2015年05月03日
【資料作成】『世界のトップを10秒で納得させる資料の法則』三木雄信
世界のトップを10秒で納得させる資料の法則
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、リアル書店で捕獲した、かなり実践的な「資料作成本」。著者の三木雄信さんは、東大卒業後、三菱地所経由でソフトバンクに入り、孫正義さんのもとで、数々のプロジェクトを成し遂げた、という方です。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
ソフトバンクの社長室長を勤め孫社長の懐刀として活躍してきた著者が、超多忙の孫社長が「一瞬でわかった!」と納得する資料の作り方を解説。売上報告書からプロジェクトマネジメントシートまで、10種類の主要資料の作成のツボと考え方が1冊で学べる本です。
結構「資料作成術本」は読んできたツモリでしたが、私がソフトバンクにいたら、ダメ出しされまくりでした!
Decision Making Chart / West Virginia Blue
【ポイント】
■1.分母を群管理して分析するエボラ出血熱の死亡率は50%ぐらいだとされてきたが、1ヶ月前にエボラ出血熱に罹患した患者のその後を見ていくと、実質的な死亡率は90%ほどと見られている。なぜ、50%という数字が流布したかといえば、時間の経過の中で分母を群管理していなかったからだ。
累積で数字を追いかけていくと、1ヶ月で分母は2倍になる。分母が増えれば、死亡率は下がる。だから、50%という数字が独り歩きしてしまった。
前の月にエボラ出血熱に罹った患者と今月の患者数を分けて数字を追いかければ、実態に近い死亡率が得られる。それができれば、もっと違った手を打てたかもしれない。
■2.売上を継続性の観点で分けて認識する
私がコンサルタントとして入っている会社でも、これと似た例にたびたび遭遇している。新規事業を立ち上げたのに、いっこうに売上が伸びず、毎月、売上が増えたり減ったりの繰り返し。あるシステム会社の場合、1年ほど様子を見ていたが、いっこうに改善する気配がなかったため、売上を型別に分解してみた。
すると、すぐに問題点を把握できた。スタートした新規サービス事業で、一時的な売上をずっと作り続けていたことが判明したからだ。継続的にそのサービスを使い続けてもらわなければならなかったのに、現場では初期費用をとりあえず取って回していくビジネスに陥っていたのだ。
そこで、新しいサービスを開発し、月額の利用料をもらうビジネスに切り替えたら、結果はすぐに出た。事業がうまく回り出したのだ。
■3.会議議事録は体言止めで書く
図表4−1を見ると、「ユーザー調査報告」「納期10月20日」とあるが、もしこれを「ユーザー調査をする」という表現に替えるとどうなるか。
「ユーザー調査は実施するが、報告まではしなくていいのかもしれない」という解釈も可能となり、次回の会議の席で「ユーザー調査は実施しました。いま資料を精査中です」となるかもしれない。「ユーザー調査の報告」までを期待していた他のメンバーはあてがはずれ、日程が後ろにずれこんでしまう。そんな事態も考えられる。
サラリーマンとは、自分のいいように解釈をして、甘えてしまう傾向がなきにしもあらずの人種である。それを防ぐためにも、表現は必ず体言止めとし、アウトプットを明確に定義することを心がけよう。
■4.問題点の発見に役立つパレート図
Excelをバリバリと使いこなして仕事に活かしているビジネスパーソンは多いが、ことパレート図となると活用している人は案外少ない。
パレート図とは、仕事の現場で問題となっている不良品や欠点、クレーム、事故などを原因別に分類し、多い順に並べ替えた棒グラフと、累積比率の折れ線グラフで構成される図のことだ。
このパレート図を作成すると、それぞれの項目の占める割合が一目瞭然になるため、早急に解決すべき問題点を発見しやすくなる。管理・改善活動の重点目標を決めるのに役立つこのパレー卜図は、QC(品質管理)の7つ道具の1つとされている。
■5.回帰分析で因果関係を浮き彫りにする
わかりやすい回帰分析の例としてよく取り上げられるのが、アイスクリームの売上とその日の最高気温との関係だ。
気温が上がると人はアイスクリームを食べたくなり、アイスクリームの売上が伸びていく。では、気温がどれぐらい上がるとアイスクリームの売上は伸び始めるのか。その伸びはどれぐらいのものなのか。こうした両者の関係を回帰分析の手法で探っていくと、「アイスクリームの売上=y=ax+b」の式で表すことができる。
売上高とテレビ広告の因果関係を見るときにも、回帰分析はうってつけだ。「これだけテレビ広告を打ったら、これぐらい売上が上がるはずだ」という因果関係がわかれば、目標とする売上高に対して適切なテレビ広告費をはじき出すことが可能になる。
【感想】
◆下記関連記事にも列挙しましたように、当ブログではこれまで、数多くの「資料作成本」をご紹介しております。ただ、それらの類書と本書とが違うのは、まず類書の多くは「こういう資料を作る」という前提があって、それを表現する上でのコツやヒントのようなものを明らかにしていました。
それに対して本書は、何かしらの問題があって、それを究明&解決するために、どういう資料を作るべきなのか、というお話がメイン。
しかも、事例として挙げられているのが、三木さんがソフトバンクや日本年金機構で、大量の電話や問い合わせをさばいたお話がメインなのですから、リアリティがあります。
私は申し込まなかったのでよく知らなかったのですが、Yahoo!BBの開設・開通が遅れに遅れて社会問題化したり、「ねんきんあんしんダイヤル」は、電話を何度かけてもつながらない等々、いずれも問題は山積みでした。
どちらもシャレになってませぬ!
◆たとえば、Yahoo!BBの場合であれば、当初はカスタマーサポートがEメールオンリーだったものの、クレームの嵐でパンク状態に。
埒が明かないと、コールセンターを開設しますが、そちらがなかなかつながらないからと、ソフトバンクの本社に電話が殺到します。
代表番号はもちろん、そこから1番違いずつで次々に電話が鳴り始め、会社中の電話はすべて埋まり、社内の人間がみな、クレーム対応に追われたのだそう。
そこで三木さんは、サービスを申し込んだ時点をスタート時点として、そのうち何%の人がNTTに申請を済ませ、宅内工事も済ませ、最終的に開通に至っているかを明らかにしました。
各自のスタートが違っているのに、トラブルを累積でまとめてしまうと実態がわからなくなる、というのは上記ポイントの1番目の「エボラ出血熱」と同様であり、三木さんは「群管理」を行うことによって、問題解決したわけです。
◆また、上記ポイントの4番目の「パレート図」は、三木さんは章を割いてオススメされていますが、個人的にはなじみがないものでした。
具体的にどういうものかについては、ググって見つけたこんなページをご紹介。
パレート図〜品質管理の知識
本書では、具体例(モバイル通信サービス会社のコールセンターにおける、モデムの障害に関するクレーム)を挙げて、実際にエクセルでパレート図を作成する方法を指南しています。
この辺は、技評さんの本かと思うほど(?)、手取り足取り丁寧に解説されており、私でも見やすいパレート図が描けそうでした。
◆一方、重要性から言ったら、上記ポイントの最後の「回帰分析」の方が、ソフトバンクでは重要だった模様。
回帰分析とは、「複数の変数間の関係を一次方程式(y=ax+b)の形で表現する分析方法」です。
何でも、2001年に通信事業を始めたときから、孫社長は「これから回帰分析をしないやつの話は一切聞かない」と言いだしたのだそう。
こちらも、前述のパレート図同様にExcelでの作成方法が指南されており、本書を読めば、下記リンク先の図にあるような近似曲線が描けるようになります。
決定係数とは,重相関係数,自由度調整済決定係数
「何と何とが相関関係があるか」みたいな話をするのには、必須でしょう。
そういえば、こちらのエントリーにある散布図も同様ですね。
2013年度J1におけるお金と勝ち点の相関性 - pal-9999のサッカーレポート
◆このように、本書では「資料作成法」を解説しているのですが、上記で触れたように、「見た目」というよりは、「中身」のお話が中心です。
その資料も、作ってみて、初めて「何が問題かが明らかになる」タイプの資料と言いますか。
そういう意味では、むしろ本書は「資料作成本」でありながらも、「問題解決本」に近いような気がします(「議事録」等はちょっと違いますが)。
収録された主要資料は全部で10種類。
少なくとも、ソフトバンクで働くには、これらをマスターする必要はありそうです。
ワンランク上の資料を作成するために!
世界のトップを10秒で納得させる資料の法則
ケーススタディ1 業務処理報告書
ケーススタディ2 売上報告書
ケーススタディ3 要因分析レポート
ケーススタディ4 プロジェクトマネジメント型会議議事録
ケーススタディ5 プロジェクトマネジメントシート
ケーススタディ6 パレート図
ケーススタディ7 回帰分析
ケーススタディ8 プロセス分析シート
ケーススタディ9 プレゼンテーション
ケーススタディ10 企画書
特別付録 資料作成のツボ
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【編集後記】
◆今日の本の著者である三木さんは、こんな本も出されてらっしゃいます。効率よく夢をかなえる A4一枚勉強法
受験用ではないのでスルーしたのだと思いますが、今さらながら気になってみたり……。
ご声援ありがとうございました!
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