2015年05月26日
【戦略】『3000年の歴史に学ぶ 戦略の教科書』皆木和義

3000年の歴史に学ぶ 戦略の教科書
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも注目を集めていた1冊。著者の皆木和義さんは、経営コンサルタントだけあって、こうした戦略本はお手の物といった感じです。
アマゾンの内容紹介から。
戦争によって生まれた戦略は、そのまま現代の戦争と言える「資本主義による競争社会」のビジネス戦略に移行し、なおも進化を続けている。古代・中世の天才的な軍師、思想家、君主から近現代の革新的な経営学者、起業家まで―ビジネスパーソンなど押さえておきたい戦略3000年史を一気に総ざらい!
本書の帯曰く「戦略の名著40冊分の要点を凝縮」しているのだとか!?

Netherlands-4426 - Arrival of Napoleon at Amsterdam / archer10 (Dennis) REPOSTING
【ポイント】
■1.チンギス・ハーンの「千戸制」千戸制とは、征服した遊牧民を腹心に領民として分け与え、この腹心とチンギス・ハーンと同盟して服属した諸部族の指導者を加えた領主階層を貴族(ノヤン)と呼ばれる階層に編成したことに始まる。最上級のノヤンは千戸長という官職に任命され、その配下の遊牧民は千人隊と呼ばれる集団を編成した。また、千人隊の下には百人隊や十人隊が置かれ、それぞれの長にもノヤンたちが任命された。いわば、世界最大の軍隊ピラミッドをつくって、内部抗争ができないように仕向けたのだ。
■2.ナポレオンの「散兵戦術の活用」
従来の横一線に傭兵が並んで突撃するような横隊戦術では戦術的には重層的ではない。そこで、ナポレオンは、いわば一定の軍事的素養のある将を中心とした師団というグループの軍隊を組織し、その小軍を散在させ、かつ敵の弱い部分に集中的に攻撃するように仕向けた。これは従来では考えられなかった戦隊の組織であり、戦闘に勝利し、貢献した将や兵士のモチべーションをより高めたといってよい。
ナポレオン自身も、敵対国同士を団結させないよう周辺国を個別に侵攻するとともに、戦闘の用意ができていない相手を奇襲によって個別に撃破する戦法もとっている。
■3.リー・クアンユーの「開発独裁体制」
まず、政権としては独裁色が強くとも、シンガポールという国独自のアィデンティティをつくる運動を強化した。
具体的には宗教と人種に対して寛容性を持たせた。これは、宗教と人種に関する迫害や暴力などの脅威に対処する法律を制定したことに見られる。また、武装中立を国是とすることを宣言した。
その国家的対応は国民の側から見れば、「リーダーは独裁者っぽいが、宗教や人種には寛容で、宗教や人種で差別があったら厳しく罰する国」「軍隊はあっても、他国とは同盟を結ばず、自国に侵犯してきたときだけ徹底抗戦する国」と、わかりやすいアィデンティティを持つことにつながった。
■4.ジョエル・バーカーの『パラダイムの魔力』
ジョエル・バーカーは『パラダイムの魔力」のなかで、重要なキーワードを3つ挙げている。それは「卓越、イノべーション、先見性」だ。基盤となるのは「卓越」で、他を寄せつけないものを持っていることである。ただし、それはビジネスに"参加する条件"とバーカーはとらえている。
その卓越さを持つうえで欠かせないのが「イノべーション」。それがないと、企業競争を勝ち抜けないとしている。
そして「先見性」だ。卓越とイノべーションを持ち、将来を見通す先見性があれば、顧客のニーズを予想し、そのニーズを満たす製品やサービスを開発し、他社の迫随を許さない製品やサービスを展開できるとしている。
■5.ジョージ・ストークJr.の「タイムベース競争戦略」
従来、企業間競争というと、「コスト」「差別化」「低価格」といった言葉で語られることが多かった。それはいまも変わらない。そのなかにあって、タイムべース競争戦略は、時間、なかでも時間短縮を軸に競争優位を築く戦略にほかならない。経営資源というと「ヒト、モノ、カネ」の3要素、くわえて「情報」という4要素が有名だが、その上位概念として「時間」があり、その短縮が経営資源の、より有効な活用につながるという考え方である。(中略)
すなわち、「タイムベース競争戦略」は、いまでこそあたり前に見える戦略だが、当時は、今日あたり前になることを予見させる戦略であり、だからこそ、その戦略は画期的だったのだ。と同時に、その戦略が、トヨタをはじめとした日本企業の研究成果だということに驚く。陳腐な言い回しであるが、日本の企業研究にとっては「灯台下暗し」だったといえるのかもしれない。
【感想】
◆本書は、当初私が、書名から予想していた内容とは若干異なりました。私が考えていたのは、戦略がダーッと挙げられていて、それらを紹介するようなものでしたが、本書はまず切り口として、「人物」を設定。
冒頭では「名著40冊分」とありますが、まず本の前に、「3000年前から現代までのキーパーソン40人」が登場し、それぞれの「戦略」について解説されています。
なお、本人が書いた本があれば、その本を、自身で本を書いていない人物の場合は、評伝や解説書、もしくは歴史書等をそれぞれ1冊紹介。
本書の「はじめに」には、「本書をきっかけとして、本書にとりあげた方々の名著や関連の本をお読みいただいてさらに深く掘り下げて学んでいただき」とあるので、興味を持った人物がいれば、それらを読む、というのが正しい使い方なのでしょう。
◆その40人は、下記目次にもあるように、「古代〜近世」「近代」「現代」の3つの時代からピックアップ。
それぞれ、13人、8人、19人という割り振りになっています。
厳密には40人の中には「マッキンゼー」と「BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)」が含まれているので、38人と2社ですが。
そして、それぞれの分量としては4〜6ページで、人によって多少重みづけがされています。
まー、確かに孫子を6ページで言い尽くせるかと言ったら、どう考えても足りないでしょうし、あくまでポイントというか要旨のようなものかと。
◆ところで、紹介されている40冊ですが、当ブログでご紹介しているのは、この1冊だけでした。

パラダイムの魔力 新装版
参考記事:【名著】『パラダイムの魔力―成功を約束する創造的未来の発見法』ジョエル・バーカー(2012年02月20日)
ただし、上記レビューでは、旧版の方をとりあげております(まだ新版は出てませんでした)ので、ご留意を。
また、この本は読んだものの、レビューを書き損ねておりますし……。

エクセレント・カンパニー (Eijipress business classics)
結局私は「積読」のままなこの本も、お読みの方は多いと思います。

ブルー・オーシャン戦略――競争のない世界を創造する (Harvard business school press)
特に「現代」のパートでは、いわゆる「名著」と呼ばれるものが多い分、読んでいないと肩身が狭かったワケなんですが。
◆本書に登場する38人と2社は、そのほとんどが、皆さん1度は耳にした(目にした)ことがあるのではないでしょうか?
そして、その「人となり」や「戦略」も、知っているものが多いかと。
ただ、それらを列挙しつつ、一気に俯瞰できる点で、本書独自の価値があると思います。
特に、戦略同士の関係や影響にまで言及している部分があるのは、ポイント高し!
また、こうした「知識」に触れておくことで、経営上の新たなアイデアが浮かぶかもしれません。
「戦略のアンチョコ」がここに!

3000年の歴史に学ぶ 戦略の教科書
第1章 古代〜近世
第2章 近代
第3章 現代
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【名著】『パラダイムの魔力―成功を約束する創造的未来の発見法』ジョエル・バーカー(2012年02月20日)
【編集後記】
◆ちょっと気になる本。
なぜ一流の人はストレスが溜まらないのか
最近、似たようなタイトルが多くて、どれを読んでどれを読んでないか分からなくなることがあると言うw

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