2015年03月03日
【出世の心構え】『元・外資系人事部長が見た 要領よく出世する人』村上賀厚

元・外資系人事部長が見た 要領よく出世する人
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、当ブログではコンスタントに人気のある「出世指南本」。著者の村上賀厚さんは、フォードやロイター、GEといった外資系企業の人事部を渡り歩いてこられた方です。
アマゾンの内容紹介から。
いつでも、どこでも、どんな組織でも。出世には、共通の法則がある。「なんであんな人が…」「おべっかがうまいだけ」「実力は自分のほうが上なのに…」日本の中小企業でも世界の超一流企業でも変わらない、上司が「あの人」を抜擢した理由。
なお、既にお買い得なKindle版が出ているのも、見逃せません!

Reuters Building, Fleet Street / stevecadman
【ポイント】
■1.成果を上司に与える家電メーカーの部門企画室で「部下が上司のために働くのは当たり前。成果はどんどん上司に与える」と粉骨砕身している人がいました。(中略)
彼が上司に成果を与えるのは、「会社の上層部が自分の上司に高い評価を与えれば、その下で働いた部下として、自分も上層部から高い評価を得られる」「その部下の中で誰がよりいい仕事をしたかというのは、上司から人事評価を通して個別に見られる」から。
「できる部下」であれば、まず自部門が成果を出せるように尽力する。そのために上司を助けて働き、その成果で自分の上司が上層部から高い評価を受けるのは当たり前だし、嬉しい話だというわけです。
■2.周りを意識して競争する
商社に勤める友人の話です。彼の会社も絶対評価と相対評価を併用していたのですが、彼曰く期初目標の設定は「上司の指示に従って適当に」決めていました。「期末が近づくと、どうせ足りない数字を上乗せされる」のだそうです。そして、ポイントは「同僚よりも成績を上げること」だと。そうすれば、大きな仕事が来たときには、上司は自分に仕事を任せてくれる。上司はまさしく相対評価で選抜しているのだというわけです。(中略)
彼は、つねに同僚よりも成績を上げることを考えて行動し、トップグループで昇進してしきました。つまり「絶対評価があるから自分の目標を目安に頑張ればいい」というのではなく、つねに周りを意識して競争しなければ、昇進などないというわけです。
■3.少ない100点よりも多くの合格点を目指す
要領よく出世する人は、匠の世界のよさを理解しつつも、複数の仕事の間でメリハリをつけて、どれもまずまずの合格点をとることを考えています。(中略)
これは真の顧客志向ではないのかもしれませんが、少ない100点よりも多くの合格点を目指すという、まさしく「ビジネスの世界」なわけです。仕事では、100点が2つあるより、効率よく仕事をこなして70点が3つの210点のほうがいいわけです。
■4.過去の成功体験を反省する
昨今のビジネス環境は激変しています。「過去の栄光はむしろ、成功の妨げになる」というくらいの意識が必要なのかもしれません。
もっと当たり前な例で言いますと、「夏は暑いので薄着になるが、冬は寒いので厚着になる」のと同じこと。環境が変われば着るものも変わる。夏は薄着で気持ちよかったからといって冬も薄着では風邪をひくし、逆に夏にコートを着込んでいると変人と思われてしまいます。
「環境が変わっているのに、昔の成功体験を後生大事にしていてはいけない」ということです。ただ、こんな上司をなかなか笑えません。けっこう多くの人が同じワナに嵌まっています。一方、要領よく出世する人たちはしっかりと成功体験を反省しているのです。
■5.短期的な保険として流動資産を持つ
彼はその後、別の国の現地法人の社長に出世していきました。ひとつ間違うと左遷になりかねない危ない橋を彼は渡ったわけですが、その後,彼の話を聞いてなるほどと思ったのは「僕には1年くらいは食ぺていけるお金の蓄えがあったので、正しいことが言えた」というものでした。もちろん、上司に対してうまく異論を唱えることができる技術も重要ですが、最後のところでは、正しいことを正しいと言える「勇気」が必要になります。十分な蓄えは、その勇気の根拠となるのです。
【感想】
◆タイトルにある「要領よく」というフレーズを見て、「ラクして出世できる」ような気でいましたが、甘かったですw本書でいう「要領よく」とは「要望を適切に処理する」ですとか「うまく立ち回る」といった意味であり、間違っても「裏ワザ」的なものではありません。
いきなり上記ポイントの1番目で「粉骨砕身している」などとあったので、その辺は大丈夫だと思いますが、いずれにせよ、TIPS的には極めて真っ当。
むしろ、1つ1つが結構「地味」(失礼)であり、こうして記事にした場合、「目からウロコが落ちる」ワケではないのが、世間的な「ウケ」につながるか、ちと心配なのですが。
◆ところで、割愛した中に「コーポレートキャップを被る」というTIPSがありました。
これは、会社(コーポレート)の帽子(キャップ)を被る、つまり「つねに会社の利益を念頭に置いて仕事をする」ということ。
たとえば、お客さんから社内での競争相手である同僚の業績に寄与するような情報を聞いたら、どうするか?
上記ポイントの2番目では「競争せよ」と言ってますし、こういう場合には隠したくなるものですが、ここは進んで同僚に情報を与えて、「会社全体の利益」を優先すべきです。
ただし、上司にはうまく「コーポレートキャップを被って仕事をしている」とアピールするのが、正しい行動である、と。
◆また同じく、割愛した中に「経営層視点で考える」というTIPSがあり、そこで紹介されていたのが「カッツモデル」です。
収録されている具体的な図をググって探したところ、下記リンク先の比較的上の方にありました。
2012年5月記事一覧 : 富士通ラーニングメディア
ここで「経営層視点で考える」には、上記図で言うところの「コンセプチュアル・スキル」が必要です。
そして、そのコンセプチュアル・スキルを身につけるフレームが、一般環境の「PEST」、タスク環境の「3C」、企業成功の鍵である「KSF」、そして経営要素の「7S」……なんですが、この辺は一般論のお話なので、気になる方は各自リンク先等をご確認ください。
本書では具体例を挙げて解説しており、また、本書の内容の多くが、このフレームワークに基づいているようなので、本書を読まれる際には、この部分をお見逃しなく。
◆なお、本書内には、村上さんが出会った「要領よく出世する人」が、匿名で多数登場します。
表現の仕方にもよるのかもしれませんが、そのいずれもが、それほど派手ではない印象でした。
メディアを含め、私たちも、どうしても派手な方に目が奪われがちですけど、実はこういった「押えるべきところを押えた」方が出世するのかもしれません。
それこそまさに「要領よく出世する」ということなのでしょうけど。
出世するために読んでおきたい1冊!

元・外資系人事部長が見た 要領よく出世する人
第1章 日本人は知らない、外資系で要領よく出世する人の「8つの秘訣」
第2章 要領よく出世する人が密かにやっている「20の習慣」
第3章 要領よく出世する人が大切にしている「15の考え方」
第4章 要領よく出世する人がプライベートで守っている「4つの教え」
【関連記事】
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【出世作法】『課長になれない人の特徴』に学ぶ7つの出世のコツ(2012年01月20日)
【編集後記】
◆ちょっと気になる本。
経済学的にありえない。
タイトル的に翻訳本かと思いきや、意外にも和書でした!

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