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2015年10月22日

【誤解?】『だれもわかってくれない:あなたはなぜ誤解されるのか』ハイディ・グラント・ハルヴァ―ソン


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だれもわかってくれない:あなたはなぜ誤解されるのか


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、米国の社会心理学者であるハイディ・グラント・ハルヴァ―ソン女史の最新作。

前作、『やってのける』が当ブログでもヒットしただけに、今回の作品も「期待大」です。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
そんなつもりで言ったわけじゃないのに、勝手にそうだと決めつけられる。自分では笑顔でいるつもりでも、だれも話しかけてくれない。後日、人に言われて初めて気づく。どうやら怒っていると思われていた……。
こういった「誤解」は、オフィスでも、学校でも、家庭でも、老若男女関係なく、つねに起こる問題だ。ところが近年、その仕組みは科学的にかなり解明され、予測することが可能になってきている。
モチベーションと目標達成分野の第一人者で、コロンビア大学ビジネススクールで教鞭をとる社会心理学者の著者が、誤解の原因とその解消法について教える実践の書。

なるほど本書によって「他人から見た自分のイメージ」が良くなりそうな予感!?





personal realities differ / built4love.hain


【ポイント】

■1.信用されるには「温かみ」と「能力」を伝える
 何十年もの研究の結果が示すのは、対象の特質の中でも特に2つの側面に、最初から注意が集中するということです。それは人間的な温かみ能力です。「温かみ」、つまり親しみやすさ、誠実さ、思いやりなどは、その人が相手に対してよい意図を持っていることの表れととらえられます。「能力」、つまり知性、スキル、優れた仕事ぶりなどは、その気になれば自らの意図を実行に移せることを意味します。(中略)
 ハーバード大学の心理学者で、この研究の中心メンバーであるエイミー・カディは、人が肯定的に見られるか、否定的に見られるかは、その約90パーセントが「温かみ」と「能力」にかかっていると言っています。ですから相手に「価値ある味方」と見てもらうためには、「温かみ」と「能力」のイメージを発信できるようになることが大事です。


■2.相手の願望や問題を探る
 認めてほしい相手にとって有用な人間となるために、あなたがまずしなければならないことは、その相手がどんな願望を持ち、どんな問題を抱えているかを知ることです。たとえば、その相手が直属の上司だとします。あなたは自分の今年度の目標や「ストレッチゴール」については理解していると思いますが、上司に課せられている目標が何かを知っていますか? 上司がどんな点でもっとも助力を必要としているか、その負担を軽減するために自分にできることは何かを把握していますか? 上司の仕事の中でいま順調に進んでいない部分はどこかわかりますか?


■3.相手のバイアスをやわらげる3つの方法
(1)謙虚にふるまう
 相手を脅かすことがないように意識して行動することです。かといって、ことさら無知なふりをするとか、自分とは別の人格を演じろというのではありません。ただ脅威を感じている相手に対して自慢げにふるまうのは、あなたにとって決していい結果にはならないということです。
(2)相手を肯定する気持ちを伝える
 相手の言葉や行動を認めたり褒めたりすることによって、相手を肯定する気持ちが伝わるのはもちろんですが、それは質問することによっても伝えられます。人を褒めるのは苦手だという人や、相手がよく知らない人の場合には、質問の方が抵抗がないかもしれません。
(3)「あいつら」から「自分たち」へ
相手との間の「自分たち」という意識を強めるには、何であれ共通点を探せばいいということになります。その共通点が重要で際立っていればいるほど効果的ですが、同じロック歌手が好きだとか、そんな簡単なことを指摘するだけでも、相手にとっての「あいつら」から「自分たち」の1人に移行できます。


■4.相手のタイプを見極めて、それに合ったコミュニケーションを行う
 たとえばあなたは、新しいソーシャルメディア事業を立ち上げることが、「競争から一歩抜きん出るチャンス」と考えているとします。しかし相手が予防レンズの上司なら、それは「競争で後れをとらないための方法」と説得する方が簡単です。「他社もみなこの方向に動きつつあります。この流れは避けられません。将来に向けて準備をしておかないと、シェアを失いかねません」という感じで話します。
 つまり、自分が説得しようとしている相手がどんなタイプかをまず見極めて、それに合ったコミュニケーションを行なうことが大事なのです。


■5.圧倒的な量の証拠を示す
 自分に対する見方を変えてもらいたい相手には、その人が無視できないほどに明瞭で意外な証拠を示しましょう。相手はそれを理解するために「フェーズ2」へ進むしかなくなり、あなたへの思い込みを見直してくれます。
 また自分の印象を変えるための証拠はたっぷり示さなければなりません。上司があなたの能力を評価していないようなら、一度や二度いい仕事をしてみせたくらいでは、たとえそれがかなりのレべルであっても、変化を起こすには不十分です。「下手な鉄砲も数撃ちや当たる」ということわざのように、「まぐれ当たり」として無視されかねません。


【感想】

◆本書は下記目次にあるように4つのパートに分かれています。

まずパート1では、「人を認識するプロセスがどのように働くか」の基本を。

具体的には、ダニエル・カールマンの『ファスト&スロー』にもあるように、「自動的に行われ、バイアスに満ちている状態」である「フェーズ1」と、「努力を要し、より正確に認識できる段階」である「フェーズ2」とに分かれてます(『ファスト&スロー』では「システム1」と「システム2」ですが)。

続くパート2では、「バイアスを形づくるおもな色メガネ」についての解説が。

そしてパート3では、「認識する側のパーソナリティが、人の見方にどんな影響を与えるか」について触れられており、最後のパート4では「相手から自分を正しく見てもらう手段」について言及されている、という仕様。

この手のバイアスのお話というのは、過去さまざまな類書で登場してきましたが、特に本書が特徴的なのは、その現象について述べるだけに留まらず、具体的に「どうするか」にまで触れられていることだと思います。


◆そこで上記ポイントでも、アクションを中心に抜き出したのですが、補足しておきたいことがいくつか。

まず前提として、バイアスがどうかかるにせよ、一度作られてしまった印象を後から変えることは大変困難である、ということ。

それだけに、相手に対する第一印象は、非常に重要なものとなるわけです。

よくビジネスマナー等で、「身なりをきちんとしましょう」的なお話がありますが、安易に考えていた自分涙目の巻。

これはもちろん見た目だけでなく、行動についても同様です。

たとえば一度「遅刻することで有名」というレッテルが貼られてしまうと、多少出社時刻を守るくらいでは印象は変わりません。

それこそ上記ポイントの5番目にもあるように「圧倒的な量」――この場合で言うと「定時1時間前出社」を「1週間くらい」――を示す必要があるわけです。


◆また、ちょっとひどいなー、と思ったのが、クリエイティブな資質とリーダーとしての資質のお話。

人は無意識のうちに、「クリエイティブな人」はいいリーダーいはなれないと思いこんでいるのだそうです。

実際にある調査で、約300人の社員が匿名で問題解決の課題に取り組んだ結果を、55人の同僚に評価してもらったところ、「クリエイティブな能力」と「リーダーとしての資質」の間には、強い負の相関関係があることがわかった、とのこと。

なるほど、現代においてはクリエイティブであることを推奨していながら、実際にリーダーになるのは創造性に乏しい「現状維持型人間」であるのも、致し方ないのかな、と。


◆同じく割愛したお話として、パート3の第8章で「不安型レンズ」と「回避型レンズ」というものがありました。

簡単に言ってしまうと、前者は「依存型」であり、後者は「無関心型」。

どちらも幼少期における親との関わり方からきている問題のようなのですが、私は主に恋愛本等を読んだ経験から、思い当たるフシが多々。

ただ、これが恋愛なら「別れる」とかで済むところが、仕事上一緒に働いている人(特に上司!)の話となると、それこそ真面目に対策を練らないと大変です。

本書ではそれぞれについて、具体的なTIPSが述べられているので、気になる方はご確認を。


◆本書は翻訳本でありながら、各章に「この章のポイント」と題して、簡単にまとめられているのが、ありがたいところ。

かつ、さすが版元が早川さんだけあって、巻末には原注がしっかり付されています(翻訳本でもユルいところは載ってないんですよね)。

なお、アマゾンの内容紹介には掲載されていないのですが、帯の後ろには、ダニエル・ピンクのこんな推薦文が。
ストーリーと科学的見地を巧みに織り交ぜて、他人が私たちを見る見方と、私たちが自分自身を見る見方にはギャップがあるのだということを明解に説明してくれる。
さらには、その処方箋まで記されているのが、本書のウリだと思いますが。


他人を理解し、他人からも理解されるために!

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だれもわかってくれない:あなたはなぜ誤解されるのか
はじめに あなたは人からどう見られているでしょう

PARTI 互いを理解するのはなぜこうも難しいのか
 第1章 人があなたを理解することは驚くほど難しい
 第2章 人は認識のエネルギーをケチる
 第3章 他者を判断する二段階のプロセス

PARTII 誰もが持つ、認識を歪める3つのレンズ
 第4章 信用レンズ
 第5章 パワーレンズ
 第6章 エゴレンズ

PARTIII パーソナリティによって変わるレンズ
 第7章 モーレツな「報酬追求人間」と、慎重な「リスク回避人間」
 第8章 依存心と不安感の強い人、回避的でよそよそしい人

PARTIV 人を正しく理解し、人から正しく理解されるには
 第9章 悪い印象を与えてしまったとき、誤解されてしまったとき

おわりに 相手と自分自身を正しく理解する


【関連記事】

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【『影響力の武器』悪用編?】『だましの手口』に学ぶブラック手法6選(2012年03月07日)


【編集後記】

◆本日の「Kindle日替わりセール」から。

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おもてなし接客英会話テキストブック: 外国人送迎ドライバー向け接遇マナーの基本と接客英語

基本はドライバー向けらしいのですが、外国からの要人を迎えた際に、「接客用の英語」を学ぶために読んでおくと良いかもしれません。


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