2015年10月17日
【トヨタ式】『トヨタの段取り』(株)OJTソリューションズ
トヨタの段取り
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた1冊。著者である(株)OJTソリューションズさんは、トヨタ自動車とリクルートグループによって設立され、「トヨタ在籍40年以上のベテラン技術者がトヨタ時代の豊富な現場経験を活かしたOJTを行う」という特色を持ったコンサルティング会社です。
アマゾンの内容紹介から。
トヨタの段取りは「ふつうの段取り」とどこが違う?トヨタの段取りは「成果を出すためのビジネスツール」なのです。3日の仕事、5分で完了※機械化なし。時間、人数、順番、作業…仕事のムダが財産に変わる。
なお、既にKindle版も用意されていますので、そちらもぜひご検討ください!
Model factory / Mr Wabu
【ポイント】
■1.問題点を出すときは「対策」を考えない「何が問題かわからない」と言う人もいますが、そういう人は、問題と一緒に対策案を考えている可能性があります。(中略)
たとえば、毎日残業するのが当たり前になっている人は、それを問題としてすら考えられなくなりますが、残業が日常化するのには必ず原因となる問題が存在します。残業を問題として認識できれば、「作業を分担してもらう」「アルバイトを雇う」「重要度の低い仕事をなくす」といった解決策を検討できます。
どの問題を解決するか、どうやって解決するかは、あとで取捨選択すればいいのです。まずは、問題点をあぶり出すことが、段取りよく仕事を進めるポイントとなることを理解しておきましょう。
■2.仕事の「平準化」で手待ちを撲滅する
たとえば、オフィスでも、こんなことが起きていないでしょうか。
経費精算の申請書類の提出期限が「月末」と決まっている場合、期限ギリギリになってまとめて書類を作成し、経理部に申請する人がいます。そういう人が多ければ多いほど、月末に大量の申請書類が経理部に持ち込まれ、大量の作業が発生します。それが原因で経理担当は残業をしなければならないケースもあるでしょう。
経費精算の作業が月末前後に大量に発生する一方で、それ以外の日は、経費精算の作業が少なく、経費精算の仕事にかぎっては「手待ち」が発生している状態です。
たとえば、各人が1ヵ月ごとではなく、1週間ごとに経費精算の書類を提出すれば、経理部の仕事の平準化が図れて、手待ちの時間がなくなります。このように、自分だけでなく後工程も含めて仕事のリードタイムの視点をもつことも重要です。
■3.仕事を始める前に「目的は何か」を確認する
たとえば、資料を作成するとき、レイアウトやアニメーションなど見栄えにこだわる人は少なくありません。競合とのコンぺのように資料の第一印象も決め手になるケースでは、資料の見栄えも重要です。
しかし、社内のかぎられた関係者向けの資料であれば、要点を整理したシンプルなもので十分です。
もし、どのような目的で資料を使うのかを確認せずに、見栄えのよい資料をつくってしまったら、それは大きな加工のムダです。わかりやすい言葉でいうと、「やりすぎ」です。美しくわかりやすい資料をつくろうと思えば、時間も手間もかかりますから。
したがって、仕事を始める前には、「目的は何か」を確認することが大切です。
■4.内段取りの作業を外段取りに移す
商談の席で、これまで商品やサービスの説明をすることを内段取りだとしてきたとしましょう。しかし、商品やサービスの説明は、場合によっては、先にお客様に資料を送付しておき、事前に目を通しておいてもらえれば、説明の時間を大幅に短縮することが可能になります。
内段取りから外段取りに移した作業は、内段取りの作業の前に準備をすることが可能です。(中略)
外段取りにまわせる作業をピックアップするポイントは、次の3つです。・自分以外の誰かに任せられることはないか
・その場所以外でできることはないか
・そのタイミング以外でできることはないか
■5.仕事の増加時は「細分化」、減少時は「統合化」する
もし売上が好調で担当者1人ひとりの仕事量が増えているようであれば、他部署の人を異動させて人員を増やすなどして仕事ごとや顧客ごとに分業化を図る。たとえば、顧客からの注文や問い合わせに対応する人と、実際に顧客先を訪ねて商談をする人に分ければ、生産性を維侍しながら売上を上げることができます。
反対に、売上が落ちていて、仕事量が減っている局面であれば、これまで分業していた「新規顧客の開拓」「顧客先での商談」「顧客のアフターフォロー」といった業務を統合する方向で考えてみる。そうすれば、生産性を維持しながら、利益を生み出すことが可能です。
【感想】
◆本書で紹介されているTIPSは、製造業であるトヨタのメソッドですから、基本的には同じ「製造業向け」のようですが、必ずしもそうではありません。たとえばポイントの2番目の「仕事の平準化」。
業務内容的に、一時期に集中しがちなモノを平準化する試みは、私たちの身の回りでも見られることです。
具体的には、「年賀状の印刷を11月中にオーダーすると割安になるお店」、というのもその1つでしょう。
これは外部との話ですからインセンティブが必要ですが、社内においても検討できる部分は多かれ少なかれあると思います。
◆同様に、上記ポイントの3番目の「目的を確認する」ことも留意点の1つ。
上記とは逆に、上司から「売上のデータをまとめておいてくれ」と言われて、上司の確認用の資料だと思い、必要最低限の数字だけを並べたモノを作ったところ、幹部会議で使う経営陣への説明資料だったりした場合には大変です!
……もっともこれは、指示する上司にも責任がありそうですがw
本書曰く、多くの人は、段取りを考えるときに、まず「HOW」(どうやるか=やること・やり方)を優先しがちですが、その前に「WHY」(なぜやるか=目的)にも注目せよ、とのこと。
そしてこの「WHY」に沿って、それ以外の5W1Hをきちんと押さえることが、仕事の「ヌケ」や「モレ」を防ぐことにつながるワケです。。
◆ちなみに、冒頭の内容紹介であった「3日の仕事、5分で完了」というエピソードも当然本書には収録済み。
これはコンサル先ではなくトヨタの内部でのお話で、1970年頃のプレス工程でのいきさつでした。
当時は現場のベテランが、「紙1枚レベルの厚さを微調整」しながら業務を行っていたのですが、特定の人にしかできないため長い時間がかかっていたそうです。
そこでこの調整業務を、「誰でもできるように、ベストとなる条件を具体的な数値で定めた」ところ、大幅に段取り改善が進んだとのこと。
内容紹介では「※機械化なし」と注書きがされていますが、最終的には300秒(=5分)で完了し、その後オートメーション化によって80秒にまで短縮したのだとか。
ただ、私たちオフィスワーカーも、フォーマットを定めたりテンプレートを作ったりすることによって、「特定の人しかできない業務」を減らすことは可能です。
以前当ブログでもご紹介したこの本、意外と中古が高いんですがw
テンプレート仕事術 ―日常業務の75%を自動化する
参考記事:【効率化】「テンプレート仕事術」信太 明(2010年04月21日)
……送料考えたら、Kindle版の方がお得ですね。
◆ただし、1点疑問だったのが「ギリギリまで着手してはいけない」というTIPSでした。
トヨタに限らず製造業の場合、在庫を抱えることは保管や管理のためのコストが余計にかかるので「ムダ」なのは分かるのですが、私たちオフィスワーカーは、後工程がいつスタートするかに関わらず、前工程の作業は終わらせてしまってもいいのではないか、と。
もっとも、早く完成してしまってから、途中で仕様が変更になったり、そもそもその仕事自体がなくなることはありうるので、その場合は早めにやったことが「ムダ」にはなりますか。
そう考えると、デッドラインから逆算してギリギリにスタートすれば、そうしたムダは省けますけど、これってかなりリスキーな気が!?
まぁ、その辺の精度が確かなトヨタだからこそ、これだけの利益をあげられているのだと思いますが。
参考にしたい「理想の段取り」がここに!
トヨタの段取り
第1章 仕事の成果は「段取り」で決まる
第2章 「7つのムダ」を取り除くことから始める
第3章 仕事にかかる「時間」を短縮する
第4章 段取りの「質」を上げるコツ
第5章 確実に実行するためのコミュニケーション術
【関連記事】
お前らもっと『トヨタの片づけ』の凄さを知るべき(2012年11月22日)「トヨタの口ぐせ」OJTソリューションズ(2006年10月24日)
【紙1枚!?】『トヨタで学んだ「紙1枚! 」にまとめる技術』浅田すぐる(2015年02月17日)
【トヨタ流】『トヨタが「現場」でずっとくり返してきた100の言葉』若松義人(2013年06月22日)
【編集後記】
◆今日の「Kindle日替わりセール」から。ソース〜あなたの人生の源は、ワクワクすることにある。
どこかで見たことあるな、と思ったら、2006年2月にアマゾンで買ったとの注文履歴がありましたw
……買った時点で既に新刊ではなかったので、積読になり、そのままどこかのダンボールに埋もれてる模様。
今日なら、送料込みの中古よりお買い得です!
ご声援ありがとうございました!
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