2015年05月20日
【思考法?】『ユダヤ式Why思考法』石角完爾
ユダヤ式Why思考法
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、世界中の各業界で著名な人材を輩出しているユダヤ人の秘訣を探る1冊。著者の石角完爾さんは、京大在学中に司法試験に合格し、ハーバード大学ロースクール修士号を取得される一方で、2007年にユダヤ教に改宗し、ユダヤ人になられた、という方です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
なぜユダヤ人の知的生産力は群を抜いているのか。
それはユダヤ人が「議論をして考える民族」だからである。
さらにいえば、「なぜ?」「Why?」を徹底的に考えつくす民族なのである。
そこで、本書では、日本人がひとりでもできる34のトレーニングを紹介する。
ユダヤ人が幼い頃から例外なく読んできた「タルムード」を基に、ユダヤ人が普段行っている議論の一部を誌面上で再現する。
ユダヤ式の「考えるトレーニング」を体験し、日々の思考トレーニングに取り入れてほしい。
ユダヤ人であるGoogleのペイジ&ブリンや、Facebookのザッカーバーグも、このようなトレーニングをしてきたのかもしれません!?
Taking time to answer questions_1846 / hoyasmeg
【ポイント】
■1.組織に従順な人間は、日本では重宝されるかもしれないが、世界では通用しない私が顧問を務めるシリコンバレーのIT企業の社長が話していたが、彼の会社にはウクライナ出身の技術者と日本人の技術者がおり、両者を使い分けているという。
ウクライナ人の技術者は、「こうしたほうがいい」「ああしたほうがいい」と、つねに最新の技術に興味をもち、勉強し、提案する。一方で、日本人の技術者は、能力は高いが提案能力はゼロ。その代わり、上司の指示には忠実で、仕事は期日までにきちっと仕上げてくるなど、仕事への態度は非常に真面目だ。
前者は提案型人材であるのに対し、後者は作業型人材だというわけだ。
■2.考えること、議論することは娯楽である
あるユダヤ人の場合、テーブルにとまったハエが飛び立つのを見て「ハエの飛行速度は飛行機に換算するとどれくらいになるか」という疑問をもち出した。ハエの優れた飛行能力に着目したのでる。この議論が食事中ずっと続き、実際に相手をしていた日本の科学者が辟易した、という話を雑誌のコラムで読んだことがある。
食事中であってもこうした議論がずっと続くのは、ユダヤ人の間ではごくふつうの風景である。(中略)
ユダヤ人の好むのは議論すること。議論こそが頭を最も働かせる行為だと知っているからである。
■3.思考を枠にはめない
普段の会話を思い出してみてほしい。「ふつうはこうだよね」とか「そんな考え方はありえない」といった言葉をよく発しているようなら、気をつけたほうがいい。凝り固まった考えが頭の中に巣くっている恐れがある。特に「ふつうはこうだよね」という言葉がすぐ出てくる人は思考停止状態といえる。
ほかにも前例や慣例、成功事例、経験則などは、すべて思考に枠をはめるものだ。
■4.まずは「No」という(ユダヤの格言から)
何にでもまず「No」といえ。先に「No」といった場合は、何日経っても「Yes」に変更できる。先に「Yes」といい、あとで「No」といわれたら相手は怒るだろうが、「No」を「Yes」に変えるなら怒らないものである。
「No」という時には必ず「because」をきちんと説明せねばならない。断る以上は相手を納得させる理由をいえ。そして「Yes」といったなら、必ずすぐに実行せよ。
■5.つねに人とは別の角度、別の立場から物事を見る
リンゴが木から落ちるのを見て、「なぜリンゴは落ちるのか?」と考えたのはイギリス人(ニュートン)。リンゴが木から落ちるのを見て秋の寂しさを感じ、この世の無常や命のはかなさを連想するのは日本人。
ユダヤ人なら、きっとこう考えるはずだ。
「なぜリンゴは天空に吸い上げられずに地球のほうに動くのだ?」
発想が逆転しているのである。
もうひとつ例を挙げよう。太陽が東から昇り西へ沈んでいくのを見て、「太陽が天空を動いて見えるのはなぜか?」と考えるのはコぺルニクス的発想。
ユダヤ人なら、「太陽と地球の動きは銀河系からはどう見えるのか?」と考えるだろう。
【感想】
◆冒頭の内容紹介にもあったように、本書には「34のトレーニング」が収録されています。これらはすべて問題形式で、実際に1人で「考えて解答する」ことができる仕様。
時間の関係で、私はちょっとだけ考えてすぐ先を読んでしまったのですが、そのほとんどが、おそらく時間をかけたからといって、正解を出せる類の問題ではありませんでした。
一方、具体的に答えが書かれていない問題もあって、たとえば初っ端の「トレーニング1」はこんな感じです。
食事中に、子どもがコップの中の水を見つめて、「水はなぜ透明なの?」と質問した。ここで大事なのは「当たり前」で終わらせないことであって、「思考停止を避けよ」とのこと。
あなたは何と答えるだろうか?
ググれば、こんな答えがあるんですが、大人になると、そもそも、こんな「問い」すら考えたことがなかったですよ。
水はどうして透明なの|科学なぜなぜ110番|学研サイエンスキッズ
◆また、上記ポイントの2番目の「ハエ」のお話も、実は「友人との食事中にハエが飛んできた。あなたはどんな"ハエトーク"をするか」という「答えがないトレーニング」に関連するものです。
そもそも、食事中にハエの話をするのが、マナーとしてどうかと思うのですが、ここでも「あー、ハエが飛んできた」で終わらせないのがユダヤ流。
ハエの「静止した状態から急に飛び上がり、コンマ何秒で最高速度に達することができる」スピードは、飛行機に換算するとプロペラ機の速度(時速700キロ)に相当するのだそう。
ところで、2014年にGoogleの研究チームが開発したと報じられたのが、今日本でも話題の(?)ドローンです。
著者の石角さん曰く「これはあくまでも推測だが、研究チームはハエにヒントを得て、この飛行物体を開発したのではないだろうか」とのこと。
Googleは創設者の2人がユダヤ人なだけに、ありえない話ではないかもしれません。
◆ちなみに、こうしたトレーニングのいくつかは、ヘブライ聖書やタルムードからの出典によるものでした。
タルムード - Wikipedia
割愛した中で興味深かったのが、ある農夫がラバイ(師)に「タルムードを教えてくれないか」と頼むエピソード。
ラバイは「お前にわかるわけがない」と突き放すものの、農夫に懇願され、次のような話をします。
ある日、煙突から居間にふたりの泥棒が入ってきた。ひとりの顔はすすで真っ黒だった。もうひとりの泥棒の顔にはすすがついておらず、真っ白だった。ここで問題は、「どちらの泥棒が顔を洗うだろうか?」というもので、農夫は当然「汚れている方」と答えますが、これは間違い。
そこで翌日、農夫は「すすをついていない方」と答えます。
なぜなら、汚れている農夫の顔を見て、「自分の顔にもすすがついているかもしれない」と思うから。
「なるほど、そうだよね!」と私も思ったのですが、実はこれも間違いとのこと。
ネタバレ自重のため、「正解」は本書にてご確認頂きたいのですが、「えー、そんなのアリ?(プンスカ)」となりかねないような……?
◆本書の場合、この農夫の話も含めて、通常の「問題」に対する「解答」とは少々異なるパターンが結構あるため、「謎解き」が好きな方だと、ストレスが溜まる気がします。
もっとも、そういう「パターン」で考えること自体が、本書で指摘する「思考を枠にはめる」ことなのかもしれませんから、これも本書の意図するところなのかも。
とはいえ、上記のハエの話もそうですが、一見「どうでもいいことを真面目に議論する」のは、日本では難しそうですから、「ユダヤ的思考法」を身につけるのは、なかなか骨が折れそうです。
それでも、彼らとの差を少しでも縮めたい方、いつかノーベル賞を獲りたい方には、本書は一読の価値があるのではないか、と。
……実はウチの小2のムスコは、「大きくなったらノーベル賞を獲りたい」と言っていたので、「はいはい」で済ませないで、本書の教えに従いたいと思います。
ユダヤ人の考え方を理解するために!
ユダヤ式Why思考法
はじめに 「考える力」が未来を切り拓く
Lesson0 今、日本人が身につけるべき思考力とは?
Lesson1 すべてを議論の対象とする
Lesson2 論点を見つける
Lesson3 思考の枠を外す
Lesson4 感情に流されない
Lesson5 思考のスタンスを決める
Lesson6 「なぜ」に目を向ける
Lesson7 別の次元から物事を見る
Lesson8 人間の本質をつかむ
Lesson9 背景にある哲学・本質をつかむ
【関連記事】
【格言】『ユダヤの格言 ~知られざる教典「タルムード」の教え~』竹中充生(著),市川 裕(監修)(2011年10月28日)【勉強法】「ユダヤ人に学ぶ速学術」濱野成秋(2008年12月28日)
「ユダヤ人が教える正しい頭脳の鍛え方」エラン カッツ (著)(2005年04月21日)
「ユダヤ人大富豪の教え」本田 健(著)(2005年02月17日)
【Amazonキャンペーン】「3000人のユダヤ人にYESと言わせた技術」アマゾンキャンペーンのお知らせ(2008年06月22日)
【編集後記】
◆昨日買った本。経済学のセンスを磨く (日経プレミアシリーズ)
著者の大竹先生の『経済学的思考のセンス』は、すごく良かったので、この本もゲットした次第。
ただ、税金ネタがドーンとあったので、当ブログでのレビューは難しいかもしれませんが。
ご声援ありがとうございました!
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