2015年08月05日
【データ分析】『それちょっと、数字で説明してくれる?と言われて困らない できる人のデータ・統計術』柏木吉基
それちょっと、数字で説明してくれる?と言われて困らない できる人のデータ・統計術
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の編集後記で触れたビジネススキル本。本書の著者である柏木吉基さんは、元日産で、外国人役員に数々の企画や提案を通したという「意思決定」のプロフェッショナルです。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
ロジカルシンキングはできても数字が使えない、グラフ化などデータの整理はできてもロジカルな進め方や考え方ができないので、適切な結論にたどり着かないという方は多いです。
本書では、初めて「数字」と「ロジカルシンキング」を組合わせ、データ分析をする前に絶対必要となる考えの組み立て方を中心に紹介する本です。
なお、既にKindle版も用意されております!
Numbers And Finance / kenteegardin
【ポイント】
■1.「データ整理」と「データ分析」の違い「データ整理」とは、先月の支店別売上高や売上高の月次推移などに代表されるように、過去の結果を"整理した"ものです。支店ごとの比較や売上トレンドの把握など、それぞれはじめた当初には一段的な目的があったと思います。
ただ、それを把握してどうするのか、という根本的なゴールが抜けていることも多いのです。(中略)
これに対して「データ分析」は、具体的な目的があり、その目的のために必要な情報を深掘りします。単にそこにあるデータの特徴を把握するだけでなく、そこから一般則としても使えるような価値ある情報を引き出して、他の商品や地域、将来の予測など、汎用的に使える情報にたどり着くことを目的とします。
■2.課題を整理する際の4つのポイント
(1)言葉の定義は明確ですか?
(例)「売上」⇒売上額? 売上個教?
(2)データで定量的に
(例)「急激に」⇒ 2割? 50% ?
(3)比較対象を明確に
(例)「下がっている」⇒前年同期と比べて? 他社と比べて?
(4)事実(現象)とそれ以外とを切り分けて
■3.仮説には、WHAT型とWHY型がある
全体像(Big picture)を把握した後に、具体的な課題ポイント特定するところから「仮説」が必要になります。
また、目的によりWHAT型とWHY型があります(図2-7)。
◎WHAT型仮説 どこに問題があるかを調べる
例)「何が遅配に影響しているのか→配達員ごとの差を調べよう」
◎WHY型仮説 なぜ問題が起こるのかを調べる
例)「なぜ、その配達員が遅れるのかを調べよう」
(詳細は本書を)
■4.軸を決めるための3つのポイント
(1)課題(目的)へのインパクトはあるのか最も本質的なポイントです。「思いつきやすい=重要な軸」とは限りません。上位課題へのインパクトの薄い軸で比較を行い、何かしらの違いがわかっても、そこに対策を打つことで課題が改善・解決されなければ意味がありません。(2)コントローラブルか確認する=こちらで動かせない要素は一旦捨てるコントローラブルとは、その要素を変動させるアクションがとれるという意味です。実務で必要なアクションにつなげるためには、いくら高い精度の分析結果であっても、手を講じられる要素に行きつかないと価値がありません。(3)そもそもデータが入手可能かこれはとても現実的な問題です。どんなに結果に大きなインパクトを与え、コントロールできそうとわかっている軸でも、そもそもそのような軸でデータを集めていない、もしくは集められなないという致命的な問題にぶち当たることは実務の世界では日常茶飯事です。
■5.「内向き」と「外向き」の視点でデータを比較する
多くのビジネスの現場で使われる「前年同期比」も、あくまで過去の自分との比較においては測ることができますが、市場の中での競争力を直接示す指標にはなりません。
たとえば、前年同期比が110%だったとしましょう。これは「よい成績」として喜べることでしょうか。もし、市場全体が昨年同期と比べて120%の成長を見せていれば、この110%の意味は大きく変わります。つまり、市場全体はもっと大きな成長をしているにもかかわらず、自社の成長はそれを下回るものであったことがわかります。この会社は前年同期よりは成長したものの、市場の中でのシェアを落としている(競合に比べるとパフォーマンスが悪い)という悪い評価になるわけです。
【感想】
◆本書は「物語形式」というわけではないのですが、実際の一連の作業を分かりやすく理解すべく、具体例的なストーリーが展開されています。主人公は、「新任マネージャーの洋介」。
彼は関東一円に展開するスーパー「タカラ屋」に4年前に入社し、最近エリア・マネージャーに昇格しました。
それにより、担当地域も店舗数も一気に増えて、それまでのやり方が通用せず、本部へのレポートや会議において「数字で説明してくれ」と言われてしまうことが多々。
そこに上司として赴任してきたのが、「デキる」上司として有名な高島です。
洋介は高島の指示に従い、「データ分析」のイロハを学んでいく……というお話が、各章ごとにテーマに合わせて続いていく仕様。
◆たとえば、上記ポイントでは割愛したのが「曖昧さをなくすマトリックス」なるものです。
これは縦軸に「客観的事実(目指すべき方向)」と「主観的な考え(陥りがちな点)」を、横軸に「現象」「原因」「方策」「意見・感想」を設置。
実際の問題をこれに当てはめていくと、どこが主観的でどこが客観的かが分かっていきます。
洋介は現状の問題点を挙げたものの、それらはほぼすべて「主観的な考え」であり、かつ、「客観的事実」も数字で説明されていませんでした。
◆そこで洋介はデータを集めて、グラフを作り上げますが、高島曰く、「これは"データ整理"」である、と。
洋介は、データをエクセルに入力すれば「データ分析」ができる気でいましたが、「整理」から「分析」に進むためには、「仮説」を立てることが必要でした。
つまり「お客さんが減ったのは、きっと宣伝がうまく伝わっていないからだろう」というような「仮説」を立てて、それが正しいかどうかを検証していくわけです。
その仮説については、上記ポイントの3番目のように「WHAT型」と「WHY型」の2種類が。
「WHAT型」は、まず上位の課題を「+−×÷」の四則演算的に分解し、その後、どこが課題なのかを見極めるための比較"軸"を決めていきます。
それにより課題が絞り込まれたら、今度は「WHY型」で要因を特定。
「WHAT型」はロジックツリー、「WHY型」はピラミッドストラクチャーを活用しているのですが、具体的には本書にてご確認下さい。
◆なお、割愛した中で「なるほど」と思ったのが、2軸で優先度を規定する「ペイオフマトリックス」というもの。
これは仮説がいくつもある場合に、「課題に対してのインパクト」を縦軸に、「実現容易性」を横軸にしたマトリックスを作り、そこに仮説をプロットしていきます。
右上端が、「課題へのインパクトが大きく、アクションを取りやすいもの」として最優先に。
そこからは徐々に左下に向かって順番に、仮説に優先度をつけていくという……。
これは私自身も、実務で活かしてみたいところです。
◆実はここまでは、ほとんど「サワリ」のようなもので、洋介のお話も、本書の内容も、これからが本番。
下記目次にもあるように、第3章では「標準偏差」が、第4章では「相関」が登場します。
相関分析はExcelの「CORREL関数」で一発でできる……というお話は、先日ご紹介したこの本でも登場していましたが、お忘れの方は、本書で再度復習を。
ビジネス×数学=最強
参考記事:【数学的センス?】『ビジネス×数学=最強』永野裕之(2015年06月11日)
本書の場合、「データ分析の初心者」という設定の洋介が成長していく話ゆえ、分かりやすく、かつ実践的なのが良かったです。
別の記事で申しあげたように、私のクライアントでも最近売上が激減したところがあり、実はそこを想定しながら、本書を読み進めていたのですが、かなり参考になりました。
実務で「データ分析」をし、「問題解決」されたい方にオススメ!
それちょっと、数字で説明してくれる?と言われて困らない できる人のデータ・統計術
プロローグ ビジネスに数字やデータはなぜ必要か
第1章 ロジカルシンキングとデータ分析で課題を解決
第2章 仮説で「当たり」をつけろ
第3章 「平均」と「標準偏差」で"課題ポイント"を特定する
第4章 「相関」で課題の"要因"を特定する
第5章 理解と承認を得て人を動かすための伝え方
【関連記事】
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【ノート思考】『マッキンゼーのエリートはノートに何を書いているのか』大嶋祥誉(2015年02月28日)
【編集後記】
◆本書の著者の柏木さんの前作がこちら(Kindle版もあります)。「それ、根拠あるの?」と言わせない データ・統計分析ができる本
こちらもなかなか使えそうな1冊です。
ご声援ありがとうございました!
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