上げる
カリフォルニア大学バークレー校のスーザン・ランドーとマーク・デスポシトが2006年に行なった研究が、この点をあきらかにしている。ピアノ演奏に必要な指の運びを被験者に教え、同時に、そのときの脳の活性状態を記録したものだ。その結果、鍵盤上での指の運びを被験者が学ぶ間、主に運動野が激しく活動していることが確認された。重要なのは、うまく弾けるようになると運動野の活動が減ることだ。運動野におけるこの活動量の変化はニューロン間の結合度合いの変化を反映していて、演奏が上達していく途上では情報伝達の効率性が向上することを示していた。ところが、演奏が上達するとルーティンが確立し、ニューロンは激しく活動する必要がなくなることがわかった。(中略)
選択する活動がなんであれ、目指すところは、新しい世界に触れること、チャレンジの度合いを上げていくことだ。容易な認知課題あるいはルーティン化した認知課題にならないようにすることが大切だ。
■5.新しい言語を学ぶ
知らない言語を学んで使うことも、脳を刺激する活動のひとつになる。バイリンガルであることが、多種類の有益な可塑的変化のきっかけを脳内に作るからだ。エレン・ビアリストックによる調査が、2種類以上の言語を話すと実行機能が高まり、認知的予備力が築かれ、認知力が低下するリスクやアルツハイマー病になるリスクから守ってくれることをあきらかにしている。たとえば、認知症を抱える184人の被験者を調べた研究では、2か国語を話す人の半分(51%)は、1か国語しか話さない人と比べて、認知症の兆候が出る時期が4年遅くなることがわかっている。
【感想】
◆アマゾンで買うときはあまり気にしないのですが、本書をリアル書店で見て、その厚さにひるんだワタクシ。ぶっちゃけ、お取り置きを頼んでなかったら、買うの断念したかもしれませんw
「の、脳ネタの本だから読まなきゃ(震え声)」と自分に言い聞かせて、無理やり購入。
……ホントはレジで「結構です」と言えなかっただけなのですが、好きなテーマですから、内容的には面白かったです。
◆ただし想定外だったのが、その構成。
アマゾンの内容紹介や、下記目次をみる限り、普通の本のようですが、これがなんと専門家へのインタビューだらけという仕様でした。
9章を除く各章の最後で、1人〜4人の脳研究の専門家(全員「博士」)に話を聞いており、その総数20人。
費やしたページも合計すると130ページありましたので、本書の1/3強です。
おまけにインタビューだと、あまり回答に手を入れられないでしょうから、難しい話をそのまま難しく話されてしまうとお手上げ状態。
素人がインタビューしたならまた違ったのでしょうけど、どうも専門家である著者陣が質問したらしく、まるで専門誌でも読んでいるような気になる部分もありました。
もっとも、せっかくオーソリティが正しい内容を発言しても、著者の都合で改変されるよりは、こうしたスタイルの方が、「真実」を知りたい方には向いているかもしれませんが。
◆今回は特に「実践する」ことを意識して上記ポイントは抜き出したのですが、逆に「あまり意味がない」というお話もありました。
たとえば、「ブレインパワー」をアップさせるとうたっているサプリメントの数々も、現状ではプラセボ効果以上に認知機能を向上させたり、アルツハイマー病の発症を延期させたりするサプリメントは現れていないのだそう。
ちなみに、当ブログでもご紹介した何冊かの本では、イチョウ葉エキスの効果をポジティブに評価していたのですが、「最近の研究結果のほとんどが、イチョウ葉エキスの効果を否定する内容になっている」とのこと。
本書では、2000人以上を対象としたイチョウ葉エキスの実験が2つ掲載されており、いずれも効果がないか少ない、という結論になっていました。
一番評判のよかったイチョウ葉エキスでコレですから、後は推して知るべし……。
◆一方、興味深かったのが、シャープブレインズ社のオンラインニュースレターの購読者を対象(回答者は3000人以上)とした、「脳トレ製品」に関するアンケートです。
もっとも利用者が多かったのが、「ルモシティ」というアプリなんですけど、去年の暮れにこんな記事が出ていますね。
米国科学界で評価が割れる「脳トレ」アプリ 本命「ルモシティ」が日本に本格上陸|ビジネスモデルの破壊者たち|ダイヤモンド・オンライン
その他のアプリとともに、具体的なアンケート結果が出ているので、詳しくは本書にて。
また、このアンケートとは別に、本書ではいくつかのアプリやシステムを掲載しているものの、あくまで「こうしたものがある」という紹介にとどめており、価格やURL等には触れていませんでした。
……自分でググったら、とんでもなく高いものがあって、ちょっと凹んだんですがw
◆なお、本書の最後には「ブレインフィットネスに関する55の重要事項」と題して、本書全体のまとめが収録されていますので、リアル書店でチェックされる際には、ここが宜しいかと。
それに続いて、久保田 競先生の解説もありますので、久保田先生のファンの方は、こちらもお見逃しなく。
さらには専門用語を解説した「用語集」も付されており、非常にありがたい……というよりも、こういうのがないと良く分からないくらいのレベルの内容だと思って頂けたら。
ぶっちゃけ、ある程度この手の本を読んできた私でも、インタビュー部分には、よく分からない個所があったことを重ねてお伝えしておきます。
もっとも、書店でこの厚さの「脳ネタ本」を見たら、一見さんはスルーしちゃうでしょうけどw
脳ネタ好きな方ならトライして欲しい1冊!
脳を最適化する ブレインフィットネス完全ガイド
まえがき
Introduction 「ブレインフィットネス」を始めよう
Chapter1 脳とはなにか。スタート地点はそこにある
Chapter2 脳を鍛えるには、患者ではなくコーチになれ
Chapter3 健全な脳は、健全な身体に宿る
Chapter4 私たちは、ほぼ食べたものでできている
Chapter5 使うか、失うか――メンタルから脳を鍛える
Chapter6 これから出会う人が、あなたの脳を変える
Chapter7 ストレス・コントロールと、脳の回復力(レジリエンス)
Chapter8 クロス・トレーニングで脳を最適化する
Chapter9 自分の脳を導く「コーチ」になる
Appendix ブレインフィットネスに関する55の重要事項
あとがき
解 説――神経画像処理技術がもたらしたもの(久保田 競)
【関連記事】
お前らもっと『ブレイン・バイブル』の凄さを知るべき(2015年09月03日)【オススメ!】『脳のワーキングメモリを鍛える! ―情報を選ぶ・つなぐ・活用する』トレーシー・アロウェイ,ロス・アロウェイ(2014年01月14日)
【超脳トレ?】『天才脳をつくる!: 潜在能力をぐんぐん伸ばす、計算と記憶のテクニック』マイク・バイスター,クリスティン・ロバーグ(2012年10月12日)
【脳力UP!】「脳力育成HACKS!」に学ぶ7つのポイント(2010年03月17日)
【脳科学】「最新脳科学で読み解く 脳のしくみ」サンドラ・アーモット,サム・ワン(2009年05月02日)
【編集後記】
◆脳ネタ本の中で、とりあえず私のイチオシがこちら。脳のワーキングメモリを鍛える! ―情報を選ぶ・つなぐ・活用する
なお、単行本だと368ページもあるので、「25%OFF」のKindle版がオススメ。
レビューは上記関連記事をご覧ください。
ご声援ありがとうございました!
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