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2015年02月06日

【情報処理】『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』小林敬幸


ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術
ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、昨日の「未読本・気になる本」の記事でも取り上げていた1冊。

著者の小林敬幸さんの前作『ビジネスをつくる仕事』は、個人的にツボだったのですが、本書はそれにもまして刺さりまくりました。

アマゾンの内容紹介から。
例えば「誰でも手に入る情報」をどう活かし、捨てるか――ビジネスの先が見えない時代に必要な「情報の取り扱い方」を体系的に紹介。分析、議論、発信、予測……あらゆる仕事に関係する具体的・本質的な考え方。

前作同様中身が濃すぎて、思わず付箋を貼りまくりました!







Information Literacy / Ewa Rozkosz


【ポイント】

■1.戦略的失敗を、戦術的成功で挽回しようとしない
 戦略が正しければ、戦術的失敗を挽回できますが、戦略的失敗は、戦術的成功で挽回することはできません。むしろ、間違った戦略の初期において戦術的成功をしていると、その後のダメージが何倍にも拡大します。(中略)
 仕事においても、重要なことと些細なこととの違いをよく理解しておいたほうがいいでしょう。人間には、ミスがつきものです。重要な方向性を間違えさえしなければ、些細なミスは後から挽回できます。しかし、優秀な人ほど陥りがちなのですが、重要な方向性でミスをした後、上手い小技で挽回しようとすると、損害が拡大してしまいます。


■2.見通しが一方向に偏っている情報源は信頼しない
 常に円安だけを予想する人、株が上がると言い続けている人、隣の事業部のビジネスが儲からなくなると言い続けている人などがいます。環境が変わっているのに同じ予想をし続けているというのは、おかしい話です。そういうのは、状況の分析ではなく、価値観の表明であると捉えたほうが有益です。(中略)
 信頼できる情報源では、状況変化に応じた最新のデータを、正しい結論を出し続けた同じ思考プロセスと分析手法に入力して、違った結論を導き出すものです。従って、相場で言えば、上がるときも当て、下がるときも当てた情報源は、信頼ができます。


■3.新聞の基本的な読み方(抜粋)
・毎日一紙の見出しだけすべて目を通す
・記事は、最後まで読まず途中まででもよい
・社説や、一面の囲み記事には、あまり重きをおかない
・歴史的・体系的に理解した巨視的な視点を忘れない
・新奇性と印象の強いニュースを、世の中のトレンドと勘違いしない

(詳細は本書を)


■4.「情報の政治化」を避ける
 本来は、まず情報を集めて分析して、それに基づいて作戦を立案するべきです。しかし、やりたい作戦が先にあって、それに合わせて都合のいい情報を集めることを「情報の政治化」といいます。
「情報の政治化」の典型例は、アメリカの情報機関がイラクに大量破壊兵器があると報告した件です。政治的思惑が情報分析に影響してしまいました。
 我々サラリーマンも笑ってばかりはいられません。「社長の年頭の辞にある通り、今年は、日本経済が上向きでもあるので、この商品に積極的に投資していく」などという台詞がでていないでしょうか。日本経済の状態に対する社長の大局観に、個別の商品の売り上げ予測を政治的に合わせていっては失敗します。


■5.情報は遠くを見るが、実行は近くを見る
 情報を分析して方針を立てるには、遠い将来を見据えて考えなければなりません。一方で、実行するときには、できるだけ近い未来に具体的な目標を設定し、集中力を増して早く正確に遂行しなければなりません。
 ボウリングでスコアを上げるためのコツが、いい例でしょう。ボウリングでは、ボールを投げるときに、ピンのほうをあまり見ずに、そのずっと手前のレーンの途中にあるスパットと呼ばれる目印を狙うとスコアが上がります。(中略)
 仕事においても、情報の分析をした上で立てた具体的な目標を実現することに、実行の段階では集中するべきです。できるだけ余計なことを考えずに、まずは、今、正面で話している相手に満足してもらえるように集中するほうがいい結果となるでしょう。


■6.時代の半歩先のアイデアを思いつくには、「大過去×未来」で考える
 創造的であろうとして、未来とその先の未来を想像して考えても、どんどん荒唐無稽になっていくだけです。それよりも、ずっと昔のことと、未来に起こることをかけあわせることで、半歩先のアイデアを得るのです。
 例えば、「つぶやき」という太古の人類からしていたものとインターネットを組み合わせたのがツイッターです。生命保険が最初にできたときの特約無し掛け捨てのシンプルな生命保険とネットをかけあわせたのが、ライフネット生命でした。
 二世代以上昔のものと、未来に起こるものとを組み合わせると、時代の半歩先を行く実り多いアイデアが出てくることが多いのです。


【感想】

◆冒頭でも触れている、小林さんの前作であるこちらの本。

4062882299
ビジネスをつくる仕事 (講談社現代新書)

参考記事:【オススメ】『ビジネスをつくる仕事』小林敬幸(2013年10月21日)

上記参考記事は、ほとんどブックマークされなかったものの、その月の売上ランキングの第8位に入りました。

ですから、それなりの人数の方には、この前作をお読み頂いていると思うのですが、そちらを気に入って下さった方にとっては、今回の新作は「マスト」

前作を「ひたすら面白い本」と感じた私の意見なので、多少バイアスがかかってることは否定しませんがw


◆ただ、前作がやや「起業」「ビジネスモデル」寄りの内容であったのに対して、本書のテーマは「情報の取り扱い方」。

その分、一般的なビジネスパーソンにとっても、より一層実用性が高いと思います。

特にチェックしておきたいのが、まずは第2章の「情報の収集」について。

上記ポイントの3番目では、新聞にフォーカスしていますが、本書では「公開情報」を重視しており、中でも新聞に「一番広範囲の良質の情報を簡単に入手できる」という評価を与えています。

もちろん、各紙ごとにバイアスはあるので、本書曰く、新聞ごとのバイアスを理解するには「1年に1度程度でいいので自分の興味を持ったトピックについて、新聞全紙を読み比べよ」とのこと。

同様に、ネット上の情報源もいくつか紹介されていますので、詳細は本書にてご確認ください。


◆続く第3章は「情報の分析」で、ここでは「ヘンな意見にだまされない12カ条」と題して、「してはいけない情報分析の具体例」を列挙しています。

上記ポイントでは4番目が該当し、それ以外にも、気になって付箋を貼った項目がいくつもありました。

割愛した中から1つ挙げると、「根本が雑で枝葉が緻密なバランスの悪い論理は、危ない」というもの。

たとえばサブプライムローンは、ローンの返済が滞る確率を細かく計算しているものの、結局皆がそんなことをすると、ローンが返済されなくなるという肝心かなめの理屈部分はいいかげんだったというバランスの悪さ。

他にも「『少数の法則』にだまされない」といった辺りも、留意しておきたいところです(詳細は本書を)。


◆一方、今回ごっそりカットしたのが第4章と第5章の2つの章。

まず第4章では、「情報発信」として「企画書の書き方」が指南されており、それまでの章と若干趣きが違います。

ただし、「攻めの情報発信(企画書、提案書等)」と「守りの情報発信(社内許可を得る文書等)」の使い分け方、特に前者の「攻めの情報発信」に関する記述は、ビジネスシーンにおいて役立ちそうな。

また第5章は「ヘンな議論で負かされない12カ条」と題されたとおり、議論における留意点を解説しています。

こちらも、上司や他部門と打ち合わせ(議論)をなさる方なら、要チェックではないか、と。

ここまでの章が、情報処理のうち、「実行以前」の部分であり、第6章ではいよいよ実行へ。

上記ポイントの5番目以外にも「情報は広くとり、実行は絞る」「情報分析は懐疑的に、実行は自信をもって楽観的に」といった有益なアドバイスがありましたので、ぜひご一読を。


◆ところで、前作を読んでいる時から感じていたのですが、著者の小林さんは、物事の概念を的確につかんで、ネーミングすることがお上手です。

たとえば前作では、「川の真ん中・船の端」「ホンイツ戦略」といったフレーズが出てきましたが、本書でも「浦島太郎話のような報告書」ですとか「たぬき部長三段論法」なんてお話がありました。

そういった部分が、結果的に本書を「ユニーク」かつ「なるほど!」と腑に落ちやすくしているのではないか、と。

ただし、こういった概念的なことは、手っ取り早く効果が出るTIPS等とは違うので、その辺で評価が分かれてくるかもしれません。

私個人としては、「脳ミソの中のいつもと違うところが蠢く」本書のような作品はツボなのですけどね!


やはりオススメせざるを得ません!

ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術
ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術
1章 知識・論理よりも、教養―情報と判断
2章 新聞・ネット・人…の読み方―情報の収集
3章 ヘンな意見にだまされない12カ条―情報の分析
4章 セクシーな企画書を書こう―情報の表現
5章 ヘンな議論で負かされない12カ条―情報の交換
6章 情報とは、こう使うものだ―情報と実行
7章 「今」を見る、「明日」を知る―情報を活かす


【関連記事】

【オススメ】『ビジネスをつくる仕事』小林敬幸(2013年10月21日)

意外と知られていない『情報を捨てるセンス 選ぶ技術』のテクニック10選(2014年07月18日)

【結論思考】『出来る人ほど情報収集はしないもの! ─情報洪水に溺れないために』津田久資(2012年10月07日)

【問題解決】『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』安宅和人(2010年11月30日)

【ヤバ本】『「情報創造」の技術』三浦 展(2010年05月19日)


【編集後記】

◆昨日の未読本記事に載せ損ねた1冊。

4492502610
マクドナルド 失敗の本質: 賞味期限切れのビジネスモデル

こういうテーマの本をウチでご紹介してもいいものでしょうか……?


人気blogランキングご声援ありがとうございました!

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kindle版がでました[ココ]ので、よろしくお願いします。マインドマップさんに、素晴らしい書評を書いて頂いて感激です[ココ]。Amazonのレビューでも、読者からとてもありがたいコメントをいただきました。いずれも、驚くほどよく読んで著者の意図を正確に理解されているので
「自分の頭で判断する技術」kindle版【らくちんのつれづれ暮らし】at 2015年03月01日 20:59