2015年07月24日
【仕事術】『最速の仕事術はプログラマーが知っている』清水 亮
最速の仕事術はプログラマーが知っている
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも注目を集めていた1冊。UEIの清水 亮さんの新作(と言っても、今後立て続けに本が出るのですが)は、過去の著作とは打って変わって「仕事術」がテーマです。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
KISS原則 = 「とにかくシンプルにしろ」
DRY原則 = 「同じことは書くな」
YAGNI原則 =「必要になってからつくれ」
プログラマーの世界には、こうしたムダを削ぎ落とすための数々の原則や仕組みがあります。
本書ではそこから導き出される実践的な仕事術を、
国家認定天才プログラマーであり、経営者でもある著者が伝授します。
もちろん、Kindle版も抜かりありませぬ!
The Exemplary Programmer / illustir
【ポイント】
■1.ローマ字入力をやめる日本語文書を頻繁に入力するのにかな入力を覚えないというのは、人生の時間の半分をドブに捨てているようなものだ。
かな入力は最初は戸惑うが、慣れれば「なぜ今までかな入力を覚えようとしなかったのか」と驚くほど快適だ。(中略)
実際、実験的にこの章をここまでローマ字入力で書いてみたが、1時間で7000字程度(分速116文字)程度しか進まなった。主観的には気づかないが、僕の場合は実際にはローマ字入力で生産性が30%は低下していることになる。
■2.ワードではなくテキストエディタを使う
テキストエディタとは、Wordのようなワードプロセッサとは異なり、純粋にテキスト(文字)だけを編集することに特化したソフトウェアである。
ワードプロセッサと違い、文字を太くしたり大きくしたりといった装飾はできないが、軽量かつ高速で大量の文章でもびくともしない性能を備えている。
テキストエディタはプログラマーがプログラムを書くときに使う道具で、コンピュータソフトウェアの中でも最も歴史が古いものの1つである。単に「エディタ」とも呼ぶ。
プログラマーは論文や原稿などといった文書を書くときも、必ずと言っていいほどテキストエディタを使う。
なぜならテキストエディタの方がワードプロセッサよりも圧倒的に速く動作し、圧倒的に快適だからだ。
■3.二択の賭けにはどっちにも張る
キー入力だけでなく、コンピュータの中では常に様々な予測不能な「分岐」が起きる。
そこで分岐によるパイプラインハザードを極力減らす方法として、投機的実行という機能が組み込まれた。
これは、予測できない現象Aに対して、仮説Aと仮説Bの両方を先に計算してしまって、最後に否定された仮説の実行結果を捨ててしまうことにする。
つまり積極的に捨て駒を作ることで、全体のスピードを上げるのだ。
この方法は2倍以上のコストがかかるという欠点があるが、スピードは常に一定である。つまり最速なのだ。
■4.進捗会議はチャットで同時書き込みする
秘書が「進捗報告をお願いします」と号令をかけると、全員が「同時に」進捗報告を打ち込む。1人ずつ口頭で進捗報告す会議がパイプライン処理だとすれば、この会議はマルチスレッディングである。つまり10人それぞれが1人平均5分で進捗報告すると、口頭での会議には50分必要だが、チャットによるマルチスレッディングでは5分で進捗報告が完了する。
しかも人間は、耳で聞いた情報を処理するよりも目で文字を目で追うほうが情報を正確かつ高速に読み取ることができる。(中略)
文字で入力すれば、手元にメモをとる必要もない。
また、それぞれの抱える疑問点や問題点が瞬時に共有され、保存され、それぞれのイシュー(話題)に対して個別にリーダーや関係する人物がリプライ(返信)をつけることができる。
■5.過去の決断をくよくよ悩まない
プログラマーがトレードオフをするとき、メリットを享受する代わりにデメリットは潔く受け入れる、という性質がある。
例えば、処理は高速になるがメモリーは余計に食う、というのは典型的なトレードオフだ。
高速を処理をあきらめてメモリーを節約するか、それとも速度を優先してメモリーの消費を受け入れるか、これは重要な選択だ。
そして、どちらの選択肢にせよ、ひとたびトレードオフを決定したら、潔くあきらめる、というのが重要な点である。
速度を優先したなら、ほかの部分でメモリーを節約する、メモリーを優先したのなら、ほかの部分で速度を上げる、といったように、デメリットを前向きに受け入れて解決する姿勢が重要である。
【感想】
◆冒頭の内容紹介にあった「●●の原則」について気になった方もいらっしゃると思いますが、上記ポイントでは、それらについては触れておりません(一応ネタバレ自重)。ただ、同じように、「プログラマー的な考え方」や「用語」が「キーワード」として、それぞれのテーマの下に付されているという仕様。
もっとも、たまたま内容紹介では「英文の頭文字」タイプの原則が選ばれていましたが、そもそもが「キーワード」ですから、普通に「ディレクトリとツリー構造」ですとか、「トレードオフ」といった、私でも聞いたことのあるものもありました。
こうした「プログラマー的な思想」に基づいたTIPSについて、清水さんの実体験を交えて語られているのが、本書の基本的な構造になります。
◆まず第1章では、いわゆるタイピングや資料作りといった、いわゆる「仕事術」的なものについて解説。
上記ポイントの1番目や2番目が、ここからの引用になります。
その1番目では、「かな入力」を推奨しているものの、実はそれに続いて「親指シフト入力」まで紹介しているという。
また、ホントにそこまで省略化しているのか分かりませんが、本書の具体例では、辞書登録を多用することにより、「240回以上のキータイプが必要なメール」を「26回」で済ませています。
「いつもお世話になっております。」という文書を「い」で辞書登録する、くらいのTIPSはよく見ますが、プログラマーは、そんなものじゃ済まない模様。
◆続く第2章では「情報の整理法」について。
上記では割愛していますが、ここで知ったのが、「Gyazo」というプログラマー愛用のアプリです。
これは「画像の一部を切り取ってインターネットにアップロードし、アップロードすると同時にクリップボードにURLをコピーしてくれる」というもの。
しかも、静止画だけではなく、動画も送ることができるという。
これはブロガーにとっては、かなり有り難いツールじゃないでしょうか?
◆一方、第3章は「ミスを防ぐダンドリ」なんですが、難しげなプログラマー用語(「デバッグ」「フェイルセーフ」「プリフェッチ」等)が多めなので、ちと敬遠(すいません)。
逆に第4章は、上記ポイントの3番目と4番目の、清水さんの会社の事例が興味深かったので、取り上げてみました。
4番目については、引用した通りなんですが、3番目の「投機的実行」についても、本書内ではiPhone登場時のお話が紹介されています。
なんでも、2007年にiPhoneが発表された際、業界では失敗すると予測したアナリストが大半だったのだそう。
清水さんの会社もガラケーでしっかり利益を出す構造になっていたので、スマホの台頭は決して望ましいものではなかったのですが、清水さんは自らが「捨て駒」になってiPhone向けアプリを開発。
もちろん、従来型の事業はそのまま維持しており、ご自身がアルバイトを雇って、最もコストの低い方法で開発・研究したのだそうです。
業界内では「裏切り者」等いう人もいたそうなのですが、結果、大学生の書いたアプリは大ヒットし、会社の売上は倍増したのだとか(スゲー)。
◆本書内で登場する、「プログラマー的な考え方」は、合理的に仕事をこなす上で、非常に納得できるものかと。
最近、音沙汰ないですが、かつては小飼 弾さんが、ブログ内で言われていたことに通じます……って、弾さんプログラマーですから、当たり前ですがw
本書は、その弾さんが毛嫌いしていた「横書き左開き」なんですが、一部プログラムを掲載している以上、こればっかりは致し方ないと思います。
そして、実際にプログラムで解説して下さっている「ループの最適化」のお話が、「仕事の省略化」という「仕事術的に一番オイシイTIPS」なんですけど、詳しくは本書にて。
ラクして成果を出したい方なら、要チェックです!
最速の仕事術はプログラマーが知っている
CHAPTER1 速くてムダのないシンプル仕事術
CHAPTER2 頭がクリアになる情報の整理法
CHAPTER3 致命的なミスを防ぐ賢いダンドリ
CHAPTER4 チームの成果を最大化する仕組み
CHAPTER5 視野を広げてビジネスを設計する
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【編集後記】
◆その清水さんの半生を描いたという1冊。プログラミングバカ一代 (就職しないで生きるには21)
ムスコがMOONBlockのお世話になっている以上、買って読み聞かせねば!?←違うw
ご声援ありがとうございました!
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