2015年05月22日
【才能?】『人は、誰もが「多重人格」 誰も語らなかった「才能開花の技法」』田坂広志
人は、誰もが「多重人格」 誰も語らなかった「才能開花の技法」 (光文社新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、今月初旬にお送りした「未読本・気になる本」の記事にて取り上げた1冊。メインタイトルは、一見物騒(?)ですが、サブタイトルの方が、本書の内容を適切に表していると思います。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
自分の中に眠る「幾つもの才能」を開花させたいと思うならば、自分が意識していなかった「幾つもの人格」に気がつき、その「多重人格のマネジメント」を行うことが不可欠です。
「多重人格のマネジメント」を行うことによって、「多様な才能」が開花していきます。
自分の中に、新たな才能を見出したい方なら、見逃せないかと。
life-toolbox--richardstep-unleash-your-strengths / RichardStep.com
【ポイント】
■1.「才能」の本質は、「人格」であるよく、「あの人は、何々の才能がある」といった表現をしますが、この「何々の才能」とは、その大半が、その人物の「人格」や「性格」と呼ばれるものなのです。(中略)
数学者の「数学的思考」の奥には、緻密で論理的な思考を好む「人格」があります。時計職人の「手先の器用さ」の奥には、微細で正確な作業を楽しむ「人格」があります。もとより、「才能」と呼ばれるもののすべてが「人格」ではありませんが、通常の「才能」と呼ばれるものの大半は、「人格」が占めているのです。
■2.安易なポジティブ思考は逆効果
「心の世界」も「電気の世界」と同じで、「プラスの想念」だけが発生するのではなく、同時に「マイナスの想念」も発生してしまうのですね。
特に、表層意識のところに、無理やり「プラスの想念」を引き出すと、深層意識に「マイナスの想念」が生まれてしまいます。
例えば、大切な試合を前に、表層意識の世界で、「明日の試合は勝つぞ!」という思い、すなわち、「プラスの想念」を無理やり引き出すと、むしろ逆に、深層意識の世界では、「明日も負けるんじやないか……」という不安、すなわち、「マイナスの想念」が溜まっていくのですね。
■3.人格は「変えよう」とせずに、新たな人格を「育てる」
いま、「怒りやすい人格」の人がいたとします。この「怒りやすい人格」を「寛容な人格」に「変える」ことは至難の業です。なぜなら、仮に、その「怒りやすい人格」を抑圧して、自分の中から「消し去った」と思い込んでも、実際には、心の奥深くに押し込んだだけで、消えていませんから、何かの拍子に、その「怒りやすい人格」が、突如、表に出てきて「爆発」することになります。特に、強く「抑圧」すると、強く「爆発」することになります(笑)。(中略)
従って、この「怒りやすい人格」はそのままに、新たに、自分の中に「寛容な人格」を「育てる」ことです。もし、すでに、その「寛容な人格」が萌芽として自分の中に存在しているならば、それを大きく育てることです。
■4.立場が引き出す「リーダーシップ人格」
例えば、強力なリーダーが突然いなくなった状況において、それまで、その強力なリーダーの下で影が薄かったナンバー2が、不思議なほど、リーダーシップを発揮して、その組織を牽引するという事例は、決して珍しくありません。
これは、何が起こったのかと言えば、強力なリーダーがいなくなった緊急事態において、ナンバー2の中から、「もう頼れる上司はいない」「自分が決めるしかない」という自覚とともに、「リーダーシップ人格」が引き出されてきたのです。逆に言えば、このナンバー2の心の中の、「この上司についていけば」「自分が決めなくても」という依存心が、彼の中の「リーダーシップ人格」の開花を妨げていたのです。そして、それが、彼の「影が薄かった」理由でもあるのです。
■5.「苦手」や「不遇」こそ「人格と才能」を開花させる
「苦手」と思う仕事も、「不遇」と思う時代も、捉え方によっては、それまで自分の中に眠っていた「人格と才能」を開花させる、絶好機なのです。
そして、人間とは不思議なもので、そうした「前向き」な気持ちで取り組んでいると、実は、どのような仕事も「面白く」なってくるのですね。(中略)
だから、先ほど、「苦手な仕事に取り組むのは、誰にとっても苦痛ですね」と申し上げましたが、実は、「苦手な仕事」が与えられたとき、それを「苦痛」と思うかどうか……。そこが分かれ道なのです。
【感想】
◆お読みになった方もいらっしゃるかもしれませんが、田坂先生は、2014年にこういう本を書かれてらっしゃいます。知性を磨く― 「スーパージェネラリスト」の時代 (光文社新書)
この本の中で先生は、これからの時代には、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という「7つの知性」を垂直統合した「スーパージェネラリスト」と呼ぶべき人材が活躍する、と語られているとのこと。
そして、この「7つの知性」を垂直統合するためには、置かれた状況と立場に合わせ、自分の中の「様々な人格」を切り替えて対処する「多重人格のマネジメント」が必要なのだそうです。
すると、先生の予想を超え、多くの読者から、この「多重人格のマネジメント」について「さらに詳しく知りたい」との声が寄せられたのだとか。
◆一方で先生は、2013年から全国のリーダーや経営者を集めた、「田坂塾」を開塾。
こちらでも「多重人格マネジメントと才能開花」について語ったところ、多くの反響があったのだそう。
本書はその「田坂塾」の塾生であり、書籍編集の仕事にも携わっているT氏の提案により、T氏との対談形式として執筆されました。
上記ではスペースの関係上、「(中略)」等の表記によってT氏の発言は割愛しておりますが、対談というよりは、T氏が田坂先生にインタビューするようなスタイルです。
T氏は、さすが田坂塾の塾生だけあって、テーマについてのベースとなる基礎知識があった上で、読者が知りたいようなポイントを、きっちり先生に質問。
この辺は、普通のインタビュアーの方とはひと味違うな、と。
もちろん、田坂塾に入るくらいですから、田坂先生に「いじわるな質問」等はしていないのですがw
◆さて本書は、上記ポイントで挙げているように、「才能」「ポジティブ思考」「リーダーシップ」「苦手」といった、自己啓発書やビジネス書でよく見る項目について、「人格」という切り口で言及しています。
そもそも、上記ポイントの1番目にあるように、「『才能』の本質は、『人格』"という基本的な考え方自体、私にとっては目からウロコ。
ただし、先生によると、普通のビジネスパーソンであっても、一般的なビジネスシーンにおいて、無意識のうちに「人格」を切り替えているのだとか。
たとえば、銀行の窓口で、後輩の研修生に対応をさせている先輩行員を例に挙げると、顧客に対しては「温かく親切な人格」、とまどう後輩の代わりに窓口で作業を行うときは「几帳面で細やかな人格」、実際に後輩指導するときは「厳しくも包容力のある人格」が前にでてきているわけです。
これはビジネスシーンの話だけではなく、会社では厳しい部長が、家では優しいお父さんであったりするようなケースも「人格」の切り替えである、と本書では指摘。
確かに私自身も、オンタイムとオフタイムでは当然切り替えていますし、さらにはこうして「ブロガー」としての「人格」も10年以上育てているというw
◆なお、そのことに関連して、本書の第3章で田坂先生は、「ネットの世界で『匿名』での自己表現」を薦めてらっしゃいます。
と言うのも、ネットの世界で「匿名」で自己表現するとき、誰でも「隠れた人格」が表に出てくる傾向が強くなるから。
確かに「匿名」であれば、変なしがらみに囚われず、自由に活動できる分、「才能が開花」することはありそうです。
私もこのブログを実名でやっていたら、勉強本はともかく「モテ本」や「ナンパ本」をオススメすることはできなかったでしょうし、このブログも全然変わった方向性を持つことになったかと。
……もっとも、その手の本のおかげで、「リンクシェア」の承認がおりなかったんですが(ダメじゃんw)。
◆本書は、久し振りに読んだ田坂先生のご本でしたが、個人的には、かなり楽しめました。
田坂先生のファンの方はもちろん、「ブランディング」や「自己啓発」がお好きな方なら、一読の価値はあるかと。
また、上記ポイントの4番目や5番目は、直接ビジネスシーンにも関係するお話ですから、詳しく読んで頂ければ、仕事の「気づき」も得られると思います。
ただし、上記で触れているように、本書は「対談形式」なため、田坂先生がひとりで語られた場合に比べると、余白が多め。
また、会話なら自然であろう「確認しながら話す」ことが、人によってはくどく感じることもあるかもしれませんので、その辺はご留意ください。
「才能」を開花させたい方なら、要チェックです!
人は、誰もが「多重人格」 誰も語らなかった「才能開花の技法」 (光文社新書)
序文 なぜ、このような本が生まれたのか?
第一話 人は、誰もが「多重人格」
第二話 「表の人格」が妨げる才能の開花
第三話 「隠れた人格と才能」を開花させる技法
第四話 「豊かな人間像と人間性」を開花させる技法
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【編集後記】
◆本日も「Kindle日替わりセール」は注目作が!日本人の知らないワンランク上のビジネス英語術 エール大学厳選30講
英語を学ばれている方は、ご検討を。
ご声援ありがとうございました!
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