2015年01月26日
【コンサル流】『本質思考: MIT式課題設定&問題解決』平井孝志
本質思考: MIT式課題設定&問題解決
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、リアル書店で捕獲した「問題解決」本。コンサルさんの本でよく見かける「スジが良い」答えを出すために、どうアプローチするかについて指南されています。
アマゾンの内容紹介から。
現象に惑わされず、「その裏側で何が起こっているのか」「どうしてそうなるのか」というふうに、ものごとの本質に目を向けなければ、情報が溢れる今の世の中、情報に流され、現象の裏返しみたいなスジの悪い答えにしか行きつけない。
理系大学の最高峰、MIT(マサチューセッツ工科大学)でシステムダイナミクスを学んだ戦略コンサルタントが、その教えを下敷きに、ビジネスで真にインパクトがある解を導き出す思考法「本質思考」を解説する。
新刊でありながら、既にお買い得なKindle本も出ていました!
Massachusetts Institute of Technology / InSapphoWeTrust
【ポイント】
■1.一般解で満足しないもしダイエットできない事実の裏側に、太っているという現実に目をふさいででしまっている自分がいるとしたら、「食べる量を減らす」「運動する」より、体重計を玄関に置き、毎朝毎晩、出勤前や帰宅時に体重を「見える化」するといった、個別具体的な解の方が効果的だろう。自分をいつか、病気に追いやるのに十分すぎる体重を日々認識すれば、具体的な行動の原動力が生まれるかもしれない。(中略)
ビジネスの世界でも、何にでも当てはまるような一般解で思考が止まってしまうことは多い。そこで思考が止まると、ものごとは前に進まない。一般解は具体策ではないから、進みたくても進めないのである。
■2.フレームワークに依存しない
いろいろなフレームワークを習いたての頃は、ついついそれを使ってみたくなるものである。それ自体悪いことではない。また、フレームワークを用いて情報を整理すると、結構スピーディーに、それなりに、資料の体裁を整えることもできる。
しかしながら、フレームワーク依存のクセの恐ろしさは、そうした作業そのものによって達成感を覚え、ただ情報を整理しただけなのに何かを考えた気になってしまうところにある。
本来、本質から考えるのに役に立つはずのフレームワークによって、逆に思考が止まって、「本質から考える」ことから遠ざかってしまうのである。
■3.モデルは5つの観点から全体を俯瞰する
ビジネス上の問題解決をするためにモデルを描く際、少なくともこの「インプット元」「アウトプット先」「競争関係」「協調関係」「影響者」の5つの観点から全体を俯瞰すべきだ。これら5つの要素を念頭に、それらの間の関係性をじっくりと考えれば、確度の高いモデル、そしてスジの良い答えに近づくことができるはずである。
もしモデルを描いてみて、何か抜けているような気がしたら、この5つの内、何かを忘れていないか再確認してみよう。
(詳細は本書を)
■4.相が転移する2つのきっかけ
1つは、ちょうど花粉症のように、アレルギー物質が体内に蓄積し、閾値を超えた場合である。モデルの中のストックがオーバーフローしたタイミングだ。
もう1つは、モデルに影響を与える要素(特に影響者や競争関係)が大きく変わった場合だ。ビジネスで言うと、顧客のニーズが大きく変化した場合や技術などの大きなイノべーションが起こったとき、競争相手が戦い方を大きく変えてきたときなどである。日常生活で言うと、結婚や出産、転職など、大きな環境の変化があったときと言うことができる。
「相」が変わるとダイナミズムは大きく変わる。直面する課題や、問題解決のための答えも変わってくる可能性がある。できるだけ、ストック的な要素や、影響の大きそうな外的要因に、より強く注意を払うべきなのである。
■5.根源的ドライバーを特定する
たとえば、あなたが些細なケンカがきっかけで彼女に振られたとしよう。そんな時、振られた本当の理由は、そのケンカではなく、それまで彼女の中にたまっていた、あなたへの不満や、性格の不一致などへの思いであることが多いだろう。些細なケンカは、あくまできっかけにしか過ぎず、2人を別れに追いやった根源的ドライバーは、彼女の中の不満レべルなのである。
ダイナミズムを考える際には、モデルも一緒に見ながら、この根源的ドライバーが何であるかを突きつめることが欠かせない。
■6.視座を上げる
よく言われる例は、大学入試にむけて受験勉強している際、ついつい難問を解くことに気がいってしまうが、本来、難問を解くことが目的ではない、といった話だ。おそらく、大学入試というルールの中で、希望する大学に受かることが本当の目的のはずである。
ルールの構造から考えると、総合点でいい点を取ればいいのだから、たとえば、その難問が解けなくてもよいかもしれない。基本的な問題でしっかりと点数を稼ぐ戦い方でもいいだろう。あるいはその難問については、自分で解く力をつけなくても、解答のパターンを頭に叩き込むやり方だってある。さらには、複数の科目の中で、どれを捨て、どれで稼ぐかを考え、総合点を高める方法を見つけ出す工夫をしてもいい。
【感想】
◆本書ではまず第1章にて、人の「思考のクセ」を指摘しています。いわく、多くの人が本質から考えることなく、表層的に考えている、とのこと。
その「クセ」というのが、全部で9つ列挙されているのですが、どれも身に覚えのあるものばかりでビビりました。
と言いますか、上記ポイントの2番目なんぞ、まさに私の場合「フレームワークに落とし込む」までがひと苦労なので、それでもう「何かをやりとげた感」がハンパありません。
むしろ、その落とし込みすら満足に出来ていない悪寒が……。
◆一方、もうちょっと高度なものが、「初期仮説に固執してしまうクセ」。
本書では具体例として、数十年前にP&Gから発売された粉末洗剤の「全温度チアー」が挙げられていました。
この動画の30秒以降にあるヤツなんですが、今の若い人は知らないんじゃないかと。
この商品は、米国では大ヒットをしており、その理由というのが「米国ではお湯でするのが普通だった洗濯が、水でできるから」。
ところが、日本では当時からお湯で洗濯する習慣がないため、散々な結果に終わったのだとか。
つまりこの場合、米国での成功パターン(初期仮説)に固執してしまったワケですね。
◆こうしたクセを乗り越えて、やっと「本質思考」に踏み込んでいくのですが、まず本書における「本質思考」とはなんぞや、と。
本書からそのまま転記すると、こうなります。
「本質」=「構造(モデル)」×「因果(ダイナミズム)」ここで「モデル」とは、その現象を生み出す構造(構成要素や、それらの相互の関係性)を意味し、ダイナミズムとは、そのモデルが生み出す現象について、長い目で見ると、どのような結果や動きが見られるのか、ということ。
……言葉で書いてもなかなかピンと来ないので、上記ポイントでは、できるだけ具体例に触れてみました。
問題は、私たちが表層にある「現象」にばかりとらわれて、その裏にある「モデル」と「ダイナミズム」まで考えていないケースが多いことなのですが。
◆一方、第3章〜第6章では、本書のメインとなる「本質思考の4つのステップ」について解説されています(個々のステップは、下記目次の通り)。
まず上記ポイントの3番目は、第3章の「モデルを描く」からの引用で、本書では具体例として、シンガポール航空の成功モデルが挙げられていました。
5つの要素(「インプット元」「アウトプット先」「競争関係」「協調関係」「影響者」)が、それぞれ何であり、どのような関係になっているかについては、本書にてご確認を。
続く、第4章「ダイナミズムを読み解く」が、実は本書で一番ボリュームのあるところなので、そこから上記ポイントの4番目と5番目をご紹介しております。
ただ、前後関係をカットして、いきなり抜き出してあるので、少々分かりにくいような(すいません)。
◆なお本書の場合、私がよく言う「1つでも2つでも実践すれば元が取れる」タイプの本ではないと思います。
と言うのも、まず読んでみて、「どこまで理解できるか」というハードルがあって、さらにその先に「実践」があるわけですから。
そういう意味で、当ブログでご紹介した中では、テイスト的に『イシューからはじめよ』に近い気が(「内容」ではなく、「テイスト」で)。
イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」
参考記事:【問題解決】『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』安宅和人(2010年11月30日)
ちなみに、私は第1章の「9つのクセ」を知り得ただけでも、十分でした……って解決以前の問題ですけど。
「より深く考える」ために読んでおきたい1冊!
本質思考: MIT式課題設定&問題解決
CHAPTER1 人は意外に深く考えていない
CHAPTER2 本質思考とは何か?
CHAPTER3 本質思考のステップ1 モデルを描く
CHAPTER4 本質思考のステップ2 ダイナミズムを読み解く
CHAPTER5 本質思考のステップ3 モデルを変える打ち手を探る
CHAPTER6 本質思考のステップ4 行動し、現実からのフィードバックを得る
CHAPTER7 本質思考を身につけるためのトレーニング方法
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【これは分かりやすい!】『コクヨの5ステップかんたんロジカルシンキング』下地寛也(2013年02月13日)
【問題解決】『イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」』安宅和人(2010年11月30日)
【オススメ!】『3分でわかる問題解決の基本』大石哲之(2010年09月03日)
【編集後記】
◆ちょっと気になる本。アマゾンにも負けない、本当に強い会社が続けていること。
著者の権成俊さんの作品としては、結構前に読んだ『ECサイト4モデル式 Google Analytics経営戦略』がスゴ本だったので、こちらもチェックしておかねば。
ご声援ありがとうございました!
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