2015年09月24日
【思考術】『あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか―――論理思考のシンプルな本質』津田久資
あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか―――論理思考のシンプルな本質
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも注目を集めていた「思考術本」。タイトルに「東大卒に勝てるのか」とありますが、著者の津田さんご自身は「東大法学部卒」で「カリフォルニア大学バークレー校経営大学院」でMBAをとり、「博報堂」や「ボストンコンサルティンググループ」で働かれてきた、という経歴の持ち主です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「頭がいい人」の条件が変わった!
なぜ「学力の壁」を超えられるのか? なぜ「高学歴」でも結果が出ないのか?(中略)
「これまでロジカルシンキングを学ぼうとして挫折した」
「こみ入った理屈っぽい話になると、どうもついていけない」
「発想のスピードやアイデアの質を高め、ビジネスで勝ちたい」
そんなあなたの思考スピードを高め、知的下剋上を引き起こす一冊。
まさに、学歴のある方にこそお読み頂きたいな、と。
Tokyo University;Yasuda Auditorium / sir.Kir
【ポイント】
■1.発想の質は「3つの要素」で決まるここまでの内容を踏まえて、これ以降のカギとなる考え方を定式化しておこう。発想の質 ≒ 発想の広さ = (1)情報量 × (2)加工率 × (3)発想率(中略)つまり、どれくらい幅広い発想ができるかということは、(1)アイデアの素材がどれくらい頭の中にあるか(情報量)という3つの変数が絡み合って決まっているのである。
(2)素材をどれくらい潜在的アイデアに加工できているか(加工率)
(3)潜在的なアイデアをどれくらい顕在化できているか(発想率)
■2.「書いているとき」だけ「考えていた」と言える
人が考えているかどうかを決めるのは、その人が書いているかどうかである。
アイデアを引き出すとは、アイデアを書き出すことにほかならない。少なくとも大多数の人にとってはそうである。これまで人生の中で、真剣に考えた経験がある方は思い返してほしい。あなたは1時間とか2時間、腕を組んでう〜んと唸りながら思考をめぐらしていただろうか。そういう人はかなり少ないと思う。
本当に何かを考えたときには、そのプロセスや最終的なアウトプットについて、何かしら必ず書いているはずである。逆に言うと、それがない限り「考えていた」とは言えないのである。
■3.モレてはいけないがダブってもよい
僕がここまで語ってきたことは、2つの点で教科書的な意味でのMECEと異なっている。(1)一般的なMECEのルールと違って、ダブリを許容しているまず(1)について見ていこう。MECEは項目間の重複を認めないものの、僕が語っているチェックリストはダブリをよしとしていた。発想のモレを防ぐという目的にとっては、項目間の重複はプラスにもマイナスにもならないからである。(中略)
(2)一般的なMECEのルールと違って、発想を広げることを目的としている
さきほどの2点のうちの後者「(2)発想を広げることを目的としている」は、実践的な意味でより重要である。
つまり、MECEに考える目的は、問題をツリー状に整然と分類することではない。発想の質を高めるという、より高次の成果を目指しているのである。
■4.直感よりも発想が広がったかどうか?
MECEに考えることに成功しているかどうか、その基準になるのは、当然のことながら、細かく枝分かれした見事なツリーをつくれたかどうかではない。
では、何がカギになるのか?
「直感だけで発想したときよりも、発想が広がっているか?」――これに尽きる。
直感的にパッと思いついたアイデアが3個あって、そのあとツリーをつくりながらMECEに分解して考えた結果、アイデアが7個になったとしよう。
これが「直感よりも発想が広がった」ということである。発想の幅が広がっているということは、「しまった」が起きる可能性が減ったことにほかならないのだから、この場合はやはり論理的に考えた意味はあったのである。
■5.片っ端からメモをとる
メモをとりながら同時に考え、相手の話を整理するのが理想的だ。しかし、なかなかそこまでできないという人がほとんどだろう。話を聞きながら、手も頭も動かすというのは、想像以上に難しい。
そういう場合は、相手が語っているることを片っ端からメモするようにしよう。箇条書きや矢印などを使いながらでかまわない。メモする情報を中途半端に取捨選択せずに、愚直に手を動かすべきである。情報流入のところでも伝えたとおり、そうした選別には必ず「バカの壁」が入るからだ。
加えて、万遍なくメモをとるようにしたほうが、相手が考えていないこと、つまり相手の「バカの壁」にも気づける可能性が出てくる。いわゆる質問力がある人というのは、相手の思考の穴に気づき、そこに質問を投げかけることで、相手の発想を広げることができる人のことを言うのである。
【感想】
◆本書の著者である津田さん曰く、発想においてライバルに負けるときには、3つのパターンしかない、とのこと。それは、「自分も発想していたが、競合の方が実行が早かったケース」、「自分も発想し得たが、競合の方が発想が早かったケース」、「自分には発想し得ないくらい、競合の方が優れていたケース」の3つです。
このうち最初の「実行力」の差については、思考力は関係ないので割愛。
また、最後の「発想し得ない」差であれば、それは「完敗」であり、「まいった」としか言いようがありません。
そこで本書で「何とかすべき」なのが、真ん中の「惜敗」であり、これを本書では「しまった」と呼んでいます。
そして、アイデアの戦場では、この「しまった」が9割を占めるとのこと。
◆そこで、この「しまった」を避けるにはどうしたら良いか?
上記ポイントの1番目の「3つの要素」のうち、最後の「発想」部分でモレることを防ぐために、MECEで整理するというのが本書の主張です。
当ブログでは、今まで「MECE」に言及した書籍をずい分とご紹介してきましたが、「ダブってもいい」と断言したのは、本書が初めてかもしれません。
それというのも、ひとえに「モレ」を防ぐため。
たとえば、あるメーカーの売上が落ちたとき、開発部門の人であれば「商品をリニューアルしよう」と考え、営業部門の人であれば「陳列の状況が悪いのではないか」と考え、宣伝部門の人であれば「商品の知名度が下がっているのではないか」と三者三様に考えると言う。
つまり、どこか1つの視点がモレただけで、その部分はまったく考慮されなくなってしまうわけです。
実際、私の顧問先でも、売上不振に悩むところがあるのですが、このように「モレなく」考えないと、本質的な要因を見逃しかねないような……。
◆本書では、第6章でロジックツリーの作り方について、丁寧に指南してくれています。
ツリーには大きく分けると3つの種類があり、それぞれ目的に応じて使い分けるべきである、とのこと。
さらにそこから「具体的ステップ」についても解説されているので、まずはこれに従ってやってみると良いと思います。
ちなみに危険なのが、最初からMECEに分解しようとすることで、論理思考に慣れていないふつうの人がこれをやると、発想が広がらなくなることがあるのだそう。
あくまで本書にあるように「直感→上流→下流」という手順でやって頂きたく(詳細は本書を)。
◆なお、著者の津田さんの作品としては、以前こちらの本をご紹介したことがあります。
出来る人ほど情報収集はしないもの! ─情報洪水に溺れないために (WAC BUNKO)
参考記事:【結論思考】『出来る人ほど情報収集はしないもの! ─情報洪水に溺れないために』津田久資(2012年10月07日)
この本でも上記の「しまった」「まいった」他、本書内に登場するいくつかのフレーズが散見されますが、本書の方がより具体的で、実践を意識されている感じ。
この辺は、上記の本出版後の研修等で、さまざまなフィードバックを得られたからかもしれません。
……実際津田さんは、1年程前、某私立大学にゲスト講師で呼ばれた際、200名近い学生に向かって
「君たち、そんなことでは、東大卒のやつらに一生勝てないぞ!」と言い放ったのだそう(これまた詳細は本書を)。
「知的下克上」を起こすために!
あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか―――論理思考のシンプルな本質
第1章 思考のフィールドで勝つ ― マッキンゼーと東大卒の「頭のよさ」はどう違うか?
第2章 思考の幅を広げる ― アイデアの「孫悟空」にならない、唯一可能な方程式
第3章 論理的に考える ― 天才に近づく思考法
第4章 発想率を高める ― 広大な砂漠で宝を掘り当てるには?
第5章 発想の材料を増やす ― 知識の鵜呑み・食わず嫌いを無くす、したたかな戦略
第6章 発想の質を高める実践知 ― 「生兵法」で大怪我をしないために…
第7章 〔付論〕結論思考の情報収集術 ― なぜあの人の新プロジェクトはコケたのか?
終章 あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか? ― 知的下剋上の時代を生き抜く
【関連記事】
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【仮説検証】『アウトプットの質を高める 仮説検証力』生方正也(2015年07月23日)
【オススメ!】『コンサル一年目が学ぶこと』大石哲之(2014年07月30日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。[音声DL付]相手を必ず味方につける英会話のロジック
「やたら中古が高い」ですとか、「今年7月に出た本なのに、もう日替わりにセール?」という良く分からない1冊です(謎)。
ご声援ありがとうございました!
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