2015年06月11日
【数学的センス?】『ビジネス×数学=最強』永野裕之
ヒ?シ?ネス×数学=最強
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事にて、大人気だった1冊。著者の永野裕之さんは、東大理学部地球惑星物理学科卒で、高校時代は数学オリンピックに出場した、という「ガチ」な理系脳の持ち主です。
アマゾンの内容紹介から。
本書は、誰もが本来もっている論理的思考力を呼び覚まします。著者によれば、文系の人は自らが秘めた力に無意識なぶん、むしろ「のびしろ」があるそうです。日々の仕事で選択に迷うとき、袋小路に入りこんだとき、数学は活路(=答え)を導く武器になるのです。まさに読んでナットク、知ってオトクな「実学数学」18講義。本書で「偶然」のヒラメキを意識的な「必然」に変えられる、最強ビジネスパーソンになってください。
なお、上記「未読本記事」投稿時には出ていなかった、Kindle版も、アマゾンにアップされています!
Mathematics of influence / Arenamontanus
【ポイント】
■1.掛け算は「新しいもの」を生み出すあなたは「掛け算」と聞いて、何を連想しますか?
「底辺×高さ」とか「速度×時間」とか「平均×人数」などを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか? いずれにしても掛け算というのは「底辺」と「高さ」のように異なる意味をもつ数字どうしで行う計算です。そして掛け算をした結果には、底辺×高さ=面積のように、面積だったり、移動距離だったり、合計の数だったりといった新しい意味の値が生まれます。
速度×時間=移動距離
平均×人数=合計の数
■2.「単位量あたりの量」に換算する
あなたは東京のオフィスから大阪の取引先に出張することになりました。交通手段の候補は次の2つです。新幹線……所要時間:2時間40分 費用:1万5000円こんなときは、時間短縮にかかるコストを「単位量あたりの量」に換算して考えるのがコツです。飛行機を使えば、時間を40分短縮できますね。ただし、コストは6000円高くなります。つまり、飛行機で行くことは40分を6000円で買うのと同じです。
飛行機……所要時間:2時間 費用:2万1000円(中略)
■3.エクセルによる相関係数の出し方
(1)エクセルにデータを打ち込む(あるいはコピペする)。
(2)適当なマスを選択してから、ウィンドウ上部のツールバーの「数式」のタブをクリック。
(3)「関数の挿人」から、→「その他の関数」
→「統計」
→「CORREL」とすすむ。
(4)「CORREL」をクリックすると、「関数の引数」という小さなウィンドウが開く。
(5)そのなかの「配列1」と「配列2」に相関係数を計算したいデータをそれぞれ指定する。今回は「配列1」には、「東京の最高気温」の24個のデータを、「配列2」には、「ビールの売上」の24個のデータをそれぞれ選択。
(6)最後に「OK」をクリック。
(詳細は本書を)
■4.反対の立場から見る
<例1>「当社は若手が活躍できる職場である」という企業アピール
<解説>
企業が就活生に対してこのようにアピールしているとします。もちろん、上からの締め付けが強く、なかなか仕事を任せてもらえない職場よりは、入ってすぐに活躍ができる職場のほうがいいでしょう。
でも、この言葉をそのまま鵜呑みにするのは危険かもしれません。こういうときは「反対の立場」から見ることをおすすめします。
「若手」の反対の立場は「ヴェテラン」ですから、「ヴェテラン」の立場に立ってみるのです。すると、「若手が活躍できる職場」という表現から「ヴェテランが無能なのかも?」という可能性が見えてきます。
■5.全体を見る立場に立つ
A〜Dの4人がポーカーをしました。お互いに1度は対戦したということです。結果は次のとおり。難しい問題ですね。まず、総あたり戦でもトーナメント戦でもないところがポイントです。したがって、ポーカーの試合が全部で何試合行われたかはわかりません。
A:1勝2敗
B:3勝0敗
D:3勝1敗
以上の結果からCの勝敗を答えなさい。
ただし、「お互いに1度は対戦した」ということから、次ページ下段のような対戦成績表をつくった場合、グレーのマスで白星も黒星もつかないところはありません。また(ポーカーなので)引き分けはなく、しかも当然のことながら、勝ち星の総数と負けの星の総数は等しくなります(ある人が勝つとき、その相手は敗れます)。そこで、A:1勝2敗 B:3勝0敗 D:3勝1敗より、A、B、Dの勝ちの総数は7で、負けの総数は3です。
Cの勝敗を足すと、勝ちと負けの総数が等しくなるはずなので、Cは0勝4敗(4戦全敗)であることがわかります。
【感想】
◆「クイズ形式の本では答えを書かない」と言ったばかりですが、本書はあくまで説明の一環として問題が提出されているので、答えも書きました。もっとも、具体的に答えを書いたのは上記ポイントの2番目と5番目だけなので、このくらいならまぁいいかな、と。
さて、本書の場合、「数学」をテーマにしつつ、それを「いかにビジネスシーンで活かすか」を念頭に置いているのが特徴です。
本書の帯にも「新規店のコンセプト戦略から、残念な会議の効率化、ビールの売上の季節変動、満足度アンケートのデータ分析、はては転職先の選択や夢の叶え方にいたるまで」と書いてありますし。
…上記ポイントの5番目のポーカーネタは、ビジネスとの関係が微妙ですけどw
◆個人的には、上記ポイントの1番目の「掛け算は『新しいもの』を生み出す」というところからして、「目からウロコ」でした。
これだけ言われても、あまり「ピン」とこないかもしれませんが、これが足し算だと、「個数+個数」「時間+時間」のように「同じ意味をもつ数字どうし」でなければ行うことができません。
また、その結果生まれるものも、「足し合わせた2つの数と同じ意味」しか持たないというのも、指摘されてみたら、確かにそう。
本書ではこれを「掛け算的発想」と呼び、具体的な例として、安藤百福氏がインスタントラーメンを発明したエピソードを紹介しています。
魔法のラーメン発明物語―私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)
また、俗にいう「PMマトリックス」も、「製品」と「市場」という異なるものどうしの掛け算だな、と。
なお本書では、この「PMマトリックス」を使って、前述の「新規店のコンセプト戦略」を考える問題が登場しますので、そちらもぜひチェックしてみてください。
◆同じく前述の「ビールの売上の季節変動」について考えているのが上記ポイントの3番目です。
ここでは、エクセルを使って相関係数を計算する方法を指南。
また本書では、より直感的に相関関係があるかどうかを判断するための「散布図」の作り方も解説されています。
こんな感じで、ある一定の直線近くに分布していると、相関関係があると考えられるという。
metaLayer Visualizations - Scatter Plot / Jon Gosier
とはいえ、散布図はあくまで「おおざっぱな印象」でしかないので、客観的に判断するためにはやはり相関係数が必要です。
本書の例に沿って計算すると、「最高気温」と「ビールの売上」は「中程度の正の相関」関係にあることがわかりました。
ただし、この数値にはある「外れ値」が含まれており、それを除くと……(詳細は本書を)。
◆また上記ポイントの5番目の「全体から見る」アプローチも、私自身には「ヤラレタ」感がありました。
いちいち勝敗表を書いてやろうかと思っていたのですが、なるほど、全体の勝負数が一致することを考えたら、自動的にすぐに答えは出ますね。
…一応本書では、勝敗表を書いて、誰が誰に何勝したか、というところまで掘り下げてはくれていますが。
事例は直接的には、ビジネスに結びつかないものの、いずれビジネスシーンのどこかで、こういった発想が必要になってくる予感。
「ガチ文系」の私ですが、本書を読んで、「理系アタマ」に少しでも近づけたような気がしておりますw
むしろ「文系の人」に読んで頂きたい1冊!
ヒ?シ?ネス×数学=最強
第1章 数学的「情報整理」術……まとめ上手になろう
第2章 数学的「発想」術……ひらめき上手になろう
第3章 数学的「問題解決」法……生きかた上手になろう
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【編集後記】
◆土井英司さんのメルマガを読んで気になった作品。デービッド・アトキンソン 新・観光立国論―イギリス人アナリストが提言する21世紀の「所得倍増計画」
激売れして、単行本がないのでKindle版を。
銀座界隈で働く身としましては、「外国人観光客をたくさん呼んで、お金を落としてもらえばいい」という発想は、結構腑に落ちます。
ご声援ありがとうございました!
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