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2014年12月17日

お前らもっと『Think 疑え!』の凄さを知るべき


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Think 疑え! (知のトレッキング叢書)


【本の概要】

◆今日ご紹介するのは、HONZさんの「今週のいただきもの」記事にて知った1冊。

世にはびこる偽似科学や超常現象を、「懐疑主義」の名の下に、片っ端からぶった切っています。

アマゾンの内容紹介にある「こんな人におすすめ!」から引用。
●過去の経験を信頼するあまり、新しいデータ見を拒んでしまうことがある。
●「前から知っていたよ」「だからそう言ったのに」が口癖。
●「この手術の死亡率は10パーセントです」よりも、「この手術を受けた人の10 人中9人は助かっています」と言われたほうが安心する。
●他の人は騙されても、自分だけは騙されないと信じている。
●自分の記憶には“作り話"などないと思っている。
●占いが大好き。

なお、タイトルがえらく短いので、久し振りに「ホッテントリメーカー」のお世話になっておりますw





UFO Wald / Gerhard A. E. Uhlhorn


【ポイント】

■1.パターン化特性の問題点
 もし私が夕暮れの森の中で、どことなくクマに似た影を見かけたとしましょう。すると脳は直ちに、暗がりに潜む危険なクマの映像を作り出します。もし実際にクマがいれば、脳は警告を与えることで私たちの命を救ってくれますし、仮にクマがいなかったとしても、どうということはありません。でも、もしクマの代わりにビッグフットや悪魔や異星人や神様が見えたとしたら――こうなると話は非常にややこしくなってきます。
「実際に存在しないものの姿が見えるのは、そこにある大事なものをさらによく見るためである」と考えれば、この能力は理にかなっています。でも一方でこのパターン化特性は、「実在しないものがそこにある」と信じ込んでしまう原因にもつながっているのです。


■2.「金縛り」は身体の正常な症状
 ところで、「金縛り」という現象をご存じでしょうか。驚いたことに、成人したアメリ力人の20パーセント――つまり10人中2人――が、この金縛りを経験したことがあるというのです。医学的には、就寝中に自分自身を傷つけないよう、脳が身体の動きを制限する「睡眠麻痺」と呼ばれる症状で、目が覚めればこの部分的な身体の麻痺状態からは解放されます。ところが、脳は目覚めているのに身体が自由にならないという状態が、ときどき起こります。すると、そのときに見ていた夢も加わり、不安をかき立てるような経験として記憶されてしまうのです。


■3.「ビッグフット」を疑え!
 では「巨大な霊長類が、アメリカ・カナダの山岳地帯を駆け巡っている」という主張の問題点は、いったいどこにあるのでしょうか? 最大の問題点は、「死体が見つかっていない」ということです。懐疑主義者が「ただ1つでいいから、死体を見せてくれ」と言えば、未確認動物学を信じている人たちはもう反論できません。これだけ長い間、多くの人間があの地域に出入りしていながら、高齢や病気などで死んだビッグフットの死体に1つも行き当たらないというのは、およそあり得ないことなのです。


■4.「占星術」を疑え!
「それでも占星術はすごいのよ!」と誰かに言われたとしても、私は反論しません。ただ2つか3つの質問をして、相手の回答に注意を払うだけです。試してみてください。星はどんなふうにして私たちの人生に影響を与えたり将来を予想したりするのか? いったいどんな力が、どのように働いているのか? (中略)
 何がどう違うかといったことを、占星術師にべらべらしゃべらせてはいけません。知りたいのは「なぜ違っているのか」です。こうした重要な質問をして、意味のない答えでごまかされないように注意することが、懐疑主義者に求められる正しい態度なのです。


■5.「バミューダ・トライアングル」を疑え!
 私が実際に調べてみたところ、バミューダ・トライアングルでは、それほど多くの頻度で船舶や飛行機が消えているわけではありませんでした。それでも念には念を入れて、アメリカ海軍と沿岸警備隊にも問い合わせてみました。特に海軍の場合、何千人もの兵士を、何十億ドルもする船や潜水艦や飛行機といっしょに、この海域に送り込んでいるのですから、何かしらの脅威が存在しているのなら、いち早く気にかけて当然です。しかし、海軍はバミューダ・トライアングルをただならぬ脅威と考えてはいなかったし、そのことを公にもしていました。


■6.「エリア51」を疑え!
 エリア51周辺でいまでも頻繁にUFOの目撃情報が出てくるのは、「政府がそこに保管してある異星人の宇宙船と同じものを自分たちで作って、飛ばしているからだ」という主張が、一部の人たちの間でいまも信じられています。
 この主張の問題点としてまず挙げられるのは、秘密の飛行機を飛ばしている基地の周辺で「未知の飛行物体」が見られるのは、不思議でも何でもないということ。もう1つは、「人は答えの出せない疑問に対して、自分が納得できるような解釈を当てはめてしまう」ということです。


【感想】

◆本書のキモは、第3章と第4章における、具体的な「超常現象等」の検証なのですが、その前に、私たちの脳や体、心の特性について検証しています。

上記ポイントの1番目のように、ただでさえ「見えていないモノを補完する」くらいですから、それは「いかにも幽霊が出そうな場所」にいたら、「何か」が見えてもおかしくありません。

さらには見えているハズのものが、見えないことがあることも、この動画でご存じかと(この動画は本書内でも紹介されていました)。



この動画の作者2人が書いた本の記事では、ヒラリー・クリントンの戦場体験が、彼女の脳内で書き換えられてしまったケースをご紹介しましたが、そのくらい私たちの脳は信用できない、ということですね。


◆これに関連して、本書の第2章では「脳のバイアス」と「思考の罠」のリストが列挙されていて、これが圧巻!

あまりに数が多すぎるので、解説は省略して項目だけいくつか挙げておきますが、こんな感じです。
・権威に訴える論証
・利用可能性カスケード
・バックファイア効果
・バイアス盲点
・フォアラー効果
・フレーミング効果
・パレイドリア...etc
全部で23個もあるので、気になる方は本書にてご確認を。

この手の「バイアス」の本は、結構読んできたつもりですが、私自身、知らないモノが結構ありました。


◆これらを踏まえた上で、第3章と第4章では、お待ちかねの「超常現象等」が登場します。

上記ポイントでは3番目以降にて。

その3番目の「金縛り」は、私も経験がありますが、これが夢や記憶の思い違いと結びつくと、「エイリアン・アダプション」(宇宙人による誘拐)の出来上がりです。

その「宇宙人」絡みで言うなら、UFOが墜落したと言われる「ロズウェル事件」も、「UFOではなかった」とのこと。

「UFOの残骸」と言われたものは、実は「気球」の残骸ではあったのですが、それが「ただの観測気球」でなかったため、軍が情報を隠蔽したことから話がややこしくなったという……。


◆結局、こうした「あやふやな情報」も、マスコミの手にかかると、面白おかしい方に展開されていくのは、昔から知られたところです。

例えば「ビッグフット」の映像として広く知られる下記動画を、テレビ等でご覧になった方も多いのではないでしょうか?



ただ、この件に関しては、「自分が着ぐるみに入っていた」と名乗り出た人物がいることは、あまり知られていません。

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The Making of Bigfoot: The Inside Story

確かに、テレビ番組として「UFOは気球だった」「ビッグフットは着ぐるみだった」というテーマより、「本当にいるのか?」で曖昧に煽った方が視聴率も伸びますし、しょうがないのかな、と……。


◆本書で俎上にのぼるテーマは、これ以外にも「代替医療」「超能力」「ノストラダムスの大予言」「アトランティス実存説」「臨死体験」などなど。

ただし、著者のガイ・P・ハリソンは、これらを頭ごなしに否定しているのではなく、科学的に納得のできる「証拠」があがったり、「証明」がされれば、いつでも手のひらを返すそうです。

それこそが、本書で主張される「よい懐疑主義者」である、ということ。

本書の第6章では、「よい懐疑主義者になる方法」と、実生活での有効性について論じられていますので、こちらもご確認頂きたく。


科学的に「疑う」技術を学べる1冊!

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Think 疑え! (知のトレッキング叢書)
第1章 懐疑主義の大切さを、学校や親たちは教えてくれない
第2章 脳という頭の中の不可思議な存在
第3章 おかしな思い込みを巡るツアー[前篇]
第4章 おかしな思い込みを巡るツアー[後編]
第5章 食べること、動くこと、眠ることは、考えることにつながっている
第6章 よい懐疑主義者になる方法


【関連記事】

『錯覚の科学』が想像以上に凄い件について(2014年08月19日)

【見た目の科学】『卒アル写真で将来はわかる 予知の心理学』マシュー・ハーテンステイン(2014年10月29日)

【ヒューリスティック】『思い違いの法則: じぶんの脳にだまされない20の法則』レイ・ハーバート(2012年04月24日)


【編集後記】

◆上記のクリントンの件で触れた、当ブログでの人気作品がこちらです。

4167901765
錯覚の科学 (文春文庫)

レビューは上記関連記事にて。


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Posted by smoothfoxxx at 09:00
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