2015年07月20日
【起業】『情熱の仕事学 成毛眞 早稲田大学ビジネススクール厳選8講』成毛 眞
情熱の仕事学 成毛眞 早稲田大学ビジネススクール厳選8講
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、お馴染み成毛 眞さんが、早稲田大学ビジネススクールで開催されている講義・『トップマネジメントと経営イノベーション』を元に構成した1冊。この講座では、毎回リアルなケーススタディを起業家・経営者の口から語ってもらうスタイルをとっており、質疑応答を含め、本書でもその雰囲気が再現されています。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「真のイノベーションを起こしたければ、まず目の前の仕事に情熱を燃やせ!」
7人の起業家が語るビジネスパーソンに求められる「共通解」である。
その真意が、起業家たちの熱い講義と、受講生との質疑応答から浮かび上がる。
早稲田大学ビジネススクールで14年間続く超人気講座の集大成をお届けする。
消費税分しかお安くないんでアレですが、一応Kindle版も用意されています!
J0 - the master definition of 'A Job' and the acid test for 'Full Employment' / Julian Partridge
【ポイント】
■1.何かを前に進めるのは情熱や勇気あるべンチャーキャピタリストは、僕のところへやってきて、試作機の動きを見た後に「加藤さん、私は今日、何のためにここへ来たんですか」と言いました。試作機のすごい動きを見ても、何も驚いていないことに僕は驚きました。そのべンチャーキャピタリストにとっては、ロボットのすごい動きより、DARPAのお墨付きより、エクセルの表の方が大切だったようです。
こういったことを目の当たりにすると、中西と浦田、2人の技術者は「すみません」と言います。「今のプレゼンで良かったですか」と。
僕の答えは「もちろん」です。熱意を前に出したプレゼンでいい、伝わらないのは相手が悪い、出資しない方がおかしい、だから気にするな。
そういうことを言って彼らを勇気づけるのも、僕の仕事です。
べンチャーの苦しい時期をたくさん見てきましたし、企業再生も行ってきましたが、そういうときに寄り添って助け、最後まではしごを外さずにいるのも、僕の大事な仕事のひとつなのです。(加藤 崇)
■2.リスクを取ってクリエイトする
もし、今、小金持ちになりたければ、資産を得てそれを転がすのがいいでしょう。額に汗して働くより、資産を運用した方がいい。トマ・ピケティが言っていることは間違いないでしょう。しかし、僕は早稲田の同志にはそういうことはしないでほしいと思っています。(中略)
これはとても重要なことで、みんながピケティを信じて資産転がしをやり始めた瞬間に、GDPは縮小します。そういう世界でも何人かは、リスクをテイクしてクリエイトする方向へ行かなくてはならないんです。
では誰がやるのかというと、僕らであり、ここにいるみんなです。
大きな企業で働いている人が、自分の将来の心配をして仕事でリスクを取らなくなったら、では、そうではない人はどうしたらいいんですか。今日、この講義を聴いている皆さんなら、今の会社を辞めて5年間をべンチャーにつぎ込んでも、その後、どこかに就職できます。行くところがある。僕はそう思って、ここまでやってきています。
簡単に稼ぐなんていうことは、そうしたい奴らにやらせておけばいい。僕らはリスクを取って、クリエイトをしなくてはなりません。(加藤 崇)
■3.誰もやっていないことをチャンスと思う
今日、この講義には大企業から来られている方が大勢いらっしゃると思います。お考えください。ほかの500社と伊藤忠とは、いったい何が違ったのでしょうか。ほかの500社は異口同音に「ミドリムシは誰もやってないからリスクだ」と断りました。伊藤忠だけは違いました。「ミドリムシは誰もやってないからチャンスだ」と判断したのです。
これから日本で生き残るのは、誰もやってないことをリスクだという大企業でしょうか、それとも誰もやっていないことをチャンスだという大企業でしょうか。(中略)
どうか皆さん、若者のアイデアを形にするんだという前向きな視点で、皆さんの経験と見識をご活用ください。そうすれば、日本は必ずもう一度復活します。でも「前例がない」「リスクだ」と皆さんがおっしゃっていたら、未来の日本は暗いでしょう。日本が暗くなるのは、べンチャーの責任ではなく、大企業の責任です。
どうか大企業にお勤めの皆さん、ミドリムシにとっての伊藤忠商事になってください。(出雲 充)
■4.ゼロからイチをつくるのは、感性
事業をつくるのに必要なのは、論理より感性です。僕はどちらかというと論理の人間で、コンサルティングファームでも投資銀行でも徹底的に左脳を使ってきました。
ユーザべースを始めるときも、左脳を駆使してびしっとした完璧な事業計画書をつくりました。でも、そんなものは稲垣がJavaを書けないと言った瞬間に意味がなくなりました。そのときにリアルビジネスとはこういうものだと実感し、論理の積み重ねでは新しいものは生まれないことを知りました。ゼロからイチをつくるのは、感性なのです。
では感性はどこから出てくるかというと、五感をフルに刺激することで生まれます。勉強をするのではなく、五感を刺激するインプットを得ること。これに尽きます。(梅田優祐)
■5.プロダクトの概念そのものが変わったことを意識する
ここで申し上げたいことは、今まで私たちがテレビやパソコン、電話と呼んできたもの。これらはすべて20世紀の社会がつくった概念であるということです。電話とは何ですか。相手と音声でコミュニケーションをとるためのものですよね。しかし今は、スカイプやLINEを使えば、パソコンやタブレットでも会話できます。改めて電話とは何でしょうか。
でも皆さん、スマホで映画を見ていて楽しいですか。ひとりで楽しむとしても、タブレットくらいのサイズは欲しいと思うでしょう。さらに家族みんなで楽しみたいと思うならリビングルームにテレビくらいの大きさのディスプレイはやはり必要です。スマホとタブレットとテレビ、できることは皆同じです。違うのは役割、大きさ、そして場所なのです。
ですから、これから皆さんが未来を考えるにあたっては、プロダクトの概念そのものが変わったことを意識していただきたいと思います。(田中 栄)
【感想】
◆下記目次にあるように、第1講から特別講まで、本書は8人の講義からなる8つの章で構成されています。このうち冒頭の成毛さんを除くと「7人」ということなんでしょうけど、特別講の根来さんは「早稲田大学ビジネススクール ディレクター」ですし、かつこの章だけページが10ページほどと少ないので恐らく講義ではないと思われ。
ゆえに、実質的には6名の「起業家・経営者」の方々の講義、と考えて良いのでしょうが、その多くが成毛さんと何らかのご関係がある、とのこと。
まず第4講の出口さんは、ご存知のように「HONZ」繋がりですから当然として、第1講の加藤さんは、ベンチャーコンテストで同席(成毛さんが審査委員長で加藤さんが審査員)した仲であり、その加藤さんと銀行で同期だった第2講の出雲さんの会社「ユーグレナ」は、成毛さんが創業した「インスパイア」が出雲さんに次ぐ第2株主なのだとか。
そして第5講の高槻さんは、その「インスパイア」の現社長ですし、第6講の田中さんは、マイクロソフト時代の成毛さんの部下、とのこと。
いずれも、成毛さんが直接面識があって、かつ、学生の刺激になる話をしてくれると、成毛さんが見込んだラインナップですから、本書が面白いのも当然でしょう。
◆ただし、個人的な感想を言わせて頂くと、第1講の加藤さんに全部持ってかれた感が強く、上記でも思わず2か所も引用してしまいました。
何と言うか、この講義自体を、TEDで観てみたいくらいw
実は加藤さん、名前までは憶えてなかった(失礼)のですが、はてブ450超のこの記事を書かれた方だったりします。
<東大発ベンチャー・シャフト元CFO激白>世界一の国産ロボットはなぜグーグルに買われたのか
加藤さん自身がGoogleに買われた技術を開発されたわけでもないですし、ブコメにも「資金調達力が足りないのは、この記事書いてる人の能力不足」みたいな書き込みもあったりして、この記事を読まれた少なくない方が、あまり良い印象を持たれていないかもしれませんが、この方、メッチャ熱いです!
成毛さんは、第0講で加藤さんのことを「ビジネス界の松岡修造」と呼んでいますが、それも納得。
講義の初めの方で、加藤さんは東京三菱銀行時代の話をされているんですけど、当時融資を担当していた、経営の悪化したパン屋の奥さんに「なぜ急に返済を迫るのか」と号泣されたことがあったのだとか。
その方の家には抵当権が設定されており、ビジネスとしては当然であるものの、加藤さんは「魂を無視してビジネスとして正しいジャッジをしていくこと」に耐えられず、それをきっかけに銀行を辞めることにしたのだそう。
◆また、シャフトに出資を募るにあたって、加藤さんはMBAホルダーらしく、しっかりとしたビジネスプランを作られていましたが、それでもベンチャーキャピタルは全滅。
しょうがないので、加藤さんは当時顧問をしていた造船会社にまで出資を依頼したのだとか。
結果的に出資をしてもらったのですが、それでも最終的にシャフトが潰れたら、加藤さんはその会社から縁を切られて収入がなくなる可能性があったとのこと。
その時点で加藤さんには、技術者2人に「人型ロボットにはマーケットがないよ」「起業なんてしないで、東大の中で技術を温めていた方がいい」等々言う選択肢もあったのですが、そうはしませんでした。
だけど、こういうことはクソ野郎の言うことです。……確かに「ビジネス界の松岡修造」かもしれません。
僕にはそう言えなかった。だって、人生を賭けて起業したいという人が目の前にいるんだから、僕だって人生を賭けないとアンフェアです。
◆ちなみに、その加藤さんは、こんな本を書かれています(Kindle版もあります)。
未来を切り拓くための5ステップ: 起業を目指す君たちへ
とりあえず、私も注文しときました(今さらですが)。
また、全然読んだ記憶がないんですけど、成毛さんご自身も、こんな書評を書かれていたんですね。
『未来を切り拓くための5ステップ』2014年最高のビジネス書 起業のバイブル - HONZ
上記成毛さんの記事で、加藤さんが参考文献を40冊も挙げていることに触れられていますが、本書でも学生からの質問に応じて「起業される際に参考になった本」を挙げています。
シリコンバレー・アドベンチャー―ザ・起業物語
ニュー・ニュー・シング
ジェネンテック―遺伝子工学企業の先駆者
……全部知りませんでしたよ(涙目)。
◆ほとんど脱線しっぱなしというか、加藤さんのことばかり触れてしまいましたが、第2講以降も興味深いお話が多々登場します。
特に第2講の出雲さんと、第3講の梅田さん辺りが、起業ネタ好きにはオススメかと。
ただ、もし迷われている方がいらっしゃいましたら、まずは第1講の加藤さんのパートをお読みください。
ちなみに私は速攻レジに持って行きましたし、ここだけでも本書を読んだ価値があったと思います。
もっともアップルの「Think different」キャンペーンの解釈のお話は、マユツバですけどねw(詳細は本書を)。
起業に興味のある方にオススメ!
情熱の仕事学 成毛眞 早稲田大学ビジネススクール厳選8講
第0講 なぜ「情熱の仕事学」なのか
成毛 眞(早稲田大学ビジネススクール客員教授)
第1講 東大発ロボットベンチャーをグーグルに売った男
加藤 崇(加藤崇事務所代表)
第2講 「ミドリムシ」に人生を賭け、地球を救う
出雲 充(ユーグレナ社長)
第3講 「NewsPicks」と「SPEEDA」で不合理を撃つ
梅田優祐(ユーザベース共同経営者)
第4講 60代から始めるインターネット生命保険会社
出口治明(ライフネット生命保険会長兼CEO)
第5講 日本初のイスラム・ハラールファンドをつくる
高槻亮輔(インスパイア社長)
第6講 「未来予測」とは何か。「その先」を見通せ
田中 栄(アクアビット代表)
特別講 「WBS」は人生を変える入口だ
根来龍之(早稲田大学ビジネススクール ディレクター)
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【編集後記】
◆最近、時間術について本を読む機会が続いたので、コンビニでつい買ってしまいました。PRESIDENT (プレジデント) 2015年 8/3 号
雑誌ですから、Kindle版も当然ございます。
ご声援ありがとうございました!
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