2015年06月07日
【経営】『シンプルに考える』森川 亮

シンプルに考える
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事で、注目を集めていた1冊。HONZの田中さんがレビューでも言われているように、まさに普通の経営書の「逆張り」を主張している作品とも言えます。
アマゾンの内容紹介から。
「戦わない」「差別化は狙わない」「計画はいらない」「偉い人はいらない」「自分を守らない」いらないものは全部捨て、本質だけを追求。本当に大切な1%に100%集中する。
セールでもないのに「33%OFF」とお買い得のKindle版をお忘れなく!

Taito Station Shinjuku South Gate Gameworld / Dick Thomas Johnson
【ポイント】
■1.会社にとっていちばん大切なことは何か?僕の答えはシンプルです。
ヒット商品をつくり続けること。これしかありません。
ヒット商品をつくり続ける会社が成長し、ヒット商品をつくることができなくなった会社が滅びる。古今東西、ビジネスを支配しているのは、このシンプルな法則です。「利益」も「社員の幸せ」も「ブランド」も、ヒット商品が生まれた結果として生み出されるものですし、ヒット商品がなければ「戦略」や「ビジネスモデル」も画に描いた餅にすぎません。だから、ビジネスの本質は「ユーザーが本当に求めているものを提供し続けること」。それ以外にはないのです。
■2.会社は「人」がすべて
中途採用ではスキルと経験があるのが前提。そのうえで、僕はその人の「価値観」や「生き方」に注意を払いました。「お金」や「出世」や「企業ブランド」を求める人は不採用。「どんな仕事をしたいのか」「どんな夢をかなえたいのか」「自分をどう活かしたいのか」といったことを話すときに、どれだけ目をキラキラさせているか? 過去にある程度の成功経験があっても、あくまでも謙虚にさらをる成長を求めているか? ここが最大のポイントです。
■3.「失敗してもいい」とは考えない
もちろん、この世に約束された成功など存在しません。
何事もやってみなければ成功するかどうかはわからない。新商品は常に賭け。「絶対に成功する」などということはありえない。それは、僕自身、骨身に泌みてわかっています。だからこそ、成功するために安易な妥協はしない。そして、「絶対に成功する」という確信がもてるまで、ありとあらゆる努力をする。それが「すごい人」たちに共通する姿勢なのです。
■4.社員のモチベーションを上げる必要はない
企業の主力となる優秀な管理職に、モチべーションを上げる必要がある部下をつけるのが生産的なことでしょうか? 企業にとっても管理コストの上昇を招くだけです。そもそも、そういう社員を抱えていることに、問題の本質があるのではないかと思うのです。
いい成果を生み出すためには、優秀な人が余計なことに惑わされず、速いスピードで動ける環境が大事です。であれば、価値を生み出さないばかりか、優秀な人の足を引っ張るモチべーションの低い社員は必要ない、という結論になるのが当然だと思うのです。
■5.ビジネスに「情」はいらない
結果を出せないリーダーは降格して、再起を期してもらう。悔しさをバネにがんばれば、必ず実力はつきます。そのときは、再び起用すればいいのです。むしろ、中途半端にその人の立場を守れば、かえって彼らが努力するきっかけを奪うことになってしまう。その結果、その人が成長できないばかりか、ダメなプロジェクトを温存することで会社に損害を与えてしまう。最悪の場合には、会社を危機に追いやってしまうことすらある。それは、優しさではありません。
【感想】
◆冒頭の内容紹介のほか、田中さんのレビューやアマゾンの目次欄ででも、本書の著者である森川さんの「異端」ぶりが明らかにされてます。中でも、「ビジョン」や「仕組み」もいらない、というのは、なかなか言えないことかと。
特に「仕組み」については、こういう本もあることですし。

無印良品は、仕組みが9割 仕事はシンプルにやりなさい (ノンフィクション単行本)
参考記事:【超仕組み化?】『無印良品は、仕組みが9割 仕事はシンプルにやりなさい』松井忠三(2013年07月14日)
もちろん、(株)良品計画とLINE(株)とでは、業務内容も会社の規模も全然違うので、一概には言えないのですが、(株)良品計画でなくとも、普通の会社であれば、むしろ「仕組み」は必要なものですし、むしろどう活かしていくかを考えているハズ。
◆実は、他の「異端」「逆張り」部分も含めて、森川さんの主張が成立するためには、ある1つの前提が必要になると思います。
それは上記ポイントの2番目にもあるように、「社員のクオリティ」。
良質な社員さえ揃っていれば、おそらく、「計画」も「偉い人」も「ビジョン」も「仕組み」も、なくても大丈夫なのでしょう。
そして、そのような良質の社員も、今のLINE(株)であれば、引き寄せることが可能なハズ。
逆に、サービスとしてのLINEがヒットする前に、どういう風に良質な社員を集めていたのか、良く分からないのですが、もともとはオンラインゲームを提供する、「ハンゲーム・ジャパン」として設立されています。
LINE (企業) - Wikipedia
ゲーム作りが好きな人にとっては、当時から魅力的な会社だったのではないか、と。
◆その社員も、上記ポイントの2番目のように、採用の時点で厳選するのは当然として、採用してからもふるいにかけられます。
上記ポイントの4番目によれば、「自らモチベーションの上がらない社員は必要ない」わけですし、上記ポイントの5番目にあるように、「結果が出ないリーダーは降格される」とのこと。
その結果、会社を去ることになった社員もいたのではないでしょうか?
実際、森川さんは、ハンゲーム・ジャパン(株)の社長時代に、「全社員の給料をリセットして、成果を出した社員に優先して支払う」という荒療治を行なわれています。
反対する社員が続出したものの、それらは「働きに比べて給料をもらいすぎていた古参社員」だったため、その多くが会社を去った、とのこと。
そして、辞めた人たちの給料を、結果を出している社員たちに配分していった結果、頑張った社員たちの志気は大いに上がったのだそうです。
◆こう考えていくと、まるでジョブズ並みの独裁制のようですが、決してそういうわけではなく、下記目次にもあるように、第4章のタイトルは「『偉い人』はいらない」。
あくまで「社員が働きやすい環境を整える」ことに注力なさってらっしゃいます。
そもそもLINEが完成したときも、森川さんは開発メンバーの方針やビジョンに、一切口をはさまなかったのだとか。
「現場はひたすらユーザーのために全力を尽くす」
「経営は、現場が仕事にとことん集中できる環境を守る」
これらは森川さんの理想なのですが、まさに本書のタイトルにある「シンプル」に繋がることだな、と。
経営書を読み漁ってきた方ほど、「目からウロコ」となりそうな1冊!

シンプルに考える
第1章 ビジネスは「戦い」ではない
第2章 自分の「感性」で生きる
第3章 「成功」は捨て続ける
第4章 「偉い人」はいらない
第5章 「余計」なことは全部やめる
第6章 「イノベーション」は目指さない
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せっかくだから『ビジネスで失敗する人の10の法則』について語るぜ!(2012年10月21日)
【編集後記】
◆ちょっと気になる本。
統計力クイズ: そのデータから何が読みとれるのか?
本の帯に載ってる問題自体からして、面白そうですw

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LINE元社長の森川亮さんの本を読みました。ビジネスの定石を覆す森川さんのセオリーに頭が下がります。
【書評】『シンプルに考える』一般的に信じられているビジネスの定石を覆す【なおきのブログ】at 2015年09月06日 14:46
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