2015年07月17日
【オススメ】『「首から下」で考えなさい』シアン・バイロック
「首から下」で考えなさい
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、リアル書店で捕獲した興味深い1冊。著者のシアン・バイロックは、シカゴ大学の心理学部教授であり、ミシガン州立大学で身体運動学と心理学の博士号を取得した認知科学の第一人者、とのことです。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
「いいアイデアが浮かばない」「勉強しても、内容が覚えられない」「机の前に座って何時間考えても、結局解決できずに悩んでしまう」……。 そんなときは、文字通り「枠からはみ出す」ことを実践してみましょう。そう、机から離れて、部屋を飛び出してみるのです。すると、思いもしなかった考えがひらめき、覚えられなかった言葉や単語も脳にどんどん記憶されていくことを実感できるはず。体に秘められたパワーを、あなたは体感することになるのです。 シカゴ大学心理学部教授で、認知科学の第一人者である著者は、これまでの体と脳についての考え方をくつがえします。脳が体を動かしているのではなく、体が脳や心を操作しているときもあるのだと。
そして、まわりの環境が私たちにどれほど大きな影響を与えているのかを、膨大な実験データをもとに解き明かします。
数多くの興味深い記述に圧倒されて、思わず付箋を貼りまくりました!
IMG_0713 / riverartscenter
【ポイント】
■1.指を使うと数学ができる!?MATHCOUNTS(数学競技会)は小中学生向けの数学の問題を解く国際的な競技会で、その優勝者の多くは数学と音楽が得意であるという調査結果が出ている。(中略)
2011年にロサンゼルスで開かれたMATHCOUNTS大会の優勝チームは全員が楽器を習っていた。
なぜ、楽器を練習していると数学の技能も発達するのだろうか? それは体をつかっているからである。過去数年間、科学者たちは指を動かす力(音楽家はとくに発達している)と数学を解く能力とのつながりに注目してきた。指と数字は脳の中で、同じ部分の神経細胞を司っている。それは頭頂部にあたり、この部分は指と数に深く関係している。
■2.相手の利き腕と同じ手でジェスチャーする
右利きの人は、右手を頻繁につかってジェスチャーをする話し手の発言に、より共感を覚えることもわかった。左利きの人はその逆。ということは、私たちが話をするときは、相手の利き腕も考慮したほうがいいということだ。相手が自分と同じ利き腕でジェスチャーをすると、その内容に感情移入しやすい。それがたとえ小さなことでも、ちりも積もれば山となる方式で、よい結果につながることになるのだ。あなたがどうしても説得したいことがあったら相手の利き腕を知り、そちらの手でジェスチャーをしよう。
■3.体感温度は社会的温度に関係する
体感温度と社会的な温度の関係は、私たちの行動にも影響を与えている。こんな実験もある。生徒たちにカイロと保冷剤を代わる代わる持たせて、ペアを組んでポーカーをさせた。すると保冷剤を持っているときは一緒に組んでいるパートナーを信用せず、大きな額を賭けないという結果が出た。逆にカイロを持っているときは多額を賭ける。脳をスキャンしたところ、カイロを持っていると島皮質の部分が活発に活動し、パートナーを信頼して多額を賭けることがわかった。体感温度が低いと人を信用しなくなるということが判明したのである。
■4.心を清めたいときに体を洗う
私たちは「清廉潔白」という言葉とモラルをよくリンクさせて考える。たとえばテストでカンニングをしたときや人に嘘をついたとき、シャワーを浴びたくなることはないだろうか? 穢れた体を洗えば、心までクリーンになった気がする。学生たちに実験台になってもらい、ロールプレイングゲームをして嘘をつかせた。すると彼らはゲームの中でアイテムを選ぶとき、無意識のうちに自分の体をきれいにするアイテムを選んでいた。たとえば、口頭で嘘をついた人はマウスウォッシュを選ぶし、携帯で嘘のメールを出した人は手や携帯電話をふくアルコールを選んでいた。(中略)
浮気をしたときシャワーを浴びると気分がよくなるのは、穢れた体を洗うと同時にやましい心も洗い流したつもりになれるからだ。
■5.いくつになってもエクササイズは作業記憶をアップさせる
ここで私たち研究チームが発見したのは、最初は作業記憶が乏しかった人も、適度な運動をしたあとでは正解率が上がっていたということ。この発見に私たちは興奮した。なぜなら、個人差はあるものの、成人したあとも一生、モチベーションがあれば記憶力をさらに発達させられることがわかったからだ。幼児期の子どもたちは脳の前頭前野の部分が十分発達していないため、作業記憶の容量が少ない。シニア世代になると今度は、老化のため作業記憶が減少しはじめる。つまり、幼児期の子どもとシニア世代のための作業記憶をアップさせるエクササイズは、彼らにとても役立つのである。
【感想】
◆今まで、「脳」「体」「心」の関係に関しては、さまざまな本で目にしてきましたが、本書が「決定版」とも言えるかと。まず、上記ポイントの1番目のお話は、指を使う習慣、特に楽器演奏が、脳に与える影響について。
今まで漠然と「頭に良い」というイメージを持っていましたが、具体的に「数学」だという指摘は、私は読んだことがありませんでした。
逆に、税理士試験の受験生時代、「右脳を発達させる」という目的で、左手で電卓を打っていたのは、何だったんだというw
結局、指を使うことで数学的に好影響はあるものの、左右の手の違いはない模様。
ちなみに、最近の「脳ネタ本」のトレンドに沿って、「右脳・左脳」のお話は、本書では一切ありませんでした。
◆また、上記2番目のポイントに関連した話として、ある人のジェスチャーで「自信があるとき」は利き手が使われ、「弱気のとき」は反対側の手が使われる傾向にあるのだとか。
これは実際に2004年と2008年の大統領選挙の最終討論会で確認されたとのこと。
2004年のケリーとブッシュはともに右手が、2008年のマケインとオバマは、ともに左手が利き手なのですが、それぞれ建設的で前向きな意見を言うときは、利き手を使い、やや消極的な意見のときは、反対側の手を使っていたのだそう。
さらに、ジェスチャーには記憶も助ける役割もあります。
役者が台詞を覚える際、実際に演技とリンクさせながら覚えるのがその証拠。
ゆえに、私たちがプレゼンをする際にも、実際にジェスチャーを使うことで、何を言うべきかが頭に入るかと。
◆一方、本書では、体と心の関係についても言及しています。
たとえば、脳の冷たさや寂しさを感じる部分では、体の痛みも感じているのだとか。
これは人間が、哺乳類の中でも幼児期が長いことからきており、もしも世話をしてくれる人と引き離されたら、生命の危険にさらされてしまうから。
それがゆえに、離れるという寂しさと、肉体的な痛みを同時に感じているわけです。
実際、神経系統の刺激をやわらげる効果のある鎮痛剤であるタイレノールは、人間関係で傷ついた痛みも軽くするのだそう。
つまり、失恋した際には、こうした薬を飲むことで、辛さが緩和されるとのこと。
……ただし、本書では触れてませんが、一般的に鎮痛剤はアルコールと併用できないので、ヤケ酒しながら薬を飲むのはやめてください。
◆ところで、個人的に耳イタイお話だったのが、上記ポイントの5番目です。
過去20年以上、運動らしい運動をしてこなかったsmooth涙目の巻。
ここで出てくる「作業記憶」とは、俗にいう「ワーキングメモリ」のこと。
ワーキングメモリ - Wikipedia
当ブログでは、ワーキングメモリを鍛えることを推奨しており、この本を激プッシュしていたのに、お恥ずかしい限りです。
脳のワーキングメモリを鍛える! ―情報を選ぶ・つなぐ・活用する
参考記事:【オススメ!】『脳のワーキングメモリを鍛える! ―情報を選ぶ・つなぐ・活用する』トレーシー・アロウェイ,ロス・アロウェイ(2014年01月14日)
……相変わらず中古が値崩れしてないので、Kindle版がオススメですが。
ただ、「いくつになっても改善することはできる」ようなので、今からでも何かしら運動したいと思います(小声)。
◆他には、「おしゃぶりや歩行補助器が赤ちゃんに与える悪影響」のお話が、なかなかに衝撃的だったのですが、当ブログではニーズがなさそうなので、割愛しました。
実は、ウチのムスコは、両方ともフル活用してしまったんですよね……(ちと後悔)。
もちろん、今からでも改善できる部分はいくらでもあるので、今後は「脳」「心」「体」に良いと思われることを、積極的にさせていこうかと。
……とか言っている私自身が、まずは運動する習慣を作らなくては(本日2度目の宣言)!
脳ネタ本がお好きな方なら、必読です!
「首から下」で考えなさい
第1章 体が感情をコントロールする
第2章 まず行動、考えるのは後から
第3章 体を動かせば、頭がよくなる
第4章 体を動かして、アイデアとひらめきを手に入れる
第5章 ボディランゲージ――ジェスチャーが思考をサポートする
第6章 他人を理解するために体をつかう
第7章 体をつかって心を動かす―悲劇のヒロインになるのも簡単
第8章 体が「やさしい社会」をつくる
第9章 エクササイズは心も脳も健康にする
第10章 体をつかって心を落ち着かせる
第11章 環境が変わると、考え方も変わる――グリーンマジック
【関連記事】
【オススメ!】『脳のワーキングメモリを鍛える! ―情報を選ぶ・つなぐ・活用する』トレーシー・アロウェイ,ロス・アロウェイ(2014年01月14日)【脳を整える?】『脳が冴える勉強法―覚醒を高め、思考を整える』築山 節(2012年01月11日)
【脳活性】『100歳までボケない101の方法』白澤卓二(2011年01月07日)
【編集後記】
◆そういえば、以前出たこんな本がありまして。脳を鍛えるには運動しかない!―最新科学でわかった脳細胞の増やし方
「運動」の二文字を見て、スルーしていたのですが、評判も良さげですし、読んでみようかな、と。
ご声援ありがとうございました!
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