2015年09月04日
【起業】『未来に先回りする思考法』佐藤航陽
未来に先回りする思考法
【本の概要】
◆今日ご紹介するのも、昨日同様、先日の「未読本・気になる本」の記事でも注目を集めていた1冊。本書の帯では、著者の佐藤さんのお名前と同じくらいの大きさで、元Googleの村上憲郎さんさんや、元Appleの前刀禎明さんらが推薦されているという。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「何十年後にこうなる」という未来予測の結論のみを知ったところで、そこに至るまでのプロセスがわからなければ、一切応用が利きません。
しかし、もしも社会が進化するパターンを見抜いていれば、状況が変わっても未来を見通すことが可能になります。
そのための汎用的な思考体系をお伝えするのが本書のテーマです。
なお、在庫切れのためか、早くも中古に高値が付いていますが、Kindle版なら現時点で「28%OFF」とお買い得です!
Boston Future / Infrogmation
【ポイント】
■1.タイミングがすべてを決めるスマホやタブレットもコンセプトそのものはずっと昔からありましたし、実際に作って販売した人たちもいました。ただ、高すぎたり、重すぎたりなどの様々な理由から普及しなかっただけです。端末製造のコストが下がり、ネットの回線が十分に速くなったタイミングで登場したからこそ, iPhoneは成功したのでありAppleだけに未来が見えていたわけではありません。ただ、タイミングが適切だったのです。(中略)
この観点から見れば、たまに耳にするウェアラブルデバイスが流行るかどうかといった議論はあまり本質的な話ではありません。重要なのは、いつのタイミングで本格的に普及するのかです。
■2.価値をデータとして数値化する
ネットが普及したことで、今まで数量化できなかったあらゆる価値がデータとして数量化できるようになりつつあります。
たとえば、SNSは今まで定量化できなかった「他者からの注目」という価値を数字に換算することを可能にしました。多少極端な例ですが、貯金は0円でも、多くの人に注目されていてTwitterのフォロワーが100万人以上いる人であれば、事業を始めることは不可能ではありません。SNS上で仲間を募り、クラウドファンディングを通して資金を募り、わからないことがあればフォロワーに尋ねて知恵を借りることができます。
彼は「他者からの注目」という貨幣換算が難しい価値を、いつでも好きなタイミングで人、資本、そして情報という別の価値に転換することができるのです。
■3.自分の選んだ道を見直す
ビジネス書ではよく効率化のノウハウや、ライフハック的なテクニックが紹介されています。しかし、本当に大きな成果を上げたいのであれば、真っ先に考えなければいけないのは今の自分が進んでいる道は「そもそも本当に進むべき道なのかどうか」です。
いくら現状の効率化を突き詰めていっても、得られる効果はせいぜい2〜3倍が限度です。あなたがもし10倍や100倍の成果を得たいのであれば、今自分が取り組んでいる活動そのものを見直す必要があります。
自転車をどれだけ改造して整備しても、宇宙に出ることは永遠にできません。どれだけ早くぺダルをこいでも、自転車は構造上空に浮くことは絶対にありません。もし月に行きたいのであれば、まず今乗っている自転車から降りる必要があるのです。
■4.リソースを揃えて、タイミングを読む
ビジネスの世界でアクションを起こすのは、電車に乗る行為とよく似ています。(中略)
最も遠くに連れていってくれる電車を見つけて飛び乗ることに成功すれば、大きく飛躍できるでしょう。ただし、そのためには「切符」を持っている必要があります。
この「切符」にあたるのが「リソース」です。それは資金だったり、自分のスキルや経験だったり、人脈だったりと、様々です。もしそれらの最低条件を揃えていないと電車に乗ることはできません。もちろん、電車によって切符はすべて異なります。
もしあなたが、何が課題でどうすればよいかがわかっていても、切符を持っていなければ、チャンスに飛び乗ることはできません。
そして、もうひとつ重要になるのが電車の出発時刻、つまリタイミングの問題です。
ビジネスの世界には、定められた時刻表はありません。自分の予測にもとづいて、電車がやってくるタイミングを読む必要があります。タイミングが、すべてを決めます。
■5.半信半疑のビジネスが成功する
私も起業して以来10以上の新規事業を立ち上げてきましたが、うまくいったものとうまくいかなかったものにはそれぞれある傾向がありました。自分も他人もうまくいくと考えていた事業は失敗し、自分も含め全員が半信半疑である事業は成功したのです。
他社で巨大なサービスを作ったプロデューサーや経営者に立ち上げ当時の話を聞いてまわったところ、驚くことにみな口々に同じことを語りました。どのサービスも立ち上げ当初は誰も注目していなく、社内も社外もうまくいくと思っている人間はいなかったのだと。(中略)
周囲の人にもチャンスとわかるようなタイミングでは遅いのです。自分でも成功確率が五分五分というタイミングが、本当の意味でのチャンスです。
周りの人たちが一度話しただけで理解できるようだったら、考え直してください。逆に、首をかしげられたり、うまくいかなさそうだと否定的なリアクションをしてきたようなら、そこにこそチャンスはあります。
【感想】
◆上記ポイントの1番目を読んでいて、私が思い浮かべたのは、『社長失格』で有名な板倉雄一郎さんのハイパーネットのことでした。社長失格
(いつの間にか、Kindle版も出ているというw)
「広告を配信することによって、インターネットに無料で接続する」というハイパーネットのアイデアは、ビジネスモデル的には誤っていなかったものの、当時(1996年)はまだインターネット自体が普及しておらず。
結局1997年に同社は倒産するのですが、その直後に楽天やサイバーエージェントが創業して、大きく成長しています。
……という話は、この本にも書かれていましたね。
大金持ちの教科書
参考記事:【儲けのオキテ】『大金持ちの教科書』に学ぶ6つのNG(2014年12月09日)
◆その「タイミング」が大事ということは、上記ポイントの4番目でも再び強調されています。
ただし、いくらタイミングを読み切っていても、ここでいう「リソース」がなければ、結局は「電車」に乗せてもらえません。
このうち最も「先立つ」ものは「資金」で、それを集める苦労に関しては、この本でも赤裸々に書かれています。
未来を切り拓くための5ステップ: 起業を目指す君たちへ
参考記事:【起業心得】『未来を切り拓くための5ステップ: 起業を目指す君たちへ』加藤 崇(2015年07月22日)
「東大で研究していた」というレベルの「スキル」があっても、下手をしたら彼らの会社であるSCHAFTは資金繰りが付かずに倒産していました。
それというのも、彼らのテーマである「ヒト型ロボット産業」の未来について、日本のベンチャーキャピタルのほとんどが「半信半疑」だったからなのですが。
◆そこで、改めて上記ポイントの5番目につながってきます。
SCHAFTの場合は、本人たちは「うまくいく」と考えていましたが、周りはそうは思っていなかったからこそ苦労したわけで。
ちなみに、確かGoogleに買われた後で、とある日本のベンチャーキャピタルからSCHAFTの加藤さん宛てに来た年賀状に「今年はロボットに注力したいです」とか書かれていて、「遅いよ!」と思ったというw
結局ここでも「タイミング」の問題になってしまいますが、「自分でも成功確率が五分五分というタイミングが、本当の意味でのチャンスです」というお言葉を、胸に刻んでおきたいところです。
◆また、上記ポイントの2番目の「価値を数値化する」お話に関連して、IT企業の時価がやたら高い理由も解説されていました。
たとえばFacebookは、2014年に年商20億円に過ぎないメッセンジャーアプリ「WhatsApp」を2兆円で買収しましたが、これは財務諸表から考えるだけでは理解できません。
同じようにGoogleも、売上5兆円・利益1兆円なのに、時価総額は約40兆円と評価されています。
これらはいずれも、「情報」という貸借対照表に計上できない「資産」があるから。
上記ポイントの2番目の「Twitterのフォロワー100万人」君も、「貯金はゼロ」でも目に見えない「資産」があるわけですね。
◆実は本書を読んで、一番付箋を貼ったのは、第4章の「未来に先回りする意思決定法」の部分でした。
途中まで読んだ時点で、レビューを書くのをいったん諦めそうになりました(ヲイww)が、最後まで読んで良かったです。
ゆえに、リアル書店でチェックされる方は、「はじめに」の次に、この第4章を読まれることをオススメ。
すぐに上記ポイントの3番目のお話が出てきて、以降付箋を貼りまくることになると思います……って立ち読みで付箋貼ったらいけませんがw
起業を志す方なら必読です!
未来に先回りする思考法
第1章 テクノロジーの進化には一本の「流れ」がある
第2章 すべてを「原理」から考えよ
第3章 テクノロジーは人類の敵なのか
第4章 未来に先回りする意思決定法
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【編集後記】
◆連日の「Kindle日替わりセール」でアレですがwプロの代筆屋による心を動かす魔法の文章術 impress QuickBooks
アマゾンレビューもなかなか高評価という。
ご声援ありがとうございました!
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