2015年02月15日
【『ヤバ経』再び!】『0ベース思考---どんな難問もシンプルに解決できる』スティーヴン・レヴィット,スティーヴン・ダブナー
0ベース思考---どんな難問もシンプルに解決できる
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、先日速報で発売をお伝えした、『ヤバい経済学』のコンビである、スティーヴン・レヴィット&スティーヴン・ダブナーのコンビの最新作。タイトルの付け方や版元さんが変わったことで、路線変更の可能性も予想していたのですが、基本的には「いつも通り」で「ヤバめのネタ」が満載でしたw
アマゾンの内容紹介から一部引用。
世界でシリーズ750万部を超え、本国アメリカだけでも初版50万部という超異例の部数で刊行されて大きな話題となっている一冊がついに上陸!
「ワールドカップでPKをどの方向に蹴るか」のような答えの見えにくい問題も、「仕事をやめるか」「恋人と別れるか」のような身近な問題も、「国家の公共政策」のような難題も、何でもバイアスをゼロにして考えることで、一気に合理的な「答え」を出せるという、驚くべき「思考法」を展開する。
とはいえ本書で著者2人は、「自分たちのような考え方ができるようになる」ことを目指したようですよ!?
それと、大事な事なのでもう1度言いますが、お買い得なKindle版が既に出ておりまする。
Centennial Reunion: Centennial Lecture, featuring Steven D. Levitt (Policy Talks @ the Ford School) / University of Michigan's Ford School
【ポイント】
■1.ただの広告戦略だった表彰プログラム「ワイン・スぺクテーター」(業界有力誌)にボロクソの評価を受けた銘柄をべらぼうな値段で提供するにせレストランでも、ワイン・スぺクテーター優秀賞を獲得できるだなんて、ゴールドスタインはなぜ確信していたのだろう?
「ぼくが立てた仮説は、250ドルの手数料を払うことが、応募の肝心な部分だってことだ」と彼は言う。
そんなわけでゴールドスタインは小切手と応募用紙とワインリストを送った。ほどなくしてミラノのにせレストランの留守番電話に、ニューヨークの「ワイン・スぺクテーター」から電話が入った。優秀賞の受賞だ! おまけに「受賞店を発表する次号に広告を載せませんか」というお誘いのメッセージまで吹き込まれていた。そんなこんなでゴールドスタインは、「表彰プログラムの実態は、ただの広告戦略だ」と断定したのだった。
■2.ホットドッグ早食い王の鋭いアプローチ
たとえばホットドッグを端から食べろだなんて、ルールのどこにも書いていない。そこで単純な実験から始めた。食べる前にソーセージとパンを半分に割ってみたらどうだろう? こうすると、嚙んだり呑み込んだりする方法に幅が出たし、口でやっていた仕事の一部を手に任せられてラクになった。(中略)
コバヤシは楽しみを求めて食べるわけじゃない。ソーセージとパンを一緒に嚙むと、密度がケンカすることががわかった。ソーセージはそもそもしょっぱい肉がチューブにぎちぎちに詰められたものだから、すんなり食道を滑り落ちていく。でもパンは空気をたくさん含んでいて密度が低いから、場所をふさぐし、たくさん嚙む必要がある。
そこでソーセージとパンをばらしてみた。パンを外したソーセージを手で半分に割って数本まとめて呑みこみ、それからパンを食べることにした。
■3.脳への「だまし」が限界を押し広げる
一流のアスリートでも「だまし」によって成績を伸ばせることが、最近の研究でわかっている。ある実験で、自転車選手に訓練用のサイクリングマシンを全速力で4000メートル漕いでもらった。それから時間をおいてもう一度同じことをくり返したが、このときは1度目のタイムトライアルで自分がぺダルを漕いでいる映像を見ながらやってもらった。
選手は知らなかったのだが、じつはこの映像は漕ぐスピードを実際より速めていた。それでも彼らは映像のぺースについていき、自分の全速力と思っていたスピードを超えられたのだ。「スピードの決め手になる器官は心臓や肺ではなく、脳なのだ」と、高名な神経学者で、人類史上初めて1マイル(約1.6キロ)4分の壁を破った陸上競技選手としても知られる、ロジャー・バニスターも言っている。
■4.適切なインセンティブのルール(抜粋)
●相手が関心があると言っていることを鵜呑みにせず、本当に関心をもっていることをつきとめよう。
●相手にとっては価値があるけれど、自分には安く提供できるような面で、インセンティブを提供しよう。
●相手との関係を、敵対的枠組みから協調的枠組みにシフトさせるようなインセンティブをできるかぎり考えよう。
●何かが「正しい」から相手がそれをしてくれるだなんて、ゆめゆめ思っちゃいけない。
(詳細は本書を)
■5.スパムメールで「カモ」を見つける方法
ナイジェリアの詐欺師は、何千、何万のメールアドレスを見るだけで、誰がだまされやすくて誰がだまされにくいかを当てられるだろうか? それは無理だ。この場合、だまされやすさは、外からはわからない。でも詐欺師は、だまされやすい人がだまされやすいことを自分でさらすよう仕向けていると、ハーリーは考えた。どうやって?
だまされやすい人じゃなければ本気にしないようなアホらしい手紙、わざわざ目立つようにナイジェリアを連呼した手紙を送りつけるのだ。1ミリでも良識や経験がある人なら、こんな電子メール、見るなりゴミ箱に放り込むだろう。「詐欺師はこういう話を聞いたことがない人を見つけたいんだ」とハーリーは言う。「詐欺師が用があるのは、こんな手紙を読んで笑い転げてイスから落ちたりしない人だ」
■6.「死前検証」で欠陥を見つけだす
失敗したプロジェクトの「死後検証」をして、プロジェクトがなぜお亡くなりになったのかを正確に知ろうとする組織は多い。これに対して死前検証は、まだ手の施しようがあるうちに、うまく行かなくなりそうな要因をつきとめようとする。
プロジェクトの関係者を全員集めて、「プロジェクトが実行に移されたが、目も当てられない大失敗に終わった」と想像してもらう。それから一人ひとりに失敗した原因を具体的に書き出してもらうのだ。死前検証なら、誰も自分からは言いたがらなかったプロジェクトの欠陥や疑問点を洗い出せることを、クラインは実証した。
【感想】
◆本書の第1章では、過去2作と本書との違いについて述べられています。曰く、前の2作は「こうしたほうがい」という規範を示すような本ではなく、「2人がおもしろいと感じた話をデータを通して伝え、社会の陰に隠れた部分に光を当てるのが目的」だったのだそう。
それに対して本書は、「陰から一歩踏み出し」て、「ちょっとしたヒントが欲しい人から世界的な大変革をめざす人まで、誰にも役立ちそうな、考え方のヒント」を提供できればと思っているのだとか。
なるほど、従前とは違い、本書の節々で上記のような意図を感じられる表現がありました。
また上記ポイントの4番目のような、ある種の「まとめ」は、今まで見られなかったものです。
◆ただし、たとえ仮に、データに基づき彼らのように考えられたとしても、その結果が実践できない可能性もあるワケで。
たとえば、彼らが『超ヤバい経済学』を出した後、プロモーションでイギリスに行った際、その後英国首相となったデイビッド・キャメロンに呼ばれて、会いに行ったことがありました。
「緊縮財政」を目指すキャメロンが、イギリスの「GDPの10%に近づこうとしている」医療制度(ほとんど負担なしで必要なサービスを受けられる)には手をつけない、と知ると、彼らは思考実験をキャメロンに試みてもらいます。
「もしイギリスの全国民が、生きている間に好きな乗り物を何でも無料でもらえるとしたら? 誰でも車のディーラーに行って、気に入った最新モデルを無料に手に入れられるとしたら、どうなるだろう?」
著者2人は、キャメロンが「きみたちの言う通り、医療の無料提供には問題があるな」と言ってくれるのを期待したのですが……(詳細は本書を)。
◆一方で、彼らの「経済学的アプローチ」の元となるのはデータなのですが、必ずしも実験が可能とは限りません。
たとえば普通に考えて「国民からランダムに選んだ人たちに、子どもを2,3人つくる代わりに10人つくれ」とか「20年間レンズ豆だけ食べてくらせ」といったことは命令不可能です。
ところが、実験可能と思えても、そうは問屋が卸さないこともあるという。
……かつて彼らは「世界的な大手小売企業」と重役陣に会い、新聞のチラシ広告の効果の測定を提案したことがありました。
彼らの「全米で主要な市場40を選び出して、ランダムに2つのグループに分け、片方にはチラシを入れ、片方には全く入れない、ということを3ヵ月続ける」というアイデアを重役陣は「クビになる」と完全に却下。
しかし、その会社は以前、新聞のインターン生が来なかったため、ピッツバーグだけ、ひと夏じゅう広告を打たなかったことがあり、かつ、その夏のピッツバーグでの売上は、変わらなかったのでした。
これぞまさに、有益なフィードバックであり、先の実験を行うべき!……という著者2人に対し、重役陣はやはり「クビになる」と完全却下。
「経済学的アプローチ」への道は遠いようです。
◆こうなったら、彼ら自身で企てるしかありません。
その1つとして彼らの『超ヤバい経済学』では、イギリスの大手銀行の詐欺対策責任者とつくったアルゴリズムが解説されています。
超ヤバい経済学
参考記事:【ヤバ経再び】『超ヤバい経済学』スティーヴン・D・レヴィット,スティーヴン・J・ダブナー(2010年09月27日)
第2章の「自爆テロやるなら生命保険に入ったほうがいいのはどうして?」がそれですね。
この本で彼ら曰く、自爆テロで死んでも保険金が下りないため、テロリストたちは、妻や幼子がいても生命保険には加入することはまずない、とのこと。
上記の通り、この本のプロモーションでイギリスを訪れた際、このテロリストの件で、彼ら2人はずい分と新聞等に叩かれた(「なぜテロリストに秘密をばらすのかわからない」等)のだそう。
……しかし、これこそが、彼らの「生命保険詐欺」だったのでした(詳細は本書を)w
今頃この話をする、ということは、情報解禁になったのだと思われ。
◆なお、本書の「第9章 やめる」では、彼ら2人が『ヤバ経』を出すに至った経緯に触れられており、これが非常に興味深いものでした。
特に経済学者であるレヴィットは、自分のキャリアに迷いを感じ、3つの選択肢――「続ける」「やめる」「経済学のなかで、退屈じゃない専門分野を探す」――の中から、最後を選び、これがなんと「犯罪の経済学」だったのだとか。
ちなみに、当時レヴィットが毎週観ていたという番組が「全米警察24時 コップス」。
全米警察24時 〜コップス シーズン23 | FOXCRIME PLATINUM
なるほど、『ヤバ経』という常識破りの本が出たのも、納得ですw
しかし、彼ら2人のこのユニークな活動も、ひょっとしたら本作が最後になるかのような表現がこの第9章にあったのが、ファンとしては気になるところなのですが……。
本書がたとえ最後でなくとも、『ヤバ経』ファンなら必読の1冊!
0ベース思考---どんな難問もシンプルに解決できる
第1章 何でもゼロベースで考える――バイアスをゼロにしてアプローチする思考法
第2章 世界でいちばん言いづらい言葉――「知らない」を言えれば、合理的に考えられる
第3章 あなたが解決したい問題は何?――問題設定を変えて、すごい答えを見つける
第4章 真実はいつもルーツにある――ここまでさかのぼって根本原因を考える
第5章 子どものように考える――「わかりきったこと」にゼロベースで向き合う
第6章 赤ちゃんにお菓子を与えるように――地球はインセンティブで回っている
第6章 赤ちゃんにお菓子を与えるように――地球はインセンティブで回っている
第7章 ソロモン王とデイビッド・リー・ロスの共通点は何か?――庭に雑草を引っこ抜かせる方法
第8章 聞く耳をもたない人を説得するには?――その話し方では100年かけても人は動かない
第9章 やめる――人生を「コイン投げ」で決める正確なやり方
【関連記事】
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ヤバい経済学 [増補改訂版](2007年05月16日)
「ヤバい経済学 」スティーヴン・レヴィット&スティーヴン・ダブナー (著)(2006年05月07日)
お前らもっと『ヤバい経営学』の凄さを知るべき(2013年03月03日)
【オススメ!】『オタクの行動経済学者、スポーツの裏側を読み解く』トビアス・J・モスコウィッツ,L・ジョン・ワーサイム(2012年07月03日)
【編集後記】
◆本日のKindle本のセールから。俺のダンディズム名品図鑑
単行本の中古が1000円を超えているので、その半値なら確かにお買い得かも。
ただし「この商品は固定レイアウトで作成されており、タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません」とのことなので、ご注意ください!
ご声援ありがとうございました!
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