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2015年02月08日

【メシウマ?】『正しい恨みの晴らし方』中野信子,澤田匡人


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正しい恨みの晴らし方 (ポプラ新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、引き続き先日の「未読本・気になる本」の記事で、意外に(?)人気だった1冊。

脳科学者である中野信子さんと、心理学者の澤田匡人さんが、「恨み」や「妬み」といった感情について、それぞれの専門分野をもとに解き明かしてくれています。

アマゾンの内容紹介から。
ネガティブ感情をコントロールできれば、自分の力をより発揮できる!どんな人でも感じてしまう「妬み」や「嫉妬」。そんなとき、脳や心にはどんな変化が生じているのか、どう対処すればいいのかを気鋭の脳科学者と心理学者が解き明かします。既読スルー、芸能ゴシップ、忠臣蔵など身近な題材や科学的な実験データをもとに、妬みや嫉妬をコントロールして有効に活用する術を提案する画期的な一冊。

ココロに秘めたダークな部分がある方なら、要チェックです!





jealousy / Ρanayotis


【ポイント】

■1.妬みは思慮に悪影響を及ぼす
 アメリカの心理学者サーフ・ヒルらによると、妬みを感じさせるような人物と、そうではないニュートラルな人物では、妬ましい人物のフルネームの方がより正確に思い出せるというのです。これだけなら、妬みには記憶力を高める良い効果があるようにみえます。しかし、その後、難しいワードパズル課題を与えると、妬ましい人物の名前を正確に言い当てた人たちの方が、そうでない者たちよりも課題に取り組む時間が少なくなったのです。つまり、思慮を要する作業を、妬みの感情や記憶が邪魔をするというわけです。


■2.アメリカ人よりも日本人の方が妬みを感じやすい
 ケンタッキー大学のリチャード・スミス教授が、私と比較文化を専門とする心理学者の一言英文氏たちと共同で行った研究があります。この調査では、アメリカ人と日本人の大学生各240名を対象に、過去に良性妬みや悪性妬みを経験した出来事を思い出してもらい、そのときに思ったことや、妬みを経験した頻度などを尋ねました。その結果、良性妬みと悪性妬みの両方とも、アメリ力人よりも日本人の方が頻繁に感じていることがわかりました。
 おそらく、平等主義を好む日本人は、他者との小さな差が問題となりやすく、それに応じて妬みを感じる機会も増えるのでしょう。


■3.妬ましくなった時の対処法
 まずは少し深呼吸をして、自分が何を妬んでいるのか、誰を恨んでいるのかを考えてみることです。(中略)
 続いて、自分の妬みを抽出していきます。妬ましいが故に相手を全否定し、白か黒かだけで見ると、救いや余裕がなくなります。(中略)
 そして、自覚できさるようになった妬みの感情を脇に置いて、目の前にあること、やるべき仕事に没頭するのです。こうして妬みから目を背けることなく距離を置ければ、名状しがたい感情に振り回されずに済みます。


■4.他人が不幸になると満足するワケ
 アメリカの心理学者トーマス・ウィルスは、なぜ他人が不幸になると満足するのかについて興味深い説明をしています。私たちは、いつでも心に余裕をもって生活できているわけではありません。常に、何らかのトラブルや心配事を抱えています。ウィルスによれば、自分が苦しい状況にあったり、劣等感に苛まれていたりするときに、自分と同じくらい不幸か、もしくは、より一層の不幸な人と比べると、気持ちが楽になったり、元気になれるというのです。


■5.日本における「いじめ」の構造
 日本人は、脳内で「安心ホルモン」であるセロトニンのリサイクルをしているセロトニントランスポーターの少ない人が世界平均よりずっと多く、危険な兆候やリスクに対して敏感な国民性を遺伝子レべルで持っています。
 さらに、ドーパミンの感受性が高い遺伝子を持っている人が多いので、刺激的すぎることをあまり好みません。できるだけ波風を立てず、目立たず、周囲と調和していないと、いつか、「この人はトラブルを引き起こすかもしれない危険分子」だと見なされてしまう。そして、制裁の標的になってしまうのです。
 これが、日本の学校や職場で起こるいじめの根っこにある構造です。


■6.ネガティブ感情における男女の違い
 苦情・クレーム対応のアドバイザーである関根眞一さんによれば、『日本苦情白書』のアンケート結果から興味深い事実が導き出せるといいます。
 それは、男女の苦情対応に対する感覚の違いです。
 関根さんは、苦情を申し立てる人が「誠意を見せろ」という言い方をすることから、「『誠意』とは何だと思いますか」という質間に対する回答を集計したところ、男性では「正直」という回答が28.4%で1位だったのに対して、女性では「話を聞く」という回答が25.2%で1位となりました。(中略)
 この調査は、ネガティブ感情における男女の性差の興味深い点を浮き彫りにしています。男性の持つ不満は、正義や正直さというルールを基本に、自らが制裁や処罰を加え、相手の反省という儀式を伴ってようやく沈静化するものだということがわかります。
 一方、女性の持つ不満は、男性の持つ不満とは異なり、正義や正直さというルールとはやや距離があるようです。


【感想】

◆本書のテーマは、日頃あまり馴染みのないものであるため、実はかなり付箋を貼ってしまいました。

結果、付箋を貼りながらも、割愛した部分が多いのですが、たとえば「妬み」もただ悪いだけではなく、プラスの効果もあるとのこと。

仮に、営業成績が急にあがった同僚がいるとして、その同僚がかなり努力している、と推測された場合に感じる妬みは、「良性妬み」(羨み)と呼ばれ、向上心の礎になるとも考えられている、のだとか。

上記ポイントの2番目に出てくる「良性妬み」はまさにそれなのですが、ただし、単なる「妬み」である「悪性妬み」ともども、私たち日本人にとってはアメリカ人より頻繁に感じている、というのは少々考えさせられます。

と言うのも、他人の「リア充」ぶりを否が応でも見せつけられるフェイスブックは、アメリカの研究で「利用年数が長い人ほど、他人の方が幸せだと感じていると同時に、人生は公平ではないとも考える傾向にある」のだそう。

より「妬みやすい傾向にある」日本人が、フェイスブックにハマってたら、どんだけ悪影響があるのやら……。


◆ちなみに、ネットスラングである「メシウマ」(「今日も他人の不幸で飯がうまい」の意)や、悪いことをしたとされる人がテレビで叩かれたりしている時の感情は、心理学では「シャーデンフロイデ」と呼ぶのだとか。

そして、本書の著者の1人である澤田先生が、大学生500名を対象に行った調査によると、「恨みやすい人ほど、シャーデンフロイデを感じやすい」ということが分かったそうです。

さらに、オランダで行われた実験によると、偽の情報で「自分の知的能力が低い」とフィードバックを受けた学生ほど、他人の不幸を喜ばしいと回答したとのこと(詳細は本書を)。

つまり、ただでさえ自信喪失気味の人が、さらにプライドを傷つけられると、関係のない他人の不幸を喜ぶことで、自分を慰めるようになるわけです。

ネットでは、実際に誰かを叩いたりして悦にひたる人もいますが、それよりは「他人の不幸を利用したエンターテイメント」によって溜飲を下げるべき。

例えばこういう作品ですとか。

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半沢直樹 -ディレクターズカット版- DVD-BOX


◆なお、本書の第5章では「妬み感情」に関する、脳科学からの興味深い指摘がありました。

具体例として挙げられていたのが、この本にまつわる一連の騒動です。

4344026586
殉愛

2ちゃんで叩いたり、この本のアマゾンレビューに☆1つつけた人は、「不快な感情」を持ったのですが、そのような感情を持っていると認知するのはストレスが大きく、できるだけ意識に上らせないように、脳が勝手に認知を書き換えるのだそう。

そのため、不快な感情を感じさせられた相手である、さくら夫人や百田氏に肩代わりさせることになっているという。

では、その不快な感情とは何か?

本書ではキチンと順を追って分析しているのですが、端折ってしまうと、「立場(有名人の側近)」や「お金」を得られて「ずるい」という感情です。

つまり、攻撃している相手を見ると、「妬み感情を抱いている人の欲求が丸わかりになってしまう」のだとか……。


◆上記の件を含め、本書は「自分の心の内面」を鋭く突いてくるお話が多かったです。

また、何らかの理由で自分が叩かれた場合に、参考になる考え方も得られました。

実際、長年ブログをやっていると、たまにネガティブなツイートやブックマークコメントがあったりしますが、それに対して脊髄反射したり、反論するのではなく、相手の感情を理解したいな、と(どちらが正しい、というのではなく)。

もちろん、何かをネットで叩くことで快楽を感じている方にも、一読して頂けたら、と。


どうしても他人を許せない方に!

4591144224
正しい恨みの晴らし方 (ポプラ新書)
第1章 恨まずにはいられない
第2章 妬みと羨みの心理学
第3章 妬みを感じるとき、脳では何が起こっているのか
第4章 正しさにこだわる人たち
第5章 正義という名の麻薬
第6章 愛が憎しみに変わるとき
第7章 嫉妬の脳科学
第8章 ネガティブ感情の意味
第9章 対談 私たちのネガティブ感情とのつき合い方


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【編集後記】

◆ちょっと気になる本。

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なぜ、あの人が話すと意見が通るのか (青春新書インテリジェンス)

当ブログの定番である「交渉術」の作品みたいですね。


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