2015年01月19日
【論理的文章術】『シカゴ・スタイルに学ぶ論理的に考え、書く技術: 世界で通用する20の普遍的メソッド』吉岡友治
シカゴ・スタイルに学ぶ論理的に考え、書く技術: 世界で通用する20の普遍的メソッド
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、かつて『いい文章には型がある』が、当ブログでも大人気だった吉岡友治さんの最新作。『いい文章には型がある』でも「てにをは」レベルのアドバイスは皆無でしたが、本書はさらに「シカゴ・スタイル」に則った文章作法を指南して下さっています。
アマゾンの内容紹介から。
シカゴ大学で確立した世界標準の論文執筆マニュアル「シカゴ・スタイル」に基づき、どんな相手でも伝わる文章を書くための20の普遍的メソッドを公開。何をどう考え、どう整理し、どんな順序で言葉化すべきか?レポート、企画書、志望理由書からメール・ブログ、研究・学術論文まで…あらゆる文章の普遍的な型が身につく本。
タイトルにあるように「論理的に考え、書く」必要のある方なら、要チェックです!
Writing Tools / Frederic Guillory
【ポイント】
■1.「そして」は使わないandや「そして」は前の文と後の文をたたつなぐだけで、そこに明確な意味を与えないという特性があるのです。よく日本語では「そして」は順接とか付加の接続語と言いますが、「さらに」などに比べると付け加えるという意味合いは不明確ですし、「それから」に比べると時間の推移は曖昧です。
一方、前から予想される範囲につなぐという点でも、「つまり」「したがって」「それゆえに」に比べれば、前との連続性は間接的で弱い。結局、ただぼんやりと前とつなぐという役目しかありません。
■2.しりとりの流れをつくる
論理的に読みやすい文章にするには、この既知から未知への順序に忠実に従わなければなりません。段落でも文でも、冒頭で古い情報が出され、読者との間で確認してから、それを新しい情報/発見につなげる。
それに対して、次の文では、その「新しい情報/発見」を分かったものとして(つまり、新しい情報を既知のものとして)、それを、さらに新しい情報/発見につなげる。こういうプロセスが延々と続くわけです。
■3.ポイントは冒頭に
読者は忙しいので、なるべく早く筆者の「言いたいこと」に到達したい。だから、ポイントは段落の冒頭に置かれます。もちろん、1文で簡潔に書くことが推奨されるので、ポイント・センテンス point sentence と呼ばれます。
それに対して、サポートは正式にはサポート情報 supporting information とシカゴ・スタイルでは言われます。つまり、ポイントが正しいことを読者に納得してもらうための材料になる、細かくくわしい情報です。要するに、段落の構造としては一番大事な内容を1文で先に述べ、細かくくわしい惰報は後から補充すればいいのです。
■4.「問題+解決+根拠」の形で構成する
その人が何を言いたいか、は細かな表現にこだわるよりも、答えなければならない問いに対してどのように答えているか? つまり「問題と解決」Problem and Solution の構造を明らかにすることで明らかになります。実はこれが論文=論理的文章のすべての基礎にあると言っていいでしょう。
ただ、なぜ、その答えになるか、が示されていなければ、聞いている/読んでいる人は納得できない。だから、どうして、その解決が正しいのか、その根拠も述べて、解決をサポートする必要があります。つまり、問題+解決+根拠という構造を取るのです。
■5.説明(warrant)をしっかり書く
論文の初心者は、一般的に、この warrant が苦手です。「なぜなら……からだ」から一足飛びに「たとえば……」とか「実際……によれば」などの例やデータに行ってしまう。実験や観察を主とする論文ではこれで十分な場合もあるのですが、普通はメカニズムやプロセスまでくわしく述べないと、reason (理由)だけでは、相手が納得しにくいことが多いのです。
とくに、この部分は、筆者の考え方を示す場所なので、warrant がしっかり書かれていないと、十分思考や吟味が行れていない、という印象を持たれる場合が多いのです。
■6.結論では解決を繰り返す
結論 conclusion で何を書いていいか分からない、という方にときどき出会います。しかし、結論で書く内容は簡単です。なぜなら、論文=論理的文章は意見文である以上、言いたいことは(問題に対する)解決で尽きているからです。
結論は一番言いたいことをまとめて言うところだから、基本的には、解決を繰り返せばいいのです。逆に言えば、新しい内容は繰り返しにならないので、結論部で書いてはいけない。意外なようですが、これが原則なのです。
【感想】
◆本書を手に取られる、もしくは、本エントリーを読もうとされた方の多くが「『シカゴ・メソッド』って何だろう?」という興味・関心を持たれていると思います。その「シカゴ・スタイル」とは、本書によると「シカゴ大学で教えられている論文の書き方」であり、「アメリカで博士論文を書く人なら、必ず参照しなければならないと言われている定評のある方法」なのだとか。
残念ながら、ググっても「これ!」というサイトが見つからなかったので、本書の版元である草思社さんのブログエントリーをご紹介しておきます。
世界最高峰の文章上達術をはじめてわかりやすく解説! - 草思社のblog
……と言うか、上記エントリーに、ブクマが付きまくってるじゃないですか(はてなブログだけにw)!
◆とはいえ、本書はその「シカゴ・スタイル」の「マニュアル集」や「教則本」の日本語バージョンではないのだそう。
そもそも英語と日本語の違いもありますし、英語で有効な文章作法も、日本語にはそのまま当てはめられないと思われているとのこと。
ですから、むしろ本書で力を入れていると思われるのは、その根底にある「考え方」です。
吉岡さんは、シカゴ大学院進学前から、日本で小論文を指導してらっしゃったのですが、その「論理的に考え、書く」スタイルは、本場のモノと符合していたのだとか。
そういう意味では本書のコンテンツは、文章術であると同時に、思考術でもあるわけです。
どうりで、以前読んだ吉岡さんのもう1冊の本と、テイストが似ていたワケだな、と……。
反論が苦手な人の議論トレーニング (ちくま新書)
参考記事:【議論】『反論が苦手な人の議論トレーニング』吉岡友治(2014年09月16日)
◆上記の本同様、本書も新聞記事や大学入試問題、さらにはブログ記事まで用いて、お話が展開されています。
ただ、それらがちょっとした引用ではなく、1つ1つが結構なボリュームなため、上記ポイントではご紹介できず。
たとえば、赤木智弘さんのこのエントリーが俎上に載っていたのですが。
普通に「普通」という言葉は怖いよね。普通:BLOGOS
本書ではこれを、「冷静で客観的」に書き換える過程を14ページほどを使って詳細に解説しています。
と言っても、決して非難しているわけではなく、このエントリーは「随筆の感じが色濃いが、実は、その底に論文としての構造が存在している」と指摘。
これも筆者の「個性」と言える、とのことです。
むしろ、それに続けて同じエントリーを、より「随筆風」にさらに書き換えた吉岡さんの職人技を、本書にてご確認頂きたいところですがw
◆吉岡さんの著作は、当ブログでは過去2冊、新書を取り上げてきましたが、それらと比べると、本書は少々「骨太」と言うか、読みこなすのに時間がかかるかもしれません。
というのも、「本書の内容」プラス、事例があると「事例の内容」まで理解するよう努めなければならないから。
通常私が、当ブログで取り上げる文章術本は、比較的「読みやすい&実践しやすい」ものが多いのですが、本書は一線を画していますのでご留意を。
また、上記ポイントでもいくつか散見されるように、必要に応じて英単語も登場し、かつ「英文の事例」もあるためか、本書は横書き左開きとなっています。
色々な意味で「速読派泣かせ」の作品ですが、そもそも私なんぞが読み飛ばせる内容ではありませんでしたw
世界標準の文章を書くために!
シカゴ・スタイルに学ぶ論理的に考え、書く技術: 世界で通用する20の普遍的メソッド
文のつくり方とつなぎ方
2 段落のつくり方
3 全体を構成する
4 理解から批判につなげる
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【文章術】『書く技術・伝える技術』倉島保美(2014年04月15日)
【オススメ】『ロジカル・ライティング』清水久三子(2013年10月17日)
【ライティング】『入門 考える技術・書く技術』山崎康司(2011年04月12日)
【編集後記】
◆「シカゴ・スタイル」でググっていて見つけた1冊。シカゴ・スタイル 研究論文執筆マニュアル
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ご声援ありがとうございました!
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