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2015年03月05日

【美形は得?】『美貌格差: 生まれつき不平等の経済学』ダニエル・S・ハマーメッシュ


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美貌格差: 生まれつき不平等の経済学


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、非常にデリケートな問題を扱った翻訳本。

「経済学の手口を日常に持ち込んで意味や背景や戦略を語る本」という点で、『ヤバい経済学』に似たテイストであり、さすが同じ版元さん(東洋経済)だな、とw

アマゾンの内容紹介から。
見た目で生涯年収の差は2700万円?!ブサイクな人は保護されるべき?着るものや化粧、整形手術に効果はない。企業業績、選挙の結果、融資の条件、寄付金集めにも影響。労働経済学の権威が20年かけて解明した「衝撃の真実」。

なお、明日にはKindle版も発売予定です!





The Birth of Venus 2 / Averain


【ポイント】

■1.化粧しても評価はそれほど変わらない
 上海で行われた調査が、女性がそれぞれ服や化粧品、へアケア、その他の美容に毎月いくらつぎ込んんでいるかを調べている。美容にまったくお金を使わない女性が平均的な額を使うようになっても、評価は(5段階で)3.31点から3.36点にしか上がらない。もっとお金を使えば評価はもっと大幅に上がるんじゃないかと思いましたか? たしかに平均的な額を使っていた女性が平均の5倍(これは平均的な家計所得の20%に相当する)までお金をかけると評価は3.56点に上がる。でもデータを見ると、かけるお金を増やした分で得られる効果は、それまで使っていたお金が多ければ多いほど、小さくなっていくのがはっきり表れている。


■2.容姿が良ければ収入が多い
 美貌の経済学で最も盛んに研究されてきたのは、容姿が収入に与える影響の大きさだ。美しい人たちは月並みな人たちに比べてどれだけ余計に稼いでいるのだろう? 醜い人たちはどれだけ収入が少ないのだろう? こうした疑問に対する答えと証拠は、いまやはっきり上がっている。アメリカなら、容姿で上から3分の1に入っていれば、容姿が並みである以外は特徴がまったく同じ人に比べて、収入は5%ほど多い。容姿で下から7分の1に入っていれば、それ以外の特徴がまったく同じで容姿が並みの人に比べて、収入はたぶん10%ほど少ない。
 違う国へ行けば、収入に対する容姿の影響は、アメリカより小さいことも大きいこともあるだろう。そこはなんとも言えない。しかし、醜い働き手は美しい同僚よりも稼ぎが少ないというのは、先進国全般に言えることのようだ。


■3.政治家も美しい方が有利
 2002年に行われたドイツの連邦議会(下院にあたる)の選挙に出た候補でも同じような研究が行われている。たくさんある選挙区の候補それぞれについて、候補自身がマスコミに提供した写真を評価担当者のグループに見せる。出所からいって、おそらく各候補の一番写りのいい写真だろう。ということは、写真に写った彼らの美しさは実物よりもばらつきが小さいだろうし、ドイツ人をデタラメに選んだサンプル間での美しさのばらつきに比べても小さいだろう。それなのに、所属する党の影響を調整してもなお、容姿の評価が高い候補のほうが、大幅に、そして統計的に有意に、得票率が高かった(つまり選挙に勝つ可能性が高かった)。


■4.男性の教育と女性の美貌が交換される
 測り方は違うけれど、中国のデータから得られる結果もアメリカでの結果ととてもよく似ている。容姿が並みより上の奥さんたちのうち59%は旦那さんが高卒以上だが、容姿が並み、あるいは並みより下の奥さんたちだとそれが50%に下がる。アメリカと同じように、奥さんの教育で旦那さんの容姿はあまり大きく違わない。やはり、教育と美貌は交換されているようだ。より具体的には、収益力を高める男性の教育と女性の美貌が交換されている。


■5.ブサイクな人が働こうと思ったら、やれることがあるか?
私がブサイクだったら、私のブサイクな見てくれが強烈に足を引っ張る仕事(俳優とか?)は避けるだろう。代わりに私が豊富に持っている手に職が、お金とそれ以外の両方の形で一番報いられる可能性のある仕事、同時に私に欠ける見てくれのよさがあまり大事でない仕事を選ぶだろう。そんなわけで答えはYESで、見るべきところのない容姿の人たちは不利だけれど、そんな中でも最悪に不利な仕事を避けることはできるし、そうするべきだ。それに思い出してほしい。容姿の違いは大きな影響を及ぼすけれど、仕事で人が手にする成果の違いの、ほんの一部しか左右してはいない、そうでしたね。


【感想】

◆予想通り(?)、最初から最後まで「身も蓋もない」お話が続きました。

そういう意味では、冒頭の内容紹介にある「衝撃の真実」というのは、ちと盛ってるかな、と。

しいて意外だったのが、上記ポイントの1番目の「美容」のお話くらいで、それだって少なくとも「やらないよりやる方がマシになる」ことには変わりありません。

それに、この上海の調査は、時期が記載されていなかったので、もし古い調査だったとしたら、昨今の化粧技術のえげつなさが反映されていないかも。

「化粧 詐欺」でググったら、こんなサイトがヒットしたんですがw

化粧の威力をナメてるやつに見せると一発で認識を改める画像 - NAVER まとめ

初っ端の画像なんて、どう見ても「3.31⇒3.36〜3.56」じゃー済まないっすw


◆一方、上記ポイントの2番目では、容姿が収入に与える影響について述べているのですが、そもそも「容姿以外の要素が同じ」にすること自体が大変です。

たとえば、見栄えのいい人は、いい教育を受けていたり、健康だったり、結婚したりしている可能性は否定できません。

これら(教育、健康、結婚等)はいずれも収入に影響を与えることが過去の研究でわかっており、見栄えの良さが収入に与える影響を考える際には、取り除く必要があります。

そして、そういった要素をすべて取り除いたとしても、次のような結果になったとのこと。

容姿は5段階評価で、その先の数字は、収入に与えるパーセントを意味します。



要は容姿がいいとプレミアが付いて、悪いとペナルティが付くということ。

なお、元ネタは本書の著者による、こちら。

www2.econ.iastate.edu/classes/econ321/orazem/hamermesh_beauty.pdf


◆もちろん、職種によっては、容姿がもっと極端に影響を与えるものもあります。

本書の第4章「特定の職業における美形」においては、極端な例として、ロスアンゼルスやメキシコの「美しい」売春婦が周りに比べて、いかに稼いでいるかにも言及。

意外なところでは、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のクオーターバックの顔(の対称性の指標)と年俸にも関係があるのだとか。

こうした容姿の問題の解決策として、著者は上記ポイントの5番目のように提言。

特定の職種を避けるのと同時に、たとえば同じ弁護士であっても、本書で指摘されているように、裁判官や陪審員の前に立つ訴訟弁護士より、取引業務弁護士を選ぶ等の選択は有効であるようです。


◆なお、本書の翻訳は、一連の『ヤバい経済学』シリーズでお馴染みの望月 衛さんが担当。

「ブス」「ブサイク」等の際どいフレーズも、躊躇なく用いており、引用するこっちがビビりましたw

巻末の「訳者あとがき」も8ページもあって何気に面白く、正直、このエントリー読むより、そっち読んだ方がためにな(ry

いずれにせよ、『ヤバ経』シリーズがツボだった方なら、一読の価値はあると思います。


持たざる者が戦うために!

4492314539
美貌格差: 生まれつき不平等の経済学
第1部 美形の裏側
 第1章 美貌の経済学
 第2章 見る人次第

第2部 職場での美形:なぜなにどうして
 第3章 美貌と働き手
 第4章 特定の職業における美形
 第5章 美形と雇い主
 第6章 ブサイク差別か役に立つ美形か、そしてそれはなぜか?

第3部 愛、借金、そして法律での美形
 第7章 友だち、家族、そして借金の市場における美形
 第8章 ブサイクを法律で守る

第4部 美形の先行き
 第9章 ブサイクの行く末


【関連記事】

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【編集後記】

◆今日ご紹介した本にテイストが近い1冊。

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セ●クスと恋愛の経済学: 超名門ブリティッシュ・コロンビア大学講師の人気授業

レビューは上記関連記事にて。


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