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2014年12月25日

【文章術】『文章は読むだけで上手くなる』渋谷和宏


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文章は読むだけで上手くなる (PHPビジネス新書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、先日の「未読本・気になる本」の記事でも人気だった1冊。

著者の渋谷さんは、当ブログにもファンの多い『日経ビジネス アソシエ』の創刊編集長ということですから、読者の皆さんの期待の大きさも理解できます。

アマゾンの内容紹介から一部引用。
「文章は書かないと上手くならない」……新人記者時代、そんな既存の文章術に疑問をもったのが、本書誕生のきっかけでした。著者がたどり着いた結論はずばり「文章は読むだけで上手くなる」。身の回りの文章を読むときに、「順番」と「型」に注意するだけで、伝わる文章がどんどん身についてくるのを感じられるでしょう。多くの人にとって、この本1冊で文章偏差値が10も20も上がることが期待できます。自分の文章力を上げたい方はもちろん、部下の文章力を上げたい上司の方にもお勧めです。

正直、私にとっては「痛し痒し」の文章術でした!





writing in the journal / erink_photography


【ポイント】

■1.リーダーとしての文が先頭にあるか意識する
 文章を構成する文には2種類あります。
 ここでは2種類のうち小段落を代表する文を「リーダー(牽引役)としての文」あるいは「題目としての文」と呼びましょう。
 そして、それを証明したり補足したり説明したりする文を「フォロワー(付き従う者)としての文」あるいは「中身としての文」と呼びましょう(以下、本書ではそれぞれ前者の呼び名を使います)。(中略)
 文章を読むとき、リーダーとしての文が小段落の文頭にきているかどうか常に意識する。
 これだけです。
 本書のテーマである実用文なら、どんな文章でもかまいません。新聞や雑誌の記事でも書籍の一部でも、リーダーとしての文が小段落の文頭に置いてあるわかりやすい文章は何度でも読みかえし、リーダーとしての文とフォロワーとしての文の関係を実感してください。


■2.リーダーとしての文をつなげるだけで文章全体の流れが分かるようにする
 文章全体の論旨を明確にし、すっきり読みやすくするために守るべきルール――第2のルールと呼びましょう――それは「『リーダーとしての文』をつなげて読むだけで文章全体の流れがわかるように『リーダーとしての文』を並べる」です。(中略)
 もう少し具体的に言いましょう。「リーダーとしての文」をつなげると文章全体の流れがわかる――そのように構成された文章は、言ってみれば、それぞれの骨(リーダーとしての文)に筋肉や皮膚(フォロワーとしての文)がくっつき、体(文章)全体を形作っている構造を持っています。
 このため体はどんな姿形なのか(何について書いているのか)や、どんなボーズを取っているのか(どんな論旨なのか)が明確です。そのおかげで文章全体がすとんと頭に入ってくるのです。


■3.企画・内容は絞り込む
 このように企画・内容は絞り込むほど珍しさ――希少性やオリジナリティー、新しさを印象付ける力が強まっていきます。先に「ゴルフ」より「見知らぬ街の居酒屋で小さな旅を楽しむ」の方が面白そうだと思える理由に、読者を引き込む企画・内容の必要条件があると言ったのは、この法則を念頭に置いていたのです。
 ではなぜ絞り込むと企画の希少性は高まるのか。これは逆を考えてみるとよくわかります。絞り込まれていない企画――漠然とした企画はさまざまな事物を包み込むので、ありふれた事物も連想させ、全体としてありがちな印象を与えてしまうのです。


■4.「逆Tの字型」の構造を文章に持たせる
 内容を絞り込んで読者の興味・関心を呼び起こし、普遍的なメッセージを伝えて共感してもらう――僕はこれを「『逆Tの字型』の構造を文章に持たせる」と呼んでいます。
 入り口は狭いが出口は広い、ちょうど「⊥」のようなイメージで内容とメッセージを考える――これが読者の興味・関心と共感を得るコツだと覚えていただければと思います。
 内容は絞り込まれているが、テーマは普遍的なメッセージを含んでいる――これが単なる興味・関心を満足させるだけに終わらない必要条件なのです。


■5.文章中の「こと」「なか」を排除する
1.彼は上司から、嫌いなことには手を抜こうとすると見られている。(中略)
"こと""なか"れ主義からの脱却にはさらに大きな効果があります。"こと"や"なか"を最も適当な言葉に置き換えるとき、書き手は常に記憶の引き出しから最もふさわしい言葉を取り出し、論旨に合うように選択しなければなりません。その思考プロセスが書き手の表現力を磨き、ボキャブラリーを豊富にしてくれるのです。書き手をより明晰にし、文章偏差値を高めてくれると言い換えてもいいかもしれません。


■6.体言止めはとりあえずやめる
 体言止めで語尾に変化を持たせても、明快な文章が持つ心地よいリズムは決して生まれません。
 加えて体言止めには書き手の文章力を損ないかねない落とし穴が潜んでいます。体言止めに頼っていると、いつしか文章に構造的な問題があっても、すなわち守るべきルールから逸脱していても、それを修正しようとせず、小手先でリズムを整えようとする癖がついてしまいます。体言止めによって語尾に変化をつけてやれば、文章にはそれなりのリズムか生まれた気になるからです。
 その誘惑に負けて「リズムが悪ければ体言止め」を続けていると文章はいつまでたっても上達しません。それどころか、せっかく身につけた文の順番についての感覚が摩耗して、明快な文章を書けなくなってしまいます。


【感想】

◆乱暴に言ってしまえば、本書の「一番の主張」は、上記ポイントの1番目と2番目に集約されます。

つまり「リーダーの後にフォロワーが続く」ように書き、かつ、「リーダーだけで読んでも意味が通る」ようにすること。

アマゾンの内容紹介でも触れていないこの「事実」を、ここで書いて良いのか迷ったのですが、アマゾンレビューでも既にネタバレしているので、追随しました。

それに、さすがにこの点に触れずに本書を紹介することは、著者の渋谷さんも本望ではないと思うのですが、どうでしょうか?


◆さて、この「一番の主張」を読んで「これって、パラグラフ・ライティングじゃね?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

「パラグラフ・ライティング」とは、当ブログでレビュー済みの作品の中では、この本に詳しいです。

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論理が伝わる 世界標準の「書く技術」 (ブルーバックス)

参考記事:【文章術】『論理が伝わる 世界標準の「書く技術」』倉島保美(2012年12月04日)

上記参考記事から一部引用すると、
パラグラフの先頭には、そのパラグラフで言いたいトピックを示した文(=要約文)を置きます。要約文は、トピックセンテンスや主題文などと称されることもあります。この要約文でパラグラフを書き始めたら、次に要約文の内容を詳しく解説し、必要があればまとめの文を述べてパラグラフを終わります。
ということで、まさに本書の「主張」とマッチしていますね。


◆とは言え、「パラグラフ・ライティング」では、本書で言うところの「リーダーとしての文」は「要約文」に限定されますが、本書ではそれに加えて「言いたい内容の前振り役」でも良いよう。

つまり、本書の主張をさらに限定的にしたものが、「パラグラフ・ライティング」となるわけです。

ですから、この『論理が伝わる 世界標準の「書く技術』は、上記ポイントの1番目で言うところの「リーダーとしての文が小段落の文頭に置いてあるわかりやすい文章」に該当するため、「何度でも読みかえし、リーダーとしての文とフォロワーとしての文の関係を実感」する題材としてうってつけ。

実際、『論理が伝わる 世界標準の「書く技術』は、なんと丸々1冊を通して「リーダーだけ読んでも意味が通る」ように書かれています(さらにリーダーは太字で書かれています)ので、未読の方は、機会があれば、ぜひ一度お読み頂きたいところです。


◆ただし、この「パラグラフ・ライティング」は、ロジカルではありますが、だからと言って、それだけで「読者を引き込める」わけではありません。

そこで本書では、「パラグラフ・ライティング」だけではなしえない、「読者を引き込む」文章の型を指南しています。

それが、アマゾンの<<内容例>>で挙げられている、「△型の文章より人を引き込む▽型の文章」というTIPS。

もちろんこの型は、「リーダーとフォロワーの関係」を崩すものではないので、内容的に矛盾するわけではありません。

さすがに具体的な内容については、「ネタバレ自重」しましたので、気になる方は、本書にてご確認願います。


◆ちなみに「ネタバレ」と言えば、同じく<<内容例>>にある「あの人文章うまい! 」と言われるために「やってはいけない四カ条」の中から、上記ポイントでは半分の2つご紹介してみました。

それが上記ポイントの5番目と6番目で、実は私も日頃から思いっきりやっているパターンになります。

とりあえず今回のエントリーでは「こと」だけ、極力排除してみましたが、確かに無意識のうちに使おうとしていた自分に気が付きました。

一方、体言止めの方は、排除しきれない……というか、私の場合「ですます」調で、同じ文末を続けないように書いている以上、体言止めを完全に回避するのは不可能なので、「小手先でリズムを整えようとする癖」と指摘されても、直すのはなかなか難しそうです。

……まぁ、私以外の方は、この2つを含めて「やってはいけない四カ条」にご留意頂きたく。←他力本願w


「プロ」はこうして文章を書いているんです!

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文章は読むだけで上手くなる (PHPビジネス新書)
第1章 文章の読みやすさは、文の順番で決まる
第2章 「読む」から「書く」への効率マニュアル―「伝えたいこと」を口ずさむ
第3章 「伝わる」だけではない「人を動かす」ビジネス文章―説得し、気持ちを揺さぶる「絞り込みテクニック」
第4章 「あの人文章うまい!」と言われたい人のために―だれでも守れる「やってはいけない四カ条」
第5章 人々を巻き込み、オンリーワンの成果を実現する―あの人たちが発揮した文章の力


【関連記事】

【文章術】『論理が伝わる 世界標準の「書く技術」』倉島保美(2012年12月04日)

【文章術】『書く技術・伝える技術』倉島保美(2014年04月15日)

【文章術】『30分で完成する全自動文章法―これ1冊で全部うまくいく!』今井健仁(2014年04月07日)

【文章術】『誰にもすぐ役に立つビジネス日本語・文書の本 正確に・洩れなく・速く』神谷洋平(2014年03月19日)

【オススメ】『ロジカル・ライティング』清水久三子(2013年10月17日)


【編集後記】

◆こちらは渋谷さんが、独立前にペンネームで書かれた作品。

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稲盛和夫 独占に挑む (日経ビジネス人文庫)

このペンネームでも、結構ご本を出されてたんですね……。

Amazon.co.jp: 渋沢 和樹: 本


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