2015年08月15日
格差社会を生き延びるための『自己啓発書を読んでベンツを買った話』

自己啓発書を読んでベンツを買った話
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、7月末の「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた1冊。本書の著者であるチェ・ソンラク氏は、東洋未来大学経営学部教授であり、なかなかロジカルに自己啓発書を推してらっしゃいます。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
韓国でのいわゆる「勝ち組」、名門大学卒、博士号取得、現職教授である著者。しかし、ある時、平凡な学歴の一般会社員と経済的な差がほとんどないことを知り、学歴や職業が経済的な裕福さをもたらすわけではないことに気づく。著者が自己啓発書を読み、その内容通りに実践、その後に起きた人生の変化を基に、自己啓発書の持つ力や読み方について紹介。行動が変化するまで読み続ければいいと断言する、自己啓発書好きの読者に勇気を与える一冊。
なお、タイトルは久し振りに「ホッテントリメーカー」のお世話になりましたw

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【ポイント】
■1.自己啓発書の主な内容は科学である目標を設定する、目標を具体化する、失敗してもやり続けるなどの話は「経営学」だ。経営学で言われ続けてきた話なのだ。ポジティブな思考は、心理学の範疇だ。心理学で、その効果は十分証明されている。自己啓発書に出てくる話は、単なる格言ではない。経営学と心理学のテキストをわかりやすく読み解いた内容なのだ。
難解な経営学や心理学の専門書を一般の人が簡単に読めるようにつくられた本が、自己啓発書というわけだ。
■2.自己啓発書の主張はレベルが低いわけではない
多くの自己啓発書は、簡単に読める。文章も平易だ。それは明らかな事実だが、その主張までレべルが低いわけではない。
小学生向けに編集された『レ・ミゼラブル』を読んで、『レ・ミゼラブル』はレべルが低いと判断してはいけないのと同じことだ。
自己啓発書は、難しい学術書の内容を一般読者でも簡単に読めるようにと、かみくだいて書かれた本なのだ。
もし、自己啓発書の文章や内容のレべルがあまりに簡単に感じられて不満ならば、自己啓発書で扱われている内容を紹介した学術誌を読めばいい。
■3.自己啓発書は「幸せ」ではなく「夢をかなえること」を保証する
多くの人が誤解していることがある。自己啓発書が本来伝えようとしている話は、この本に従えば幸せになれる、ということではない。
もちろん、そう書いている本もあるが、それは付随的なことだ。大部分の自己啓発書は、「この本のとおりやってみれば、もっといい成果を上げられる」「この本を読めば、もっと所得を上げられる」「この本を読めば、夢をかなえられる」と書いているにすぎない。
私も、どうすれば人生で幸せになれるかわからない。どうすれば成功と呼べる人生になるのかもわからない。だから、「こうすれば幸せになれます」「こうすれば成功した人生を歩めます」ということは書けない。
私がこの本で主張するのは「どうすれば幸せになれるか」ではなく、「どうすればべンツを買えるか」だ。
■4.現状に満足せず、変化し続ける
自己啓発書の最大の長所は、現状に満足せず、変化し続けろと言ってくれることだ。
自己啓発書は、たった1度成功したくらいでは、「やめてもいい」とは言わない。変化し続け、よりよい自分を目指そうと語りかけるのだ。
周りからは、もう満足してそこに留まってもいいと言われるかもしれないが、自己啓発書はもう1度変化を促すのだ。
そうして、以前立てた目標が達成されたあとも、自己啓発書を読み続けていけば、また別の目標を立てて、さらに変化しようとする自分を発見できる。
■5.行動が変化するまで自己啓発書を読み続ける
自己啓発書によって考え方や行動が変わるのは、液体である水が気体になることと等しい。つまり、水は100℃で沸騰するので、どんなに火にかけてもそれ以下の温度では絶対に沸騰しない。
水を沸騰させるには、100℃になるまでとにかく火にかけ続けなければなばらないのだ。
自己啓発書を読むことは、気持ちに薪をくべることだ。
沸騰するまで水を火にかけるように、行動が変化するまで自己啓発書を読み続けるのだ。
【感想】
◆読む前から分かっていたことですが、本書のスタンスは「自己啓発書肯定派」です。一方で、ここ最近の私の観測範囲内では、むしろ自己啓発書に対して批判的な本が多かったのも事実。
たとえば当ブログ紹介済みの作品としては、こんなところが。

読書で賢く生きる。 (ベスト新書)
参考記事:【ビジネス書を斬る?】『読書で賢く生きる。』中川淳一郎,漆原直行,山本一郎(2015年04月10日)

ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない (マイナビ新書)
参考記事:【警鐘?】『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』漆原直行(2012年02月25日)
もっとも、自己啓発書を出す著者さんや版元さんは、わざわざ自己啓発書を肯定することなく、それが「良いもの」だという前提で、出版されているワケなのですが。
◆それに対して本書の大きな特徴の1つが、「自己啓発書に対するさまざまな批判に答えている」こと。
下記目次の第2章「行動しない者よ、なぜ自己啓発書を罵るのか!」がその部分なのですが……ってスゴイ見出しですねw
内訳である具体的な小見出しが、アマゾンの内容紹介に全部掲載されているので、そちらからいくつか引用すると、
・自己啓発書は「瞬間の麻薬」?
・自己啓発書はレベルの低い本?
・自己啓発書を読んだ人全員が成功するわけではない?
といった感じです。
そして本書は、こうした疑問点、問題点に、真っ向から反論。
たとえば上記ポイントの2番目は、「自己啓発書はレベルの低い本?」という論点での回答部分からのものです。
著者の主張によれば、マルコム・グラッドウェルの『天才! 成功する人々の法則』は、読みやすくて簡単な内容ではあるものの、「1万時間の法則」自体は、心理学者のアンダース・エリクソンの研究成果たる論文からのもので、十二分に価値がある、とのこと。
なお、「1万時間の法則」に関しては、「ただ単に1万時間やればいい、というものではない」ことを解説してくれる、この本が個人的にオススメです。

究極の鍛錬
参考記事:一流職人もびっくり 驚愕の『究極の鍛錬』(2012年06月13日)
◆続く第3章では、「自己啓発書を、どのように読むべきか?」と題して、本の選び方や、具体的な読み方を指南。
選書については、3つ挙げており、うち2つだけ言っておくと「ベストセラー」と「翻訳書」というのは納得かな、と。
ただし、韓国における「翻訳本」で多いのは、「アメリカと日本の本」とのことなのですが、我が国の自己啓発書の中には(ゲフンゲフン
なお、巻末には付録として「教授が愛した自己啓発書 10」なるものが収録されているので、そちらもご参考まで。
……ちょっとベタな本が多くて、当ブログでご紹介済みだったのは、上記で挙げた『究極の鍛錬』だけでしたがw
また、読み方に関しては、「精読か、速読か」という論点はあるものの、上記ポイントの5番目が結論のよう。
結局「行動」にまで至らないと、自己啓発書の効果は表れませんので。
◆ところで、本書を読んでいて気になっていたのが、実際に著者がベンツを買うまでに至った経緯が、ほとんど書かれていないことでした。
「自己啓発書賛歌」が続く割には、どうやって金を稼いだか、についての話は皆無。
「これじゃあ、説得力ないぞ…」と思っていたところ、最後の最後、「エピローグ 夢を書いてから、ベンツを買うまでの短い実行記」にて、その経緯が明らかにされていました。
このパートは、ページ数にして11ページほどで、著者が試行錯誤する過程が簡単に描かれているのですが、一言でまとめると「なんでもやった」ということかと(ネタバレ自重)。
この内容は確かに、そこまでのパートに当てはめにくいですし、正直「説得力」という意味ではちと微妙な感じ。
確かに「自己啓発書を読む」というスタートと、「ベンツを買えた」というゴールは合っているのですが、本書に載せる必要があったのか、という……。
もっとも、この「試行錯誤」自体、自己啓発書を読まない限り起こり得なかったのですから、やはり「自己啓発書を読んでベンツを買った話」なのは事実ですねw
いずれにせよ、「自己啓発書は行動を促す効果がある」ことは、本書を読んで十分理解できました。
自己啓発書に疑問を持つ人にこそ読んで頂きたい1冊!

自己啓発書を読んでベンツを買った話
プロローグ 私は、自己啓発書を読んでベンツを買った
第1章 決して馬鹿にできない自己啓発書の力
第2章 行動しない者よ、なぜ自己啓発書を罵るのか!
第3章 自己啓発書を、どのように読むべきか?
エピローグ 夢を書いてから、ベンツを買うまでの短い実行記
付録 教授が愛した自己啓発書10
【関連記事】
【超自己啓発?】『「人生成功」の統計学〜自己啓発の名著50冊に共通する8つの成功法則』晋一(2014年01月10日)一流職人もびっくり 驚愕の『究極の鍛錬』(2012年06月13日)
【ビジネス書を斬る?】『読書で賢く生きる。』中川淳一郎,漆原直行,山本一郎(2015年04月10日)
【警鐘?】『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』漆原直行(2012年02月25日)
【成功本?】『「成功法則」を本気で科学する』野口哲典(2014年10月11日)
【編集後記】
◆本日の「Kindle日替わりセール」から。
必ず出会える!人生を変える言葉2000
中身は見てないのですが、このお値段で「2000の言葉」というのは、お買い得な気が!?

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