2015年04月25日
【日本語力】『辞書編纂者の、日本語を使いこなす技術』飯間浩明
辞書編纂者の、日本語を使いこなす技術 (PHP新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、 『三省堂国語辞典』の編纂者である飯間浩明さんの最新刊。マナー本著者や、学者さんの本とはひと味違った「日本語の使い方」を学ぶことができるのが、本書の特徴だと思います。
アマゾンの内容紹介から一部引用。
日々、ことばと暮らす著者が、ことばと向き合い、さらに使いこなす。気になる日本語として「あやまる」と「わびる」の違い、紋切型の表現について、敬語を省略して使う、穏やかに注意する方法のほか、漢字と仮名の使い分け、読点(、)の付け方、辞書の活用法等、多岐にわたって提案。さりげないけれど、知っているとお互い気持ちよく過ごせる表現方法が満載!
指摘されて、「なるほど」と思うお話が、いくつもありました!
Dictionary / greeblie
【ポイント】
■1.「あやまる」と「わびる」の違い「あやまる」と「わびる」とは、意味がはっきり違いますが、しばしば混同されます。私たちは、「わびる」べき場面で「あやまる」ことがよくあります。
「あやまる」(謝る)は、日本語としては「誤る」と同じで、自分が間違っていたことを認めることです。
「わびる」は、「待ちわびる」「思いわびる」などにも使われることで分かるように、悩みが起こって、気持ちが安まらなくなることを言います。なぜ悩みが起こるかというと、自分が相手を困らせたり、悲しませたりしているのではないかと感じるからです。つまり、「相手はどう思っているのだろう」と推し量るのが、「わびる」です。
■2.否定的な表現に形容詞ではなく動詞を使う
同じ否定的な表現でも、形容詞を使わず、動詞を使うといい場合があります。
「あなたは前回、前々回と時間に遅れました。私も困るので、どうか改めてください」
形容詞「だらしない」は主観的な評価を表しますが、動詞「遅れる」は、単に事実を述べているだけです。(中略)
一般に、形容詞を多用すると、感情や評価を含む主観的な表現になりがちです。一方、動詞を使うと、批判も称賛も含まない、客観的な言い方がしやすくなります。
■3.漢字と仮名の使い分けルール
私の使い分けのルールは2つです。
1つめは、「いつも文末に来ることば」「いつも文の最初に来ることば」は、基本的にひらがなで書くということです。
たとえば、「〜ことができる」とか「〜ようになる」とかいうことばは、文末に決まって使われます。そこで、「事が出来る」「様になる」とは書かず、ひらがなにします。
一方、「かえって〜」とか「しかし〜」とかいう副詞や接続詞は、文の頭に来ます。これも、「却って」「然し」とは書きません。
2つめは、「むずかしい字」「みんなが読めないような字」は、できるだけひらがなで書くということです。
■4.反対語を意識すると文章が書ける
文章を書くときも、反対語を意識することはたいへん重要です。
たとえば、「ことば」について書け、という課題が出たとします。それではと、すぐに「ことばとは……」と書き始めても、漠然とした文章にしかならないでしょう。
そこでまず、「ことば」に関係する反対語のぺアを思い浮かべてみます。「話しことば⇔書きことば」「現代語⇔古典語」「東日本方言⇔西日本方言」など。
「話しことば」を論じるには、「書きことば」とどう違うかを明らかにしなければなりません。「現代語」を取り上げるなら、「古典語」との相違について述べなければなりません。何かを論じるときは、つねにその反対のものと比較する必要があります。
■5.辞書環境を整える
まず、紙の辞書の場合、買ってきたら、箱は捨ててしまってください――私はいつもこんなことを言うので、装丁の方に申し訳ないのですが、便利さには代えられません。箱に入っていると、取り出すのがどうしても面倒になります。
ビニールのカバーも、ないほうがいいですね。あれも引くときに滑って邪魔です。
「上級編」になると、表紙の端(親指の当たる部分)の出っ張ったところをカッターナイフで切り落として、本文のぺージの幅と揃える、という方法もあります。こうすると、「あ」「わ」など隅のほうのぺージも、表紙に邪魔されずに引くことができます。
【感想】
◆ボリュームの関係で割愛していますが、本書はもう、初っ端から付箋を貼りまくりました。まずは、冒頭の内容紹介にあった「敬語を省略して使う」について。
これには方法が2つあって、まずは「しまいまで言わず、動詞をぼかしておく」というやり方が考えられます。
例えば敬語である「もう昼ご飯を食べましたか?(召し上がりましたか?)」と普通の言い方である「もう昼ごはんは食べた?」と比較すると、違うのは最後の動詞の部分だけ。
それならば、その部分を言わないで「○○さん、もう昼ごはんは……?」とぼかしておけば、とりあえず敬語を使わずに済むという。
仕事上で付き合いのある相手との距離を縮めたいような場合に、このような微妙な言い方をしておくと、意外に効果がありそうです。
もう1つのやり方は本書にてご確認頂くとして、いずれにせよ、普通の敬語の本には載っていそうもないTIPSだな、と。
◆敬語絡みで言うと、「お疲れさま」というお馴染みのフレーズにも注意すべき場合があります。
これは「敬語の常識」として、「目上には『ご苦労様』といってはいけない」ことから、何でもかんでも「お疲れさま」で済ませる風潮があるからなのでしょうか、著者の飯間さんが授業を終えられた後、学生に「お疲れさまでした」と声をかけられることがあるのだとか。
……お読みになられて、違和感ありますか?(私は当初ありませんでしたw)
これまた指摘されて「なるほど」と思ったのですが、会社の上司や同僚に「お疲れさまでした」というのとは違い、「自分に何かしてくれた相手に『お疲れさま』を使う」のは失礼になります。
感謝の気持ちがあれば「ありがとうございました」ですし、別れ際なら「さようなら」「失礼します」が妥当でしょう。
今まで、セミナー終了後に、講師に「お疲れ様でした」と言った事のある方はご留意頂きたく。
◆さて本書では、こういった「日本語の使い方」のTIPSが第1章と第2章で展開されており、上記ポイントのほとんどが、この2つの章から引用しております。
それに対し後半の3つの章では、飯間さんの「辞書編纂者らしい」お話が多々。
たとえば、語形の変化というのは結構頻繁に起こるらしく、花の「さざんか」(山茶花)は「さんざか」の音がひっくり返ったものだし、「あたらし」(新し)は「あらたし」の転倒なのだそう。
そう考えると、ネット界隈では有名な「ふいんき(←なぜか変換できない)」も、近い将来「変換できる」ようになるのかもしれませんw
それ以外でも、「辞書に載ってそうで、まだ載っていないことば」や、「その理由」、というのも、なかなか興味深いところでした。
◆最後に、アマゾンの内容紹介の別の部分にあった「『さみしい』と『さびしい』の違い」についても触れておきたく。
前者は「感情形容詞」で、後者は「属性形容詞」という分け方も、私は知りませんでしたが、指摘されてみると確かにそう感じます。
「私はさびしい」より「私はさみしい」の方が、感情がより伝わりますし、「さみしい村」より「さびしい村」の方が客観的でふさわしいな、と。
ただし、前提はこうなのですが、実際の文学作品では、そう簡単にはいかないらしく……(詳細は本書を)。
日本語を、理論と実践の両方から俯瞰する1冊!
辞書編纂者の、日本語を使いこなす技術 (PHP新書)
第1章 コミュニケーション―相手との距離を近づけることば
第2章 分かりやすい表現―確かに伝える方法を考える
第3章 ことばを蓄える―知って、調べて、味わう
第4章 ことばの基礎知識―もっと掘り下げて考えるために
第5章 ワードハンティング―アンテナを張り巡らしてみる
【関連記事】
【NG10選】『「問題ありません」は上司に失礼! 大人の敬語常識』に学ぶNGフレーズ10選(2015年03月11日)【NG6選】『その日本語 仕事で恥かいてます』福田 健(2014年04月16日)
【敬語】『知らずにまちがえている敬語』井上明美(2013年08月19日)
【モノの言い方】『その一言が余計です。』に学ぶ日本語の7つのNG(2013年07月03日)
【これは便利!】『ビジネスメール言い換え辞典』から選んだNG7選(2012年08月16日)
【編集後記】
◆こちらも飯間さんの作品。辞書を編む (光文社新書)
「三浦しをんさん大絶賛!」とのことです!
ご声援ありがとうございました!
この記事のカテゴリー:「コミュニケーション」へ
この記事のカテゴリー:「メルマガ・ライティング関係」へ
「マインドマップ的読書感想文」のトップへ
スポンサーリンク
この記事へのトラックバックURL
●スパム防止のため、個別記事へのリンクのないトラックバックは受け付けておりません。
●トラックバックは承認後反映されます。
当ブログの一番人気!
10月10日まで
9月26日までのところ一部値引に移行して延長中
Kindle月替わりセール
年間売上ランキング
月別アーカイブ
最近のオススメ
最近の記事
このブログはリンクフリーです