2015年05月05日
【ヒットの秘密?】『メガヒットはたった7つのキーワードで生まれる』新井庸志

メガヒットはたった7つのキーワードで生まれる
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、前々から気になっていて、リアル書店で捕獲したマーケティング本。著者の新井庸志さんは、マーケティングコンサルタントであり、また「All About」のガイドとして、マーケティング部門を担当されてらっしゃる方です。
アマゾンの内容紹介から。
妖怪ウォッチ、EXILE、USJハリポタから学ぶ、マーケティング超・入門。
なお、既にKindle版も発売されております!

Frozen's Anna & Elsa in Disney Festival of Fantasy Parade / indigoskye
【ポイント】
■1.西友「生鮮食品100%返金」は成功する?ちょっとしたいたずら心で1度や2度返金してもらおうとしても、その後の生活で西友に行きづらくなることは、そのお客さん自身にとってマイナスになる。悪意ある行動はそうそう簡単に出来るものではないのだ。
人間には、自分が行った購買行動は出来るだけ肯定しようという心理が働く。そして、気に入らないことがあっても、一度購入した商品をわざわざ労力をかけて、返金手統きをするのは面倒だという心理も働く。そもそも、このようなキャンぺーンのリターン率は、多くて5パーセント。西友の場介には、多くても+2〜3%程度ではないかと思われる。利益率との兼ね合いを考えた場合、この程度の返金率であれば大きなダメージにはならないのだ。
■2.「スーパーホテル」が取った運営効率化(抜粋)
(1)チェックイン時に会計
(2)暗証番号による入室キー((1)とともにチェックアウト時にフロントに立ち寄る必要がない)
(3)フロントは夜間クローズ(24時を超えた場合、暗証番号か必要)
(4)べッド下をなくすことで清掃の手間とコストを削減
(5)朝食はビュッフェ形式、ドリンクは朝食時のみ自販機が無料になる仕組み
(6)コンシェルジュ、レストランは無し
■3.良質なコンテンツは、これからますますヒットする
ソーシャルメデイア、インターネットの本格普及以前には、地方で素晴らしいCMがあったとしても、全国に広まることはあまりなかった。なぜなら、その手段がほとんどなかったからだ。年に1、2度あった「おもしろ・感動CMグランプリ」的なテレビ番組で取り上げられる程度だったのだ。
しかし、インターネット、ソーシャルメデイアが普及した今、発信地が地方であったり、発信量が少なかったりしても、コンテンツが素晴らしければ、一気に広がるようになった。「どこでCMを流すか」は確かに重要だが、その重要性はどんどん薄まっている。その反面、「何を」流すかがますます重要になってきているのだ。
■4.なぜ、「サク飲み」は吉野家やファミレスでブレイクしたのか?
吉野家での「サク飲み」が流行る理由は、お客さん側からすれば"低価格であること""飲みの時間が短くてすむこと"が挙げられる。一方、吉野家側からすれば、既存施設を使い、出来るだけ手間のかからないメニューのみを提供するので、大きな投資が必要ない。(中略)
今の若者たちは一杯目からソフトドリンクの人もいれば、サワーやワインの人もいる。ファミレスは適度ににぎやかで、安くて、アルコールも強要されず、話もできる。サクっと飲んで帰ることもできるし、長く話もできる。ファミレスで「サク飲み」が流行るのも自然なことなのだ。
■5.マクドナルド不振の根本原因とは?
マックカフェを推進した結果、マクドナルドはそれまでメイン顧客であったファミリー層にとって、みんなで楽しく食事をできる場所ではなくなってしまった。(中略)
私が店頭で定点観察をしている感触としては、ファミリー層は以前より50%減くらいの印象を受ける。それだけではない。店に来たものの、空いた席がなく帰ってしまう客が多いのも見受けられる。店を見渡せば、2人席、4人席に1人で座りパソコンをしていたり、寝ている客もいる。
このような状況では、当然、客数は減る。またコーヒー1杯で仕事をしたり、寄り合いをする客が増えれば、おのずと商品販売数量は減り、売り上げは下がる。これがマクドナルド不振の根本原因だ。
【感想】
◆上記では、タイトルにある「たった7つのキーワード」が何かについては、一応「ネタバレ自重」しております。また、冒頭の内容紹介にある「妖怪ウォッチ、EXILE、USJハリポタ」の3つについても、さすがに堂々と書く勇気がないので(?)、とりあえずスルー。
それでも本書にはさまざまな「ヒット商品が売れた秘訣」について分析がなされており、メーカーの社員時代、かかさず『日経トレンディ』『DIME』といった雑誌を買い続けていた私には、大変興味深い内容でした。
ただ、税理士になってからは、普通に新聞やネットで流れてくる情報しか目にしていないせいか、「ヒットの秘訣」どころか「ヒットしている事」すら知らない事例が多々。
たとえば、上記ポイントの1番目で挙げた、西友の「生鮮食品100%返金」は、初耳でした。
「生鮮食品のどんな不満でも返金します」 西友が顧客満足度の向上に挑戦 - 産経ニュース
同じくポイントの2番目の「スーパーホテル」というのも、てっきり「スーパーカー」のように、特定の商品群を表わしてるのかと思いきや、固有名詞だったという。
【公式】スーパーホテル ホームページ【Lohasビジネスホテル予約】
「なるほど」と思ったのは、この「スーパーホテル」はビジネスマンをターゲットにしており、「睡眠」にこだわりがある(枕が選べたり、照明や部屋の遮光性に工夫アリ)ため、部屋からの景色にこだわらなくて良い分、立地場所自体のコストが削減されているそうです。
◆また、これは知らなくてもしょうがないと思ったのですが、上記ポイントの3番目で具体例として挙げられていたのは、「東山堂」という地方(岩手県盛岡市)の一企業のテレビCM。
株式会社 東山堂 音楽教室
……個人のホームページでももうちょっと凝った作りのものが多い気がw
下記の動画は、3分30秒もあるのですが、こんなに長いバージョンのテレビCMが流せるのも、地方の局だからでしょうね。
私は本書を読んでこのCMを知ったのですが、最近Yahoo!ニュースでも取り上げられていたようです。
娘の結婚披露宴で父が…、日本の地方CMに中国人の涙腺崩壊=「日本人だけど感動した!」「おれもこんな父親になりたい」 (Record China) - Yahoo!ニュース
「何で海外経由なの?」とは思いますが、「再生回数300万回弱」というのは、広告としては十分な効果を上げたと言えるでしょう。
◆逆に、「ヒット」ではなくて「失速」のお話ですが、ポイントの最後のマックの件は、個人的には初耳(初見?)でした。
ここで言っている「マックカフェを推進」(カフェ化)というのは、AC電源席を増やしたり、席間を広げて、テーブルやチェアを固定した事を指しています。
一応、目指していたのは「脱低価格化」。
ただ、それによって、長時間休憩するビジネスパーソンや、長居する高齢者が増えたのだそうです。
結果、ファミリー層が減った、というのは上記ポイントの通り。
そしてこれらは、例の安全性の問題が起こる前からの話であり、結局、マックは既に低迷の道に踏み出していたワケです。
なお本書では、同じように「低迷」した例として「東京チカラめし」や「アバクロ」も俎上にあげていますので、気になる方はご確認を。
◆その他、ヒット要因を分析されている事例としては、こんなところがありました。
・「アナと雪の女王」
・「伊右衛門 特茶」
・「地ビール」
・「立ち食いスタイル」
さらに、最後の第5章では、2015年のトレンドをも予想しています。
例を挙げると「プレミアムビール」や「スロージューサー」等々。
こういった「マーケティングネタ」が好きな方や、企業の株価に敏感な方なら、軽く目を通されることをオススメしておきます。
ヒットの秘訣が知りたい方に!

メガヒットはたった7つのキーワードで生まれる
序章 新井流マーケティング術とは?―なぜ評論家やコンサルタントの話は絵に描いた餅になることが多いのか?
第1章 大変化!ヒット・トレンドの生まれ方
第2章 大変化!日本人の国民性
第3章 大変化!企業経営―企業の「本質」へのこだわりが問われ始めた
第4章 大変化!ソーシャルメディアの存在感
第5章 2015年のトレンドを生み出すキーワード!
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【編集後記】
今日の「Kindle日替わりセール」から。
「謎」の進学校 麻布の教え (集英社新書)
レビューが多くて、おしなべて高評価ではあります。
お子さんが受験予定の方にオススメ。

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