2015年05月13日
【勉強】『勉強がしたくてたまらなくなる本』廣政愁一
勉強がしたくてたまらなくなる本
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、某リアル書店で平積みになってプッシュされていた作品。アマゾンの評価が結構良かったので読んでみたところ、意外と深くて(失礼)ビックリしました。
アマゾンの内容紹介から。
どんな愚図の人でも、無理なく勉強が継続できる! 2万人を指導した元超人気予備校講師による大人のためのモチベーションアップ法。
送料考えたら中古より安いKindle版もオススメです!
my new hard drive / 00ucci
【ポイント】
■1.必要のないものを「捨てる」筆箱がパンパンな子は、筆箱に限らず、部屋、机の引き出しの中身、カバンの中もゴチャゴチャです。とにかく必要ないものを「捨てる」ことをしっかりとやっていません。つまり、「捨てる」ことを軽んじる思考が象徴的に筆箱に表れているのです。
これは部屋でも同じです。
私はかつて家庭教師の派遣事業会社を経営していました。そのとき、「成績の芳しくない生徒の家はゴチャゴチャしている」という話を家庭教師の先生方からよく聞いていました。それも部屋ではなくて、家全体がごちゃごちゃしているというのです。
■2.常に勉強道具を持ち歩く
受験生を受け持っていたころ一番感じた合格する学生の特徴は「勉強をいつも手にしている」ことでした。単語帳だったり、教科書だったり。社会人を相手にしてからもその印象は変わりません。
いつでもどこでも勉強するのだという決意を、「常に勉強道具は持ち歩く」という具体的なことに変えましょう。思いを行動に変えるのです。仮に勉強しなくても持ち歩くことだけはしてほしい。これは自分にプレッシャーをかけるためです。「せっかく持ち歩いているのだから」という気持ちを自分に持たせてくたさい。
■3.新しい習慣のために、今の習慣を捨てる
ここで、あなたの今の習慣を見渡してみましょう。
「趣味の時間」「酒」「習い事」「仕事」「ネット」「大切な人との時間」があります。もちろん「たいして重要でない趣味の時間」「それはど行きたくもない飲み会」「もうやめてもいい習い事」「それはど大切ではない人との時間」というものもあるでしょう。
その中でどれを捨てるかを選別してください。その捨てた時間に、これぞという勉強を入れるのです。先はどの門番とリクツ君の話の中にもありましたが、何かを入れる場合、既に定着しているスタメンの習慣に席を空けてもらわなければなりません。
■4.「1・3・7日法」でゆとりを作る
今日のやりたい勉強が10ポイントあるとします。しかし、「勉強を妨害すること」が起こり5ポイントしかできなかった。そんな時、「明日、頑張る」という抽象的な気持ちになりがちですが、もっと「具体的な戦略」に転換しましょう。
ここで、「1・3・7日法」を使います。
考え方はこうです。1日10ポイントということは、3日だと30ポイント。今日は5ポイント獲得ですから、あと2日で残りのポイントを獲得すると考えます。つまり25ポイント÷2日で1日12.5ポイント得られればOK。残り2日で1日目の失点を緩やかに取り返せます。
もし3日で取り返せないほどの失点を負ってしまった場合は、7日間で考えて計画を立て直しましょう。
■5.スランプのときには、復習がオススメ
「え? スランプなんだから、勉強なんてできないよ」と反論されるかもしれませんが、復習というのは、勉強の中でももっとも「エネルギーがかからない」ものです。「やったことを整理する」「一度覚えたことを覚えなおす」ので、1回目よりもずいぶんと労力が少なくて済むのです。(中略)
効果の高い復習をスランプの時にやっておくと、本格的に勉強を再開するときにとても楽になります。さらに高い効果を出しているという意識から罪悪感を持たずにすむことも、勉強の継続には必要なことです。
【感想】
◆本書のプロローグには、著者の廣政さんが、本書を書くに至った経緯が書かれていて、これがなかなか興味深いものでした。まず、冒頭の内容紹介にもあるように、予備校(東進ハイスクール・河合塾)の講師をされていたのですが、辞めるまでの10年以上の間、廣政さんの講義は満員状態が続いていたのだそう。
というのも、受講生の勉強の成果が、他の講師陣を圧倒していたから。
しかも、担当科目である英語だけでなく、担当外の全受験科目まで成績が急上昇したとのこと。
その秘密は廣政さんが生徒に教えた「勉強がしたくてたまらなくなる方法」にありました。
やがて廣政さんは、その技術を携え、「力のある予備校教師が学校に出向いて大学受験指導を行う」ベンチャー企業を立ち上げます。
最終的にこの企業は、20校以上の中学・高校の進学実績を大きく伸ばすことに成功(現在は譲渡済み)。
本書は、そんな廣政さんの「勉強がしたくてたまらなくなる」メソッドが詰まった作品なわけです。
◆個人的に「目からウロコ」だったのが、上記ポイントの3番目の「新しい習慣のために、今の習慣を捨てる」というお話。
「新しく始めた勉強が続かないのは、今の生活が習慣でぎっしりと詰まっているから」という指摘は、なるほど確かにそうだな、と。
実際、廣政さんは、本屋で英会話のテキストを手にした奥さんに、「今続けている習慣のうち、何をやめるの?」と尋ねます。
「1日24時間の中で、勉強という新しい習慣を入れるのだから、他の時間を削らなければムリ」という指摘を受けて、奥さんは英会話を断念。
勉強本としてはアリエナイ展開ですが、廣政さん曰く「足し算の発想だけで勉強をやろうとすることは絶対にやめてください」とのこと。
まず、自分の生活を「調査・観察」した上で、「捨てる」決心をし、それからようやく「入れる」ことを考える……。
「この順番を守ることが大切」なのだそうです。
◆また、割愛したTIPSの中で興味深かったのが、「鉛筆を30秒握る」というもの。
廣政さんは、勉強の習慣がまだついていない生徒に対して、「家に帰ったら、制服を脱がないで、そのまま机に向かい、30秒鉛筆を持つ」ことを指導してきたのだそう。
と言っても、30秒たったからといって、すぐに鉛筆を置く生徒はほとんどおらず、それどころか、宿題を済ませたり、数時間勉強する「癖」がついたりします。
ここで廣政さんが、勉強習慣がついていない生徒に「勉強しなさい」と言わないのは、「勉強」という言葉が非常に重たい言葉だから。
「鞄から宿題を出し、筆記用具を出し、問題を読み……」といった沢山の行為を、ひと言で済ませてしまっているのが「勉強」という「重たい言葉」であり、これを「鉛筆を30秒持つ」という「軽い言葉」にすることによって、勉強習慣が身につくのだそうです。
ちなみに社会人の場合は「スーツを脱がずに、勉強道具を出し、30秒だけ机に向かう」でOK。
新しく勉強を始める方や、なかなか勉強する習慣が身につかない方は、一度試してみてください。
◆もう1つ割愛した中で、触れておきたかったのが、「4パターンの中から自分の状態を見極めてコントロールする」というお話。
これは自分自身を「精神的に落ち着いている/追い込まれている」「肉体的に元気/疲れている」の2軸4象限に分類して、どこに当てはまるかによって、勉強内容を考えるというものです。
「精神的に落ち着いていて、肉体的に元気」な状態が、勉強するのに最適なのは分かりますが、それ以外の各象限で、どうアプローチするかは、本書にてご確認を。
そう言えば、精神的に追い込まれていると、勉強の成果が「徹夜明け並み」に悪化する、という実験結果がこの本にもありましたね。
いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学
参考記事:【オススメ!】『いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学』センディル・ムッライナタン,エルダー・シャフィール(2015年03月01日)
実はこの本も、受験等なさる方には、ぜひ目を通して頂きたいところですが。
◆このように本書は、細かい勉強法や、受験テクニックを指南する本ではありません。
その反面、受験等の必要に迫られていない方が、勉強する習慣を身につけるには、うってつけではないか、と。
もちろん、資格試験等を受験する場合でも、働きながらでなかなか時間が作れないような方にとっては、本書のメソッドは、きっと役に立つハズ。
こういった「勉強法以前のインフラ」を整えることによって、勉強も初めて成果が出るのだと思います。
……ぶっちゃけ私は、本書とは違う「ガチな戦術系」の勉強本の方が好みなのですが、本書だけはオススメしたく。
「ヤル気」になれる1冊です!
勉強がしたくてたまらなくなる本
第1章 筆箱を捨てれば、勉強がしたくなる
第2章 「いつもの習慣」を捨てれば、勉強がしたくなる
第3章 計画の立て方を変えれば、勉強がしたくなる
第4章 意識を変えれば、勉強がしたくなる
【関連記事】
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【オススメ!】『習慣の力 The Power of Habit』チャールズ・デュヒッグ(2013年04月26日)
【オススメ!】『いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学』センディル・ムッライナタン,エルダー・シャフィール(2015年03月01日)
【編集後記】
◆やはり昨年末に出た勉強本なのですが、ちょっと気になる作品がこちら。東大教授の父が教えてくれた頭がよくなる勉強法
レビュー評価が高くて、中古が値崩れしていない、という点が、今日ご紹介した本と同じです。
また、Kindle版がお買い得なのも、ポイント高し!
ご声援ありがとうございました!
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