2015年04月06日
【未来の職業?】『あと20年でなくなる50の仕事』水野 操
あと20年でなくなる50の仕事 (青春新書インテリジェンス)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、リアル書店で見かけて、思わず手に取ってしまった1冊。著者の水野さんは、3Dプリンタなど最新技術の導入を企業にコンサルティングしている方であり、そのお話もかなりリアルでした。
アマゾンの内容紹介から。
タクシードライバー、弁護士、プログラマー、営業部員―「AIに使われる人」と「AIを使いこなせる人」の違いとは?「消える職業」「生まれる仕事」を大胆予測。
あなたの職業は大丈夫ですか!?
Makerbot Industries - Replicator 2 - 3D-printer 09 / Creative Tools
【ポイント】
■1.雑務担当の弁護士は不要に?法廷で争う際に非常に重要なのは適切な情報を集めて法廷で用いることだが、それがディスカバリーといわれる作業だ。
従来、このような業務をこなそうと思えば、たくさんの弁護士や法務に詳しい法律事務員が必要だった。しかし、ドキュメントをコンピューターで解析していく「eディスカバリー」は急激に増えつつある。法曹界では,すでに当たり前になってきているのだ。
多くのドキュメントは最初から電子化されている。つまり、コンピューターと非常に相性がいいわけだ。AIの学習能力は年々向上しており、ディスカバリー業務でも非常に高い精度で正確なドキュメントを選び出せるようになってきている。その結果、従来ディスカバリー業務を担当していた人たちの役割は、AIが選び出したドキュメントのチェックに変わりつつある。
■2.タクシードライバーはロボットに?
ひょっとしたらタクシー自体が無人になってしまうかもしれない。というより、タクシー自体がもはやロボットであり、巨大なネットワークコンピューターにつながったAIの一部になったらどうだろう。(中略)
言ってみれば、確実に目的地に連れて行ってくれることと、科金の徴収機能が確立されれば、もはや人が運転する必要がなくなるわけだ。この2つが確実に実行されることが実用レべルで保証されれば、もはやタクシー会社に必要なのは、会社の経営者とタクシーロボットを監視し、何かあったときに顧客と直接話をする担当者が数人程度でいい。
■3.歯科技工士は、デジタルに移行できた人だけが生き延びる?
実は、歯科技工の世界では、3Dデータの活用は以前から進んでいる。筆者がお手伝いをしている技工所でも、すでに歯科用の装置を完備してインプラントなどをつくっている。
まず、従来は歯科医師が患者の歯の型取りをしたうえで、石膏のモデルを作成する。私たちにおなじみの方法だ。これまでも3Dスキャンなどの方法が使われなかったわけではないが、それも「石膏モデルをスキャンする」というやり方だった。しかしこの数年、石膏の型をつくらず、直接口腔内をスキャンするという方法が普及しはじめている。患者の歯をそのまま3Dデータにできるのだ。
■4.コールセンターは全自動化・無人化の可能性も?
すでに個別に存在しているテクノロジーが統合されれば、コールセンター業務のすべてが完全にAIに置き換わり、無人の空間になることも荒唐無稽な話ではない。必要な人間はそれらのシステムを管理する担当者や、どうしてもAIでは対応しきれない特別なサポートに対応する担当者くらいになる。昨今増えているクレーマーも、AIが相手とあっては張り合いがないだろう。人間とは違ってどんな言葉にも冷静に対応し、それこそ膨大なデータに基づいたもっとも適切な対応をするかもしれない。
■5.お役所も機械化・IT化が進む?
作業レべルの業務、補助的な業務をしている人はますます減らされていくだろう。
役所では、とっくに自動化されていておかしくないような業務がいまだに人の手で行われている。先日筆者が、電子納税に必要な住基力ードの更新のために地元の市役所を訪れたときのことである。住基カードの更新に費やされた時間の9割は待ち時間であった。(中略)
役所が本来の機能を今以上に発揮するためにも、限られた予算、少ない人数でサービスの質を落とさないようにするためにも、今後役所で自動化が可能な定型業務などはすべて機械化、IT化されるだろう。
【感想】
◆今までも当ブログでは、職業の将来について検討する本を、何冊かご紹介してきました。典型的なのが、こちら。
10年後に食える仕事、食えない仕事
参考記事:【必読!】『10年後に食える仕事、食えない仕事』渡邉正裕(2012年02月04日)
この本では、「知識集約的か、技能集約的か」を縦軸、「日本人メリット(ジャパンプレミアム)があるか否か」を横軸にとって、職業を4つの象限に分類して論じています。
なお、こちらの本では弁護士については、上記記事でも触れているように、典型的な「ジャパンプレミアム」の職業だと言われているのですが、その中でも、機械化されてしまう部分があるのは、上記ポイントの1番目の通り。
同様に、税理士も「ジャパンプレミアム」があるとはいえ、記帳代行業務についてはシステム的に対応していくのではないか、と本書では予想しています。
実際、たとえば「クラウド会計ソフト」で銀行の明細をそのまま取り込んだり、社員の小口の費用の精算も、電子マネーやクレジットカードのデータが取り込めれば、記帳を頼む必要もなくなるのかもしれません。
◆本書によると、それでも残る職業とは「ヒューマンプレミアム(人間プレミアム)」が高い仕事、なのだそう。
これは「人間がやることに価値がある仕事」という意味であり、その理由として挙げられていたのが
「AIやロボットにその仕事を十分にこなすスキルがない」
「機械でも同じことはできるが『人間臭さ』がないと顧客に支持されない」
といったものでした。
具体的には「高級レストランや旅館の接客業」「高付加価値商品の営業担当者」「教育者」等々。
こういった職業は、高度なシステムやAIを「使う」立場ではあるものの、「使われる」立場ではないため、今後も残っていくわけです。
◆また、「将来も人間が君臨し続ける職場」として、意外な(?)ことに「理容師・美容師」が挙げられていました。
個人的には「1000円カット」のように、どんどんシンプルになって、いずれは機械化されるじゃないか、と思っていましたが、あにはからんや。
まず、理容師や美容師は国家資格であり、法的に単純に「ロボットがやっていい」というわけでもありません。
また、客はお店のスタッフと一緒に過ごす時間にも、心地よさや楽しさを期待します。
さらには、現在の技術では、「切る」という作業だけでも、人間と同等もしくはそれ以上のスピードで行うのは難しいのだそう。
もちろん、現在でも画面上で髪型のシミュレーションをする、といったIT系のサポートツールはありますが、これらは「作業の前」であり、実際の「作業」自体は、「人間」が君臨し続けるらしいです。
◆ただ、本書で指摘されているのが、ソフトウエアや情報通信、そしてそれにかかわる電気、電子といった分野は、テクノロジーの進化が早い傾向にある、とのこと。
同じく本書で紹介されていたのが、こちらの記事でした。
CNN.co.jp : 今となっては大外れ ウェブを巡る5つの「大予言」
このうちの2つが、1995年に米ニューズウィークが挙げていた予測で、いわく「ウェブサイトが紙の新聞にとって代わることはない」、そして「ネットで買い物をする人はいない」と、確かに大外れ。
そう考えると、現在「ヒューマンプレミアム」が高い仕事であっても、いつどうなるかわかったものではありません。
結局、AIの上側、つまり経営や雇用サイドに身を置くことが重要なんですね。
将来も働き続けるために!
あと20年でなくなる50の仕事 (青春新書インテリジェンス)
第1章 大きく変わろうとしている「職業」の概念
第2章 コンピュータは人を駆逐するのか
第3章 今後20年、コンピューターが徐々に仕事を奪っていく
第4章 中途半端な知的労働者は容赦なく排除される
第5章 時代に合わせて変化しながら生き残る職業
第6章 これから生まれる未知の職業とは―生き残るために必要なこと
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【大前流】『稼ぐ力: 「仕事がなくなる」時代の新しい働き方』大前研一(2013年09月08日)
【キャリア】『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』(2013年09月01日)
【仕事術】『世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?』戸塚隆将(2013年08月18日)
【編集後記】
◆本書内で何度か登場する作品。シンギュラリティは近い―人類が生命を超越するとき
「機械が人間を超えてしまう可能性」を語っているのだそう。
なお、単行本もその中古も高いので、上記はKindle版のリンクになります。
ご声援ありがとうございました!
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