2015年01月15日
【スゴ本!】『外資系コンサルの知的生産術 プロだけが知る「99の心得」』山口 周
外資系コンサルの知的生産術 プロだけが知る「99の心得」 (光文社新書)
【本の概要】
◆今日ご紹介するのは、当ブログで『外資系コンサルのスライド作成術』が大人気(2013年度年間ランキング23位)だった、山口 周さんの新作。リアル書店で見かけて、タイトルと著者名だけで「即捕獲」したのですが、中身も期待以上のモノでした!
アマゾンの内容紹介から一部引用。
まず必要なのは…
×「思考の技術」
○「行動の技術」
論理思考やフレームワークを学んでも、仕事がうまくいかないのはなぜ?
劇的に成果が上がる、本当に使える「知的生産の技術」=「行動の技術」。
「ボロボロになるまで本書を活用しきってほしい」(筆者談)
新書なのでいちいち画像は載せませんけど、マジで付箋をびっしり貼りまくりました!
Intelligence (v) Drive / psd
【ポイント】
■1.情報をインプットする前に、アウトプットのイメージを持つどんなアウトプットを作ろうとしているのかのイメージを明確化した上で、インプットに臨む。こうすることでインプットの効率を飛躍的に高めることが可能になります。
これはインタビューに限らず、公開資料や社内資料を読み込む場合でも同様なのですが、アウトプットのイメージを固めた上で、「足りない情報項目」を探しにいくというモードでインタビューや資料レビューに当たると、驚くほど情報の取得効率が高まります。
■2.「考える」と「悩む」を混同しない
読者の皆さんが1時間考えても答えが出ないというとき、それは思考力や思考量に問題があるのではなく、ほぼ間違いなく「問いの立て方」か「情報の集め方」に問題があると思っていいでしょう。
これはよく勘違いされていることなのですが、「考える」という行為と「悩む」という行為を混同してはいけません。よく「1日考えてみたのですがよくわかりません」といったことを平気で口にする人がいますが、ほとんどの場合、それは「考えている」のではなく「悩んでいる」だけです。哲学や論理学といった分野で専門的なトレーニングを積んだ人であればともかく、普通の人間には丸一日考えるなどというのはまったく不可能なはずです。
■3.「長く考える」のではなく「何度も考える」
インプットされた情報をもとに整理・構造化・示唆出しに取り組んでみたものの、いま一つピンと来ないなあ、と感じるときは筆者にもよくあります。こういったときは、長時問同じ問題を考え続けるのを止めて、短時間の思考を、時と場所を変えて何度も繰り返してみるといいアイデアが浮かぶことが多いのです。ここでいう「短時間」とは、本当に数十秒から長くても5〜6分程度の長さをイメージしています。(中略)
ここでポイントになるのが、せいぜい5分程度の思考を、時間と場所を変えて繰り返し行う、ということです。知的生産の総量が、結局のところ思考の総量に比例することは否定しませんが、思考の総量は「考える時間」の量よりも「考える回数」の量によって決まる、というのが筆者の意見です。
■4.空間軸を変える
なぜアップルのような会社が日本から出てこないのか? という問題提起についても、空間軸を広げてみると違う側面が出てきます。
たしかに、アップルのような会社は日本から出てきていません。しかし、同様にイギリスからもフランスからもドイツからも出てきていないのです。このように考えてみると、この「なぜアップルのような会社が日本から出てこないのか」という論点の立て方はそもそも問いとして筋違いで、むしろ「なぜ米国だけがアップルのような会社を生み出すことができるのか?」という論点を立てるべきだということがわかります。
■5.What、Why、How の3点セットをまとめる
プロセッシングを経た情報は最終的にアウトプットしてまとめられて知的生産物の発注者に納品されます。このとき、アウトプットがWhat、Why、Howの3つの要素を備えているかを意識してみましょう。ここでは、Whatは「やるべきこと」、Whyは「その理由」、Howは「具体的なやり方」を意味しています。この中のどれが欠けたとしても、知的生産物は不完全なものになってしまいます。
(詳細は本書を)
■6.メタファー的読書とメトニミー的読書を使い分ける
例えば、本多勝一さんの『アムンセンとスコット』を読んで「危機のリーダーシップ」について関心を持ったとしましょう。ここを起点にして上杉鷹山やチャーチルの自伝、あるいはIBMや日産の再生物語に展開していけば、「危機のリーダーシップのあり方」を軸にしたメタファー的読書展開ということになります。
一方で、『アムンセンとスコット』を読んで南極に興味を持ったとしましょう。ここを起点にして南極の地学や生物、さらには地球空洞説やナチスの南極探検に関連する本に展開していけば、これは「南極」を軸にしたメトニミー的読書展開ということになります。
どちらでも構いません。ただ、大事なのは、1冊の本が与えてくれた疑問やテーマを軸にして読書を展開していくことで、1冊1冊の本を数珠のようにつなげていくことです。
【感想】
◆本書を読んでいて、まず思ったのは、「何でこれが単行本じゃないんだ?」ということでした。とにかく内容が濃く、事例も豊富。
その事例も1つ1つが面白いので、上記でも引用したかったのですが、ボリューム的に小さめだったアップルの話や、具体例を挙げないとピンと来ないであろう、最後のポイントの部分しか持ってこれず。
いずれにせよ、雑多な情報を1冊に仕上げたタイプでもないですし、かつ、読者ターゲットも明確なので、本来なら単行本として読みたかった、というのが正直な気持ちです。
もっとも、新書としては317ページと厚めですし、読み応えという点では、決して普通の単行本に劣るものではないのですが。
◆さて、上記ポイントの2番目のポイントで補足しておきたいのが、「考えている」のか「悩んでいる」のかの判定についてです。
著者の山口さんによると、「悩んでいる」状態を見抜くには「2つの見極めのポイントがある」とのことで、まず1つ目は「手が動かなくなる」。
山口さん曰く、「知的生産におけるプロセッシングのほとんどは手を介して行われる」ので、この段階で「手が動いていない」というのは、「悩んでいる」可能性が高いのだとか。
もう1つのポイントは……一応ネタバレ自重w
いずれにせよ、1時間以上もこのような状態になっていたら、別の方策を考えよ、とのことです。
◆もう1つ、別の部分で補足すると、上記ポイントの5番目の「What、Why、How」を、どのような順番で組み立てるのかというのは、受け手の反応を予測した上で考えるのだそう。
その前提として、まず、受け手の反応を「共感×違和感」と「面白い×つまらない」の2軸でマトリクス化します。
ここで、受け手の反応が「共感×面白い」と予測される場合は、「What→Why→How」の流れで。
そして、「違和感×面白い」と予測される場合は「Why→What→How」の流れでアウトプットを組み立てるのだとか。
その他の2つのパターンや、なぜそうするのか、等については、本書にてご確認を。
ここは、プレゼンをなさる方なら、要チェックなお話だと思います。
◆一方、割愛した中で興味深かったのが「音声化と視覚化の双方を活用する」というTIPS。
例として挙げられていたのが、大昔にTVで頻繁に流されていた笹川良一出演の日本船舶振興会のCMなんですが、15秒CMが2つ連続で流れるうち、最初のCMでは「世界は一家、人類みな兄弟」と訴え、2つめのCMでは「戸締り用心、火の用心」と言ってるわけです。
これらのCM、普通に聞き流していると気付かないのですが、
「世界は一家、人類みな兄弟」と、改めて文字にして並べると、2つのメッセージが矛盾していることに気付くという……。
「戸締り用心、火の用心」
これに関して山口さんが何人かの専門家に尋ねたところ、複数の方が指摘したのが「脳の構造的な要因」とのことでした。
簡単に言うと、人間は情報を処理する際に、「音声=時間軸」「視覚=空間軸」で脳の違う部分を使うらしく。
結論としては、仕組みはさておき(?)、「音声処理」と「視覚処理」の両方を用いましょう、というのが山口さんのご意見でした。
◆この調子で書いていたら、いくらスペースがあっても足りないので、この辺で。
何たって99も「心得」が収録されているのですから、付箋を貼りまくっても仕方がないかと(自己弁護)。
いつも申しあげているように、この中から1つでも2つでも実践できれば、きっと元は取れます。
私自身、あまり本を読み返すことは多くないのですが、本書は久しぶりに読み返したいと思った次第。
「ピン!」とくる方は、本エントリー関係なく、リアル書店で手に取られたら、即お買い上げになっていると思いますがw
これはオススメせざるを得ません!
外資系コンサルの知的生産術 プロだけが知る「99の心得」 (光文社新書)
第1章 知的生産の「戦略」
第2章 インプット
第3章 プロセッシング
第4章 アウトプット
第5章 知的ストックを厚くする
【関連記事】
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【知的生産術】『アイデアを形にして伝える技術』原尻淳一(2011年04月28日)
【編集後記】
◆その山口さんの『外資系コンサルのスライド作成術』なんですが、中古でも相変わらず高値のよう。そして、レビュー当時はなかったKindle版も今や出ております。
外資系コンサルのスライド作成術―図解表現23のテクニック
未読の方は、この機会にぜひ!
ご声援ありがとうございました!
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